池上秀志

2018年7月13日5 分

再生不良性貧血

最終更新: 2021年2月5日

 貧血に関する記事を書いた後、フェリチンの値は高いにもかかわらず赤血球やヘモグロビンの値が低いという相談を受けました。通常は、逆のケースが多いのですがこのようなケースもまれに聞きます。

 この場合、栄養面からのアプローチは造血作用のあるミネラルを摂取するのがお薦めです。亜鉛、銅、モリブデン鋼、ビタミンB12 、葉酸がそれにあたります。ただそれだけで解決するとも限りません。赤血球やヘモグロビンは肝臓、脾臓、骨髄で主に作られますが、これらの器官が正常に働かなくなると再生不良性貧血になる可能性があると考えられます。長距離走というのはそもそも免疫系とホルモン系に多くのストレスをかける種目です。私の場合、ハードな練習を詰めて続けていると便に血が混じり黒くなったり、トイレが近くなり夜に何度も目が覚めたりというサインを体が出すことが多々あります。これも胃腸や腎臓に負担がかかっている証拠です。体のどこにサインが出るかは人それぞれですが、再生不良性貧血になっている人はトレーニング刺激に対する体全体の不適応が引き起こしている可能性があります。

 これはトレーニング刺激のみから来るとは限りません。以下に24歳のイスラエル人男性アーロンの症例を挙げてみたいと思います(以下引用ディーパック・チョプラ著『あなたは意識で癒される』渡辺愛子・水谷美紀子訳)

 研究所から戻ってきた検査結果を見て、医師は非常に困惑しました。ひどい貧血であるとわかったのです。ヘモグロビン値は正常値の14から6にまで落ち込んでいました。ヘモグロビンは、全身に酸素を運ぶ、血液の化学成分です。ヘマトクリット値の方は16まで落ち込んでいました。これは彼の血液を遠心分離器にかけて赤血球と血漿を分離した場合、赤血球が全容量の16%しかないということを意味します。正常な血液では40%近くあるはずなのです。(中略)

 不思議に思った血液専門医は、アーロンの骨髄を採取しました。通常、体に骨髄は250グラムほどしかありませんが、赤血球の酸素供給量を生成するには十分であり、一日に2000億個の新しい赤血球を作っています。詳しく調べてみるとアーロンの骨髄には、あるべきはずの赤血球前駆体が全くなかったのです。専門医はアーロンの状態が再生不良性貧血と呼ばれる骨髄の機能停止から来るものであるとわかりましたが、原因までは分かりませんでした。(中略)

 病気の原因が分からないまま問診していくうちに、私はアーロンが心配事をたくさん抱えていることに気付きました。心配事の第一はその恐ろしい診断そのものです。彼はパニックに陥っており、そのような状態では心身が治癒に向かう道を見つけるのも難しいでしょう。おまけにアーロンは緊張で張り詰めた、いつも何かに突き動かされているようなタイプに見受けられました。彼は学校に通いつつ、同時に4つの仕事を掛け持ちし、車を購入し、奨学金を少しでも早く返そうと自分を限界まで追いつめていました。学校自体も相当なプレッシャーになっていました。日常的にビタミン剤を大量に飲み、慢性の胃痛を和らげるために抗潰瘍作用のある薬も飲んでいました。数か月前にはテニスのやりすぎで腱鞘炎になり、腫れを抑えるために消炎剤を飲んでいましたが、このような薬剤は骨髄の機能を抑制することが知られています。私は薬を全てやめるように言いました。

 彼は2週間クリニックに入院し、ストレスがあることが「正常」だった生活から、初めてストレスのない環境に身を置きました。瞑想も続け、体質にあったシンプルな採食をし、生理機能を浄化するためにアーユルヴェーダのマッサージ治療のコースも受けました。私はまた、彼にあった原初音テクニックも指導しました。

 オーバートレーニングに陥るか否かは、トレーニングプログラムのみによって決まるわけではありません。特に再生不良性貧血の場合、精神的ストレスが肝臓に与える影響を無視することは出来ません。そして、問題はストレスを抱えている本人はたいていの場合それが普通の生活を続けているため、そのことに気付いていないということです。

 内臓器官などの自分が意識的に動かしていない器官を調整するのに一番適した方法は質が高く、十分な量の睡眠と超越瞑想です。超越瞑想については過去記事で詳しく書いてきますので、この記事の下に表示される関連記事から進んでください。

 『あなたは意識で癒される』に出てくる原初音テクニックとは意識の調律テクニックの一つで超越瞑想にスートラ(意図、催眠療法的なもの)を組み合わせたものです。興味のある方は、『あなたは意識で癒される』を購入していただいて巻末の付録から音声ファイルをダウンロードすると良いと思います。渡辺愛子さんが作成した音声ファイルで私も使ったことがありますが、結構おススメできます。

 原初音テクニックという言葉の解釈ですが、私達が認識しているこの宇宙には無限のエネルギーで満ち溢れています。ここでいうエネルギーとは物理学的な意味でのエネルギーのことです。量子が様々な周波数で振動していますが、人間はそのほんの一部しか認識することしか出来ません。世界は様々な振動数と周波数のエネルギーによって構成されていますが、その一部しか認識できないのです。しかし、我々の意識をほんの少し普段置いている位置からずらすことが出来れば(深い変性意識に入ることが出来れば)認識の幅を広げることが出来ます。

 認識の幅が広がれば、意識して動かせない内臓器官のような器官に対しても介入的な操作を行うことが出来るようになります。これがヨガや瞑想で病気が治る理由の一つです。逆に言えば、普段より精神的ストレスや怒りにさらされている人は通常の意識の位置が正常範囲内の外側にあるために、何らかの形で体に対しても介入的操作を施し不具合を生み出している可能性があります。

 そのような観点から長距離選手のリカバリーという観点から私は超越瞑想をお薦めしています。

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