劇的に伸びるアマチュアランナーと時間がかかるアマチュアランナーのたった1つの違い
更新日:2022年8月9日
私も今のお仕事を始めさせて頂いて、早三年が経ちました。当初ははっきり言って、儲からないだろうと思っていました。扱っている内容のレベルが高すぎて、根付きはしないだろうと思っていたのです。
それでも、誇りをもって取り組める仕事がしたかったので、我樹下石上を家とすも可なりという気持ちで始めたのですが、気づけば集中講義の受講生は約400名、ウェルビーイングオンラインスクールの受講生様だけでも約200名の方がお集まりくださいました。
今年からはケニア人選手の育成にも乗り出して、ウィルフレッド・キミテイ選手が61分44秒でヒューストンハーフマラソンで2位、ウェズリー・キムタイ選手が28分32秒でケニア選手権10000m2位、2時間29分44秒でアリス・ジェプケンボイ選手がナイロビマラソン4位と予想だにしなかった結果が出ています。
また桂中学校の選手たちのお手伝いも少しさせて頂くようになりました。こちらは本当にお手伝い程度ですが、近畿大会への出場者3名に加えて、全国大会へ一人が駒を進めてくれました。
本当にマラソンで4時間を切りたいという方からメジャーマラソンで上位入賞、優勝を狙う選手まで、12歳の子から60代の方まで、男女問わず多くのランナーさんたちに関わらせて頂くことが出来ました。
その過程の中で、様々なことが新しく分かるようになってきました。その中でも、本日は急激に伸びていくランナーさんと時間がかかるランナーさんの特徴を挙げたいと思います。
私が現在特に力を入れて見させて頂いているのは、ウェルビーイングオンラインスクールの受講生様です。日々多くの方が無料メールサポートやズームコンサルを通じて、様々なご相談を頂くのですが、それに対して、より速くより正確に対応させて頂くのが、私の仕事です。この仕事だけはどれだけ時が進んでもAIごときに負けないという確信、いや確信というよりはこの仕事はAIには出来ない論理的な理由があるのです。
その理由については、ここでは本題とずれてしまいますので扱いませんが、詳しく知りたい方は過去の無料ブログ「AIに適切な練習計画は作れるのか?そして作れるとしたらどのくらい正確な練習計画が作れるのか?」をご覧ください。
伸びていく方は、たった一年間でマラソン30分くらいは一気に伸ばしてこられますし、5キロだと1年間で1分間とか、半年で30秒とか平気で伸ばしてこられます。これはある程度上級者の話です。
例えば、マラソン3時間16分から2時間33分とか、18分6秒から三か月で17分30秒切りとか、17分ちょうどから15分54秒とか、もっと凄いのは1500mで4分10秒切れなかったのが、半年後に3分59秒まで伸ばした方もいらっしゃいます。
ランニングというのはレベルが低ければ低いほどタイムを伸ばすのは楽なので、マラソンでまだ4時間を切っていないような人は30分くらいは本当に楽に伸ばしてい来られます。ただ、このレベルの方には正直私は必要ないのかもしれません。このレベルの選手を教えられるコーチは日本に履いて捨てるほどいるでしょう。
ですが、さすがに3時間を切ってから更に記録を伸ばすとか40代、50代になってから5キロで17分台、16分台とめざしていくとなると、なかなか難しいのが現状です。こういった方を速くするには、複合的なアプローチが本来は必要です。
長距離走・マラソントレーニングの4要素
物事を考えるにあたって、どのサイズで物事を考えるのかということは非常に重要な問題となります。どのサイズでというのは、抽象度という概念のことです。抽象度という言葉は認知科学者の苫米地英人博士の造語だそうですが、義務教育で習う言葉で言えば、上位概念、下位概念というあの考え方です。
例えば、地球と日本を比べたら地球が上位概念で日本は下位概念です。何故なら、日本の中に地球全体は入っていませんが、日本全体が地球の中に入っているからです。そして、地球の中には日本だけではなくて、アメリカもフランスもイギリスもドイツも入っています。そして、日本の中には関西地区とか関東地区というのがあって、関西地区は日本の下位概念であり、日本は関西地区の上位概念です。
更に関西の中に京都府というのがあって、京都府の中に京都市というのがあって、京都市の中に伏見区というのがあって、伏見区の中に久我石原町があって、ウェルビーイング株式会社は久我石原町の中にある訳です。
物事を考える時には、それぞれどのレベルで考えるかを考えないとおかしなことになります。吉本新喜劇の中に、遅れてきた男が「いやー、すんません。地図見ながら来たんですけど、道に迷ってしもうて」と謝りながら、世界地図を出し、そこに居合わせた人たちが「なんで世界地図やねん!逆に、ようそれで来れたな」と突っ込むネタがあるのですが、まさにそれと同じことになりかねない訳です。
では、長距離走・マラソントレーニングにおいてはこの概念図はどうなっているのでしょうか?
