東京五輪一万米代表選手の練習における十二か条
更新日:3月21日
とうとうあの二万円の本が届きました!
あなたは東京オリンピックに10000m米国代表として出場したジェリー・リンドグレンという男をご存知ですか?
もしも、ジェリー・リンドグレンって誰?という方がいらっしゃいましたら、下記のリンクをクリックして過去の無料ブログ記事「低強度走の重要性を見直そう」を先ずはお読みください。
さて、件の本、少し残念だったのがジェリー・リンドグレンの執筆した書籍ではなくて、ジェリー・リンドグレンの影が書いた本であったということです。影とは一体誰のことなのか、おそらく親友ということだと思いますが、ジェリー・リンドグレンの近しい人が書いた本で、本人の書籍ではなかったようです。
しかしながら、最後の方に本人が執筆した部分もありまして、そこにジェリー・リンドグレンのトレーニングの12か条がありましたので、その言葉をなるべく直訳させて頂くとともに市民ランナーの方にもなるべくお使い頂けるように私自身の見解も述べさせていただきます。
それでは早速行きましょう!
ジェリー・リンドグレンのトレーニングの12か条
第一条 絶対に絶対に絶対にやめてはいけない
やめない限りは成功のチャンスはあるが、やめた瞬間にその可能性は0になる。私は一所懸命にトレーニングに励みながらも、あと少しで成功するというところでやめたランナーを何人も見てきた。続けていれば遅かれ早かれある程度の成功を収めることは出来る。
池上見解:これは本当に市民ランナーの方にとっても真理だと思います。やめなければ、ある程度の記録(サブ3やサブエガ)は出せるものなのに、やめてしまう人はすぐにやめてしまう。とりあえず、自分のペースで続ければある程度のレベルには到達できるものです。
第二条 限界効用を理解せよ。
例えば、400mのインターバルを毎日やるとする。初めは脚が重く、動かず、非常に苦しい思いをする。しかし、やっているうちに徐々に徐々に走れるようになってくる。そして、しばらくその練習をやっていると、それ以上の向上が得られなくなってしまう。ここで多くの人が初めよりもはるかに速く走れるようになっているにも関わらず、オーバートレーニングではないかと思ってしまうが、実際にはそうではない。
同じ練習をやり続けていると、徐々にその練習から得られる練習効果は逓減してしまう。これを限界効用と言う。3週間から6週間ごとに新しい練習を試してみるのが良い。400mのインターバルの次は800mのインターバルとか登板走とか10マイルの高強度走とか。ある一つの練習をマスターしたら新しい練習に挑戦するんだ。
池上見解:結局のところ、この限界効用こそが期分けの意義になってくる訳です。年間を通して様々な練習を取り入れることで、この限界効用の制限を受けずに走力を向上し続けることが出来る訳です。
そして、同じ練習と言ってもしばらく別の練習をやって、別の能力を手に入れてからもう一度その練習をやってみると、体が再び反応するものなので、次のシーズンに入る頃には限界効用の効果を受けなくなっているのです。
第三条 走ることに全身全霊を注ぎ込め
彼氏や彼女は集中を妨げる最大のものであり、テレビやインターネットも容易にその集中を乱す。走ることに集中し、走ることを妨げるようなものは全て人生から排除しなければならない。人生で何か大きなことを成し遂げたいのであれば、何か大切なものを犠牲にしなければならない。ランニングはありとあらゆるものの中で、最も大きな犠牲と献身を要するものだ。
池上見解:この点についても100%同意です。まさに、彼の言う通りですし、実際に嘗ての私は彼の言うとおりの生活を送っておりました。その経験と今市民ランナーさんの指導をしながら走っている現在と両方比較しながらお話させて頂きますと、彼の言っていることは正しいけれど、果たしてそれが最善の方法であるのかはやや疑問でもあります。
先ず第一に、市民ランナーさんにとっては非現実的であり、また第二に、一見回り道に見えることが競技にとってプラスに働くこともあります。
では結局のところ、最適解は何であるのか?
