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風雲の軌跡―運とツキに関する考察

January 25, 2019

今回は新年に書こうと思っていたにもかかわらず、急遽気功の話を書いたので飛ばしていた運とツキの話を書いてみたいと思います。前々から書評を書いてみたいと思っていたのですが、書く機会がなかったので新年くらい軽い内容にしようと思い書いてみることにしました。

 

今回取り上げようと思った本は三原侑さんの書いた『風雲の軌跡』という本です。三原侑さんはプロ野球選手第一号で巨人軍、西鉄ライオンズ、大洋ホエールズで監督として日本一に輝いた監督です。超二流の選手を一流の力が発揮できる場面で使ったり意表を突いた采配で弱いチームを優勝させ、ついたあだ名は「魔術師」や「三原マジック」です。

 

超二流の選手達を使う中で三原監督が重要視したのが、ツキと運です。超二流の選手もツイている状況で使えば、一流の働きをするし、一流選手もツイていない時は二流の力しか出せないというのが彼の考え方で『勝つための戦いにおけるツキと運の研究』という本も出しているくらいです。

 

ただ本を読み進めていくと彼は運は引き寄せるものという前提で話が進んでいくことが分かります。運とはなにか、大部分自信で占められるのではないかと思います。

 

本の中の例でいくと、最下位が続いていた大洋ホエールズを一年で日本一にしたときには、権藤正利という3年にわたって28連敗というまるでツキに見放された選手を再生させて勝ち頭の一人にしていますが、この選手のケースではもともと力があるのに4、5回を超えるあたりから崩れる傾向があったので状態の良いときに短いイニングから、それも勝敗に関係のない場面で投げさせることで徐々に自信を回復させ最終的に先発で使えるところに持っていきました。

 

もともと力があるのにツイていなかっただけだから、状態の良いときに短いイニングで結果を出させてツキを取り戻す、こう書くとツキと自信とは限りなく近いもののように思えます。

 

これは逆も同じで西鉄ライオンズが日本一になった時のエース稲尾和久投手や大洋ホエールズが日本一になった時のエース秋山登投手にも相性の悪い選手が出てきた時には、場面によってはワンポイントリリーフを送っています。要するに、一流の選手がツキに見放されてはもったいないから状態の悪いときや相性の悪い選手とは勝負を避けるという訳です。

 

これは前述の稲尾投手が一年目にいきなり21勝6敗という成績を残したシーズンでも同じで、初めは勝敗に関係のないところで使い、徐々に大切な場面でリリーフ、先発と使いました。それでも当時パリーグの覇者であった南海ホークスにはぶつけずに下位のチームを中心に投げさせています。

 

イケるという感覚を持たせてツイてきたところで使う、これがツキの引き寄せ方と言われれば、丸いボールを丸いバットで打つ野球でなくてもツキの引き寄せ方を意識するのとしないのでは大きく違うと思います。

 

マラソンでも大迫さんや設楽さん、瀬古さんのような高校、大学、大学卒業後とずっとトップで走り続ける一流選手は一握りであとはその他大勢がしのぎを削ることになります。その他大勢の選手達はツキを掴むか、ツキに見放されるかの差で競技人生を大きく変えることになります。

 

川嶋伸次選手のように引退試合になるはずのレースで結果を出したり、中本健太郎選手のように他の選手のおまけで入部した後日本代表になった選手はツイている選手達です。実力があったというのは大前提ですが、タイミングがずれれば結果を出す前に引退していたり、そもそも実業団に入れなかった選手達ですから、本人の意志を超えたところで決まったとしか言いようがありません。

 

私もツイている方です。大学の陸上競技部を退部して一か月後にアラタプロジェクトの第一回セレクションが開催され、その直後のハーフマラソンにたまたま出ていた川内優輝さんに勝って優勝、ヤフーニュースのトップになったことで、アラタプロジェクトの経理担当の財布のひもが緩んでケニアに合宿に行き、そこでケニアンマジックの異名をとるコーチディーター・ホーゲンの目に留まりました。それから四年経った今、コーチホーゲンを訪ねニュージーランドのロトルアに向かう途中のオークランド空港でこの記事を書いています。

