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総走行距離を増やすメリット

更新日:2023年10月8日

 突然ですが、あなたも「練習は量より質」、「そんなにたくさん走らなくても、練習の強度を上げたり、綺麗な走り方を身につけたら速くなる」という意見を聞いたことがないでしょうか?


 私は何度もあります。ですが、本当にそうでしょうか?


 確かにあるレベルに到達するに、やり方は何通りもあります。ですが、総走行距離を増やすことは本当にコストパフォーマンスが悪いのでしょうか?


 今回はそんなテーマについて考えて頂きたいと思います。


運動生理学上の総走行距離を増やす意義

 先ずは運動生理学的には総走行距離を増やすことによってどういったメリットがあるのか見ていきたいと思います。


 先ず第一に、毛細血管密度の向上が挙げられます。毛細血管密度とは読んで字のごとく髪の毛ほどの細さの血管のことです。実は人間は持っている血管の数や長さが人によって違います。もちろん、主要な血管は全員持っています。どんなあわてんぼうでも「しまった!心臓から脳に血液を送る血管がまだ出来ていないのに生まれてきてしまった!」ということにはなりません。


 ただ、脚先や手先などの末端や骨格筋に張り巡らされている血管の数や密度は人によって異なり、トレーニングによって増やすことが出来るとされています。実際に、私も練習量を増やしていくと、脚の血管の数が目で見て分かるほど増えていくので、目には見えないレベルまで含めるともっと増えているのでしょう。

 

 二番目のメリットは、ミトコンドリアの成長です。これはサイズが大きくなるのか、数が増えるのか、機能が良くなるのか、あるいはその全てなのか、書いてある本によってやや違うのですが、基本的にはこれらの要素です。


 ミトコンドリアというのは各細胞にあるエネルギー器官のことです。よくミトコンドリアというと「あー、理科の実験で顕微鏡で見たやつね!」と言われますが、それはミドリムシです。ミトコンドリアは学校の理科室にある程度の顕微鏡では見えないはずです。電子顕微鏡が必要でしょう。


 人間には60兆とか100兆とか137兆とかこれも諸説ありますが、とにかく100兆個くらいの単位の細胞があります。生まれたての赤ちゃんで約3兆個でそこから細胞分裂を繰り返して増えていくそうです。そして、その細胞一個一個にミトコンドリアという器官があり、このミトコンドリアで酸素を使ってエネルギーを生み出しています。


 生物学的にはこれを呼吸と言います。日常言語では息を吸ったり吐いたりすることを呼吸と言いますが、生物学における呼吸の定義は「酸素を使ってエネルギーを生み出すこと」です。そして、この呼吸を行っているのがミトコンドリアです。


 長距離走、マラソンにおいては、というよりは持久系スポーツ全般において、酸素を使ってエネルギーを生み出すエネルギーシステムを効率化していく必要があります。そして、単純な話で、酸素を使ってエネルギーを生み出すエネルギーシステムを効率化するには、酸素をたくさん取り入れてエネルギーを生み出さないと動き続けられないような運動をすれば良いのです。


 一言で言えば、休みなしで動き続けるということです。ただ、休みなしで動き続けるといっても、渡り鳥のように二日も三日も動き続けるようには人間の体は出来ていません。また、陸上競技では長くても42.195㎞までしかありません。


ウルトラマラソンをやるとなると、更に長時間動き続ける必要が出てきますが、長距離走、マラソンの場合は長くても42.195㎞でなおかつ、マラソンを速く走ろうと思えば、5キロや10キロを速く走らないといけないので、その為の練習としても一回に100キロも200キロも走るような練習は必要ありません。


ただ、総走行距離を増やすことでミトコンドリアは成長します。つまり、休みなしである程度の時間(30分から90分程度が基本)動き続けることを何回も繰り返すことでミトコンドリアが成長し、効率よく酸素をエネルギーに変えることが出来るようになります。


普段、ほとんど走っていない人であれば、インターバルトレーニングのように呼吸が切れるようなトレーニングをしなくても、ただ、外に出て30分程度走ることを週に数回やるだけで最大酸素摂取量は向上します。


 三つ目の生理学的適応は筋、腱、靱帯、骨などが接地の衝撃に耐えられるようになることです。ランニングは内傷の多いスポーツです。それは、接地による衝撃です。ですが、故障のリスクと総走行距離の間には相関関係が見られません。


 仮に質と量の両面から見ても、練習の負荷と故障の発生率にはっきりとした相関関係は見られません。一般的な高校生にエリートランナーがやっている練習をやらせれば二週間と持たずに故障するでしょう。でも、エリートランナーはそれを当たり前のようにこなしていく、それは何故か?


