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マラソントレーニングの最小単位は6か月で考えるべき理由

9月8日
読了時間: 14分

こんばんは!


 本日は長距離走、マラソントレーニングを考える上での最小単位というものをお伝えさせて頂きたいと思います。


 最近私が思うのは日々頂く質問の中でこれを理解されていない方が多いなと感じます。逆の言い方をすれば、1週間や1か月単位くらいでしか物事を考えられていない方が多いなと思うのですが、しかし、長距離走、マラソンというのはだいたい6か月くらいの単位で考えるべきものです。


 勿論多少は前後しても構いませんし、近年は夏が長くなっていることを考えるとおよそ1年間を最小単位で考えても良いでしょう。いずれにしても、4か月から1年間を最少単位で考えるべきです。


 では、その根拠と具体的な手法はどのようなものでしょうか?


 先ず第一にですが、何か大きなことを成し遂げるのに最も簡単な方法はそこに至るまでの過程をなるべく細分化することです。これが最も簡単な方法です。


 マラソンの記録が4時間半、4時間20分、4時間10分、4時間ちょうど、3時間50分、3時間40分と記録が上がっていくことを考えていくと、なんだか一つの階段を少しずつ登りつづけているように感じられます。


 しかし、これは事実に反します。


 実際には、総走行距離はどうか、中強度の持久走の質はどうか、低強度走の質はどうか、ショートインターバルの質はどうか、ロングインターバルの質はどうか、高強度走の質はどうか、距離走の距離は何キロか、頻度はどのくらいか、ペースはどのくらいか、総負荷はどのくらいか、現在の自分の体の回復力はどのくらいか、補助的練習は何をどのくらいやっていて、体がどのくらい適応しているのか、短距離はどのくらい速く走れるのか、などなど様々な観点からトレーニングを捉え、最後にそれを統合してゆくことになります。


 考え方としては国立大学の受験勉強みたいなものだと思います。


 もしかすると、最終的には偏差値であったり、出身大学がどこの大学みたいな1つの物差しで測られる部分も大きいかもしれません。


 でも、その過程を見ていくと国語は何点、社会は何点、数学は何点、英語は何点、理科は何点と大きく五強化に分かれ、その中でも国語は現代文と古文と漢文に細分化されるし、現代文はさらに読み、書き、話す、聴くの4つに分かれ、さらには小説か評論か文学かというようにいくつもの項目に細分化されています。


 古文だって文法の理解が足らないのか、知っている動詞の数が少ないのか、名詞の数が少ないのか、助動詞の使い方に関する理解が足らないのか、細分化されていきます。


 マラソンも同じだと考えてください。マラソンという一つのスポーツをやっていることに変わりはありませんが、受験勉強という一つの競争をやっているからと言って、それは何か一つのことだけをやっていれば良いというのではないのと同様で、マラソンも実際には様々な観点に細分化して考えてゆくことが出来る訳です。


 そして、ここでも一つ理解しておかなければならないことは、だいたい人間というものは一つの新しいトレーニング刺激に対して適応するのに6週間かかるということです。少し幅を持たせて4週間から8週間で考えても良いですが、いずれにしても間をとれば6週間ということになります。


 例えば、今総走行距離を増やすという一つの課題に取り組んでいる人がいるとしましょう。この人の現在の総走行距離は週に80㎞であり、これはこの人の人生最高値です。つまり、これよりも多い練習量はこの方にとっての未知の領域であり、新しい領域なのです。


 この人が週間走行距離を100㎞に増やしたいのであれば、最低でも4週間、出来れば8週間(2か月)はこの週に100㎞の総走行距離に体を慣らすことに全集中をすべきです。


 この期間にこれまでやってきたことを維持する分には比較的問題がありません。


 例えば、週に1回400m15本を200mつなぎで90秒という練習をやっていた人はそのまま400m15本を200mつなぎで90秒という練習を継続する分にはさほど問題はありません。


 しかし、週に100㎞の練習に増やし、更に400m15本を86秒に引き上げ、さらに10㎞を1㎞4分ちょうどで走る高強度走という新しい練習を取り入れ、更に距離走のペースを今までの4分30秒ペースから4分15秒に引き上げるというようなことをしてはいけません。