先ずは一番わかりやすい最も下位概念から説明しますと、これは実際に行う日々の練習内容です。例えば、今日私は15キロの低強度走の後に100mの流しを10本という練習をしましたが、そうなるとこれが最下位概念です。その一個上の上位概念は何かというとその日の練習の目的ということになると思います。
例えばですが、今とりあえず私が取り組んでいるのは体づくりです。7月下旬に今シーズン最後のタイムトライアルに取り組んで、その後はしばらく休養をとっていたので、その休養から空けて今は体を作っているところです。
その為の練習として、低強度の持久走、低強度から中強度の持久走、中強度の持久走、流しなどがある訳です。では、その日の練習の目的の上にある上位概念は何でしょうか?
これはおそらくその期間の目的でしょう。つまり、今この時期は何を目的に練習に取り組むのかということです。私の場合は、それは体づくりであり、一般的持久力を先ずは戻すことです。その後に一般的スピードを徐々に戻していくということがあります。更に、走り方改造に取り組んでいるので、この時期はそれも私の目的に入っています。
その一つ上にあるのが、期分けです。期分けというのは自分が目標とするレースから逆算して、各期間を分割し、それぞれの期間における最重要課題を設定していくのです。優先順位をつけると言っても良いでしょう。
そして、その上にあるのが、練習理論です。これを説明する前に、そのもう一個上を説明しましょう。そのもう一個上の概念というのは一般的運動理論です。一般的運動理論というのは、全ての運動に当てはまる一般的な運動理論です。例えば、過負荷の原理、超回復の原理、特異性の原理、あるいは重力や慣性の法則、ベルヌーイの定理といった一般的物理法則もここに含まれるでしょう。
更に、その上にある最上位概念は自分の夢を実現させるための最適努力です。最終的に自分がたどり着きたいところにたどり着くためには最も効率の良い方法というのがあるはずです。その最も効率の良い夢を実現させるための方法論というのは一つしかないはずです。
そして、その最も効率の良い方法を考えるにあたって、一般的運動理論、長距離走・マラソントレーニングにおける練習理論、期分け、期分けにおける目的、その日の練習の目的、その日の練習の内容という順番に考えることになっていきます。
こういった上位概念を全てすっ飛ばして、1000mのインターバルが最も効率の良い練習とか言っているのは、前提となる概念を全てすっ飛ばして金づちが世界最強の工具だと言っているようなものです。確かに、金づちは便利ですが、それは釘を打つという前提があってのことです。
ですが、木を切るのには便利ではありません。上位概念が変わると必要とされる下位概念も変わってしまうのですが、往々にして最下位概念だけを求める人が多いのです。理由は単純で、それが最も分かりやすいからです。しかしながら、最も分かりやすいものを求める平均的な人は平均的な成果しか挙げられないのが世の常です。
では、期分けの一個上にあり、一般的運動理論の一個下にある練習理論とはどのようなものでしょうか?
それは、3つのアンチノミーと時間という概念から構成されます。アンチノミーとは日本語では二律背反と訳されるもので、簡単に言えば、あちらが立てばこちらが立たずという関係にあるものです。
例えば、第一アンチノミーは負荷と休養ですが、練習の負荷が高ければ高いほど練習効果は高いというのは正しいです。結果を出そうと思えば、先ずは練習の負荷を上げていくのが手っ取り早いです。
しかしながら、休養の質が高ければ高いほど結果が出るというのも事実です。どちらも事実です。しかしながら、この二つは相反します。決して相いれません。これがアンチノミーです。このアンチノミーはさらに上位概念である一般的運動理論の中の過負荷の原理と超回復の原理から導き出されるものです。
そして、第一アンチノミーから導き出されるのは質と量、一般性と特異性です。質の高い練習も大事、練習量を増やすことも大事です。ですが、これら二つは決して相いれません。何故ならば、第一アンチノミーがその理由です。両方追いかけると休養の質が落ちてしまうのです。
同様に一般的練習が重要、特異的練習が重要というのも事実ではあるのですが、この二つは決して相いれません。何故ならば、両方追いかけると休養の質が落ちてしまうからです。
そして、4つ目の概念は時間です。要するに、目標とするレースに頂点を持ってこれるかどうかです。ピーキングと言い換えても良いでしょう。ピーキングは最も誤解されている概念です。ピーキングは良く調整と勘違いされています。調整というのは目標とするレースの1週間前や2週間前から練習量を落として、体をフレッシュにしていくことですが、ピーキングというのはそんな小手先のテクニックではなく、何か月にもわたって練習を戦略的に組み上げていく手法のことです。
では、劇的に伸びていくアマチュアランナーさんと時間がかかるアマチュアランナーさんの違いをここで初めて明かしましょう。ここまでの文章に付き合ってくださったあなただけにこっそりとお教えします。
劇的に伸びていくアマチュアランナーさんの特徴、それは・・・
私の所に来るまでに、バランスは悪いけれどとにかく練習していた人です。
えっ、声が小さすぎて聞こえなかったですか?
