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執筆者の写真池上秀志

長距離走・マラソンは伸び悩んでからが面白い

更新日:2021年5月17日


 こんにちは、ウェルビーイング池上です。何年前くらいからは忘れましたが、日本ではオタク文化が花を咲かせています。オタクという言葉は昔は少数派のコミュニティの中で互いのことをお宅と読んでいたことが始まりだそうです。最近では、あなたは「〇〇オタクなんですね」というと「いえいえ、そこまででもないですよ」という謙遜の言葉が返ってきたりするくらいで、だいぶオタクという言葉に込められる意味が変わってきました。


 オタクという言葉ではくくれませんが、関西の阪神ファンにも格があります。今の阪神ファンには阪神タイガースが強くなってからのファンと、いわゆるダメ虎とか暗黒時代と呼ばれていた1990年代から2002年くらいまでの阪神を応援していたファンがいます。同じ阪神ファンの中でもこのダメ虎時代から応援していた阪神ファンの方が格が高いのです。


 何事もそうだと思うのですが、本当のファンというのはダメなところも含めて愛せるのが、ファンなのではないでしょうか?これが阪神タイガースのようなチームでない場合には、その分野の難しさに直面してからも楽しめるのが通の世界です。ただ単に野球をやって軽く汗を流して楽しかったねではなくて、草野球なんだけどどうやったら勝てるかなと考えながらプレーするところに深い楽しみがあります。ただお茶を飲めば良いんだけど、それを道にまで高めて茶道にするところに味わい深い楽しみや喜びが生まれます。


 これはランニングでも同じだと思います。伸び悩むというと悪い印象があるかもしれませんが、長距離走やマラソンは伸び悩んでからが面白くなるのです。なぜなら、そこに工夫が求められるようになってくるからです。


 「マラソンはやったら、やっただけ自分に返ってくる競技」だという人がいますが、とんでもない誤りです。それはまだマラソンの面白さが分かっていない人です。わざわざ自分から伸び悩むようなやり方をする必要もないのですが、でも普通にやっていればどこかで伸び悩むポイントに当たります。それはなぜかというと、トレーニング理論には収穫逓減の法則というものがあるからです。


 収穫逓減の法則というのは、元々は経済学の用語でかけるコストが増えればそれに応じて売り上げも増えていきますが、単位コストあたりの収益は落ちていきます。分かりやすい例で言えば、農業がそうです。ある土地の面積に対してたくさんの小作人を雇えば、収穫量も増えます。小作人をたくさん雇えば雇うほどたくさんの農作物を収穫することができます。ですが、このとき一人を二人に増やした時と、二人から三人に増やしたとき、三人から四人に増やしたときと比べて行くと徐々に一人当たりの収穫量は減っていきます。そもそも土地の広さが限られているのですから、当然です。そして、土地の広さにもよりますが、どこかで頭打ちになります。これが収穫逓減の法則です。


 では、長距離走・マラソンの場合はどうでしょうか?長距離走・マラソンの場合も全く同じ法則が成り立ちます。本来トレーニングには色々な要素があって走行距離だけでは表せないのですが、ここでは話を単純にするために走行距離だけで話を進めましょう。

 今まで全く走っていなかった人が週に20kmでも走るようになったとします。そうすると、力がついて今まで以上に走れるようになります。次に週に40km走るようになります。そうすると、さらに力がつきます。ところが、0kmから20kmに増やしたときほどの向上ではありません。次に60kmへと増やします。そうすると、さらに力がつきます。ただし、20kmから40kmに増やしたときほどの向上ではありません。さらに60kmから100kmへと増やしたとします。このとき40km増えていますが、20kmから60kmへと増やしたときほどは向上しません。これが収穫逓減の法則です。


 誤解のないように書いておきますと、走行距離1kmあたりのトレーニング効果はどんどん減っていきますが、だからといって力がつかないわけではありません。当然、週に40kmしか走らない人よりは週に100km走る人はの方が力はついていくのですが、走行距離1kmあたりのトレーニング効果は減っていくということです。


