ウォールストリートの狼の慢性腰痛、その後


前回の記事『慢性的な痛みの消し方』の最後に世界でも有数の金持ちであるジョルダン・ベルフォート(ウォールストリートの狼)ですら、慢性的な痛みに苦しみ続けていたという話を書きました。また、慢性的な痛みの治療には軟部組織へのアプローチと痛みそのものの治療(対処療法)の両方が必要であるということを述べました。

実はウォールストリートの狼の慢性腰痛は後に完治しています。腰痛が治る前に彼が服用していた薬の量は半端ではありません。以下は彼が一日に服用していた薬の量です。

痛み止めとしてモルヒネ90㎎ モルヒネとの相乗効果のためにオキシコドン40㎎ 筋弛緩剤としてソマ12錠 抗不安剤としてザナックス8㎎ 抗炎症剤としてクロノピン20㎎ 不眠症の為にアンビイン30㎎ クアルード20錠 クアルードが好きだから コカイン1-2㎎ 万が一の鬱のためにプロザック20㎎ パニック障害のためにパキシル10㎎ 吐き気のためにツォフラン8㎎ 偏頭痛の為にフィオリナル200㎎ 神経弛緩の為にヴァリウム80㎎ 便秘の為にゼノコット大さじ二杯 口内乾燥の為にザナゲン20㎎ (『Der Wolf der Wall Street』より)

彼の慢性腰痛は一度の手術とこれだけの薬を服用しても一向に収まらず、自殺を考えるほどの絶え間ない痛みに悩まされていました。また薬の内容を見ると、痛みのための薬以外にもいろいろと服用していることが分かります。服用する薬が強ければ強いほど副作用も強く、体や精神に様々な不調をきたすようになります。

耐え難い痛みの末、彼は二度目の「特別手術」を受けることを決意します。ところが、二度目の手術の後も彼は痛みに苦しみ続け、ギプスが取れても痛みは一向に引きませんでした。彼は失意に打ちのめされ一週間は部屋にこもりっぱなしになりました。そこに彼の担当医から電話がかかってき、ついに彼の慢性腰痛は治ります。以下がその会話です(『Der Wolf der Wall Street』より引用。訳筆者)。

「痛みが引かないのには理由がある。だから今日電話したんだ。試してみたい新しい薬がある。普通の痛み止めとは違って、取り立てて言うほどの副作用はない。君のような神経損傷を患っている多くの患者に大きな成果を挙げている薬だ」

医者はそこで一呼吸置き、私はかたずをのんで次の言葉を待った。医者は深く息を吐き出した。

「ジョルダン、聞いてくれ。君の腰は構造的にはもう何の問題もない。問題は神経損傷の為に誤ったシグナルを送っていることだ。厳密に言うと、何の理由もないシグナルだ。健常者の体では痛みは体に異常が生じているという警告信号だ。ところが、時にこのシステムに異常が起こる。特に重いトラウマの後で起こりやすいのだが、その時神経は故障が完治した後でも痛みのシグナルを出すようになる。君の場合はこのケースに当てはまると思うんだ」

「で?その薬はなんなんだ?」私は懐疑的に尋ねた。

「慢性的なてんかんに使う薬だが、慢性的な痛みにも効く。ジョルダン、正直に言おう。これはダメ元でしかない。FDA(筆者注 FDA=米国食品医薬局)は痛みへの処方を許可していない。従って、これが最初の痛みに対する処方になる。君は痛みの治療にこの薬を使う最初のニューヨーカーになるだろう。もう既に君の行きつけの薬局に電話をしておいた。一時間以内に受け取れるはずだ」

「なんていう薬だ?」

「ラミクタール」

「既に言ったように副作用はないから飲んだことを気付きもしないだろう。今晩寝る前に二錠飲んでほしい。それで様子を見よう。」

この薬を服用して、ウォールストリートの狼の慢性腰痛は治ります。彼の場合は手術という選択肢を使っていますが、先ずは構造的な問題を消しているというのが一つ目のポイントです。これはしゃもじを使って組織の癒着を取り除いたり、トリガーポイントをマッサージすることで取り除けます。そして、痛みそのものの治療もしています。痛み止めの服用は「痛みを誤魔化してるだけで、何の解決にもならない」と否定する人が多いのですが、痛みそのものの治療も施していかないと慢性的な痛みはなかなか治りません。痛み止めの服用が嫌であれば、プロロジェルやテーピングで固めてしまうというのも一つの手段です。

私の場合は、慢性的な痛みにはアセトアミノフェンを服用します。慢性的な痛みの治療には急性的な炎症が必要なのですが、イブプロフェンやロキソプロフェンなどは急性的な炎症を抑えてしまいます。アセトアミノフェンは抗炎症作用はそれほどなく、大脳の痛覚閾値を上昇させることで痛みを抑えます。

イメージで言えば、最後に一振りかける調味料のようなものです。軟部組織にアプローチしていって筋肉が緩みしこりも小さくなっている、そろそろ痛みが取れても良いはずなのに痛みが取れてこない、このタイミングで痛み止めを服用すると、神経過敏が収まり、痛みを感じないと筋肉も緩みやすくなるので、筋肉が更にほぐれ、また痛みを感じなければ炎症も収まります。こうして、痛み止めが最後の調味料的な役割を果たすこともあります。

今回は痛みそのものへの治療の重要性を説いた記事でした。

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