先ず第一に、人生において優先順位をつけることは非常に大切なことです。自分の価値観と自分の時間の使い方は一致しているのか、これを考えることは非常に大切なことです。
確かに、ついついインターネットで色々な情報を見てしまうけれど、それは本当に自分が望むことなのでしょうか?
例えば、明日死んでしまうとしても自分はユーチューブを永遠に見続けたいというのであれば、それで良いでしょう。
ドンテコルテの渡辺さんのようにスワイプスワイプし続けたいのであれば、まあそれでも良いでしょう(笑)
しかしながら、自分が心の底から望むものは他にあるのに、なかなか動き出せずに、気づけば永遠にインスタグラムやXの画面をスクロールし続けているというようなことになっていないでしょうか?
先ずは自分の価値観が時間の使い方に反映されているかどうかを考えるというのが第一点。
第二点は私が最終的にたどり着いたことは、人間は一度に出来ることは一つしかないことを自覚し、今自分が現在進行形で対処していること以外は存在しないかのように考えることです。
私は有難いことに数百人さんのランナーさんから常にご相談を頂いております。常に、メールボックスには返信していないメールが溜まっており、更には経営者として部下の指導、マーケティング、セールス、新商品の作成、外部の人間との折衝、研究、経理、発送業務などの指示、などなどやらなければならないことは常に山積されています。
正直な話、走ることに集中することは難しいです。
走ることだけではありません。お客様Aのメールに返信しながら、お客様Bのことが気になり、お客様Cのメールに返信しながら、お客様Dのことが気になり、お客様Dのメールに返信しながら部下Aのことが気になり、部下Aのメールに返信しながら、今月の売り上げが気になり、といった有様でした。
しかし、ある時気づいたのです。
自分の体は一つしかない、一つしかない体を使って、同時に2つも3つもこなすことは不可能である、不可能なことを考えても仕方がないではないかと。
それ以降は今目の前に存在していること以外は存在しないと考えることにしました。走っている時は、部下もお客様もわが社も存在しない、そう考えることで走ることに対する集中力が向上するのと同時に、仕事に対する生産性も向上しました。これは仕事の時にはこの後にやってくるインターバルトレーニングや40㎞走のことを考えないということでもあるからです。
ジェリー・リンドグレンが正しいとは思いますが、実際に彼の言うとおりに出来る人は少ないでしょう。ならば、出来る範囲内で如何に工夫をするのか、これに尽きると思います。
彼女、彼氏は集中力を妨げる最大のものである、これは事実かもしれませんが、しかし、すでに既婚者の方も多い訳です。それならば、走っている時は配偶者も子供も存在しないものと考える、これが私なりの答えです。
第四条 自分に負荷をかけろ
レース中にはありとあらゆる負荷が自分にかかる。相手に負荷をかけるか、それとも相手から負荷をかけられるか、それでしかない。であるからに、練習においても苦痛を避けるのではなく、ありとあらゆる負荷を自分自身にかけろ。急に全力で走ったり、ペースを上げたり、練習の最も苦しいところを反復したり。
池上見解:トレーニングの目的が自分に苦痛を与えることになるべきではないです。トレーニングの目的は常に、自分が望む適応反応を引き起こす為の刺激であるべきです。
しかしながら、全体のおよそ5%程度はレースで経験するであろうありとあらゆる心理的なストレスに自分を晒し、レースのシュミレーションになるべきです。
まず第一に、暑さ、寒さ、強風、雨、雪、のどの渇き、などなどありとあらゆる悪条件に慣れておいた方が良いです。わざわざ悪天候の日を選ぶ必要はないですが、普通にやっていれば悪天候の日だってある訳です。そういう日に悪天候を避けずに予定通りに練習をこなすということが大切です。
そういう意味で言えば、昨今の至れり尽くせりの練習会は少しどうかと思う面もあります。私も会社経営をしていますから、そうしないとお客さんが来ないという事情は分からなくはないのですが、一つくらいはサービスとして敢えて苦痛を与えるような練習会があっても良いでしょう。