 ではリスクの方はどうでしょうか?これも意外と見落とされがちなのですが、トレーニングの負荷は増やせば増やすほどリスクが高まります。リスクというのは故障をしたり、病気になったり、あるいは故障や病気といった明らかな原因がないのに練習の負荷を増やしていくと走力が低下することがあります。わかりやすく言えば、誰でもインターバルの直後、あるいはレースの直後というのは走力が落ちます。5kmのレースに出て全力で走った5分後に走れば誰しもタイムが大幅に落ちます。この状態が慢性的に続く状態で、この現象をオーバートレーニングと言います。


 トレーニングの負荷とリスクの関係性はこの収穫逓減の法則を反転させたグラフになります。0kmから20km、20kmから40kmと走る距離を増やしていっても普通はほとんどリスクはありません。むしろ日常生活でも疲れを感じにくい体になるでしょう。ところが、エリート選手のトレーニングというのは、もう日常生活に支障が出ます。仕事の生産性も落ちます。そもそも仕事と掛け持ちすること自体が至難の技です。分かりやすく言えば、常に軽い風邪にかかっているような疲労感です。練習以外は食べてるか、寝ているかという生活を送る人がほとんどです。ここまでやると故障やオーバートレーニングのリスクが一気に高まり、エリートランナーのほぼ全員が故障と隣り合わせで走っていると言って過言ではありません。


 この原理原則はあなたがどのレベルのランナーであろうと当てはまります(原理原則とはそういうものです)。ただ、走力に応じてこのグラフがどうなるかというのは多少異なりますし、またここでは話を単純にするために走行距離だけに絞って解説をしていますが、実際にはもっと複雑に色々な要因が絡み合っています。


 複雑にという言葉が出てきたのでついでに書いておくと、〇〇をしたら速くなるとか、〇〇を飲めば速くなるとか、10000m33分台を出すための練習3選とかこういう分かりやすくてキャッチーな話ほど嘘だと思ってください。陸上競技はこんな風に一言で言えるほど簡単なスポーツではなく、速くなるにはもっと色々な要素が複雑に絡み合い、多角的な視点が必要となってきます。ここにオタクの世界が広がってくるのですが、このことについては後述しましょう。


 ではなぜ、長距離走・マラソンは伸び悩んでからが面白いのかということなのですが、それは伸び悩んでいない人はまだ練習の負荷も少なく、単位負荷あたりの練習効果が著しく大きく、単位負荷あたりのリスクが著しく小さいところでやっているからです。これは何も間違っていません。むしろ先述した通りローリスク・ハイリターンですから、そういう意味ではむしろ正しいです。ただ、ここに落とし穴があるんです。この時期というのはやったらやっただけ、伸びていくので、根性論に陥りやすくなります。頑張ったら伸びるんだと思ってしまうんです。これが後々伸び悩んだ時に自分を苦しめることにつながります。頑張ったら頑張っただけ伸びると思っているということは、伸びないのは自分の努力が足りないからだと単純に思ってしまうからなのですが、実際問題としてはここまで単純な話ではありません。


 私自身も走り始めて4年くらいは順調に伸びたでしょうか。少し私の話をすると、初めて駅伝を走ったのが小学校5年生です。練習らしい練習をし出したのが中学校に入ってからです。この時期はそもそも体自体が成長期ですから、どんどん伸びていきました。しかも、それこそ練習し始めた段階ですから、やることなすこと全てが体にとっては新しい刺激です。誤解のないように書いておくと、この中学校に入ってから高校1年目までも常に順調に右肩上がりで伸びていったわけではありません。故障もありましたし、貧血気味の時もありましたし、オーバートレーニングで全然走れなくなった時もありました。でも、その都度問題を解決しながら、年間通して見るとぐんぐん伸びていきました。


 いつも順風満帆ですか?と聞かれたら答えはノーでしたが、まぁそれでも一年ごとに見ていけば、試合、練習ともに伸びてるよねという段階でした。


私の年次ごとの自己ベストは下記の通りです。


中学校一年

3km 9分54秒


中学校二年生

3000m9分33秒??


中学校三年生

3000m8分58秒50

3km 8分51秒


高校一年生

3000m9分17秒??

