池上秀志

2018年10月1日8 分

ウガリと自由と習慣のオーダーメイドトレーニング

最終更新: 2020年7月6日

お腹が空いているときは問題は一つ、食べ物だ。しかし一旦、空腹が満たされると100個の問題が生じてくる。

サドゥーの導師

先日、トウモロコシの粉25kgをアマゾンで注文しました。送料込みで7000円ちょっとなので1㎏300円をわずかに下回る程度です。トウモロコシの粉はケニアで覚えてきたウガリという料理を作るためのものです。腹持ちが良く素朴な味がお気に入りです。

25㎏のトウモロコシの粉があれば、結構生きていくことが出来ます。やっぱり生存本能が刺激されるので、なんとなく嬉しくなります。現在、米の価格は国産のものでも1㎏あたり400―500円です。日本人のコメの年間消費量は平均で60㎏と言われていますので、500x60で計算しても、3万円にしかなりません。日本人のコメの消費量が減っているのは小麦の消費量が増えているからでもありますが、それを考慮に入れて多めに見積もっても年間120㎏で6万円です。それにトウモロコシの粉を買い足しても10万円にも満たない金額です。

では住まいはどうかと言うと、今私はかなり良い家に住んでいます。飲み水も出ますし、お湯も出ます。水洗トイレと浴槽がついており、電気も供給されていて、電気冷蔵庫と電気洗濯機もあります。インターネットもついています。家賃は8万円でプラス光熱費とインターネット料金です。田舎に行けば少し狭くても良いなら、これと同じ条件で月5万円ちょっとで暮らせます。電気洗濯機は中古のものを500円で買いました。冷蔵庫も全然高いものではないです。1万円もあれば買えます。色々な環境で暮らしてきましたが、日本は本当に豊かな国だと思います。

人間の全ての営みは、1.重要かつ緊急性の高いもの、2.重要だけど緊急性のないもの、3.重要ではないが緊急性はないもの、4.重要でも緊急でもないものの4つに分類することが出来ます。私がこの概念に初めて接したのはケリー・マクゴナガルと言うハーバード大学の美人教授の本を読んだ時ですが、カフカと言う人(日本人)が作成しこの前受講した「習慣のオーダーメードトレーニング」では一つ目から順番に第一領域、第二領域、第三領域、第四領域と呼ばれていました。

第一領域と言うのは主に衣食住です。あとは医療費と言ったところでしょうか。

第二領域は私の言葉で言えば、目標です。皆さんの人生の目標は皆さんが心の底から好きなものでなければいけないというのは何度も述べている通りです。

第三領域は別に重要な話し合いをするわけでもないけど、突発的に食事に誘われたとか、別に欲しかったわけではなかったけど衝動買いしてしまったとかそういう状況です。

第四領域はSNSがやめられない、勉強しようと思ったらいつも漫画を読んでしまって後から後悔する、オンラインゲームやポルノコンテンツへの時間とお金の浪費をやめようと思ってもやめられないなどが該当します。

より自由で豊かな人生を送ろうと思ったらより多くのコスト(時間・労力・お金)の第二領域配分が望ましいです。目標を達成するためにより多くのコストを配分したほうがより自由で幸せな人生を送れます。別にストイックだとは思いません。何故なら、第二領域に来るものはその人が心の底から好きなものでなければいけないからです。逆に言えば、第三領域や第四領域へのコスト配分を多くしている人は自然本性や他人・社会の考えや価値観に支配される不自由な人生を送っている人だといえます。

例えば、「あなたはもてたいですか」と聞けばたいていの人は(少なくとも心の中では)「はい」と答えると思います。これは自然本性に基づくもので当然だと思います。ですが、だからといって「モテること」があなたにとって第二領域に該当するかと言えば、そうでもないです。

これは重ねて次の質問をすれば即座にわかります。「あなたはモテる為に何をしていますか?」と聞かれたら、あなたは即答できますか?もし、私が本気でモテたいと思えば、渋谷に行って出来るだけ多くの女の子に声をかけてナンパします。これはナンパで彼女を作ることが目的ではなく、何をやるにも初めは場数を踏むことが大切になるからです。出来るだけ多くの女の子に声をかけ、経験を積むことでモテるコツを掴もうと思います。しかし、三次元空間での行動だけではやはり不十分なので恋愛カウンセラーや凄腕ナンパ師など恋愛の専門家が書いた本を買い込んで読み込みます。皆さんならここまでやりますか?