 それは段階を踏んで筋肉、靱帯、腱、骨を強くしてきたからです。そして、筋肉、靱帯、腱、骨を強くするのに手っ取り早い方法は総走行距離を増やすことと坂ダッシュです。


 では、総走行距離を増やすことと坂ダッシュとどちらの方が優先順位が高いかということですが、それは総走行距離を増やすことです。


 何故なら、詳しくは後述しますが、長距離走、マラソンにおける走力アップの鍵は質の高い練習を増やすことにあり、そもそも練習量を増やせない人はその質を上げられる訳がないからです。


 つまり、週に50キロの練習が限界の人にその50キロの質を上げろと言っても無理があります。先ずは週に50キロ走ること自体は問題がない状態になっていなければいけないですし、週に50キロの質の高い練習をこなすのであれば、先ずはやや質が落ちても良いので問題なく週に60-80キロの練習が出来るようになっているのが望ましいです。


実践的観点から見た総走行距離を増やすメリット

 運動生理学的観点からみた総走行距離を増やすメリットと当然部分的に重なってくるのですが、実践的観点から見た総走行距離を増やすメリットは疲れにくい体と故障しにくい体を手に入れることです。


 毛細血管密度が向上すると、それだけ体内の隅々まで栄養がいきわたりますし、老廃物の除去も早まります。そして、ミトコンドリアの機能が向上するとそれだけ多くのエネルギーを生み出すことが出来るようになるので、疲労の回復も早まります。エネルギーは我々が意識していないだけで絶え間なく生み出されています。


 こうやって、私が文章を打っている際もエネルギーを使っていますし、話したり、呼吸をしたり、体温を維持したり、生きていく上では必ずエネルギーを生み出し続けなければいけません。また体が受けたダメージを修復するというのにもエネルギーが必要になります。


 ですから、エネルギーが効率よく生み出されると疲労の回復が速くなるのです。あるいは、疲労耐性が高まるのかもしれません。つまり、同じ20キロを1キロ3分半で走るという練習をしたとしても、高校生の頃の私と今の私では明らかに今の方が疲れにくい、ダメージが残りにくいです。


 それは疲労の回復力が今の方が高いというだけではなく、そもそもその練習による疲労度、ダメージが少ないからという面もあるはずです。


 これも理由は同じで、それだけ今の方が効率よく酸素を使ってエネルギーを生み出せるからであり、隅々まで血液がいきわたるからであり、骨格筋、靱帯、腱が強いからであり、更に付け加えるなら走技術の向上により、1キロ3分半で走った時に必要とされる酸素のエネルギーが少なくなったからです。


 そして、疲れにくい体と故障しにくい体が出来ると質の高い練習の量を増やすことが出来ます。これが走力の向上に繋がります。


トレーニングの最終ゴール

 誰が何と言おうともトレーニングの最終ゴールは質の高い練習の量を増やすことであり、それに対して体が適応すること(消化吸収すること)です。


 ただ、どの程度の質の練習をどの程度まで増やすのかということに関して言えば、これは議論の余地がありますし、またどのようにして質の高い練習の量と質を増やすのかというその方法論を考えるにあたってはリカバリー、心の持ちよう(心理)、適切なトレーニング戦略の三方から考えていく必要があります。


 具体的な目安としては、最終的には自分のレースペースの95%から105%の範囲内のトレーニングの量を増やすことが一つの目安になります。これは目標とするレースペースではなく、現在の自己ベストのレースペースです。


