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執筆者の写真池上秀志

ウェルビーイング:手間をかけずに健康的に食べる方法

更新日:2021年2月5日


 健康的な食生活と聞くと手間がかかる、忙しくてそんなことをする時間がないと思っている人は多いのではないですか?私の姉が大学を卒業して塾の講師として働き始めたころ、コンビニで買ったもので食事を済ましていることが多いと聞いてそれはやめた方が良いと言ったところ「あんたみたいに料理してる時間がない」と返されたことがあります。

 その時私は「健康的な食生活を送るのに時間は必要ない」と返しました。これは別に言い訳するなとかそういうことが言いたかったわけではなく、本当に健康的な食生活を送るのに時間は必要ないのです。寧ろ、時間をかければ健康的でなくなる可能性が高くなります。

早速、健康的な食生活を送るポイントを簡単にまとめてみたいと思います。

  • 彩り豊かな野菜を中心に摂取すること。

  • 果物を食べること

  • 種やナッツ類を摂取すること。

  • 精製されていない炭水化物を摂取すること。

  • 出来るだけ加熱しないこと、加熱する際にはエキストラバージンオリーブオイル、ギー、ココナッツオイルのいずれかを使用すること。

  • 一日に何度も少量の食べ物を摂取し続けること。

  • 水や緑茶を摂取すること

 特に難しいことは何もありません。そして、私が健康的な食生活を送るのに時間が必要ないと考える根拠はズバリ5番目の出来るだけ加熱しないことと、6番目の少量を一日中食べ続けることにあります。加熱しないことのポイントは過熱すると酵素が死んでしまうからです。食べたものが体内で様々な役割を果たすのは全て化学変化によって引き起こされます。生体内における化学反応のことを代謝と呼びますが、この代謝に必要なのが酵素です。酵素はかなり多くの種類があり、一つの酵素は一種類の化学反応しか引き起こせません。私はサプリメントは必要最小限しか摂取しません。逆に摂取するサプリメントの全てにそれなりの理由があると思っていただいてよいのですが、それはともかく自然界に存在する食物にはサプリメントにはないメリットがあります。

例えば、ニンジンには大抵ニンジンの栄養素を代謝する際に必要な酵素がすべて含まれています。リンゴにもリンゴの栄養素を代謝するのに必要な酵素が含まれています。自然界に存在する食べ物はだいたいその栄養素を代謝するのに必要な酵素が含まれているのです。ただ酵素が働くには二つの条件あります。一つ目は適切な温度、二つ目は適切なPH値です。この温度に関してですが、比較的低温のグリルでも160度です。皆さんは160度の中で生育可能な植物をご存知ですか?自然界に160度の温度など山火事でもなければ存在しません。そして、山火事の中でも生き延びることが出来る植物はほぼありません。要するに、加熱すると酵素が死んでしまうのです。

酵素が死んだ食べ物を摂取しても吸収されないまま、腸から血液中に流れ出しCIC(Circulating Immune Complex)=循環免疫複合体という物質が形成されます。この循環免疫複合体は体にとっては異物なので免疫細胞が働き食細胞であるマクロファージによって食されますが、この時免疫反応の一環として炎症が生じます。この低度な炎症が進行性の病気の原因となったり、集中力を低下させたり、痛みを悪化させたりの原因となります。

野菜が育たない地域に住むイヌイットは生の肉しか食べません。これによって、酵素だけではなく動物の肉に含まれるビタミンやミネラルが破壊されないので、野菜を食べなくても病気にならないのです。南極や北極探検に行った初期の西欧人はこの知識がなかったため、肉を焼いて食べていたためビタミン不足で壊血病に次々とかかりました。勿論、サプリメントもなかった時代の話です。

ポイントの二つ目は一物全体食です。これは一つの食べ物の全体を食べるという考え方です。これが精製されていない炭水化物というところにつながってくるわけですが、自然界に存在する食べ物というのは酵素やビタミン、ミネラルを含めて全体で一つとして機能します。例えば、炭水化物の代謝にはビタミンB群が必要となりますが、米でビタミンB群が豊富に含まれているのは皮の部分です。ですから、この皮を取った白米はビタミンB 群があまり含まれていません。従って、白米を食べると代謝のために体内に存在するビタミンB群が失われてしまうのです。大げさだと思うかもしれませんが、そうでもありません。日露戦争では中国大陸で過酷な戦いに明け暮れる兵士たちのために麦飯や玄米ではなく、白米が供給されました。日々激しい戦闘にさらされる兵士たちを少しでも労おうとある軍医が麦飯の供給を却下したのですが、その所為でビタミンB不足による脚気が蔓延しました。この軍医こそ『舞姫』、『阿部一族』、『高瀬舟』などの名著を生み出しゲーテの作品『ファウスト』の日本語訳を初めに手掛けた森鴎外です。

森鴎外の責任がどの程度あったのかについては諸説ありますが、それはともかく精製されていない炭水化物の摂取の重要性を裏付ける事件です。事件と言うと大げさと思われるかもしれませんが決してそんなことはありません。戦死者55000人に対して、戦病死者27000人でその大半が脚気によるものです。因みに、ロシアの戦死者数は日本の55000人に対して、25000人です。戦病死者数も日本の27000人に対して11000人ですから、ロシアの戦死者数を上回る日本兵が脚気で死んだことになります。