5000m14分43秒33

都大路4区 8.0875km 24分19秒


高校二年生

5000m15分0秒

都大路4区 8.0875km 24分39秒


高校三年生

800m 2分7秒10

1500m 3分58秒55

5000m 14分43秒44


 高校一年まではまあ順調に伸びたと言えるでしょう。念のために書いておくと3000mはトラックレースという意味で、3kmはロードレースの意味です。私は走り始めた時からロードレーサーでした。トラックはあまり興味がなく、チームでやる駅伝が面白かったです。これは当時の私を知る人からすると意外かもしれません。というのは私はみんなで仲良く頑張ろうというタイプではなかったからです。でも私はむしろ嫌いな相手とも一つの目標に向かって協力をしあうというところに魅力を感じていました。部員が長距離だけで30人以上もいたら、その全員とウマが合うということはあり得ません。でもやるからには、チームの勝利を考えてレース展開を考えてやっていくというところに面白さを感じていました。


 また熾烈なメンバー争いも面白かったです。いかに監督が求める選手になるのか、他の選手の得意なところ苦手なところ、自分の得意なところ、苦手なところ、それを考えて使えるものを作っていく、著しく苦手なところがあると使ってもらえない、でも自分の得意を自覚して自分がメンバーに選ばれるとしたらなぜ選ばれるのか、それを考えてチームに必要な存在となれるように努力していく、そんなことが面白かったです。


 ちなみにその考え方は今のお仕事をするようになってからも生かされているように感じています。得意なことも苦手なこともある中で、自分が選んでもらえるとしたら何故なのか?ルックスはどうだろう?動画の編集技術は?面白い系だろうか?それとも勉強系だろうか?文章作成能力はどうだろうか?女性に受けるだろうか?男性に受けるだろうか?若者受けするだろうか?それとも年配の方向けだろうか?


 そんなことを考えながら、苦手なところをなんとか耐えらえるレベルまで持っていき、得意なところで勝負できるように努力する、ある程度の割り切りも必要で、ルックスで勝負するのは無理だなとか、女心をつかむ文章を書くのは無理だなとか、「つまらない」と言われても質の高い学びを提供し続けるしかないなとか、そんなことを考えながらどうやったら必要とされる存在になれるかなと考え、行動していくのが面白いです。


 駅伝も似たようなところがあって、自分の得意なところを前面に押し出さないと使ってもらえません。私の場合は、どんな展開でも落ち着いて自分の力を出し切る走りをするというのが売りでした。それならその役割に徹することです。はじめの1kmで一気に前との差を詰めて、後半失速するような展開は許されません。どんな位置でたすきをもらっても落ちいてやや遅めに入って後半上げていく走りをする。これが私に求めれらた走りです。


 閑話休題、話を元に戻しましょう。上記の数字をみていただけると、お分りいただけるように高校一年生までは順調に伸びましたが、そのあとは伸び悩みました。中学校一年から高校一年までも全てが順調というわけではなく、中学二年生の京都府中学大会ではブービー賞をとったり、高校一年生のトラックシーズンは3000mで9分15秒も切れませんでした。そんなこともあったのですが、帳尻合わせ的に駅伝シーズンはちゃんと走れています。


 ところが、そのあとは伸び悩みに伸び悩みました。ちなみにできる練習のレベルは上がっていきました。できる練習のレベルが上がっているのに、それが結果に繋がらない、そんなもどかしく辛い時期が続きました。メルマガ登録者に無料でお渡ししている「長距離走・マラソンが速くなるためのたった3つのポイント」という小冊子の中に詳しく書いているのですが、高校二年生の夏合宿あけが一番辛かったです。この時期には人生ワーストの16分32秒をマークしています。伸び悩んでからが一番面白いと書きながらもやっぱり辛かったです。ただ、本当の面白さというのはやっぱり辛さと表裏一体です。


「さて、これをどうやったら克服できるかな」と頭を使うようになります。ここからが面白いのです。開き直りというのも出てきます。素直に人の話を聞こうという気持ちにもなります。もちろん、誰の話を聞くかは慎重に選ぶべきですし、それこそ多角的に判断していく必要もあります。素人ではないので、問題が一つだけということはあまりありません。ですから、2+5=?のように答えがたった1つという訳ではないのです。これを答えなんかないと表現する人もありますが、答えはちゃんとあるんです。ただし、2+5の答えのように絶対的に一つの答えには収束しないけどね、というところです。