 例えば、私の場合はマラソンのレース―ペースは1キロ3分10秒ペースです。


 3分10秒は190秒で、これに0.05をかけると9.5秒です。ですから、3分10秒から9.5秒引いたペースから9.5秒足したペースがおよその目安になります。つまり、およそ1キロ3分ちょうどから3分20秒の範囲の練習量を増やすことが一つのゴールになります。


 これはあくまでも目安ですし、5000mが13分台とかで走れていれば、マラソンの自己ベストにかかわらず、2時間10分切りを目指してトレーニングするケースもありますし、5000mが13分20秒くらいであれば、初マラソンから日本記録を狙うようなケースもあると思います。


 いずれにしても、だいたい自分がどの程度の記録を目指すかは選手も指導者も分かっているはずですし、その5%前後の範囲内の練習量を増やしていくことが一つのゴールになります。


 そして、その範囲内の練習量を増やそうと思えば、更にもう少し幅を広くとって90%から110%くらいの範囲内の練習量を増やしていくことが必要になります(あるいは望ましい)。


 ちなみに、先ほどマラソンを例にとりましたが、これは1500mでも同じことです。仮に高校生の1500m4分ちょうどの選手を指導するとなった時に、90%だと1キロ2分56秒です。少し幅を持たせて3分ちょうどから2分55秒、110%だと2分24秒ペースになるので、400m57秒くらいのペースになります。


 マラソンで90%のペースだとインターバルではなく持久走として行うことになるはずですが、1500mの場合そもそものペースが速いので90%のペースでもインターバルになります。また、マラソン以外の種目では、90%の方はレースの距離よりも長い距離を走ることが基本になりますが、マラソンだけはそうはなりません。


 また400m57秒が速ければ、200m5本を29秒から28秒で200mジョギング、セット間5分という練習もありえるでしょう。また、90%から110%というのはあくまでも目安であって、200m29秒から28秒が速すぎるのであれば、30秒に落としても構わないと思います。そのあたりは微調整して行うべきところです。


 で、また話を戻しますが、レースペースの90%から110%の練習量を増やすためには、そのまた前提として85%や80%の練習量を増やさないといけないですし、その為には70%や60%の練習量を増やさないといけません。


 速い方はどこまでをターゲットとして考えるかは微妙なところです。1500mのレースペースの120%となると、場合によっては自分の短距離の全力よりも速くなるでしょう。いずれにしても、1500mを極めるなら短距離も速い方が良いのは間違いありません。


 マラソンで私の場合、120%のペースだと1000m2分32秒です。全然200mとかに区切ればやれないことはないですが、明らかに重要度はガクンと下がると言えるでしょう。速い方はせいぜい115%くらいの強度が一つの目安になるのではないでしょうか?


 ちなみにですが、確かにレースペースの115%の強度の練習をやるチームは比較で言えば、日本には少ないです。


 だから、オレゴンプロジェクトが注目を浴びた時に、高強度で休息時間の長い練習に焦点があてられて「これからの時代は質より量」みたいなことが言われたのですが、実際にオレゴンプロジェクトの練習を見るとそれはあくまでもほんの一部で、総走行距離も多いですし、寧ろモー・ファラー選手やゲーレン・ラップ選手がトラックに専念している時の距離走はトラックに専念している日本の選手の大半よりも長く速かったです。


 いずれにしても、速い方はせいぜい115%くらいが上限で、あとは補強的に全力のスプリントが入る程度でしょう。


 ただ、遅い方に関しては量を増やすことが可能になります。人体の構造上そうなっているのです。トレーニングではレースペースよりも速いペースのトレーニングもレースペースよりも遅いペースのトレーニングも等しく重要です。


 ですが、人体の構造上圧倒的にレースペースよりも遅いペースのトレーニングが多くなるべきですし、実際にそうなっています。


 私は1960年から2010年くらいまでのありとあらゆる5000mからマラソンまでの一流選手のトレーニングを分析してきました。それよりも古いと記録があまり残っていませんし、戦前は特に記録が残っていません。ですが、いくつかは見たことがあります。