 

アミノサウルスがスポンサーについたのも運でした。本当は別の選手に白羽の矢が立ってその選手のマネージャーに電話したところ、たまたまそのマネージャーの横にいたのが私、しかもその日のハーフマラソンでその白羽の矢が立った選手に1分半の差をつけて優勝していました。

 

ではツキや運を手繰り寄せるにはどうしたらよいのか?三原監督はこう述べます。

「いつも可能性を求めることだ。置かれた状況がどんなものであれ、チャンスを掴んで飛び込む。そこに新しい可能性を見つけたならば、である。そこから自分の運をつかみ取ることも出来るのだ」

『風雲の軌跡』P63―64

因みにこの言葉は野球ではなく、3度の招集、3回目はインパール作戦に従事していたにもかかわらず、戦争を生き延びた時の話です。絶対服従の大日本帝国陸軍においても常に生き延びる可能性を模索し、自分で新しい選択肢を探し、そこに可能性を見つけたら飛び込む、勿論そうして生き延びてもやはり運を無視することは出来ませんが、ただ運を待っていたわけではなく、運をつかみに行ったわけです。

 

激しい銃弾が飛び交い、輸送船の途中でも常に魚雷が飛び交う南方戦線では生死が運によって決まるので、軍隊は運隊とも呼ばれたそうです。

 

では運を手繰り寄せ運命に勝つにはどうすれば良いか?再び『風雲の軌跡』からの引用です。

「人間が風雲に乗るときの強さは怖いぐらいだ。「人盛んなれば」運命にも勝つ。その高揚気分とはどこから来るのだろうか。私の得た教訓とは次のようなことである。

 まず商売人である自覚だ。私はプロフェッショナル、ビジネスマンだ、と思うことである。

 それが強固なものであれば、人にくさされたからと言って、がっくり肩を落とすことはあるまい。逆に褒められたからと言って、良い気になったりしないだろう。そう、雰囲気に左右されない毅然さが身についてくる。そこから信念に支えられた自信を持った突進が可能なのである。プロとはそういうものである」

ツキとは何か。せんじ詰めれば強い自信によるホメオスタシス機能ではないだろうか。

 

大学時代、哲学・倫理学を専攻していた私は一度「偶然」という概念を研究していたことがあります。その中の考察の一つとして真剣な恋愛は全て「運命の出会い」によって生まれるというものがあります。これは「運命の出会い」がロマンチックな恋愛を生むのではなく、真剣に恋をした後で出会いを振り返ってみると、全ての出会いは出会わなかったとしてもおかしくなかったのに、出会った、つまり運命だと人は解釈するわけです。

 

「あの時私がこの会社に入社することを選んでいなかったら」、「あの時私があの大会に出ていなかったら」などいくつものそうではなかったかもしれない可能性をあげつらうことが出来ます。

 

結果的にそれをひっくり返して、無数にある「そうではなかった可能性」の中から「私たちは出会って恋に落ちた」これは運命に違いない、ということになる訳です。

 

運も同じようなところがあると思います。「自分はこうなる、これが出来る、こういう人間だ」という強い自信の下で行動するから、そこにホメオスタシス機能が働いて現実化する方向に働く、そして実際に志を遂げた後で振り返ってみると、「失敗していたかもしれない無数の可能性」の中から、成功した自分に思いを馳せ、それが運に支えられていたように見えるだけではないでしょうか。

 

もう一歩踏み込んでいうならば、運も不運も失敗も成功も所詮はその人の解釈にすぎないのだから、「自分はツイている」と思い込める人は、自分の中の「ツイている」部分を探します。そこからツイている方向の行動が生まれ、結果的に「運」を手繰り寄せるのではないでしょうか。

 

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追伸

私のブログ記事の中で最も中身のないカジュアルな記事に最後までお付き合いいただいてありがとうございました。

 

運というものを考える上で私が真っ先に思い浮かべるのは人との出会いです。その人に出会う前にその人に出会うことを意志することは不可能なので、いつもそこに巡り合わせの不思議さを感じます。

 

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