前回の記事では「球数制限とメタメッセージ」というタイトルで、潜在意識の力について書きました。簡単に話をまとめると、潜在意識を有効活用するには保護方向にもっていくのではなく、現状の外側へ外側へと広げていってあげる意識が必要だということです。勿論、計画段階ではそれで良いのかどうか、やり過ぎではないのかどうかということを考える必要はあるのですが、やるなら後はそれで大丈夫だと思った方が良いということです。
また、例えばメジャーリーグのローテーションシステムのように中4日で先発投手の球数は100球までと決める場合であっても、「中4日で100球までが限界なんだ、これ以上投げると故障してしまうんだ」という思い込みが潜在意識に入ってしまうと、かえって故障しやすくなってしまいます。
マラソンで言えば、月間1000㎞も走る必要はないと私自身は考えています。ですが、私自身は過去には4か月で4000㎞とか月間1200㎞、週に300㎞という練習量をやっています。月間1000㎞も走ったら潰れてしまうからそうしないのではなくて、単に自分にあった練習を求めていく中で月間1000㎞は必要ではないし、恐らく他の選手にとっても月間1000㎞は必要ないだろうという考えに至っています。
ただ、「月間1000㎞は走り過ぎだ。そんなに走ったら潰れてしまう」という意識を持っている選手は月間800㎞の練習でも故障しやすくなってしまいます。何故なら潜在意識に「走り過ぎたら故障してしまう」という意識がしっかりと刻み込まれてしまうからです。
安心して自分の限界を広げていくにはどうすれば良いのか?
ただ体には体の固有の限界値というものがありますので、いくらやっても大丈夫かというとそんなことはありません。やり過ぎたら故障するのは当然です。そもそも、最も臨場感の強いものが潜在意識に刷り込まれるので、体がきつくなってくるとこれで大丈夫とは思えなくなってくると思います。とは言え、これで大丈夫と思い込めれば故障のリスクもオーバートレーニングのリスクも減ります。
少なくとも逆のパターンは良くおこります。精神的に「もう無理だ。休みたい」と思うようになると、潜在意識は痛みや病気を自ら作り出して強制的に休ませます。小出監督は気持ちの弱い選手はハードな練習の前に必ず脚が痛くなるからプログラムを事前に渡さなかったほどです。これは仮病ではなくて、「きついな、嫌だな」と強く思うと本当に潜在意識が「だったら休ませてあげましょう」ということで痛みを作るのです。これは本人も意識していないところで起こります。
さて、この辺りで問題点が浮き彫りになってきたと思いますが、本当にいくらやっても大丈夫という訳ではないものの、「このくらいは大丈夫」と思い込んだ方が成功の可能性は高まります。この辺りのバランスをとるのが難しいのですが、一つの解決策は「一回や二回故障したって大丈夫」という自信をもっておくことです。多くの優秀な投資家や起業家たちは行動を起こす前に最悪の事態を想定しておくことで「最悪失敗しても大丈夫」という感覚を持っているので思い切って前に進むことが出来ます。ライブドアの堀江社長もインサイダー取引で逮捕された時に「想定の範囲内」とコメントしていましたが、出所後もご活躍されているのは予めリスク管理が出来ていたからではないでしょうか。これと同じで、故障しても大丈夫という危機管理をしておけば、前に進むときも思い切って前に進むことが出来ます。
という訳で前置きが長くなりましたが、今回は慢性的な痛みの消し方です。
慢性的な痛みの消し方
初めに慢性的な痛みの定義をしておくと、捻挫、肉離れなどいつ、どの練習で起こったのかが特定できないような痛みを全て慢性的な痛みと捉えてもらえればと思います。長距離選手の故障は8割から9割がこれに該当するように思います。要するに、初めは違和感程度だったのが徐々に痛みに変わり気付いたら走れないほど痛くなっていたというようなケースです。また普通に練習し、レースに出ている選手でもトップランナーのほとんどはどこかに痛みを抱えているものです。走れているだけに周りにはなかなか理解されません。治療院に行ってもトップランナーが多く来院するようなところ以外では軽症として、あまり真剣に向き合ってもらえないところがほとんどです。またレントゲンやMRIをとっても何も映らないケースも多いです。ですので、原因不明で処理されてしまうことも多々あります。