 逆にこの数年となると、なかなか情報が手に入らないのも事実です。ですが、これもいくつかは持っています。


 そして、分析した結果、一流選手のトレーニングというのは、だいたいレースペース以上のペースとレースペース未満のトレーニングの比率が5 : 95くらいになります。つまり、95%の練習はレースペースよりも遅いのです。


 現在は年間数百人のランナーさんの目標達成やお悩み解決をサポートさせて頂いていますが、市民ランナーさんの場合はだいたいレースペース以上とレースペース未満の割合が1 : 5くらいです。つまり、圧倒的にレースペースよりも遅いペースのトレーニングの量が少ないのです。


 ランニング初心者の方の場合は、練習のほぼ全てがレースペースです。これはトレーニングのやり方を理解していないがために起こる現象で、私も小学生の時はそうでした。レースで1200mを走るから、練習ではひたすら1200を全力で走っていました。当然、タイムはさほど伸びませんでした。


 一流選手の方がレースペース以上の練習量が多いことは意外に思われるかもしれませんが、事実です。


 そして、その理由は単純でレースペースの95%から105%の間の練習の量を増やし、なおかつそれに対して故障やオーバートレーニングなく、なおかつそのレースペースそのものを限りなく上げていこうと思うとレースペースの90%の練習量を増やす必要があり、その為にはレースペースの85%の練習量を増やす必要があり、さらにレースペースの80%の練習量を増やす必要があり、その為には更にレースペースの70%の練習量を増やす必要があり、というふうに綺麗なピラミッドが形成されないといけないからです。


 そして、月並みな表現ですが、ピラミッドは底辺が大きければ大きいほど頂点が高くなります。


総走行距離を伸ばすことの意外な理由とは?

 総走行距離を増やすことのメリットは、トレーニング目的だけではなく、疲労の回復を促進してくれることです。高強度なトレーニングをした後なにもしなければ、血中に乳酸が溜まったままになってしまいます。


 「乳酸は悪者ではない」という訳の分からないことを言っている人もいますが、物凄く単純な事実として、全ての生体には最適な温度と最適pHがあり、乳酸やそれに付随して産生されるプロトン(実はこちらの方が悪者)が血中のpH値を低下させ、正常な代謝を阻害します。


 これが血中にあるままだとリカバリーが阻害されるのですが、低強度なランニングを行うことで、乳酸の除去が速まり、疲労の回復が速くなります。また、乳酸という観点からだけではなく、血流が良くなり、酸素を多く取り入れることになるので、筋肉もほぐれやすくなり、回復が速まります。


  また、低強度なランニングにおいては、実はゆっくり走れば走るほど、体は回復する訳ではないということも知って頂きたい事実です。理由は単純で、ペースが遅くなればなるほど、自身が持つ運動エネルギーが少なくなり、地面から得られるエネルギーも少なくなるからです。


 もちろん、だからと言って、速ければ速いほど良い訳ではありませんし、速すぎるよりは遅すぎる方が良いです。


 モー・ファラー選手のイージーランニングがおよそ1キロ3分50秒くらいのペースで非常に驚いていたオンラインスクールの受講生様もいらっしゃいましたが、私も一番楽に走れるのは1キロ4分15秒くらいなので、走力差を考えればそのくらいなのではないでしょうか。


 この数字がどのくらいになるかは人それぞれですし、実際にマラソン2時間3分で走るような選手でも1キロ4分半ペースとか5分ペースで走る日もあります。あくまでも、自分が楽だと感じるペースであることが重要です。


 ただ、遅ければ遅いほど楽である訳でもないことは知っておいて損はありません。ご自身がリズムよく走れるペースを見つけてください。


 距離にしても同様です。


 最近の私の低強度な練習の日の定番は朝に18キロ、午後に10キロです。少ない日は朝に15キロ走って、午後は休養に当てます。ただ、一日に28キロも走って低強度になる走力レベルの人は少ないと思います。


 これも自分でちょうど良い練習量を見つける必要があります。


 繰り返しになりますが、楽に走り続けられる体を作っておけば、一定程度有酸素刺激を体にかけながら、休むことが出来ますし、そもそも走る量が多いとそれだけ乳酸も除去されやすいので、実は質の高い練習の量を増やしやすいのです。


 逆に、走っていない人には理解できない話だと思いますが、長距離ランナーにとって休むということは完全休養を意味しませんし、完全休養したから有意に疲労が抜けるかと言うとそうでもないです。


 寧ろ、日にち薬の方が重要です。今日一日完全休養したら、明日からまた全力で頑張れるかと言うとそうではなく、質と量が高い練習をこなせば、2日、3日と回復にかかる時間は必ず必要になってきます。


総走行距離はどこまで伸ばせば良い?

