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長距離走・マラソンが劇的に速くなるトレーニング法

~京都市で開催のセミナーが4日後に迫りました~

~長距離走・マラソンが速くなるトレーニング法~

~集中講義の受講生様は半額で受講して頂けます~

「みんなもそれでやってるんやから、お前もそれでやれよ!」

 約80名の陸上競技部員を束ねる主将の怒号がこだまする。

「いえ、ですから他の種目のことは分かりませんが、長距離の場合は無理です」

 丸刈りに脱帽し、直立不動のまま、まなこだけをじっと見据えてたじろぐこともなく、怒鳴ることもなく、軍人のようにハキハキした口調で言い返すは一年生。

「でも、皆それでやってるやん。なんで長距離だけ同じようにやらんの?」

「理屈ではなくて、実際に5月の関西インカレと7月の全国教育系大学対抗戦、8月の近畿国立大学対抗戦、冬の駅伝の全てにピークを合わせるのは無理です」

「そんなん、皆同じ状況でやってるやん。なんで長距離だけわがまま言うの?」

「いえ、我がままではありません。自分はただ無理なことを無理だと申し上げているだけです。何故ならば・・・」

 何故ならば、あれから11年経った五輪刈りに直立不動の私が説明致しましょう。

 先述の通り、私は他の種目のことはあまり分からないので、他の種目との比較で説明する分にはもしかすると、正確ではない箇所があるかもしれません。

 しかしながら、長距離走、マラソントレーニングについては確かな内容なのでご安心ください。

 先ず、長距離走、マラソントレーニングの特異性はどこにあるかというと、反動の大きさです。私は基本的にはスポーツの練習というのは、正しい動きを反復することにあると考えています。

 野球選手もサッカー選手もバスケットボールの選手も正しい動きを反復することが基本で、その正しい動きを反復する為に基礎練習と呼ばれる素振りや転がしたボールを手で捕るなどがあります。

 それでもやはり、基本的には素振りをしたって、実際の試合で行う動作をボール無しで繰り返すというのが基本です。

 これを忠実にやろうとすると、どうなるかというと試合で行うことを反復するのが長距離走、マラソンの基本ということになります。

 つまり、毎日タイムトライアルをするのが正しいやり方ということになりますが、実際にはそうはなりません。

 ここには二つの問題があります。

 一つ目は、毎日タイムトライアルをしても負荷が大きすぎて、体が適応しません。昔の飛脚は一日100キロ走ったとかなんとか言いますが、そこにはペースが言及されていませんよね?

 毎日毎日レースの距離を全力で走っていたら、体が不適応を起こし、遅かれ早かれ走力が低下するか、故障するか、オーバートレーニングに陥り、ホルモン系や免疫系、消化器系がおかしくなります。

 あるいはそうなる前にそもそも走ることが嫌いになってやめてしまうでしょう。

 これは距離が長ければ長いほどそうなります。5000mのレースに出るのと、マラソンに出るのとを比べると終わった後のダメージはマラソンのレース後の方がダメージが大きいです。

 そして、このことはレースでの記録の差にも出てきます。先日も京都府インターハイで史上最強に近かった洛南高校の5000m組が1,2,3を逃すどころか、二人も近畿インターハイへの出場権を逃したということを書きましたが、そのくらい長距離走というのはコンディションによる差が大きく出る種目です。

 一方で、改めて私振り返ってみたのですが、この10年くらい4x400mリレーで洛南高校が負けているのは見たことがありません。そのくらいコンディション不良による差が短距離と長距離であるということです。

 マラソンで言えば、5月7日に開催されたプラハマラソンでは、富士通の2時間8分台ランナー中村匠吾さんが2時間26分かかっていました。これは女子にも劣るタイムですが、どんなに調子が悪くても女子に負けた男子のスプリンターというのは聞いたことがありません。

 ちなみに、ロンドンオリンピック男子マラソン代表の藤原新さんの対野口みずきさんの戦績は1勝1敗だそうです。やっぱり、女子に負けてます。

 では、そのコンディション不良はどこから来るのかということですが、やはり練習の反動が大きいのです。レースで結果を出すためには最終的にはある程度はレース形式の、レースに準ずるトレーニングを行う必要があります。