また、トレーニング面においては変化走はおススメです。人為的に苦しい状態を作り出して、その苦しい状態であまりペースを落とさずに回復させる、インターバルのようにジョギングで繋ぐのではなく、中強度くらいの強度で回復したり、あるいは距離走の中に1㎞や2㎞の疾走を入れるのもおすすめです。
生理学的にもこういった練習を入れることで、乳酸を有気的代謝でエネルギーとして使う能力が高まると言われていますが、心理面の効果も大きいと思います。
私が高校時代には50mごとに変化をつけて1000mを3000-5000mのレースペースくらいで走り、そのあと100mで繋いで300m2本を1500mのレースペースで走るのを3セット繰り返す練習がありました(セット間は1000mジョギング)。
こういうペースを変化させる練習を入れておくと、レースの様々な変化に対しても落ち着いて対処することが出来るようになっていきました。心理面での効果は特に大きかったです。
第五条 ウェイトルームから遠ざかれ
ウェイトトレーニングは同じ時間のランニングと比べるとトレーニング効果が低い上に、ウェイトトレーニングは筋肉だけではなく、脂肪の貯蔵量を増すことにもなり、重りを背負って走ることになる。たくさん走れば、体重を増やす恐れなく、脚の筋肉を鍛えることが出来る。
池上見解:これについても基本的に同意です。ただ、人によっては故障の予防や経済的な走り方を作る為の体幹補強、あるいはアンチエイジングを目的としてホルモン分泌の為のウェイトトレーニングがあっても良いと思っています。また、坂ダッシュやバウンディングなどのジャンプ系のトレーニングで脚筋力を養うのも効果的な筋トレになります。
結局のところは、その人がランニングに何を求めるのかと、普段の練習量がどのくらいなのかということでしょう。
例えば、ウェルビーイングオンラインスクールの受講生様の中には月間800-1000㎞走るのが目標という方もいらっしゃいます。こういう方の場合、補助的練習はもはや必要ないのではないでしょうか?
市民ランナーの方の場合は走ることと休養に全振りしても良いでしょう。
一方で、月間300㎞程度の練習量で、走るのも速くなりたいけど、男として、女として魅力的な体でいたいという方もいらっしゃる訳です。そういう場合は、体幹補強や多少のウェイトトレーニングは取り入れた方が良いでしょう。
第六条 たまには休め
私がいつも山に登って下ってくるコースがあったが、ある日疲れ切ってしまった私は山の上の木の下で一晩眠った。そのあとは以前よりも元気になり、力強く走れるようになった。高強度な練習の次の日は必ず低強度な練習を実施する選手もいる。普通は2日、3日、時には4日連続の高負荷練習がランナーの潜在能力を最大限に引き出す。しかし、常に頑張り続けることは不可能だ。時には走らない練習が走る練習よりも良い練習であることがある。時には休め。
池上見解:ここで言う休むというのは幅広く解釈するのが良いように思います。必ずしも完全休養をする必要はなく、軽めのジョギングや体幹補強だけの日、サイクリングや水泳も一種の休養であるし、また一日だけではなく、1‐2週間軽い練習を組むことも立派な休養です。
自分の体の休みたいという欲求が日に日に増していくようであれば、休んだ方が良いです。
第七条 生存者たれ
ランニングにおいて儕輩の群をしのいで目立った成功を成し遂げるような人間は時間をかけている。痛み、故障、ねんざ、病気、骨折、ありとあらゆる苦しみの向こう側に夢は待っている。現代社会はインスタントコーヒーを提供し、インスタントハンバーガーを提供し、現代人は我慢するということを忘れてしまった。ランニングの世界で成功する人間は能力に優れた人間ではなく、自己に対する否定を拒絶した者であることをわするるなかれ。
池上見解:これも本当にその通りで、上手くいかない人ほど短期的にしか物事を考えられないです。常に、目先のレース結果や練習に心を惑わされ、気持ちが一つに定まらないです。
では、気持ちが定まる人間の特徴は何か?