 では、総走行距離は多ければ多い方が良いのかということですが、これはそうではないと思います。実際に、マラソンでも総走行距離が多ければ多い方が有利かと言うと月間800㎞くらいまでは明らかにそうだと思いますが、それ以上多い方が強いかと言うとちょっと微妙になってきます。


 実際に、過去60年間の様々な一流マラソン選手の練習を分析した結果、だいたい週に200㎞前後の練習に落ち着きます。150㎞を下回る人はかなり少数で、逆に270㎞を超える人もかなり少数です。


 週に300㎞近くの練習をこなして一流になった選手も古今東西問わずいます。ですが、どうもその練習量をキャリアの大半にわたって継続していた訳でもないし、引退したのちに指導者になってからも週に300㎞の練習を選手に課しているケースはほとんどないようです。


 大前提として、それで強くなれるなら、あるいは結果はともあれ勝てる確率が高いと判断したのであれば、選手はやります。苦しいからやらないということはないはずです。


 それにもかかわらず、継続的にその総走行距離を維持しないのは、やはり練習効果と故障やオーバートレーニングのリスクを天秤にかけた時に魅力的な方法ではなかったのではないでしょうか?


 ちなみにですが、私も週に300キロまで練習量を増やしたことがありますが、単純計算で一日43キロです。低強度の日の練習も入れないといけないので、多い日は60キロ以上走ることになります。


 そうすると、5000m3本の日の早朝に15キロを1キロ4分ペース、午前に10キロジョギング、午後に5000m3本とか朝に18キロジョギング(1キロ5分ペース)、午後に32キロを1キロ3分40秒とか、そのジョギングいる?みたいな練習はどうしても入ってきてしまいます。


 ただ、これも誤解の無いように書いておくと、別に練習量を増やしたから練習の質が落ちるということはなく、5000m3本も1000mつなぎで15分ちょうど±6秒でいき、人生で最高のワークアウトの一つになりました。30キロ走も最後の10キロは31分半くらいまであげていますし、別の日に300m16本を300mジョギングでつないで48秒から46秒(1キロ2分40秒から2分35秒ペース)という練習もやっています。


 総走行距離を増やしたから、練習の質が落ちるということはないですし、寧ろ質の高い練習の量を増やそうと思えば、少ない総走行距離では無理です。


私自身の市民ランナー経験より

 私が市民ランナーになったころ、やっぱりそこまで走ることに集中できるわけではないので、多くの市民ランナーがそうであるように、たらたらとジョギングする日と思い切って追い込む日にはっきりと分けた方が良いのかなと思っていましたが、結論から言うとそれでは無理でした。


 やっぱり、土台がしっかりできていないのにインターバルだけ頑張ろうと思っても全然良い練習は出来なかったです。結局、中強度の持久走や200m5本などの練習を積み上げていくことのコスパの良さに気づきました。


 また、総走行距離自体は多くありませんでしたが、二部練習を活用することで割と少ない練習で3000m8分25秒を出すことも出来ました。


 5000m14分40秒や15キロを45分44秒で走ったときのトレーニングはあまり二部練習をしていませんでしたが、中強度の持久走はそれなりに入れており、それに1000m10本などを上手く組み合わせて出した感じです。


 ただ、せいぜい週に120キロ前後しか走っておらず、一番多い時で150キロ少し超える程度だったので、3年も続けるとすっかりプロ時代の貯金はなくなり、やりたい練習が出来なくなっていき、また体の回復も若干遅くなってきました。やっぱり、少ない練習量でやるのは無理があると思います。