 私の場合はどのように問題を克服していったのかということなのですが、まずはとにかく継続しようと、単純なことですがやってきたことは継続しようと思いました。できる練習のレベルは上がっていたわけですから、それをやめる理由はありません。結局のところ、最終的にはやるかやらないかの二択な訳です。どこで結果に繋がるかわからないので、投げ出すことが一番勿体ない選択です。


 次に何をして克服したかというと、本当に一つの要因に絞ることはできないのですが、最終的に自分で克服できたかなと思ったのは、高校卒業の直前でした。最後の全国高校駅伝が終わって、全く自分の結果を残せずに終わって本当に勿体ないなと思いました。自分の力ってこんなもんじゃないのになという気持ちがとても強く出ました。そのあとは何をしたかというと、練習をサボれるだけサボりました。サボるといっても全く何もやらないわけではありません。レースで結果を出すという一つの目的に絞って鍛えるような練習はしませんでした。鍛えるのではなく、レースに向けて調律するという気持ちを持って練習を続けました。


 そのあとは都道府県対抗男子駅伝の5区8.5kmを区間13位で9人抜きの25分23秒、浜名湖駅伝の4区では、西脇工業の三浦雅弘選手(当時5000m14分11秒)に30秒近くの差をつけての区間新記録での区間賞など、自分の力を発揮することができました。


 ただ、このケースではこうしたというだけであって、原因が一つに特定できないのでその時々でやるべきことは変わっていきます。


 別のケースではレースに近い負荷をバンバンかけすぎたなと思ったので、ひとつひとつの練習の目的を明確にし、色々な刺激を組み合わせることで、克服しました。具体的にいうと、ハーフマラソンに向けての練習で、20kmのタイムトライアルや5km2本などの練習を多用しすぎたのです。ただ、一人で20kmのタイムトライアルをしても私はそこまで走れませんでした。スタミナ十分と思って臨んだ立川のハーフマラソンでは、10kmを30分12秒で通過したあと、後半は31分48秒もかかりました。もう辛かったのなんの、走ってて情けなくなりました。


 では次の年はどうしたかというと、それぞれの練習の目的を明確にし、距離を踏むなら20マイルを3:45/kmくらいで走る、スピードを求めるなら400m12本か、300m15本をそれぞれ同じ距離のジョギングでつないで400mなら64−62秒、300mなら48-46秒で走る、5000m-10000mの力をつけたいのであれば、1200m8本を400mつなぎで10000m-5000mのレースペースで走る、そしてハーフマラソンのレースペースかそれより少し遅いペースで10-12km走る、それに加えて総走行距離を伸ばせるように、自分でどのくらいのジョギングや有酸素ランニングができるかを考える、こんな感じで練習を組み合わせていきました。


 その結果、どうなったかというと練習が安定しました。タイムトライアルのように一回一回の練習でレースに近い負荷をかけませんでした。ちなみに5000mのレースと10000mのレースは練習として使いました。このくらいの距離であれば、適度に入れれば良い練習になります。そこまで疲労が残らないので、例えば、5000mのレースの次の日に距離走を入れたりというスケジュールも組みました。きついようで、一回一回の練習でそこまで追い込まないので、楽なんです。楽というとちょっと言い過ぎかもしれませんが、リスクを低くしながら、組み合わせていくことができます。


 ここで練習の負荷とリスクの関係性を思い出してください。練習の負荷を上げれば上げるほどリスクは指数関数的に増えていきます。たださらなるレベルアップを図るのであれば、ある程度のリスクは取るべきです。でもあくまでもある程度です。こうやってリスクとリターンの関係を考えた時に、時には一回一回の練習でめいいっぱいまで追い込むよりも、色々な刺激の練習をバランスよく組み合わせた方が良いということです。