こういった慢性的な痛みはなかなか他人に理解してもらえない上に肉離れやアキレス腱断裂などの一見重症に思われている故障よりも治すのが難しいです。一回のインターバルでハムストリングスの肉離れを起こしたというようなケースは一見重症に思えますが、治癒過程の方も正常に働いているので、痛みのある動きをしなければ比較的早く治ります。長くても数週間程度です。復帰までにはもうすぐかかりますが、どんどん良くなるのが本人も分かるはずなのでストレスも少ないと思います。
一方で、慢性的な痛みの方はそもそも治癒過程が止まってしまっている状態なので休んでも良くなることはあまりありません。走らなければ患部の炎症は治まるので一時的に痛みが引くかもしれませんが、走らずに痛みが引いても走れば再発しやすい傾向にあります。また私自身の経験から言うと、走らないと悪化してしまうことも多々あります。逆に痛くても無理しない範囲内で走った方が治りやすいこともあります。それぞれのケースで異なるので一概には言えませんが、慢性的な痛みは走らなければ治るものではないし、走ったら必ず悪化するわけでもないという傾向があることはおさえておいてください。
慢性的な痛みの原因
慢性的な痛みの原因は色々挙げることが出来ますが、究極的には筋肉のコリによる局所貧血です。どのくらい局所的かというのは場所にもよりますが、数ミリから親指の頭程度の大きさだと思います。また場合によってはお尻に少し、ハムストリングスに少し、ふくらはぎに少し詰まりがあって最終的にアキレス腱や足底に痛みが出るというケースも考えられます。
この筋肉のコリはいわゆる張り感や筋肉痛とは全く別のものです。逆に痛みや張り感が強くあればよく分かるのですが、通常はそんなに違和感がないか若しくは全くないので触ってみるまで気付かないケースがほとんどです。このコリはテーピングの役割をしていて、局所的に固めることによって保護しています。ある意味では体に必要な機能なのですが、この状態が長く続くとそれより下に血液がいかなくなってしまいます。若しくはその箇所に血液がいかなくなってしまいます。
血液がいかないということは様々な栄養素がいかなくなるので、修復過程が進まないということです。更に重要なことは酸素が行きわたらないということです。酸素がいかなくなると正常な細胞死であるアポトーシスが引き起こされず、ネクローシスが引き起こされます。ネクローシスという細胞死は細胞死の際に、破裂するようにして細胞死し、周りの細胞のDNAを傷つけます。DNAを傷つけられた細胞は不正常な細胞もネクローシスを引き起こし、また他の細胞を傷つけます。このようにして延々と連鎖が続くのでなかなか治りません。
一回のスプリントで肉離れを起こしたようなケースでは酸素や血液がどんどん流れ込み組織の修復過程も進み、傷ついた細胞はアポトーシスという正常な細胞死で新しい正常な細胞に生まれ変わるので一見重症に見えても割と何もしなくても治るケースがほとんどです(早めの処置が回復を早め後遺症のリスクを減らすことに変わりはありません)。
そして、ネクローシスの連鎖状態が続くと組織が癒着を起こします。この癒着は血行不良のため免疫細胞の死骸が血液によって流れずに患部にとどまり、しこりとなったものです。癒着を起こすと組織は更に固まり、動かすと痛みます。またこうして形成された組織の癒着、凝り固まり(トリガーポイント)、ネクローシスなどにより、痛みの箇所には低度で慢性的な炎症が生じます。この低度で慢性的な炎症により、膨張した組織が神経を圧迫して常に痛みが生じます。痛みを感じると感覚神経と脳のフィードバックとフィードフォアにより、患部に炎症反応を引き起こすように脳が指令を出します。こうしてさらに、痛みを感じ炎症反応が起きるという連鎖になります。またこの箇所の神経と脳の結びつきが一時的に強くなっているので、神経が過敏になり痛みを感じやすくなっています。これが慢性的な故障のメカニズムです。
慢性的な痛みの取り方
