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執筆者の写真池上秀志

慢性的な足底筋膜炎の治し方

更新日:2020年12月8日


慢性的な足底筋膜炎の治療法

 今回は慢性的な足底筋膜炎の治療法について、解説したいと思います。私は2015年の8月から現在まで、ずっと左足に慢性的な足底筋膜炎を抱えています。痛めた当初は激しい炎症反応があり、普通に歩くことも出来ませんでした。しかし、その時には治癒過程も進み、日に日に改善に向かっていました。

 ところが、ある程度まで治癒するとその後はよくならず、走れないほどではないが日常生活でも常に痛むという状況が2年半以上続いていました。特に長時間のバス移動やフライトの後は強く痛みました。走ることにはあまり影響がなく、普通にレースにも出ていましたし、脚の痛みで結果が残せないということもありませんでした(デュッセルドルフマラソンで途中棄権したのは反対側の足底筋膜炎です)。

 色々調べてもなかなか改善の兆候が見られませんでしたが、ここにきて明らかな改善がみられてき、たくさんの治療法を試した中でぜひ皆さんに伝えたいと思えるところまで来ました。

 まず第一にですが、慢性的な足底筋膜炎に奇跡の治療方法はありません。これをやればだれでもすぐに治るという治療方法は存在しません。

 第二に全ての人の足底筋膜炎は微妙に異なります。ですので、どの治療方法でどの箇所にどれだけ時間を割くべきかは、人によって異なります。私の場合は、左右の足底筋膜炎で若干異なるアプローチが必要でした。

 慢性的な足底筋膜炎の原因ですが、一言で書けば筋肉のしこりとそれによる局所貧血です。局所貧血が起きているということは、局所的な酸欠と栄養不足が起きているということです。また必要な体液がそこに流れ込まないため、老廃物もそこにたまったままになります。これは冬場に手足が冷たくなって血行が悪くなっているとかそういうレベルではありません。

 恐らく数ミリか1ミリ以下のサイズの話です。ですので、血行を良くするために温泉に入ったり、クロストレーニングをすれば治るというものではありません。

 また骨格筋の細胞は3か月ごとに生まれ変わりますが、局所貧血が起きている箇所ではミトコンドリアの機能が低下しているためDNAにプログラミングされた正常な細胞死(アポトーシス)が引き起こされなくなっており、ネクローシスという炎症を伴う細胞死が引き起こされます。この時の炎症が更に他の細胞のDNAを損傷させ、ネクローシスを引き起こし、この連鎖が延々と続いていきます。

 またこの箇所は血液循環が滞っているため免疫細胞の死骸が流れていきません。一方で炎症に対する体の反応で細胞内の体液の流入が起こります。これによって、細胞が膨張し神経に触れます。そして痛みを感じるようになります。長期間痛みが続くと神経が敏感になり、痛みを感じやすくなります。そして、痛みを感じると脳からのフィードバックにより炎症反応が起きるという悪循環に陥ります。

 ここまでが基本的な足底筋膜炎のメカニズムですが、一言で言えば問題は足底とふくらはぎに存在する筋肉のしこりです。このしこりを取り除くことが足底筋膜炎の治療法の第一になります。原理はとても簡単なのですが、慢性的な足底筋膜炎に関してはほとんどの治療家や整形外科医を改善させることは出来ません。理由は大きく分けて二つあります。一つ目は対処する場所が間違っているからです。二つ目は筋肉のしこりを取り除く秘訣は一回に長く治療するよりも短時間を何度も繰り返すことです。現実的に毎日3回から5回、治療院に通うことが出来る人は出来ません。また、通常表層の筋肉のしこりを取り除くと奥から、別の筋肉のしこりが出てきます。慢性的な足底筋膜炎の治療には日々自分の体と対話をしながら、こまめに継続的な治療が必要となります。これがほとんどの治療家が慢性的な足底筋膜炎を改善させることが出来ない理由です。

 但し、これは良いニュースでもあります。何故なら、慢性的な足底筋膜炎を治すのにお金はそれほどかからないからということだからです。少なくとも治療家に支払う費用はそれほど必要ありません。

 但し、治療家にお願いするのが良いケースもあります。それは強刺激の治療をお願いする時です。治癒過程に最も悪いのは慢性的な炎症です。低度で慢性的な炎症とは発赤、熱感、腫れ、鋭い痛みなどの典型的な炎症のサインを伴わない炎症です。これが治癒過程を妨げる原因となっています。それに対して、急性期の炎症反応は治癒過程に必要なものです。通常、この急性期の反応はあまりにも強すぎして治癒過程を遅らせるので、RICE処置などにより炎症反応を抑えますが、強い指圧や強刺激の鍼治療によって強度をコントロールしながら治癒過程に必要な炎症反応を起こすことが可能になります。詳しくは前回記事の『プロロセラピー』を参照してください。

 筋肉のしこりを取り除くにはフートローラーや指圧、フォームローラーの使用が有効です。指圧棒で圧すのも有効でしょう。この治療に高価な治療器具は一切必要ありません。指圧棒は数百円で買えるもので十分ですし、フォームローラーも2000円から5000円までのもので大丈夫です。フォームローラー無しでも充分問題ありません。

