池上秀志

2020年11月9日7 分

マラソントレーニングにおける理論と実践〜ジャック・ダニエルズ博士の理論を通じて〜

 あなたはトレーニングにおいて、実践が先なのか、理論が先なのか、はたまた少し質問を変えて、実践の方が大切なのか、それとも理論の方が先なのか、と考えた時にどちらが大切だと答えるでしょうか?あなたはどう考えますか?

 私はといえば、理論が大切だと答えます。もちろん、実践が大切であることは否定しません。むしろ体で覚えなければいけないことはたくさんあります。距離が長くなればなるほど、体で覚えていく要素が多くなっていくように私自身は感じます。私自身、大学生の時に月間1200kmとか4ヶ月で4000kmという練習量をこなしたり、一人で20kmのタイムトライアルをやったり、トラックシーズンに40km走を入れたり、周りから頭がおかしいのではないかと言われたことも一度や二度ではありません。

 だからこそ体で覚えていくことの重要性は重々承知しております。プロになってからも、反吐がでるほどの基礎体力作りを通じて、今までできなかった練習ができるようになっていきました。今までは雲の上の存在でしかなかった一流選手の練習がどんどん現実的に感じられるようになってきています。

 ですが、反吐がでるほどの練習をしたからこそ言わせてください。理論が間違っていれば、その後どれだけ頑張って練習しても間違った方向に進んでしまいます。中には正しいとか間違っているなんてないという人もいますが、私に言わせればとんでもない暴論です。そんなことを言えば、何も考えなくてもただ漠然と走っていれば速くなるということになりますが、実際にはごく一部の天才を除いて、何も考えなくても速くなれるほど簡単なスポーツではありません。

 確かに結果を残している人には、いろいろな努力のエピソードがあります。生まれつき素質があるからと言って、大した練習もせずに結果が出せるほど甘い世界ではないのは本当です。ですから、私自身も結果を残してきた先人達のことをすごく尊敬しています。選手だけではありません。マラソンというのは選手と指導者が一つの芸術作品を作り上げる共同作業でもあります。ですから、素晴らしい指導実績のある指導者の方に対しても敬意を表します。

 ですが、その一方で成功した選手にだけスポットライトが当たる一方で、成功していないけど、人並外れた努力を積み重ねてきた人はたくさんいます。人並外れた努力とは言わないまでも、強豪校と言われる高校生、大学生、そして実業団の選手も努力を積み重ねています。それでも結果が出る人、出ない人、はっきりと別れます。

 なぜ私がそういうことが言えるかというと、私自身は常にどちらの気持ちもわかる立ち位置の選手だったからです。中学、高校、大学、社会人と口が裂けても強い選手と言えるほどの力はありませんでした。では弱い選手にカテゴライズされるかというと、これまた微妙なポジションです。中学時代には個人で全国大会には出ていませんが、都道府県対抗男子駅伝に出ていますし、高校時代もインターハイは出ていませんが、全国高校駅伝と都道府県対抗男子駅伝には出ています。大学時代もインカレには出ていませんが、ハーフマラソンは63分9秒で走り、その年の日本ランクで60番くらいに入っています。社会人になってからも30kmを1時間31分53秒、マラソンを2時間13分41秒で大阪マラソンで二位、なんかパッとしないけど、磨けば一流になる選手だよねというポジションにずっといました。

 少し下を見れば、ドロップアウトしていく選手がいるし、少し上を見れば一流選手がいます。そんな中でつぶさに観察してきた私の感想として、下から上まで実はそんなに差がないんじゃないかということです。素質と呼ばれるものの存在は私も否定しません。他の人と比べて階段を一段も二段も飛ばして登っていける人がいるものです。そういった選手は素晴らしい選手でしょう。

 ただ、実際のところはそっちが凄いのであって、それ以外の選手がダメかというとそうでもないと感じます。私の印象としては、素質がないからダメなんじゃなくて、明確なヴィジョンを持てていないことが原因だと思います。明確なヴィジョンとは何か?それが私の言葉で言うとトレーニングの純粋概念です。人によって、実際にどう言うトレーニングをするかは変わると思います。また私自身は気温やその時の滞在場所、練習パートナーの有無など色々な条件によって、微調整します。ただ、何をやるにしてもそのトレーニングには目的があります。更に言えば、今日の練習がトレーニング理論全体のどこに位置しているのかも理解している必要があります。

