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セルフエスティームとセルフエフィカシーの違い

July 2, 2018

 過去に『スクールオブロック』という映画を切り口にエフィカシーの重要性について述べました。また『ミリオンダラーベイビー』という映画を切り口に職業の外に夢があっても良いのに人はついつい無意識のうちに現状を維持しようとし、物流倉庫で働いている自分という現状が勝ってしまい、それ以外の何かになることが出来ないということを書きました。

 

 改めて考えてみるとここにセルフエフィカシーとセルフエスティームという二つの似て非なる言葉があります。

 

 

 

セルフエフィカシーとセルフエスティームの違い

 セルフエスティーム(self-esteem)もセルフエフィカシー(self-efficacy)も日本語に訳し分けるのが難しい単語ですが、あえて私が訳し分けるとすればセルフエスティームは自尊感情、セルフエフィカシーは自信や信念という意味になります。

 

 教育の世界ではセルフエスティームという言葉がよくつかわれます。というのも文部科学省が指導要領の中に「児童・生徒のセルフエスティームを高める」ということを明記しているからですが、コーチングの世界ではセルフエフィカシーという言葉を使います。

どう違うのかということですが、私の解釈で言えばセルフエスティームは現状の自分に対する自尊感情であり、セルフエフィカシーは自分の目標を達成することが出来るという自信のことです。大きな違いはセルフエスティームは現状の自分に対する感情であるのに対し、セルフエフィカシーは未来に自分が達成したい目標を達成することが出来るという信念、または自信のことです。

 

どちらも他人と比べる必要はなく、また同時に他人からの評価も関係ない概念なのですが、実際はそういう訳でもありません。というのも、社会からの要請として社会的評価とセルフエスティームやセルフエフィカシーが一致していないといけないという要請があるからです。分相応という言葉はこのことを端的に表しています。

 

何故『スクールオブロック』の主人公デューイ(フリーターがロックフェスでセンセーションを巻き起こす)や『ミリオンダラーベイビー』の主人公マギー・レイノルズ(31歳のウェイトレスが数年後にミリオンダラーのボクサーになる)のように社会的評価の低い人の中から、誰もそれが可能だとは思わなかったようなことを成し遂げる人が出てこないのかというと次のような精神構造があるように思います。

 

社会的評価=セルフエスティームでなければいけないという社会的要請

→セルフエスティームをウェイトレス、フリーター、派遣社員などに合わせる

→低いセルフエスティームが形成される

→低いセルフエスティームに引っ張られて低いエフィカシーが形成される

→人間は自分の現状や自分の信念に合致するものしか認識できないので能力は必然的にエフィカシーに一致する

→気づけば自分の夢とか目標とは無縁の人生を送っている

 

 心理学的には上記のような構造があるように思います。逆に言えば、川内優輝さんの場合は公務員に対する社会的評価が川内さんのセルフエスティームを引き上げ、セルフエフィカシーもそれにつられて引きあがった可能性があります。2015年のインターカレッジ男子10000mで二位に入った京都大学の平井健太郎も同じ構造が働いている可能性があります。

 おそらく本人に聞いてもそんなことはないというでしょう。この構造の全ては無意識のうちに働いているので、たとえそうでも本人にも自覚がないはずです。逆に言えば、無意識のうちに作用するくらい強い信念や思い込みでなければこの現実世界を変えるほどの力にはなりえません。

 

 過去記事から一貫して書いてきたことですが、社会的評価とエフィカシーを一致させる必要はありません。社会的評価とセルフスティームが一致していないと様々なところで社会的不適合が生じるのも事実なのですが、セルフエスティームとセルフエフィカシーは別の概念です。現在ウェイトレスやフリーターでも未来に自分の目標を達成できるかどうかは全然別の話です。ですから、例えセルフエスティームの低い人がいてもセルフエフィカシーは高くて良いのです。

 

 そんなのあり得ないと思う人のために一つの例を出しておきましょう。あなたはビルロジャースというマラソン選手をご存知ですか?1980年代世界のトップマラソンランナーの一人で日本でも何回か走り、私の郷里の京都マラソンにも出場しています。

 ビル・ロジャースが20歳前半の頃はベトナム戦争の時代でした。当時アメリカには兵役に就く代わりに社会的奉仕活動をするという良心的兵役拒否という制度がありました。ビル・ロジャースも良心的兵役拒否を行使したうちの一人です。

ベトナム戦争末期には反戦運動が高まり、ソンミ村の大虐殺や枯葉剤の散布などもありアメリカの道徳的威信が地に落ちたと言われるベトナム戦争ですが、それは歴史的な流れで見た時の話でありその時代を生きた人間からすれば、やはり兵役拒否は非国民です。ビル・ロジャースは社会の底辺で死体処理や看護婦からの雑用などをしていたそうです。

しかも彼は当時勤めていた病院の労働者の地位向上のためのストライキを呼びかけるチラシを配り、「赤」のレッテルを貼られ職を失います。当時日本にたくさんのアメリカ映画やホームドラマが流れ込み「自由で豊かな国アメリカ」のプロパガンダに多くの日本人がさらされていたと思いますが、黒人をベトナム戦争の前線に送り込み、反戦派の「赤」には仕事を与えないという差別を遂行していたのがこの時代のアメリカです。

良心的兵役拒否の身分でストライキの片棒担いだビル・ロジャースに仕事を与えるものは誰もおらず、フードスタンプ(国からの食糧配給)と現在の奥さんで当時交際中だったヘレンさんの援助で食いつないでいたのです。

 

そんなビル・ロジャース選手がマラソンランナーとして頭角を現すのは28歳の時です。セルフエフィカシーと社会的評価を一致させる必要はないということがよくわかる話です。

 

セルフエフィカシーについては『これから結果を出す人のための自信の作り方』と『これから結果を出す人のための確信の作り方』の中で詳細に書いています。前者が概論、後者が詳論になっています。

どちらも人を励ましたり元気づけたりする本ではなく、自信や信念というものを心理学的観点から理論と具体例を混ぜ合わせて学びたい人のための本です。

 

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