 何故いけないのかと言いますと、おそらく良いとか悪いとか以前の問題として出来ないと思います。短期的にはこなせても、それを2か月、3か月と続けていくと故障するか、走力が低下するかのどちらかになるでしょう。


 もう一つの問題は成功確率が低いからやってはいけないのです。人間は複数の要素を同時に改善できるようには出来ておりません。確かに、部分的には同時に改善がやりやすいことも多々あります。


 例えば、総走行距離を増やすのと同時に中強度の持久走の質もあげるというようなことは比較的やりやすいです。


 例えば、短めの中強度走で質に重点を置き、長めの低強度走で量に重点を置いてその練習を組み合わせるというようなことは比較的出来ます。さらに、それまではやっていなかったSyokoトレーニングをそれに加えるということも可能でしょう。


 しかしながら、これらは全て非高負荷練習であるという一つにくくれることに気づかなければなりません。


 非高負荷練習のレベルを上げ、同時に高負荷練習のレベルを同時にあげるということは不可能です。あるいは成功確率は非常に低いです。


 別例を出せば、高負荷練習の質だけを上げる、あるいは量だけを上げるということは出来ますが、質と量を同時に上げることは不可能です。


 あるいは5000mとフルマラソンの二つに同時に重点を置いた練習計画を組むことは不可能です。


 このように複数の異なるものに同時に取り組むことは難しいです。


 というか、そもそも本来は難しいものを簡単にするために細分化を行っている訳ですから、そもそも細分化という利点を捨てるというのはばかげた行為なのです。


 もちろん、ある程度は全体像を維持しながらの話ではありますが、何か偉大なことを成し遂げる最も簡単な方法はその偉大なことを成し遂げるのに必要な要素を必要に応じて細分化することであるという考え方から出発している以上は(そしてそれは同時に事実でもある)、同時に複数のことに取り組むという考え方は馬鹿げているのです。


 では、大雑把に言えば、だいたいいくつくらいの要素に分解すれば良いのでしょうか?


 これに関しては指導者によって細部は変わります。考え方はやや変わる部分になります。


 私は大きく分けると5つの要素に分けます。


 まず第一に、その人の基礎中の基礎を磨く時期が必要です。


 もう少し具体的に言えば、短い距離を走った時に楽に速く走る能力を磨くとともに、そのペースに余裕があった時に、余裕を維持したまま走れる距離を増やす時期、さらに運動神経や基礎的な筋力などの一般的体力の発達に重点を置く言葉です。


 もう少し専門的な言い方をすれば一般性の高い練習に重点を置く時期です。この時期に基礎体力も向上し、体の回復が速く、疲れにくく、故障しにくい体を作り上げることが必要です。


 これが基礎構築期と私が呼ぶ時期です。


 次に、特別期と呼ぶ時期に入ります。この時期は一つの種目により専門的に基礎スピードと基礎持久力を養っていきます。


 これは一言で基礎スピードとか基礎持久力と言っても、各種目に応じて求められる基礎スピードと基礎持久力が異なるからです。


 例えばですが、10000mを速く走れるということや10000mのレースペースに対する余裕度が高まることはマラソンという種目を基準に考えるのであれば、基礎スピードに該当しますが、5000mという種目を基準に考えるのであれば、ペースがレースペースよりも遅いので、スピード練習になりません。


 では、基礎持久についてはどうか?


 ここに5000m20分ちょうどの人がいたとしましょう。もしも、この人がフルマラソンをやるのであれば、40㎞走を1㎞5分ペースでやった時の余裕度の方が10㎞を1㎞4分20秒で走った時の余裕度よりも重要です。


 しかし、逆にこの人が5000mを専門にやるのであれば、40㎞走を1㎞5分ペースでやった時の余裕度の方がはるかに重要です。


 誤解の無いように申し上げておきますが、基本は全て同じです。このどの専門種目をやるにしても、基礎となるものを作るのが基礎構築期です。


 しかしながら、特別期においてはより専門的にこの能力を高めていくのです。


 しかし、この段階ではある程度は幅広く取ります。どういうことかと言いますと、まだそこまでレースに近い刺激はかけずに、比較的体に余裕を残して終われるような練習にします。 