私がそうしないのは、別に「モテたい」訳でもないし私にとって「モテること」は第二領域に入ってこないことをはっきり自覚しているからです。

ところが、多くの人が「モテたい」や「恋人がほしい」というのがその人にとって第二領域に属さないことを自覚していない人が多いので、突発的に異性からデートに誘われて応じてしまったり、告白されてその時付き合ってる人もいないからくらいの理由で付き合ってしまったりしてしまいます。別に悪いことではないのですが、これは自然本性に隷属する不自由な生き方でもあります。自分の自由意志に基づいて意志決定していないからです。

これが分からなかったのがゲーテの作品『ファウスト』に出てくるファウスト博士です。全ての学問を究めたファウスト博士は失われた青春を取り戻すために悪魔メフィストフェレスと契約を交わし、魂と引き換えに「時よ止まれ、お前は美しい(Verweile, doch du bist so schön)」と口にするまでの間、若返ります。ただ、ファウスト博士はもともと青春を失ってなどいないことに気付いていなかったのです。他人から見れば、研究に没頭し青春を失っていたように見えたかもしれませんが、ファウスト博士にとっては研究こそがファウスト博士の青春=第二領域であり、失われたように思われた青春は所詮第四領域の事象だったのです。最後にメフィストフェレスが「あなたは所詮あなたなのですよ」という言葉でそれを指摘しますが、博士はそれを自覚していなかったがために、魂をメフィストフェレスに売り渡してしまいました。

恋愛が第二領域に属さないと言っているわけではありません。ドン・ファンのような男であれば全ての恋愛が第二領域に属するでしょうし、私の場合も(非常にロマンのない表現ですが)「この女性は第二領域の女性だ」と思えば、自分なりにベストを尽くします。上手くいくか行かないかは別にして、自分の中ではそれは「緊急性はないが重要である」ことなのでとにかくベストを尽くしてみます。逆に言えば、何か行動を起こしベストを尽くそうと思えないのであれば、その時はその女性が魅力的に見えても第三領域か第四領域なのです。

もう一つより多くのコストを第二領域配分するために必要なことは、第一領域が満たされているということです。まあ一言で言えば、「腹が減っては戦は出来ぬ」ということです。ただ、日本では第一領域問題は1970年にほぼ解決されています。池田勇人内閣の所得倍増計画の最終年が1969年、農業基本法制定が1971年です。農業基本法と言うのは簡単に言えば、その土地土地の気候や地形に合わせて日本全体で多種多様な農作物を作りましょうという法律です。逆にそれ以前は、土地さえあれば米を作っていました。戦後直後の日本国民全体の飢えを解決するために、土地があればとにかく米を作っていたのがそれ以前です。

今でもコメどころは新潟、山形、秋田など寒冷地域が多いのですが、これら寒冷地域は本来米作に適しません。日本で最も米作に適しているのは京都盆地と奈良盆地、次が北九州です。言うまでもなく弥生時代の終わりくらいから栄えていた地域ですが、これは自然地理学的に当然のことです。ただ、新潟や東北の寒冷地域は都市開発が遅れ、戦後間もない頃は土地が有り余っていました。自然環境は無視で広大な土地があればとにかく米を作っていたのが、この時代です。米作に適した地域で米を作るのではなく、品種改良やビニール農法などで創意工夫を凝らして米を作ったのです。これは国家全体で見た時に、日本人の多くが第一領域に問題を抱えていたので、このような政策が急務だったのです。

ただ、現代では第一領域に苦しむ人と言うのはほとんどいません。派遣社員の給料の安さが問題になったりしますが、給料の安さ自体は問題にはなりません。皆さんも月収10万円の生活をしてみればわかりますが、第一領域には何ら支障は出ません。問題になるのは効率の良い第二領域配分が出来ないので、幸せも自由も感じることはないということです。これはどんなに収入が多くても同じことです。あなたが働きたくもない会社で住みたくもない大都会でくらいしていれば月収60万円でも幸せも自由も感じることはないでしょう。ここで重要になるのは1.第二領域配分を優先的に遂行するために人間の認知のメカニズムを理解すること、2.コストの第二領域配分を実現するための経済合理性を追求することです。最も手っ取り早いのは私が書いた『これから結果を出す人のための自信の作り方』を読んでいただくことです。人間の認知のメカニズムとお金について詳しく書いています。ただ、かなり抽象度を上げて書いているので、この三次元空間に実装(インプリメント)するのがやや難しいです。メリットはたったの1600円でコスパが良いということでしょう。

もう一つは「目標を達成するのには訳がある」という集中講義の中で、意志力、創造力、ゴール設定の仕方などについて詳しく解説しています。宣伝広告になってしまうので、集中講義の受講が第二領域に属する方のみ、下記のURLをクリックして、詳細をご覧ください。

https://www.ikegamihideyuki.com/post/2018/10/01/自由とコストの第二領域配分ー習慣のオーダーメードトレーニング

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