もう少しだけ大きな声で申し上げます。
それは私の所に来るまでにバランスは悪いけれど、とにかく練習していた人です。
ほんの一例を挙げましょう。例えばですが、私の所に来る前のコーチからマラソン練習にスピード練習は必要ない、寧ろスピード練習は悪くらいに言われていた人がいます。このかたは非常にまじめでたくさんのことを勉強し、そしてコーチから言われたことを着々とこなし、走り込みをされていました。
こちらの方は、持久面の土台がしっかりと出来ていたのです。それを時間をかけて、ややスピードよりの練習に変えていくと、一気に結果が出ました。でも、これは今までやってこられたことの積み重ねの上にあることなのです。何も私が全て正しかった訳ではありません。
また一番よくあるのは、以前のコーチ、あるいは本で読んだり、インターネットで情報収集したりして、レースに近い練習ばかりやっているような人たちです。例えば、マラソンレースペースでの30キロ走などが頻繁に入ってくるのです。これは短いレースに向けた練習も同じで、ハーフマラソンなら15キロのレースペースが頻繁に入ってるとか、5キロのレースに出るなら1000m5本ばかりはいっているとかそんな感じです。
こういったケースでは初めは伸びるかもしれませんが、かなり早い段階で成長が頭うちになります。やりだした時は、すっと走力が向上するので、本人もそれが絶対的に正しいと思い込んでしまうのですが、それは新しい刺激に一時的に体が反応しただけであって、一年中それをやっていれば良いという話ではないのです。
ですが、とりあえずこうやって負荷をかけていれば、体自体は強くなっていきます。また、そうやって苦しい想いに耐えているのに、速くならないと本人も悩みます。そのタイミングで私の所に来てくださる方は素直でもあるので、やはり劇的に伸びていきます。
ちなみに、一番極端だったのは、練習のほとんど全てが10キロのタイムトライアルというパターンの方です。これはどこに分類すべきか迷いますが、「練習は量より質や」みたいな感じだったんですかね。これもインターネットとか見ていると、「マラソントレーニングに量は関係ない、質が重要」みたいなことたまに書いてありますよね。まあ、そのやり方だけでは無理ですけど。
でも、やっぱりそれだけのことをやってこられた方は体も強いし、何よりも心が強いです。だから、あとは欠けていたものを足すだけでグーンと一気に伸びます。
つまり、まとめると一気に伸びる方はそれがどんなやり方であれ、とにかく練習している人たちです。やり方なんか間違っていても良い、あるいは間違っているという言い方は正しくないかもしれませんが、初めから効率ばかり求めずに、とりあえずあるやり方に焦点を絞ってやってきた人は私の所に来てくださると一気に伸びる方が多いです。
何故なら、ちょこちょこっと欠けているところを足して、全体の調和を図れば良いだけだからです。
あとは、本当に一番伸びるのは、ある程度これまで満遍なく色々なことを経験して、色々なことを勉強して、それなりに結果も出ている、でも本人が自分の可能性に気づいていないパターンです。確かに、ここまで色々なことを満遍なく取り組んで、勉強もして、本人なりに効率の良い練習を取り組まれています。
それでも、やはり市民ランナーですべてが完璧ということは、ほとんどありません。ですが、かなり仕上がっているので、周りもそれ以上のアドバイスは出来ないし、本を読んでもインターネットで情報収集してもそれ以上のものは得られない、寧ろその方の方が知識の量が多いという段階です。
ですが、この段階においても私の目から見れば、こことこことここをいじれば劇的に伸びていくぞと感じるものがある場合があります。しかし、本人はその可能性に気づいていません。本人なりにもうやり切っているからです。この段階において重要なのは、その可能性に気づいてもらうことです。
これまでの私の経験もまじえながら、色々なアドバイスをしつつ、これをこうやっていけば、こういう可能性がありますと本人に伝えます。でも、それだけでは相手も半信半疑です。半信半疑でも良いから少しずつ取り組んでいくと結果が出てきます。そのうち本人もその気になってきます。そして、相乗効果的に結果が出ていくことがあります。
これも年齢にもよりますが、男性ならマラソンで3時間を切るあたり、女性で言えば、3時間15分を切るあたりのレベルの方で起こる現象です。ただ、これは年齢によって若干変わりますし、全然違う種目の場合もありました。
元々中距離の方で、持久力不足に悩み、一時はもう3000m8分台は出ないのではないかと悩まれていたのですが、練習を拝見し、あーこれはいけると思いました。そして、時間は少しかかりましたが、一年は経たずに8分台が出ました。3000m8分台となるとさすがにハードルも高いので、無事に出て私もホッとしました。