必要な総走行距離

 その人の目標や出場する種目によって必要な総走行距離は変わってきます。ただ、とりあえず覚えておいていただきたいのは、少ない総走行距離で結果を出そうとすることは効率が良いとは言えないということです。


 例えば、マラソンで一流の域に到達しようと思えば、週に200キロ前後の練習が基本になってくるわけです。100キロでもなく、400キロでもなく、200キロ前後です。これはある意味、歴史の過程の中で証明されてきている手法です。

 

 確かに、それよりも少ない総走行距離で2時間10分を切る選手はいるのですが、人間の体なんて皆大きくは変わらない訳ですから、わざわざ自分だけ不利になるような条件で、マラソンをやる必要はありません。


 走り込みの時期にも週に120キロ程度の練習で2時間10分を切った選手を一人だけ知っていますが、その選手は10000m26分台で、しかも交通事故で完全に足が車の下敷きになり、粉砕骨折して、医者からもう二度と走れないと言われたところからの復帰レースでした。


 そんなこともあって、練習量を増やせなかったのですが、そのくらい例外中の例外です。


 これは市民ランナーの方についても同じことが言えます。だいたいマラソンで3時間切る人の練習量は週に70キロ程度です。これが60キロになっても良いとは思いますが、わざわざ週に40キロの練習量でマラソンサブ3をやろうとするのはむしろ効率が悪いと思った方が良いでしょう。


適切な練習量の増やし方

 そもそもどこまで練習量を増やすべきかは、その人の夢や目標、仕事の状況、家庭の状況によって変わってきます。なので、こちらから答えを出すことは出来ません。ただ、一つ言えることは一度に10%以上増やしてはいけないということです。


 10%ということは、週に50キロ走っている人は増やしたいと思っても55キロまでしか増やしてはいけないということです。60キロの人は66キロまでしか増やしてはいけないということです。これには二つの理由があります。


 一つ目の理由は、もしも総走行距離を急激に増やし過ぎた場合、そのことに気づいた時は常に手遅れだからです。


 二つ目の理由は、単純な数学の話です。あなたは1.1の52乗はいくつかご存知でしょうか?


 計算処理機=コンピュータはインスタグラムを見るよりもこういう時の為にあると思っていますが、計算処理機に聞くと約142だそうです。つまり、毎週10%ずつ練習量を10%ずつ増やしていけば、一年後にあなたの週間走行距離は142倍になっているということです。


 もちろん、142倍まで増やすべきではありません。つまり、週に10%ずつ増やしていっても意外とハイペースで練習量を増やしていることになるということです。


それって根性論じゃないの?

 今回の話を聴いてそれって結局根性論じゃないのかと思われた方もいらっしゃるかもしれません。根性論というのは、「とにかくがむしゃらにやれば結果は出る。結果が出ないのはやる気がないからだ」というような論調のことです。


 でも、それは違います。何故なら、質の高い練習量を増やそうと思えば、はっきりとそこには戦略が必要になるからです。根性さえあれば、プロ時代の私と同じ練習が出来ると思うのであれば、やってみれば良いと思います。


 でも、無理でしょう。大半の人にとっては、質を無視しても練習量だけでも無理なのではないでしょうか。


 どうやったら、その練習の量と質がこなせるようになるのか、そこには適切なトレーニング戦略、リカバリー戦略、心の持ちようの3つが絶対に必要になるのです。


 これはもちろん、私もそうです。今よりも上のレベルに到達しようと思えば、今よりも上の練習をする必要があります。もう少し具体的に言えば、レースペースの95%から105%の範囲の練習量を増やすことです。もう少し幅をとって90%から110%としても良いでしょう。


 そして、その為には低強度の持久走も中強度の持久走も有効な手段になりうるのです。先ずはこれを理解して頂きたいと思います。


 実際に、練習量を増やせば増やすほど走力が低下していった人もいますし、私もそういった経験があります。がむしゃらに練習量を増やせば良いというものではないのです。


 その具体的な方法論に関しては、拙著『詳説長距離走マラソンが速くなるためのたった3つのポイント』(1000円)でより詳しく解説しております。現在、こちらの書籍の原稿データをPDFファイルにて無料でプレゼントさせて頂いております。


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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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