 ここで、もうひとつのルールも思い出してください。それは練習の負荷とトレーニング効果の関係です。練習の負荷を上げれば上げるほど、単位負荷あたりのトレーニング効果は減ります。逆の言い方をすれば、一番差が大きいのはちょっとでもやっているか、全くやっていないかの違いです。そうやって考えた時に、例えば今でも1200mを400mつなぎでやる時にはだいたいこのくらいのペースでいけたら良いなというのはあるのですが、そのタイムはそこまで重要ではないような気がしています。というのはこの手の負荷をちょっとでもかけているのと、全くやっていないとの差が一番大きいからです。例えば、私の場合は一キロ2分55秒になると、10000mのレースペースだなという感じなのですが、これが2分55秒でも2分57秒でも、2分53秒でも、もっと言えば3分ちょうどでもそれほど練習効果は変わらないのではないかとさえ思います。


 もっと言えば、3分ちょうどでできた時と、2分53秒でできた時と、レースの結果はどちらの方が良いかは正直わかりません。他の練習との兼ね合いもありますし、それに自分の限界に近づけば近づくほど、リスクは指数関数的に上がります。要するに、せっかく頑張っても吸収できない可能性が高くなります。単純に遅い方が良いとも言えないのですが、とにかくこの時は、ここでリスクを取るよりも、できる範囲で体に感覚を覚えさせて、ちょっと遅いなと思っても別の日にショートインターバルをやるから大丈夫だと思ってやっていました。ちなみにこの時期のトレーニングは「ハーフマラソンを63分9秒で走った無名の国立大生の話」というブログ記事の中で公開しています。


 この年はうまくトレーニングを組み合わせることで1月、2月と安定してハーフマラソンを3本63分から64分で走りました。


 さて、話を市民ランナーの方の伸び悩みに戻しましょう。実はこれと同じ現象が市民ランナーの方に起きています。なぜ市民ランナーの方が伸び悩むポイントに達するかというと次の3つの原因があります。


・今までやってきているのでさらに上のステップに行くには今の練習では不充分

・とはいうものの仕事や家族との時間を考えるとこれ以上練習量は増やせない

・仕事や家族のことを考えると環境や生活を変えることもできない


 どうでしょうか?あなたも思い当たる節がないでしょうか?そもそもの話をするとオタクといえども、そこにかけられるコスト(時間、お金、労力)には限界があります。人にもよりますが、通常はそこにかけられるコストは実業団の選手よりも少ないです。


 ここに加齢を原因の一つとして、あげる方もいらっしゃいますが、私はほとんどの場合で当てはまらないと思います。確かに40歳を過ぎれば衰え始めると言われますが、それはすでにその人のパフォーマンスがピークに到達している場合の話です。ですから、実業団の選手はかつて一流と言われていても年齢的に厳しくはなってきます。


しかしながら、持久力というのは短期間ではつきにくく時間をかけて大きく向上するという特徴があります。自分のピークパフォーマンスに到達するには、だいたい15年くらいはかかります。ですから、40歳を過ぎてもランニング歴が10年以内であれば、大抵は加齢による衰えよりも、走力が向上していく割合の方が大きいです。


 さて、そんな状況の中で、いかにして伸び悩みを克服するかというと主に解決策は3つあります。


 1つ目は、リカバリーに焦点を当てるということです。リカバリーというのは練習をしないという意味ではありません。栄養と睡眠を2本柱にした生活習慣を見直すことで、同じトレーニングをしていても練習の吸収率が上がります。


 2つ目はトレーニングを見直すことです。トレーニングを見直すにあたっては大きく分けると2つのやり方があります。1つ目はトレーニングの目的を見直すことです。例えば、同じ40km走をするにもレースがイメージできるところまで負荷をかけるのと、脚作りとしてやるのでは、目的が違います。2つ目は、練習そのものの組み合わせを変えることで、全体の練習時間や負荷の総量が同じでも組み合わせを変えることで、さらなるレベルアップが図れます。さらにいえば、通常は練習の組み合わせと目的の両方を変えることでさらなるレベルアップが図れます。