では、このパターンは何故劇的にタイムが伸びるかというと理屈は同じです。それまでご本人が継続的に色々なことに取り組まれて、努力をして、勉強してこられたからです。こちらがこんなことをやりたいなと思っていても、相手の基礎体力がそのレベルに達していないと出来ません。
またこんなことを伝えさせて頂きたいなと思っても、前提となる知識がないと前提となる知識からお伝えさせて頂かないといけないので、時間はかかります。でも、勉強されてきた方は話が早いのです。ツーと言えば、カーと通ずるものがあるのです。だから全体にかかる時間が短縮されるのです。
このように書くと、おそらくあなたは二つのことを思われるのではないかと思います。
一つ目は、なんだじゃあ凄いのは結局池上じゃなくて、それまでにきちんと練習をしてきたランナーさんじゃないか、池上は大したことがないのではないかということです。
これに関しては事実です。本当ですよ。最終的には、ご本人たちが努力されてきたからこそ結果が出ているのです。ただ、では誰が指導しても同じ結果になるのかということですが、それはウェルビーイングオンラインスクールの受講生様のお声にお任せしましょう。
二つ目は、じゃあそういった土台の無い人は無理なのか、所詮素人が結果を出すのは無理なのかということですが、そんなことはありません。今結果を出されている方たちもかつては素人だったのです。
では、土台が出来ていない人にはどのように関わらせて頂いているのかということですが、土台を作るところから関わらせて頂いているのです。そして、ランニングのいいところはこの土台を作る練習だけである程度結果が出ることです。
他のスポーツでも基本の練習って大切だと思うんですけど、ただそれが嫌われるのは単調だからです。つまり、退屈なんです。一方で、ランニングの場合は基礎的な練習の方が苦しくもないし、日々のルーティーンにも組み込みやすいし、走り終わった後の方が気持ちが良いという爽快感のある練習が多いんです。
何故、こういったことを私が知っているかというと、私も市民ランナー歴があるからです。だいたい速い市民ランナーの方は昔競技者として結果を出していて、その後もその走力を維持して結果を出すというパターンなのですが、そもそも私は初ハーフマラソンから63分09秒の当時の関西歴代4位の記録を出すまで、市民ランナー生活で出しています。完全に一人のセルフコーチングです。
どんな市民ランナーさんが来られてもだいたいかつての自分が経験した段階なので、そのステップの踏み方は分かります。そして、このステップにおいては、追い込まなくても良いから気持ちよく速く、気分よく走りながら量を増やしていくことが大切なのです。
具体的には低強度の持久走、低強度から中強度の持久走、中強度の持久走、流し、200m5本、坂ダッシュ、あとは補強的にジョギングや体幹トレーニングを組み合わせて土台を作っていくのです。土台を作る練習しかしていないから結果が出ないだろうと思われるかもしれませんが、どういたしましてこの時期が最もローリスクハイリターンな時期です。
ある程度レベルが上がってくるとある程度のリスクはとっていかないとダメなのですが、マラソンで4時間を切るとか、年齢にもよりますが3時間半を切るとか、あとは中学生で言えば、男子の3000m10分切りとか、女子の1500m5分切りとかその辺のレベルは基礎的な練習を中心としながら、あとは調味料的にインターバルなどを使っていくのです。
近畿大会とか全国大会を狙う段階になって初めてちょっと上のレベルのことをやらせても良いかなという段階です。
ただ、まだ土台が出来ていない段階では確かに私は必要ないのかもしれません。先輩の市民ランナーさんや巷の書籍、他の市民ランナーコーチでも充分だと私は思っています。あまりお勧めできないのが、インターネットの情報ではあります。私もブログ書いたり、ユーチューブで動画出しているので、矛盾しているようですが、最も玉石混交であるのは否めません。
勉強になるものもあるのも事実ですが、確率的には本を買うのと比べると平均値が低いです。中にはインターネットで見た誤った情報をずっと信じている方もいらっしゃるので、最低限顔出し、実名で、過去の実績とかもきちんと掲載されている方の情報を集めることをおススメします。
過去の実績というのは何も優れているか優れているかではありません。選手としての能力とコーチとしての能力は全く別物です。ただ、陸上競技というのははっきりと名前と結果が残るスポーツなので、名前と実績を書いておくのが信用してもらうには一番手っ取り早いんですよね。
別に優れた実績が無くても良い、でも、自分の名前と実績を書いておけば検索できる訳ですから。情報の発信者としてはそれをやらない手はないんです。それをやらないとすれば・・・・あとは推して知るべしです。
最後に、自分である程度土台が出来ていて、もう一個上、もう二個上、あるいはもう十個上くらいのステップに進みたいという方に緊急案内です。