それは過程を楽しんでいるか、夢を明確に持っているか、もしくはその両方です。
確かに、目標から逆算することは大切なことです。目標から逆算して適切な青写真や計画を持つことは非常に大切なことです。
ですが、同時に成功する人は日々の練習が手段ではなく目的になっています。計画や青写真の段階では、もちろん日々の練習はレースで良い結果を出す為の手段なのです。しかしながら、実行の段階では日々の練習は目的であり、日々の練習をこなすことの中に大きな喜びを感じているということが一点目の人たちです。
良い意味でその日暮らしなのです。遠い未来のことは考えない。その日の練習に全集中し、その日の練習の中に喜びを見出している人たちです。
二つ目は、逆に理想の未来を確定的に考えている人たちです。どういうことかというと、理想の未来は必ず実現するという設定で生きている人たちです。感覚的には、ハッピーエンドだということを知っている映画をもう一回最初から観るような感覚です。最後に成功することが分かっているので、途中で主人公に訪れる危機が余計に話を面白く、興味深くさせる訳です。
それと同じで、最後は自分は必ず成功する、幸せになると事前に決めつけて、そういう設定で生きているのです。
こういう人はすぐに結果が出なくても、まあまあこういうこともあった方が人生面白いよねくらいに思えるのです。
人生は自分が主人公の物語。波乱万丈な方が人生は面白いです。こう考えると、思いがけない挫折も熱中症も故障も、全てが物語をよりドラマチックにするための演出に思えてこないでしょうか?
いずれにしても、互いに相反するようで共通しているのが、目先の結果に囚われないということです。何もかもが便利で、ボタン一つでコーヒーは出てくるわ、風呂は沸くわ、米は炊げる(かしげる)わ、これでは少し努力したら、すぐに結果が出ると思ってしまうのも致し方がないですが、残念ながら長距離走、マラソンはそうではありません。
それを理解して、如何に継続的に心の中に喜びと情熱を持って走りつづけられるか、そのコツは先述の二つにあります。
私なんかたかだか走歴二十年ですが、走歴五十年のウェルビーイングオンラインスクールの受講生様は今もはっきりと心の中に日本一という情熱の炎を燃やし続けておられます。それとともに、日々の練習は監督(お孫さん)監視の中、監督との素敵なひと時を楽しまれておられます。
日本一になるという設定で生きながらも、日々の練習は日本一になる為の手段ではなく、それそのものが喜びであるという目的として走られている訳です。
我々もこういった生きた鑑から謙虚に学ぼうではありませんか。インスタント社会において、こういう素晴らしい方の存在と出会いは非常に有難いことです。
第八条 体の声を聴け
体の声を聴けば、いつ頑張るべきで、いつ低強度走を導入すべきかが分かるようになるし、頑張ることによって得られる快感というものも感じ能う。二歩で吸って二歩で吐いているのか、それとも二歩で吸って一歩で強く吐き出しているのか、強く呼吸を吐き出しているのは体が頑張っている証拠だ。接地の感触はどんな感じか?