以上にみてきたように慢性的な痛みを取り除くには痛みを引き起こしている筋肉の凝り固まりをとること、組織の癒着をはがすこと、痛みそのものに対処することが慢性的な痛みの取り方となります。そして、最も有効な方法は痛みを引き起こしている凝り固まりの箇所に圧をかけることです。凄くサラッと書いてしまったので、頭に入らなかった人がほとんどだと思いますのでもう一度書きますが、慢性的な痛みを取り除く最も有効な方法は痛みを引き起こしている凝り固まりに圧をかけることです。
正直な話「えっそれだけ?こっちは何年も苦しんで、今すぐにでも解放されたいのに馬鹿にしてるの?」と思う人もいると思います。私自身も歩くのも痛い足底筋膜炎に4年ほど苦しんだので、そう言いたくなる気持ちも分かるのですが、これが最も根本的で最も効果的な方法です。
やり方は単純で体の色々な箇所をおさえて凝り固まっているところを色々押さえます。両手の親指を重ね合わせて色々押さえていきます。その中で、特に圧痛を感じるところが怪しいです。ハムストリングスやお尻などの大きな箇所は椅子や床にソフトボール、ラクロスボール、テニスボールなどを置いて体重をかけると良いと思います。怪しい箇所を見つけたら次にそこを長押しします。長押しして、患部に響いてきたり、患部がしびれたり、何か感じるところがトリガーポイントです。トリガーポイントは一か所とは限りません。複数存在することがよくあります。
トリガーポイントを見つけたら、やり方は二つあります。自分で出来る方法と他人の手を借りる方法の二つがあります。他人にお願いできる場合はツボ押し棒や親指などでトリガーポイントを思いっきり長押ししてもらいます。どのくらい強くかと言うと治療の後、圧をかけた箇所に炎症が生じ、熱を持つくらい強く押します。この方法の難点は普通の人間は遠慮するのでここまで押してくれないということです(治療院ではほとんどやってくれません。お願いしてみるもののこちらも叫んでしまうので、やっぱり遠慮するのでしょう)。
二つ目は一回5‐10分一日3‐6回この箇所に自分で何らかの形で圧をかけるということです。これは膝から上であれば椅子や床にソフトボール、ラクロスボール、テニスボールなどを置いてそこにトリガーポイントの箇所を置き、圧をかけると良いと思います。ふくらはぎは両手の親指を重ね合わせて押す、足の場合は百均や西友などで売っているツボ押し棒で押すと良いと思います。フォームローラー、ボール、麺棒などを転がして筋肉をこねても良いと思います。患部も同様に痛いけど気持ち良い程度の強さでやります。
次に患部に出来た組織の癒着のはがし方ですが、これは患部にクリームやオイルなどの潤滑剤を塗り(滑れば何でも良いのですが、思いつかなければオリーブオイルで良いと思います)、体の中心から遠い方から近い方に向かってしゃもじでこすり上げます。こすり上げた時に音のするところが組織の癒着が出来ているところです。この方法は一日一回までにとどめておいてください。また皮膚を傷つけないように気を付けてください(特に足底!!)。
トリガーポイントに圧をかけると痛みが取れる理由
先ず第一に患部に血液が流れ始めるというのがあります。慢性的な痛みの場合、患部に血液がいかないので、その状態で運動をすると患部は酸欠状態で運動を続けないといけないので余計に負担がかかります。だから、強く痛みを感じるのですが、患部に血液が流れ始めると運動すればするほど、その箇所に血液が流れ込むので寧ろ走り始めよりも走り始めて20分くらいしてからの方が痛くないということになります。ここまでくれば、ほとんどフルで練習しながら治すことが出来ます。
もう一つは脳とのフィードバックの関係があります。痛みそのものは自分自身で作っているものです。一般に痛みは体に危険を教えてくれるシグナルだという風に説明されます。要するに、体の異常に気付いてほしいと思っているわけです。ほとんどの人は痛みの患部にばかり気がいってトリガーポイントに気付かないのですが、トリガーポイントに気付き処置を施すことで、脳が痛みというシグナルを下げても良いという判断をするわけです。ですから、場合によってはゴリラみたいな施術者に、トリガーポイントに思いっきり圧をかけてもらえば一回の治療で劇的に痛みが減ることもあります。
そもそも痛みって何?