 それを理解していなくて、ただ漠然とその日の練習を頑張っている人は、長い目で見たときに結果を残していく人は少ないです。良い時は良いんです。従って、一時期良い結果を残す時は多々あります。それは練習も頑張って、体の手入れもしっかりして、規則正しい生活を送って、寮には管理栄養士さんがいて、そうやって努力していけば、結果が出る時は出ます。

 ただ、ダメになっていったときに、そのままドロップアウトしていく選手が多いんです。自分がやっていることの背景にある理論が頭に入っていないので、良い時は集中できるのですが、結果が出なくなると「こんなことやっても無駄じゃないのか」と言う方向に気持ちが傾いていきます。そして、次第に「こんなことやっても無駄だ」と言う信念が強固になり、それが現実となる日が来ます。

 私自身はランニングも人生の一部として捉えていますから、競技を続けることが絶対的に良いとは思っていません。ただ、繰り返しになりますが、下から上までそんなに差がないのではないかと言うのは率直な感想です。私自身、下を見ると自分とそれほど力の変わらなかった選手が結果を出せずにどんどん辞めていくのを目の当たりにしていますし、上を見れば、やはり自分とそれほど力の変わらなかった選手がどんどん強くなっていくのも目の当たりにしています。

 私自身も瀬古さん、高岡さん、大迫さんらと比べれば全てが別格だと感じます。ただ、宗さん、中山さんとは23歳くらいまでそれほど、大きな差はありません。少なくとも結果を見る限りそれほど大きな差はありません。それでもそのあと大きな差が空いている訳です。埋まらないはずがありません。

 では、なぜ埋まらないのかと言えば、大きく分けて二つの問題しか思い当たりません。一つ目は、私のマラソントレーニングの理論自体が間違っていると言うことです。二つ目は、理論は正しいけれど、物理場への表現の仕方が間違っている、もしくは分かっていないと言うことです。

 私自身はマラソントレーニングに関する理論的な部分に関しては、三年前にすでに完成していると考えています。私自身のマラソントレーニングという話ではなく、市民ランナーから世界記録保持者まで、私の理論を使えば、最も効率の良い最適なトレーニングについての最適解を示すことができます。ただ、マラソンの難しいところは、それをこの物理空間において、自分の体を使って表現しないといけないということです。

 今回はそんなマラソントレーニングにおける理論と実践というテーマについて、11月15日日曜日、午後1時半から、池袋陽光ハイツ702号室(東京都豊島区東池袋1-36-3)というところで、ランニングクリニックを開催します。日本の市民ランナーの方達におそらく最も使われているであろうジャック・ダニエルズ博士のトレーニング理論と比較や最近ごく一部で開発されているトレーニング内容を作ってくれる人工知能の仕組みなんかとも比較しながら、2時間の中で解説したいと思います。

あなたがこのランニングクリニックに参加するメリットは下記の通りです。

・1500mからマラソンまで市民ランナーから世界記録保持者まで該当する最適なトレーニング理論について学ぶことができる。

・トレーニングの理論と実践の関係性について理解し、どこまで理論でどこから実践か学ぶことができる。

・トレーニングにおける理論と実践の関係性について理解し、理論について理解した後は、実践あるのみということがわかるので、理論がもたらすショートカット(競技能力の飛躍)と、実践し思考錯誤していく楽しさの両方が理解できる。

・ジャック・ダニエルズ博士のVdot指標や運動生理学が実際の練習計画の作成に何故使えないというかが理解できる。

・人工知能が何故、適切な練習計画を作ることができないかが分かる。

先着10名様限定での参加となります。お申し込みは下記のURLよりお願いいたします。

https://www.ikegamihideyuki.com/bookings-checkout/マラソントレーニングにおける理論と実践-ジャック-ダニエルズ博士の理論を通じて/book

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