 次に、特異期と呼ばれる時期が来ます。この時期はより専門性を高めて、各種目に応じた専門的練習に取り組みます。


 より具体的に言えば、より目標とするレースペースに近いペースあるいは目標とするレースペースで、インターバルならより一回の疾走距離を長くするか、休憩時間を短くするか、あるいは休憩の区間のペースを速めるか、その組み合わせです。


 ほんの一例を挙げると、先ほどの5000m20分ちょうどの人であれば、今まで35㎞走を1㎞5分ペースでやっていたのを同じ1㎞5分ペースで40㎞走にしてもレースに近い刺激になるし、同じ35㎞走を1㎞5分ペースから1㎞4分45秒ペースに上げてもレース刺激に近くなります。


 あるいはスピード練習に関して言えば、今まで3㎞4本を3分休息でハーフマラソンのレースペースでやっていたのを3㎞5本を3分休息でハーフマラソンのレースペースにし、さらに3㎞6本を目標とするマラソンレースペースで走り、つなぎは1㎞の中強度走で繋げばさらにレースに近い練習になります。


 私が申し上げているのはそういうことです。


 最後に、練習を軽くしながら、走力を維持し、レースで最高の結果を出せるような準備をします。昔から「最高の練習をしている時に最高のレースは出来ない。最高のレースをしている時に最高の練習は出来ない」と言います。練習とレースは絶対に両立できないのです。


 そうやって、レースで最高の結果を出した後は心身ともに休養の時期を取ります。肉体的にも一度体に余裕を持たせてあげることで、また次の練習に良い状態に入ることが出来ます。特に、故障気味の場合はより良い状態を使うのにプラスに働きますし、長距離走、マラソンも高い程度に到達するには他の全ての物事と同じで継続が大切です。


 高い程度で走ることを愛し続けるには一時的に走ることから少し距離を置いてみることも有効なのです。私のブログ読者諸兄の皆様の中にも機嫌が悪くなり、どこかに行こうとする奥様に向かって「ほんまにごめん、俺が悪かった。謝るから許してくれ」と言いながら、心の中ではにやにやし、その姿が視界から消えるやいなやガッツポーズをかましている方もいらっしゃることと思います。


 そして、一定の冷却期間を挟んで再び愛が深まる、長距離走、マラソンとの付き合い方にも似たようなところがあります。


 このように、5つの要素に大別することが可能ですが、更にその中でも要素は細分化されます。


 そして、一つの要素の進歩を意図するにはだいたい6週間かかるということを考えましょう。


 そして、上記の要素の中で一番重要なのは基礎構築です。これも他の全ての物事と同じかと思います。受験に置いても基礎学力が最も大事、仕事においても基礎学力、基礎的対人能力、基礎的精神力、基礎体力、こういったものの上に、その仕事に特化した対人能力、知能、体力、技術、集中の仕方などがあるはずです。


 基礎が高ければ高いほど頂点は高くなる、ですから、基礎の重要性はいくら強調しても強調しすぎることはありません。とりあえず、ここでは長ければ長いほど良いとだけ申し上げておきましょう。


 では、特別期はどのくらい必要か?


 6週間で次の段階に進める、あるいは段階を細かく設定すれば4週間で次の段階へと進めますから、2段階から3段階の向上を目指すとして8-12週間、最長で18週間ほどとっても良いでしょう。そして、4段階以上の向上となると、それは基礎の向上によってもたらされるものであると私は考えます。


 具体例を上げると、中強度走の質が同じでも1㎞10本のインターバルを繰り返すことで1㎞10秒ほどは速くなるかもしれません。しかし、それ以上インターバルのペースを上げようと思えば、中強度走の質が上がるか、中強度走の量が増えるか、あるいは総走行距離が増えるなり、短距離走が速くなるなり、1500mが速くなるなりしないと無理だと思います。


 いずれにしても、12週間でとりあえず考えましょう。


 特異期はどうか?