痛みが一般に体に危険を教えてくれるものであることは、先述しましたが、正確に言えば、必ずしもそうではありません。慢性的な痛みのほとんどのケースでは過剰な痛みを感じているケースがほとんどです。勿論、痛みがあるにはそれなりの理由があるのは確かなのですが、少なくとも「休め」という体のサインではありません。急性期の炎症があり、筋繊維が何本もぶちぶちと切れているような場合であれば、その箇所を動かしていると治りが遅くなります。しかしながら、慢性的な痛みの場合は組織の断裂などはなく、急性期の炎症ももうおさまっています。筋肉の凝り固まりや組織の癒着は残っていますが、このような状態で競技者が15㎞を1㎞4分ペースで走って、負担がかかるでしょうか?このような練習で負担などかかりません。寧ろ、理屈から言えば血流が良くなって筋肉は緩むはずです。
それでも痛みを感じるのは脳や神経、潜在意識の方にも原因があるのです。実は脳は体がかなり危険な状態でもあまりにも急な出来事で認識できない場合や、かなりの興奮状態にある時、もう諦めてしまった時などは痛みを感じません。いくつか例を挙げると、戦場で銃弾が肺を貫通しても気づかずに戦っていた兵士、訓練中に右腕と右足を鮫に噛まれていても気づかなかったオーストラリアの海軍兵士などがいます。なお、どちらのケースも状況を目で確認した瞬間にとてつもない痛みに襲われたとのことです。体がもう諦めてしまったケースで言えば、過酷な拷問に耐え続けていると、人間は失神して痛みを感じなくなるようになります。更には死ぬときには痛みを感じなくなるだけではなく、最高の幸福感に包まれると多くの臨死体験者が報告しています。
逆に体に何の危険もなくても痛みを感じることもあります。これは催眠ショーなどでもたまにありますが、催眠術師が私の神経を大根に移します、そしてその大根を釘で思いっきり刺します、そうすると私の方に激痛が走るというものです。優秀な催眠術師がやると私は隣の部屋にいても大根を釘で刺すと私が痛みを感じます。逆に優秀な催眠療法家であれば、慢性的な痛みを何か、例えば大根などに移して痛みを取り除くこともあります。
このように痛みは基本的には体に危険を教えてくれるシグナルなのですが、いつも危険度と痛みの度合いが一致しているとは限りません。そして慢性的な痛みの場合は危険度を超える痛みを感じます。ですから、軟部組織の治療をすると共に痛みの治療をすることが大切です。
痛みの治療
痛みの治療にはいくつか方法があります。一つ目は非ステロイド系の抗炎症剤を服用することです。具体的にはロキソプロフェン(ロキソニンシリーズ)、イブプロフェン(イブクイックなど)、サリチル酸メチル(アスピリン、バファリンなど)です。ただ、慢性的な痛みには効かないことがほとんどです。また詳しくは書きませんが、これらの錠剤はフリーラディカルの原因になります。フリーラディカルは慢性的な痛みの原因となるものなので、少なくとも長期の服用にはお勧めしません。非ステロイド系抗炎症剤の中ではサリチル酸メチルはアポトーシスを引き起こす作用があるので、状況に応じて飲むのは良いと思います。ただ基本的に急性期の炎症は治癒過程に必要なものです。これらの非ステロイド系の抗炎症剤は慢性的な炎症は抑えずに急性期の炎症を抑えてしまいます。ですから、やはり長期服用はお勧めしません。飲んでみて良くなるのであれば、5日程度上限量を服用してすぐにやめるのがお薦めです。
2つ目はアセトアミノフェン(カロナール、パラセタモールなど)の服用です。アセトアミノフェンは抗炎症作用が無いので、治癒過程に必要な急性期の炎症を抑えません。視床及び大脳に作用し痛覚閾値を上昇させるとされており、慢性的な痛みには効きやすいことが確認されています。但し、こちらも作用機序に関してはこの20年だけでも説が二転三転しています。ということは副作用に関してもまだすべてが明らかになっているとは言い難いです。また、いずれにしても体内で処理する時にフリーラディカルが発生するので長期服用はお勧めしません。