 しかし、その加減を間違えると反動が大きくなり、体が刺激に対して適応しません。

 ご飯で言うとせっかく食べているのに全て下痢している状態で、頑張っているのに少しも身にならないんです。

 レース形式の練習は、タイムトライアルやレースのように、本当にレースの距離を全力で走る訳ではありませんが、それでもそんなもんです。

 本来はそれよりも更にレベルを落として地道な練習を長期にわたって積み重ねていく必要があります。

 このレース形式の練習のことを私はレースで結果を出すための練習、レース形式の練習よりもレベルを落とした地道な練習のことを鍛える練習と呼んでいます。

 何故このレベルを落とした練習のことを鍛える練習と呼んでいるかと言うとこれこそが、自分を成長させてくれる練習だからです。

 長距離走、マラソンというのは速く長く走る競技です。42.195キロという距離は長いかもしれません。長いかもしれませんが競っているのはそれをゆっくり走ることではなくて、速く走ることです。

 もちろん、その人の能力に応じてどのくらい速く走れるかは異なります。それは異なりますが、今よりも速く走ろうとしているということに関しては、同じです。

 4時間10分を3時間59分にするのだって、今の自分より速く走ろうとすることであることに変わりはありません。

 速くと長くという二つの要素がここにある訳なのですが、そうすると、どちらか一方に焦点を当てれば比較的簡単に上のレベルの刺激を体にかけることができます。

 例えば、5000m20分ちょうどを基準に考えると、ペースを落として1キロ4分半とか4分40秒とかまで落とせば、10キロ走ることが可能になります。つまり、持久面で新しい刺激がかかります。

 一方で、速さの方に焦点を当てると、400m15本を間に1分間の休息をおけば、5000m19分30秒ペースで走ることはそれほど難しくはないでしょう。これが基本的な考え方です。

 では、マラソントレーニングにおいては、45キロ走や50キロ走と1000m40本を上手く組み合わせていくのかというとそうではありません。

 何故ならば、しっかりとレベルを落とさないと刺激が強すぎて長期にわたって体が適応し続けないからです。

 一方で、反動が残らないようにして、あまりにも遅いペースで45キロ、50キロと走っても刺激が弱すぎて充分な刺激にはならないという結果になります。

 これが理由で、マラソンの方がより地道に様々な基礎練習を積み重ねていくことが重要になります。

 ですから、より具体的にどんな刺激をどのように組み合わせれば良いのかということを深く考えていく必要はあるのですが、基本的な考え方はお分かり頂けたと思います。

 そして、大切なのはこの鍛える練習とレースで結果を出すための割合ですが、これは氷山の一角という言葉が相応しいです。レースで結果を出すためのトレーニングは氷山の一角であるべきで、鍛える練習は目に見えていない全ての部分であるべきです。

 そういう意味では、インスタグラムなどで10000m34分台を出すための練習三選とかいうタイトルで出ている練習はだいたい氷山の一角に過ぎません。そこだけを見てもあまり意味がないんですね。

 実は競技者もそうなんです。

 1000mを1分休息で2分55秒で出来たら14分35秒で走れるとか、その理屈自体は単純なんですけど、その練習をこなせるようになるためには目に見えない部分の9割以上の練習が必要になります。

 そこを解説せずに、その氷山の一角だけ説明しても本人たちは出来ない、出来ないから自分は素質がないと思い込む、素質がないと思い込んでるから結果を出すための情報がスコトーマ(心理的盲点)になる、スコトーマが出来るから努力しても結果が出ずに、余計に自分は才能がないと思い込み、余計にスコトーマが出来るという悪循環になっていきます。

 これがありとあらゆる非競合校といわゆる普通の市民ランナーさんの間で起こっています。

 では、この氷山の一角を為し能うにはどうすれば良いか?

 もうお分かりですよね?

 鍛える練習の方に重点を置くのです。そして、鍛える練習は反動の無いように少しずつ取り組んでいくので、時間をかけたほうが上手くいきます。

 ここに時間をかけないと、絶対にうまくいきません。

 試合だけ頑張ったら結果が出るとか、試合が近づいてチョコチョコッとレース形式の練習だけ頑張れば結果が出るとかそんな甘い話がある訳がありません。

 この鍛える練習はよく土台作りと呼ばれますが、建物を作る時の土台と全く同じで、頂点を高くしようと思えば思うほど、土台作りに時間をかける必要があります。

 ただ、一つだけ違うのは長距離走、マラソンの場合は小まめにサイクルを回すことが可能であるということです。

 例えばですが、クフ王の建てた大ピラミッドは建造に約27年間を要したと言われています。そ

 うすると、作業に取り掛かり始めた初めの1年間は土台しか出来ていない、もしくは土台すら出来ておらず材料を集めたり、材料を加工したり、あるいは人集めの段階かもしれません。