つま先接地か踵接地か。ストライドをやや短くした方が走りやすいのか。体の声を聴き、それに応じた微調整を学べ。
池上見解:結局のところ、私が主観に応じた強度管理を推奨するのもこの一点にあります。体の感覚に意識を集中させれば様々なことが分かります。体の感覚とは、飛行機の操縦席にある様々な計器のようなものです。
体の感覚に集中することで、練習がきつすぎるのか、楽すぎるのか、ちょうど良いのか、ストライドが広すぎるのか短すぎるのかちょうど良いのか、脱力し過ぎなのか、緊張し過ぎなのか、といった様々なことが分かるようになります。
大雑把な方向性やトレーニング方法に関しては理論や理屈が大切ですが、適切な微調整を為し能うるのは常に体の感覚の方です。
第九条 君は個性的だ
現存する如何なる練習計画も本もあなたにとって完璧な練習計画ではありえない。優秀なコーチがいるのであれば、そのコーチに頼ることは良いことではあるが、細かい部分は自分に応じた応用というものが必要である。君はこの世で唯一無二の存在であり、君の個性を活かしきることが出来るのは君しかいない。そして、相手がたとえ善意で言っていたとしても、絶対に他者に君自身の可能性を否定させてはいけない。
池上見解:私も完全に同意です。私はまず初めに誰に対しても通用する普遍的なトレーニング理論を作りましたが、それと同じくらい重視しているのが、その理論に基づいて個々に応じた修正を加えることです。
また、逆説的ではありますが、最終的には自分自身の個性を完全に活かしきるのは自分自身なので、普遍的なトレーニング理論を先ずは教えることに重点を置いているのです。結局のところ、細かいところは本人にしか分かりません。本人にしか分からないからこそ、こちらで練習計画を立てるようなサービスでは自ずと限界があるのです。
ですから、本人が普遍的なトレーニング理論について学び、様々な事例について学び、そこから自分の練習に応用することが大切なのです。
実際に、私もそのように様々な講義を作成しております。
また、あなた自身の可能性を否定するような人のことをドリームキラーと呼んだりもしますが、とにかく後ろ向きな言葉を使う人、後ろ向きな態度を取る人とは距離を取ることです。
もちろん、向こうは善意で言っていることもあるでしょう。君には向いていないよ、もっと他の道に進んだ方が良いんじゃないなんて善意で言う人、必ず周りに一人はいるでしょう?
しかし、人生はどこまでも積極的一貫でいかなければいけません。そうしないと拓けるはずの道も拓けません。
逆にですが、ジェリー・リンドグレンの言うように、程度の差こそあれ継続さえすれば、人よりは優れた存在になれるものなんです。
どこまでも積極一貫で走りつづけ、自分の可能性について否定的な言動をとる人とは距離を取る。これは非常に大切なことです。
では、配偶者や家族のように距離を取りたくても距離を取れない人との付き合いはどうすれば良いのか?
先ず第一に、とにかく3か月でも半年でも1年でも、一定の期間黙ってもらうことは出来ないでしょうか?
とにかくこの期間だけは一言も言わずに、自分の行動を見てそれを以て評価するようにお願いしてみるのです。だいたいの人はあなた自身の行動を見て、その気持ちが本気であることが確かめられたら、それ以上は何も言わないものです。
それでも無理ならばどうすれば良いのか?
最終的には、相手が何を言おうとも、それによって自分の心を波立たせるのは自分自身であることを忘れてはなりません。ある意味では、相手を適当にあしらっておくことが相手を尊重することに繋がる訳です。
「あんたにサブ3なんて無理よ。だいたい小さい頃から運動が苦手で、体育の成績で5を取ったことないじゃない。無理して走るよりも一日一万歩くらい歩くのが一番健康らしいわよ」
なんて言われたら、「母上昨日の手ごねのハンバーグ大変美味しゅうございました」と返しておけば良いのです。
そうしたら「もう、この子ったら本当に分からず屋なんだから。ご飯作って待ってるから気を付けていってきなさい」となります。
奥さんから「毎日毎日走ってサブ3なんか達成して一体何になるのよ。一円の得にもならないじゃないの。だいたい、あなたなんか昔から運動音痴なんだから。それよりも、うちには子供が3人もいるんだから、もっと働いてよ」と言われたら、「おっ、怒った顔もなかなか可愛いな。俺はお前と結婚して良かったよ、ありがとう」と言っておけば、「もう、そんなこと言ってんじゃないわよ」とか言いながら、内心喜んでますからご心配なく。
全然話がかみ合ってないじゃないかと思われるかもしれませんが、話が通じない人間には何を言っても永遠にかみ合いません。適当にあしらっておくのがお互いの為というものです。
そのうち、頭がおかしいと思われてしまえばしめたもので、もう相手も何も言ってこなくなります。
第十条 楽しめ
時に我々は真面目過ぎると思うことが私にはある。ただ走るだけではなく、走りがてら釣りをしたり、泳いだり、女の子を見たりした方が良い。リラックスして人生を楽しむんだ。この世界は様々な香り、音、景色に満ち溢れている。ランナーであるということはこれらを他の人よりも楽しめるということでもある。練習の代わりに、冒険をしてみなさい。髪をなびかせる風を感じ、走り際の花の香を楽しみたまえ。
池上見解:これはすでに、継続のところで述べたとおりのことでもあります。走ることは手段ではなく、それそのものが人生の目的でなければならないし、そのための一工夫が第十条であるといったところでしょうか。
断言しますが、心の底から結果を出したいと思い、それについての方法論を学び、適切な戦略や計画というものを持たなければ決して結果には繋がりません。絶対に結果には繋がりません。
では、計画や戦略を持つことと、日々の練習を目的と考えることの関係性はどのような関係性になるのでしょうか?