3つ目はプロロジェルというジェルを使うことです。プロロジェルは浸透性を高めたデキストロースを患部に塗ることで神経ブロック効果を発揮します。超音波を使うことでより深部まで浸透させることも出来ます。プロロセラピーについてより詳しく知りたい方は『プロロセラピー』の記事を参照ください。
4つ目はテーピングです。足底筋膜炎に関して言えば、キネシオテープを使う人が多いのですが、キネシオテープではなくホワイトテープがお薦めです。伸縮しないので一見不向きに感じられるかもしれませんが、ホワイトテープの方が明らかに痛みが和らぎます。ふくらはぎやハムストリングスにも試してみる価値はあると思います。ラグビーや野球のような瞬発系スポーツでなおかつ接触のあるスポーツでは巻いて固めることも多いのですが、血行不良になるので長距離走には適しません。あくまでも筋膜に沿って張るだけです。解剖学では皮膚と筋膜は別のものですし、多くの人が筋膜は筋膜と捉えていますが、実際には筋膜から皮膚まで一枚の布のようなものだととらえたほうが良いです。ですので、ホワイトテープで皮膚をやや固めれば、筋肉の方も若干安定し、痛みを軽減することが出来ます。
5つ目は、非常に簡単なテクニックですが、体の状況を正確に把握することで痛みが和らぐことが多々あります。私の個人的な経験では、指で触って急性期の炎症が収まったこと、組織の修復過程が終わりに近づいた証拠である組織の癒着を確認し、トリガーポイントの箇所が確認できれば、痛みを感じなくなっていきます。状況が分からない間や急性期の炎症を持っているときは不安や危険信号で痛みを強く感じるのですが、痛みも慢性期に入り、状況を正確に把握すれば、言葉に出来ない不安や危険信号を感じなくなるので、それに伴って痛みも引いていきます。もう少し分かりやすく物語風に説明すると次のような状況です。
走っていて急に足の甲に中足骨の疲労骨折のような痛みを感じて立ち止まりました。言いようのない不安が押し寄せてきて不安と痛みに同時に襲われます。靴を脱いで拳で踵の骨を叩き中足骨に響くかどうかを確認しますが、骨には響きませんでした。ここで疲労骨折ではないことは確認できます。そして、色々体を触っているとハムストリングスと臀部の一点を強く抑えると足の甲まで響くことに気付きました。ああこれは筋肉の塊が坐骨神経を圧迫して足の甲まで響いているんだなと気付きます。そうすると、本質的にはジョギング程度では足の甲に負担がかからないことが分かります。寧ろ、ちょっとジョギングしてハムストリングスと臀部をほぐした方が痛みが和らぎそうだ。こういう結論に至った途端、得体のしれない不安は消え、危険信号も感じにくくなり、痛みも耐えられる痛みへと変わっていきました。
6つ目は抗炎症作用を持つサプリメントの摂取です。副作用が無いことと、フリーラディカルの除去作用を持つこと、低度で慢性的な炎症を抑えてくれるというメリットがあります。詳細は『慢性的な痛みのためのサプリメント』をご覧ください。
痛みとは一つの情報です。ですから、そこにどのような情報を与えるかで意味が変わってきます。自分がそれを危険なものだと認識すれば、余計に痛くなりますが、「この程度なら大丈夫」ということを理解していれば、痛みは感じにくくなります。関節炎患者は組織の損傷程度が同じ程度なら手術後の方が手術前より痛くないということはよく知られています。これは患者がこれから良くなっていくだろうという期待を持ち、リハビリに対してもこの痛みに耐えればますます良くなっていくという期待感を持っているためです。更には、リハビリ中は常に医師が寄り添ってくれるという安心感も大きな要因と考えられます。