 3つ目は、積極的に心理的な盲点(スコトーマ)を外すことです。人は誰でも心理的な盲点を持っています。盲点はどこから来るかというとブリーフシステムと呼ばれる人間の認知機能から来ます。ブリーフというのは短いという意味ですが、人間は省エネで生きるために、いちいち全てを一から判断するということはしません。例えば、初めていくホテルでも、「これはドアだろうか?」「受付はあそこでするのだろうか?」「なんといえば良いのだろうか?受付お願いしますといえば良いのか?チェックインお願いしますといえば良いのか?本日こちらのホテルに宿泊予約を入れている池上と言いますが、お手続きはこちらでよろしかったですか?といえば良いのか?」「あれはエレベーターだろうか?それともレストランの入り口だろうか?」といちいち判断したりしません。普通人間は思い込みで生きているから楽に生きていけます。自動化すべきところは、自動化してしまえば、良いのです。セールスでも優秀な人ほどああ言われたら、こう言うというのは自動化されています。毎回顧客からの質問に「今調べますので、少々お待ちください」と言われたら信頼できません。


 ところが、自分を成長させて行く上ではこのブリーフシステムが往々にして邪魔をします。時には現状を否定して、新しいやり方を構築していく必要があるのです。

では、この心理的な盲点を外すにはどうすれば良いか?色々なやり方がありますが、一番は自分よりも経験や知識のある人に教えを請うことです。私は今までこうして来ました。というか今でもそうです。だって盲点なんですから。自分では見えてないから盲点なんです。考えてわかるなら盲点じゃありません笑 


 この前も中学時代の同級生が髪型から服装までその人に合ったコーディネートをする分野で専門家になっているのですが(全国大会で3位入賞)、今度俺のも頼むとお願いしたところです。当たり前です。今まで坊主頭にジャージだけで生きてきた人間にそんな難しいこと分かるわけありません笑 分からないことは人に聞けば良いのです。それでいくらかお金を使うことになっても、ああだこうだとよく分からないままに服を買うよりは良いでしょう。


 ただ、誰のいうことを聞くかは非常に重要な問題です。これはもう最終的には答えはありません。人間同士なので合う合わないもあります。それでも一応、私の中では明確な基準が三つあります。


 1つ目は、経験豊富な人です。それもたくさんの経験を持っている人の方が良いです。失敗も成功も含めてたくさんの経験を持っている人が良いです。スポーツの世界では名選手名コーチにあらずです。これは陸上界でもそうです。必ずしも成功している必要はありません。でも経験はたくさん持っていてほしいです。


 2つ目は知識が豊富な人です。世の中には本で読んだ知識が豊富な人をバカにする傾向も一部にはありますが、知識はあればあるほど良いです。なぜかといえば、知識がないと盲点が増えるからです。例えば、「第一次世界大戦後のドイツではドイツ政府がベルサイユ条約の賠償金返済のために紙幣を大量に刷って史上稀に見るインフレになった」とか「日本の借金は年々増えており、このままでは日本は財政破綻する」とかこのようなデマゴーグが流布するのも、その分野の知識に欠けるからです。知識があれば、どちらも嘘だとわかりますが、なければ「じゃあ増税もやむなし」と思わされてしまいます。ランニング界で最も流布しているこの手のデマゴーグはサプリメントでしょう。最近はHMBがひどいと思います。


 3つ目は、お金をとって教えている人です。これも重要なポイントです。何か重要なことを学ぶのに、無料で学ぼうと思ってはいけません。無料でアドバイスをする資格がある人は誰ですか?全員です。私も無料で良いならファッションのアドバイスができます。お金もらわないんだから好き勝手いえますよ、それは。でも人からお金をもらって、それも一回きりではなくて、それで生計を立てていこうと思えば、継続的に信頼に足るアドバイスができなければいけません。したがって、私はブログもユーチューブもSNSもほとんど使いません。使うとしたら、誰の有料プログラムを買うかを選ぶ時です。今までの経験上、結局ユーチューブやブログというのはオンライン販売の通過点ですので、それなら無料でずっと色々なユーチューブやブログを読むよりもさっさと次のステップに進んで(例えばメルマガ登録するとか)、そして、できるだけ早い段階で、有料のプログラムを買ってしまいます。結局それが一番早いです。