 実は私は特異期において本質的走力が向上するとは考えていません。単純に、特異期の練習を1人で継続するのは困難です。1回1回の練習がきつすぎると私は考えています。市民ランナーさんは何回か特異的な練習をやり、レースに向けて心身ともに準備が出来れば良いくらいに考えておくと良いでしょう。


 だいたい4週間くらいを目安に考えます。


 そして、最後にレースで最高の結果を出す為の調整期、あるいはトラックランナーの場合は最高の状態は6週間くらいは続くものなので、調整期というよりは試合期と考えて、軽めの練習で走力を維持しながらレースに全集中する時期を作ると良いでしょう。


 マラソナーの場合は2週間の調整期を設けるのが良いです。


 それまでの練習の負荷が高すぎなければ、2週間で充分に心身ともに元気になるはずです。


 上記は全て、はっきりと分けるべきものではなく、なるべく滑らかに移行してゆくのが望ましく、そう言う意味においては特異期と調整期が部分的に重なり、そこが試合期的な感じになっても良いでしょう。


 つまり、レースに出る訳ではないけれども、40㎞のタイムトライアルあるいはタイムトライアルとまではいかないが軽めの練習で状態を維持しつつ、極めて全力に近い強度での40㎞走が入っても構わないということです。


 あるいは練習で一人でやるハーフマラソンのタイムトライアルがレースのフルマラソンレースペースというような使い方もあるでしょう。


 では、レース後の休養期はどのくらいとるのか?


 だいたい2-4週間取ると良いでしょう。ここでは仮に2週間にしましょう。調整期の2週間と足して4週間で考えると分かりやすいです。


 そして、最後に考えたいのはやはり年に1本はレースに出るのが良いだろうということです。やっぱり、1年に1回くらいはレースに出て、レースの記録がどのくらい上がったのかを確認することによって自分が全体像をどのくらい維持できているのかということを確認しやすいし、何よりも自分自身のやる気に繋がるでしょう。


 もちろん、一冬で2,3本(3本は多すぎると私は思うが)のフルマラソンに出場される方も多いですし、それはそれで2本までは結果の向上にマイナスに働きませんし、1つしかエントリーしていなくて、体調不良や故障があったらどうするのかというようなことも考えると一冬で二本考えておくのが良いでしょう。


 ここで改めて考えてみましょう。調整期と休養期で4週間、特異期が4週間、特別期が12週間、これで20週間です。あとは基礎構築期が18週間だとこれで38週間、266日、30で割ると8余り26、つまりだいたいこれで9か月くらいです。


 ここから多少前後してだいたい6か月から12か月くらいを最少単位で考えると良いというのがお分かり頂けますでしょうか?


 これが最小単位でさらに言えば、1年後、2年後、3年後、5年後、10年後くらいに自分がどうなっていたいのかというような青写真を描いておくのが良いでしょう。


 ただ、これはあくまでも青写真であって、具体的かつ正確に思い描いたり練習計画を立案するのは難しいとは思います。しかし、思い描くに越したことはありません。


 逆に、6か月から12か月よりも短いスパンで何かを考えることにはあまり意味がないのをご理解頂けますでしょうか?


 この6か月から12か月くらいのスパンで自分がどのような戦略を立て、どのような練習計画を立て、実際に練習がどのように進んでいるのか、これ以外について考えてもあまり意味がないのです。


 つまりは先ずは全体像を設計すること、次に全体像の中で自分が迷わずに進めているか否か、これ以外にあまり意味はないのです。


 最近ちょっと、近視眼的な質問が増えてきたかなという感じが致しますので、警鐘とさせて頂きます。


 それから、最後にもっと重要なことをお伝えさせて下さい。ここまでの話で面倒くさいなと思われた方も多いと思います。


 でも結局ね、だからこそチャンスなんですよ。


 世の中の人たちは今私が説明したようなことを知りもしなければ、考えもしません。考えもしないし、知りもしなければやりようがありません。だから、差がつくんです。これを理解されてください。


 正しいことは常に多数派ではなく少数派の中に存在します。


 ユーチューブの私の動画にも「皆が池上の教本を使えばトップ1%になれるというのであれば、皆が出来るという時点でそれはトップ1%にならない、だから池上の考えは間違っている」というコメントがありましたが、実際には1%ものも人が私の話に真摯に耳を傾けないし、更に理解して実践している人となるともっと少なくなります。


 これがいわゆる世間一般と私のオンラインスクールの受講生様との差なんです。


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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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ウェルビーイング株式会社
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