 私の場合は、ゴルフボールをテープで二つくっつけたものと無印良品店の500円くらいの指圧棒、4000円くらいで購入したフォームローラーを使っています。

 ゴルフボールやフートローラーに関して言えば、ある程度改善が見られたところで足底の最も痛みがあるところにゴルフボールやフートローラーを置いて全体重をかけて乗ってください。数秒したら一度おりてその後また、全体重をかけるということを繰り返してください。これも一度に長くやるよりも5分程度を一日に何度か実施したほうが効果は高いです。急性期に行うと悪化するので体に聴きながら、慎重に行ってください。この治療を実施できるところまで来ていれば、少しずつ快方に向かっていると考えて間違いありません。また、ランナーの方は練習直後(特にハードなプログラムの直後)にはやらないでください。慢性期に入っていても一時的に炎症が強くなっているのでこのタイミングで実施すると悪化する可能性があります。この場合は、ペットボトル(できるだけ円柱のもの)を凍らせて、それを足の下で転がしてください。凍ったペットボトルを足裏で転がすのは走る前にもおすすめです。

しこりの探し方

 筋肉のしこりは筋肉が緩んだ状態で触っていって、何か感じるところです。そこを押せば他の箇所よりも圧痛を感じるはずです。すぐにわかると思いますが、少なくとも週に一回は筋肉のしこりの箇所を改めて確認してください。表層部分のしこりが取れてくると奥から今までは触ることのできなかったしこりに触ることが出来るようになります。これが新しい治療箇所となります。また、全体的に凝り固まっている場合には全体的なかたまりがとれてくると、より局所的に凝り固まっているところに届くようになるということもあります。

 治療箇所に関するガイドラインですが、足底に痛みが出ている人でも原因はシンスプリントに極めて近いというケースがあります。そのことも念頭に入れながら、足と脚の内側に筋肉のしこりを探してみてください。

 また足底筋膜炎と診断される人でも、厳密には長母指屈筋炎の可能性が大いにあります。つま先立ちした時に強く痛むのであれば、長母指屈筋にしこりを抱えていると思ってよいでしょう。この筋肉はくるぶしの内側を通って足底に入り親指に付着しますが、起始部は膝の外側の少し下あたりです。ですので、ひざ下の外側の筋肉にしこりを探してみてください。

スクレイピングテクニック(ひっかき技)

 マッサージと並行して必ず行っていただきたいのが、このスクレイピングテクニックです。スクレイプとはscrapeのことでひっかくという意味です。これに使う道具もお金はかかりません。しゃもじがベストです。百均のもので十分ですが、ひっかき傷を作らないように木製のものを選んでください。先ずオイルを塗り滑りやすくしてから、足の指を少しそらせます(背屈)。その状態で腱が若干浮き上がった状態で、爪先方向から踵方向へとしゃもじを滑らせます。内側と外側もまんべんなく行ってください(特に内側)。

 同様の治療をふくらはぎにも行ってください。踵の方向から膝の方向へと、内側、真ん中、外側へと先ずはまんべんなく行ってください。まんべんなくやっているとしゃもじがどこかを通過する時に、引っかかったり、プチっという音が聞こえたりするはずです。ここがより重点的に治療すべき場所です。ここに血行不良が起きており、栄養が行き渡らず、老廃物も除去されなくなっています。

 スクレイピングテクニックは一日一回に留めておいてください。また皮膚を傷つけないように細心の注意を払ってください。特に足底の皮膚を傷つけると、二重に苦しむことになります。この治療で使うオイルの種類にこだわる必要はありません。食用のオリーブオイルで構いません。私の場合は、サロメチールやタイガーバームなどその時手元にある塗り薬を適当に使っています。

治療期間

 全ての足底筋膜炎は少しずつ異なり、どのくらいで完治するというのは一概に言えません。しかしおそらく2週間ほどで何らかの変化は感じられるようになるはずです。慢性的な足底筋膜炎を抱えている人にとってこれが、長い長いトンネルの中の光になるはずです。もしあなたが変化のない慢性的な足底筋膜炎を抱えているのであれば、私の言っていることを理解していただけるでしょう。少しの改善がみられるだけで、大きな自信と希望になるはずです。

 ここで述べた治療法を様々な治療箇所で一か月ほど試してください。そうすれば、どの器具を使った度の治療法をどの箇所に行うのが最も効果的なのかがわかるはずです。その後は私のガイドラインは忘れてください。何度も書きますが、全ての足底筋膜炎は少しずつ異なります。細部までアドバイスすることは不可能です。

 また、一度痛みが消えたように感じられたとしても治療を中断しないでください。一度筋肉のしこりが出来たところには栄養が行き渡りにくくなっており、組織の再生も少し遅くなっています。多くの場合、筋肉のしこりが出来た箇所は走り方や普段の姿勢の問題で、しこりが出来やすくなる場所でもあります。痛みが消えたと感じられても最低1か月は治療を継続してください。

 下にしこりのマッサージ方法とスクレイピングテクニックに関する動画を挙げておきます。より多くの人が理解できるように英語で作成していますが、話している内容はこの記事で述べたことと同じです。時間のある時に字幕を付けておきたいと思います。

足底筋膜炎の根本治療にはこの記事に書いてある治療をコンスタントに続けていかないといけないのですが、最も即効性があるのは下記の動画で解説しているテーピングです。4分半ほどの動画のなかで解説していますので、先ずはこのテーピングから試してください。私もこのテーピングを試す前は足底筋膜炎に効くテーピングはないと思っていましたが、このテーピング方法を試してからは走りに行く際や長距離移動の際には欠かさずにテーピングをしています。是非皆さんも試してみてください。

しばらく、足底筋膜炎の治療に関する記事を続けて書きたいと思います。


追伸

 私が左足4年間、右足2年間の足底筋膜炎を治した方法と慢性的な痛みのメカニズムを解説した90分の講義動画があります。詳細は下記のページよりご覧下さい。


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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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