番外編
様々な症例を見る限り、最も効率よくそして早く慢性的な痛みをとるには気功が一番です。気功は情報空間にアクセスすることが出来るので、痛みという情報そのものを取り除いたり軽減したりすることが出来ます。催眠術師が大根にあなたの神経を移して、その大根を釘で刺したらあなたが痛みを感じるというように、痛みというのは情報なので無いところに作ることも出来れば、取り除くことも出来ます。
慢性的な痛みは関して言えば、痛みの原因が軟部組織に残っているとは言え、神経も脳も過敏になっているので痛み情報が過多になっています。ですから、気功や催眠療法で痛み情報を取り除いてもらえるのであればそれに越したことはありません。ただ、催眠療法も気功も口で説明したり、文字で書いて教えられるものではないので、優秀な施術者に巡り合えることはそうそうありません。そういう意味であまり期待できませんが、運よく優秀な施術者に巡り合えたり、知り合いを介して良い施術者を紹介してもらえるのであれば、試してみると良いと思います。
私が定期的に通っているのはツバメ整体院というところです。料金も良心的で腕も非常に良い先生です。関東県内にお住まいの方にはおススメです。
ツバメ整体院 東武東上線高坂駅より徒歩3分 http://www.tsubame-seitai.com/
参考記事 『GMO地帯のゴッドハンド』
最後に
慢性的な痛みを一瞬で消し去る必殺技のようなものを期待していた人、まだほとんどの人が知らない最先端医療のようなものを期待していた人にとっては、がっかりする記事だったかもしれません。しかしながら、この方法でダメなら他に何か方法があるのかと言うと、後は出会えるのが非常に稀な優秀な治療家にお願いするしかありません。それも東洋医療でなければ無理だと思います。何故なら、体全体の血液の巡りを見て詰まりを改善し、滞りなく血液を循環させないといけないからです。
ステロイド注射で一瞬で痛みが消えたというような話も聞くと思いますが、ステロイド注射や非ステロイド系の抗炎症剤で痛みが消えるのは全て急性期の炎症だからです。急性期の炎症が消えた段階での慢性的な痛みはこういった薬は効きません。
慢性的な痛みの治療を考える時にいつも私が思い出すある本の1シーンがあります。それは『ウォールストリートの狼』という実話に基づく小説の1シーンです。買えないものは何もないほど巨万の富を気づいたジョルダン・ベルフォートは慢性的な腰痛に苦しみ、亜米利加で最先端医療を持つ病院で手術を受け、毎日腰に麻酔薬を注射し、アスピリン6錠(3,000㎎)を一気飲みしますが、それでも痛みから解放されません。薬物乱用者の彼は「違法ドラッグを使う俺がアスピリンの服用上限量を守る必要があるのだろうか」と自問自答します。慢性的な痛みは自家用ジェットを持ち女中さんとボディーガードを雇えるような男が最先端の西洋医療を駆使しても消すことのできないものです。
一方で、どんな貧乏人でも正しくトリガーポイントの位置を把握し、ソフトボールや百均のツボ押し棒としゃもじを買うことが出来れば、治すことが出来るのが慢性的な痛みです。トリガーポイントの位置が間違っていなければ長くても6週間で改善することが出来ます。また関節がゆがんでいることもありますが、たいていは筋肉が緩むと関節の動きも滑らかになり、自然とあるべき位置へと戻っていきます。
ここで紹介した方法は特に痛みがなくてもリカバリーを早める方法として使えますので、ぜひ普段から取り入れてみてください。
という訳で今回はランナーの為のリスク管理の話でした。
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