一見、矛盾しているようにも思えます。
私なりの理屈は、理想の未来に向かって計画や戦略を立てる訳ですから、明日の練習もその理想の未来の一部であり、そういう意味において手段ではなく目的であるということです。
もうちょっと説明しましょう。サブ3をしたいと思って練習計画を立てるとします。そうすると、その計画を全てこなせばサブ3を達成できるということになります。少なくとも、その練習計画が完璧であればそうなります。
この時にサブ3を達成したら喜びを感ずるでしょう?
そうしたら、今日の練習が終わったら同じように喜べば良いのではないでしょうか?
だって、計画通りに練習をやっていけばサブ3を達成できるのですから。毎日の練習が終わるたびにサブ3に近づくのです。そうしたら、やったー!じゃないでしょうか?
では、その臨場感を高めるにはどうすれば良いのでしょうか?
この計画をこなせばサブ3が達成できるという確信の度合いを強めるにはどうすれば良いのでしょうか?
そのためには適切な計画を立てるための理論と事例について学ぶ必要があります。これが理論学習や情報収集、情報整理、情報分析の重要性なのです。
いずれにしても、日々の練習に対して喜びを感ずる、また楽しむための一工夫として観光ラン、食べ歩きラン、水泳、釣り、女の子観察、イケメン観察があっても良いということです。
第十一条 指導は常に積極的に
もしも他のランナー達を指導するのであれば、彼らがやっていることの中から正しいことを指摘してあげることが大切だ。我々は常に自己に対して批判的であり、積極的な物事を見出すことが出来ない。良い指導者というものは継続的に、その選手がやっている正しいこと、良いことを指摘してやるのである。そうすれば、自然と悪い習慣は消え去る。
池上見解:これもまた重要な真理です。そして、市民ランナーの方の多くはセルフコーチングです。つまり、自分で自分を指導しています。だからこそ、自分のやっている正しいことに目を向けなければなりません。人間というのは往々にして、自分がやっていることは良いことであれ、悪いことであれ、それが当たり前になっており、価値を感じなくなってしまっているのです。
それで、往々にして重要な点を見逃しがちなのです。自分がやっている中で、正しいことに目を向け、常にそれを自分でしっかりと評価してあげることが大切です。
そうこうしているうちに、欠点は勝手に克服されていくものです。
ただし、ここでやはり重要なことは何が正しくて何が間違っているかを事前に理解しておくことです。だからこそ、理論学習と事例について学ぶことが大切なのです。
第十二条 10マイル(16㎞)の高強度走
これを私はロン・クラークから教わり、それをそのまま何人かのランナーに伝えたところ、全員数週間以内に明らかに走力が向上した。
この練習は10マイル(16㎞)の高強度走である。信号も障害物もない10マイルのコースが必要となる。道中自分でタイムを取りながら、それぞれのチェックポイントをいくつで通過したのかを確認する必要がある。
例えば、私は今ホノルルに住んでいる。いつもカピオラニ公園に住んでおり、第一チェックポイントはダイアモンドヘッドの頂上で、第二チェックポイントはトライアングル公園(ダイアモンドヘッドのカハラ側のフォートダラッシー公園)。第三チェックポイントはワイアラエカントリークラブを左手に曲がっていくところであり、第四チェックポイントはカラニアニオレハイウェイへと向かっていくガソリンスタンド、第五チェックポイントはカラニアニオレハイウェイの公衆電話であり、それが折り返し地点、折り返してからも先述のチェックポイントがそのままチェックポイントになる。
この10マイル高強度走の目的はすぐに酸素負債の状態へと陥ることである。なので、走り始めたらとにかく第一チェックポイントまで全力で走る。第一チェックポイントで時計を確認し、その記録を覚えておき、次回走る時にはそれよりも速く走ることを目指す。