私のコーチが現役時代の1970年代(コーチホーゲンは当時中長距離ランナーとして東ドイツのホープでした)練習直後にグルコースを含んだ飲み物、15グラムから20グラムの蛋白質飲料、ビタミンとミネラルのサプリメントを摂取するように当時のコーチから指示されていたそうです。それから40年たった現在でもこの栄養戦略は変わらず私のところまで受け継がれていますが、少し変更点があります。蛋白質飲料、グルコース飲料、ビタミン、ミネラルのサプリメントの代わりにアミノサウルスと果物になりました。蛋白質よりもアミノ酸の方が吸収が速いこと、そして果物にはサプリメントには含まれていない酵素が含まれていることがその理由です。少し家から離れたところでトレーニングする時はバナナとアミノサウルスを常に携帯していますし、家からウォーミングアップをしてクールダウンでそのまま家の前がゴールという時はアミノサウルスに加えて、ミックスベリー、バナナ、パイナップル、ターメリック、黒コショウ、ショウガパウダーを混ぜ合わせたスムージーを摂取します。これで必要なビタミン、ミネラル、水分、酵素、糖質、抗炎症物質、抗酸化物質が効率よく摂取できます。感覚的には化学合成で作ったサプリメントやプロテインドリンク、グルコースドリンクを摂取していた1970年代から、時代が逆行していると感じるかもしれません。しかしこれが、より適した栄養戦略なのです。

さて、その他の項目については何度もブログ内で述べていることなので改めて書くまでもないと思いますが、簡単に触れておきます。彩り豊かな野菜というポイントは野菜の色素は優れた抗酸化作用を持つことです。そしてそれぞれの色素にはそれぞれの役割がありますので、彩り豊かな方が栄養的にも優れています。果物の多くも優れた抗酸化作用と抗炎症作用があります。但し、フルクトース(果糖)は消化されにくいので野菜ほどたくさん食べるべきではありませんし、練習直前の食べ物としてはバナナ以外はあまり適しません。

ナッツやフラックスシード、チアシードなどの種は抗炎症作用のあるオメガ3脂肪酸を多く含みます。また血糖値を安定させ、空腹を感じにくくさせたり、集中力を維持させる効果があります。

6点目の一日に何度も小分けに食べることで、血糖値を安定させイライラや集中力の切れを防ぎます。また一回に大量に食べないので消化器系への負担も減りますし、脂肪の蓄積も減ります。一度に多量に食べて吸収されなかった分はすべて脂肪として蓄えられるのですが、小分けに食べることで吸収されやすくなります。

そして何よりも大切なことは、空腹のあまりコンビニに駆け込むことを防ぐことです。コンビニに入ったら無傷で出ることはまず無理です。どれだけ、慎重に選んだとしても化学調味料、香料、保存料、着色料、白砂糖、ショートニング、マーガリンの入っていないものを選ぶことなどほぼ不可能です。私もコンビニを全く使わないわけではありませんが、どうしてもという場合は、ミックスナッツ、バナナ、ナッツかベリーの入ったフードバーを選ぶようにしています。

一番のお勧めは常にカバンの中に食べ物を入れておくことです。玄米みそおにぎり、バナナ、リンゴ、ミックスナッツ、カットしたニンジンなど何でも良いのです。

7点目の飲料に関してですが、水を摂取することの重要性は強調し過ぎることはありません。が実はポイントは水を摂取することよりもトイレに行かなくても済むようにすることです。これも一度に多量に飲むとトイレに行きたくなるので、こまめに摂取し続けること、カフェインやアルコール飲料など利尿作用のあるものは控えることがポイントです。グリセロールと一緒に水を摂取すると普段よりも体内に水を蓄えられるという研究結果がありますが、私は試したところあまり効果が感じられませんでした。しかし、大切なレースの直前以外に一度試してみる価値はあります。

健康的な食生活を送るのに、やることと言えばスーパーか八百屋さんに行って新鮮な野菜と果物を仕入れてくること、エキストラバージンオリーブオイルを食品棚に常にストックしておくことくらいです。後は切って皿の上に並べればそれで終わりです。主菜はどうするのかということですが、私の場合はベジタリアンなので納豆、豆腐、簡単な卵料理が中心です。蛋白質は皆さんが思っている以上に穀物に含まれています。また乳製品も一般に言われているほど健康的ではありません。ヨーグルトに関しては多少腸内細菌を整える役割がありますが、牛乳は体からカルシウムを排出させ骨を弱くします。

最後に一つ、皆さんはコンビニやスーパーで売られている加工食品や調理済みの食品を2週間完全に断ち切ったことがありますか?まだそのような経験がない方は二週間加工食品や調理済みの食品を完全に辞めてみてください。そして、二週間たってもう一度コンビニ弁当を食べてみてください。今まで自分が食べていたものがどれだけ自分の集中力を低下させ、疲労感を感じさせていたかがお分かりいただけると思います。

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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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