 ちなみにですが、世の中のランニングトレーナーとかランニングコーチというのは基本的には初心者相手の商売です。要するに、伸び悩む前の人を対象としています理由は2つあって、1つ目は単純に分母が大きいからです。サブ3を達成したいとか、福岡国際マラソンに出たいという人を相手に商売するのは分母が圧倒的に小さいので難しいんです。やはり分母は初心者の方が大きいです。


 2つめの理由ですが、伸び悩んでいる人を伸ばすのは結構難しく教える方の技量も問われます。一方で、初心者の方というのはこう言ってはなんですが、まだ伸び悩む段階に達していないので、伸ばしてあげるのは簡単です。初心者の方ほど、パーソナルやランニングクラブで伸びていきますが、これは教えてあげるというよりは、その環境というか走る場を作ってモチベーションを維持してあげるだけで伸びていくんです。伸び悩む人というのはもうこの段階を通り過ぎているので、より専門的で多角的なアプローチが必要になってきます。


 現段階で伸び悩んでいる人は、よほど専門的な知識と経験がある人に頼まないと間に合いません。これも考慮に入れて下さい。


改めて長距離走・マラソンは伸び悩んでからが面白い

 ここまで長距離走・マラソンは伸び悩んでからが面白いということを書き連ねて来ましたが、伸び悩んでから始めて練習の目的、組み合わせ、さらには睡眠や栄養などの日常生活のことまで考えるようになります。こうなってからが、一番面白いのです。一言で言えば、ここからがオタクの世界なのです。そこまでオタクにならなくても良いという人も多いと思いますが、オタクレベルでランニングにはまっている人も多いでしょう。はまっている人は私と一緒にそのままズブズブと泥沼に入っていきましょう。豊かな世界が開けているのはここからですよ、いやほんとに。


 という訳で、オタクの世界に入っていきたい方に私の方から4つの提案をさせて下さい。もう一度大前提として述べておきますが、長距離走・マラソンにハマればハマるほど、遅かれ早かれどこかで伸び悩みます。この伸び悩みはどこから来るかというと


・次の段階に進むには現在のトレーニングでは不十分。単純に足りないという意味ではなく、何らかの欠陥がある。

・仕事や家族とのことも考えると、これ以上練習時間、練習の負荷は増やせない

・仕事や家族との関係も考えると環境や生活を変えることはできない


 の3つです。この状況でさらなるレベルアップをするには


・睡眠や栄養などについて学び、学んだことで生活の中で実践し、リカバリーの質を向上させることで、練習の吸収率を増やす

・練習の目的か練習の組み合わせを変えてみる

・心理的な盲点を外して新しいアプローチをしてみる


の3つが必要となります。


 年齢を気にされる方もいらっしゃいますが、年齢は実はほとんどのケースでは問題になりません。持久力はつきにくいけれど、継続して練習していくと大幅に増え、さらに


 この3つに関しては私の方から4つの提案をさせて下さい。


 1つ目は、リカバリー戦略、最適な練習の組み合わせ方や練習の目的、やり方、心理的盲点の外し方、さらに効率よく前に進む綺麗な走り方の身につけ方、大田原マラソンを2時間36分の好タイムで優勝した女子市民ランナーの成功事例の紹介、などについて41回合わせて、30時間のオンライン講座で学べるウェルビーイングオンラインスクールの紹介です。こちらは現在先着100名様限定でたった2万円の投資で受講していただけます。そのあとは99800円へと価格改定をします。


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 ここまでの説明ではまだよく分からないという方がほとんどだと思います。商品ページで詳細をお話していますので、下記のURLより詳細をご確認ください。


 2つ目の提案ですが、この記事の中で紹介したような練習の負荷と練習効果の関係や、練習の負荷とリスクの関係といったトレーニングには原理原則が存在します。これら練習の原理原則を全て解説し、さらにそこから帰結する最適な練習計画の立て方を『純粋トレーニング批判』という電子書籍の中で徹底解説しています。こちらはたった2980円で下記のURLよりお買い求めいただけます。


アマゾンのKindleからも出版されています。Kindleの方がお好みの方は下記のURLよりご覧ください。



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それでは引き続きお互いオタクの世界を楽しんでまいりましょう!!

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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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