第一チェックポイントに到達したら、そのまま走りつづける。ここまでどれだけ一所懸命に走ったかは忘れろ。とにかく第二チェックポイントまでの道のりに集中し、そこまで走りつづけるんだ。第二チェックポイントまで来たら次は第三チェックポイントまでに集中し、そこまで行ったら第四チェックポイントに集中し、と続けていき、10マイル走り切る。折り返してから、最後の半マイル(800m)は再びゴールまでのラストスパートをかけなければならない。
この練習を週に一回ほど実施せよ。それぞれのチェックポイントで前回の記録を上回ることを目指し、前回の自分と競争せよ。自分との競争を5週間継続し、どの区間は前回の記録を上回り、どの区間は前回の記録を下回ったかを記録せよ。5週間、週に1回この練習をやれば、レースはこの練習に比べれば楽だと感ずるようになっているだろう。
池上見解:まず第一に、ジェリー・リンドグレンもロン・クラークもマラソンやハーフマラソンではなく、5000mや10000mを中心に活躍した選手であることをおさえてください。ハーフマラソンやフルマラソンを専門にやる人からすれば10マイル(16㎞)はレースよりも短い距離ですが、トラックランナーからするとレースよりも長い距離です。
従って、ハーフマラソンを専門にやるランナーからすると25-30㎞の高強度走に該当すると考えると良いでしょう。
では、フルマラソンを専門にやる選手からすると45-50㎞の高強度走に該当するのでしょうか?
理屈の上ではそうですが、いささか非現実的です。30-45㎞の高強度走に該当すると考えると良いでしょう。
話をロン・クラークに戻しますが、ロン・クラークは一人で1万メートルの世界記録を約28分15秒から27分39秒まで一気に引き上げた男です。
そして、私が知る限り、彼が一番初めに1㎞3分ちょっとという速いペースでの持久走を練習の中に取り入れた男です。
それ以前からも持久力の重要性というのは広く知れ渡っており、週に200-400㎞走り込む選手は他にもいました。ジェリー・リンドグレンもそのうちの一人というか、その中の最上級の男でした。継続的に週に400㎞くらい走っていた男です。
そして、インターバルトレーニングはその原型となるファルトレクが戦前のフィンランドで取り入れられ、戦後には東側の研究者たちがさらに研究を重ねて体系化して実施し、エミール・ザトペック、ウラジミール・クーツらの東側諸国の選手たちが大活躍しました。
持久練習もふんだんにやり、スピード練習もふんだんにやっている、でも意外と速いペースを休憩なしでやる練習はあまり重視されていなかったのです。
ニュージーランドではアーサー・リディアードという名指導者が目標とするレースペースでレースの距離の半分から3分の2くらいを走らせるという練習を選手にやらせていましたが、ロン・クラークはレースよりも長い距離をレースよりもやや遅いペース(具体的には1㎞あたり10-15秒遅いペース)で実施して大きな成果を挙げていたのです。
そして、リディアードがこの練習のやり方を何人かの選手に伝えてから大きな成果を挙げていると記している通り、私もアマチュアランナーさんに実施していただいて大きな成果を挙げてきました。
ただし、基礎が出来たあとの話です。何事にも段階というものがある訳です。あくまでも、レースペースよりもはるかに遅いペースでの走り込み、レースペースよりもはるかに短く速いペースでのインターバルトレーニングやファルトレク、これらの練習が出来たあとに導入すればという条件は付きます。
歴史的な記録の向上とその練習方法はそのまま個人の記録の向上と練習方法にも当てはまる話なのです。
前の時代の成功者たちのやり方を踏襲しながら、新しいやり方を加えることで世界記録が伸びてきたように、個人においても他の成功者のやり方を踏襲しながら新しいやり方を加えることで記録が伸びていくものなのです。
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