 これでは、なかなか現状を正確に把握することは出来ません。いわゆる試行錯誤というのは許されません。

 ですが、マラソンの場合は今日から走り始めて5年がかりでサブ3を目指すとしても、とりあえず、レース形式の練習をして5キロのレースに出たり、10キロのレースに出たり、ハーフマラソンのレースに出たり、マラソンを走ってみたりしておよその現状を把握しながらPDCAサイクルを細かく回していくことは可能です。

 しかし、それでも氷山の一角の原則を崩すことは出来ません。

 2年なら2年、3年なら3年、5年なら5年でしっかりと土台を作っていく必要があります。

 5月の関西インカレに仮にピークを合わせるなら4月くらいからレース形式の練習を入れいていって、1月2月はしっかりと土台を作りをして、3月は移行期か土台作りの総仕上げ的な位置づけになります。

 そして、5月の関西インカレが終わってまだ、6月いっぱいくらいまではぎりぎりピークの状態を維持することが出来ると思います。ですが、それをはるかに超えることは難しいです。

 何故なら、反動がくるからです。これは理屈ではなくてそういうもんなんです。

 更に言えば、気温も上がるので7月2週目の京都選手権くらいが最後でそれ以降記録を狙うことは不可能です。

 そして、次に12月の駅伝に向けて状態を上げていこうと思ったら、7月、8月はしっかりと土台作りに励むべき時期なのです。土台というのは貯金みたいなところがあって、レースで結果を出すための練習を続けているとその貯金が減っていってしまいます。

 だから、もう一度土台を作り直さないといけないのです。

 9月もまだ暑さが残り記録が出る時期ではないので、9月くらいまでしっかりと土台を作らないと12月にしっかりと結果を残すことは出来ません。

 これは理屈ではなく、だいたいそうなるんです。

 まれに、レース形式の練習を中心に、うなぎ上りに好結果を出し続ける選手もいます。

 ですが、だいたい二年程度を目途に終わります。

 そして、終わった時に、指導者も選手も今までレース形式の練習やレースを中心に結果を出してきているので、それ以外のやり方が分からなくなっています。

 まさに、氷山の一角でしかない練習で「だいたいこのくらい走れてたら、レースでこのくらい走れる」という感覚が体にも記憶にも残り、そもそもだいたいこのくらい走れていたらの状態にもっていく方法が分からなくなっているのです。

 京都は女子の中高生が非常に強いこともあって、この現象を腐るほど見てきました。世間では練習のやり過ぎだと言われることも多いのですが、練習量自体はそんなに、というか全然多くないです。寧ろ、私から見れば少ないくらいです。

 ただ、氷山の一角と土台のバランスを欠いていると早熟で、遅かれ早かれその反動が来ることになります。よほど強い子じゃない限りは、だいたい2年ですね。良くて3年。

 で、強い子は何故耐えられるかというと、他の選手にとってのレース形式の練習がレース形式の練習になっておらず、余裕をもってこなせているので反動がこないからです。

 長距離走、マラソンの特異性としてホルモン系、免疫系、消化器系へのダメージが大きいのも一つの特徴だと思います。瞬発系競技は主に骨格筋系へのダメージなので、2,3日休ませれば元に戻ることが大半で、肉離れでもない限りは長引いても1週間です。

 ただ、長距離選手の場合は自覚症状があまりないままに気づいたら慢性的になり、回復に2か月、3か月とかかることも珍しくありません。

 要は神経系統がおかしくなってしまうので、日常生活でもだるさが取れない、寝つきが悪い、食欲がない、性欲がないという状態に陥ってしまいます。

 こういった状態に陥らずに、長期にわたって、余裕を残しながら、走ることを楽しみながら長距離走、マラソンとともに人生の質を向上させ、ウェルビーイングを実現するために私が必要だと思うのは以下の3つです。

1. ピーキングファネルとピーキングピラミッドを理解する

 氷山の一角と目には見えていないが、氷山全体を形成している練習の適切な比率と具体例を解説させて頂きます。