大阪マラソン日本人トップの社長ランナーが教える適切な目標設定の仕方2

こんにちは、ウェルビーイング池上です。


 前回のブログでは、適切な目標設定の仕方について動画でお届けさせていただきました。要約すると、現状の外側に自分が本当に感情レベルでやりたいことを設定しましょうということです。これはヴィジョンとか理想とか夢と言っても良いと思います。私も今まで人生で色々と上手くいかないことを経験してきましたのですが、一つ大きな理想を掲げてしまうと小さな出来不出来に左右されないようになります。


 最近でいえば、ベルリン合宿で体を壊して、スポンサー契約が打ち切られることも決まっていた大阪マラソン2019の後です。この時の私の体はもうボロボロで、一キロ4分ペースですら走れない日もありました。最後のご奉公のつもりで自分の持ってるピーキングの技術も心理学的テクニックも総動員して、アミノザウルス最後のマラソンを2時間19分で走り切りました。


 この時は27キロくらいまで自己ベストのペースでいっていたのですが、正直自分でもなぜそこまで走れるのか不思議でした。さすがに30キロを過ぎてからは体が言うことを聞かなくなりましたが、それでも自分でも思ったよりもはるかに速いタイムでゴールすることが出来ました。ただ、ここですべてを出し切ったので、その後はその後でなかなか体が戻らず、1週間くらいは体がふらふらしてジョギングもできませんでした。


 この時も私を助けてくれたのが、ヴィジョンでした。手を伸ばせば届くようなところにしか目標を設定していなければ、こういう時にどうして良いかわからなくなりますし、競技を辞めていた可能性も高いと思います。ただ、ヴィジョンがあれば進むべき方向性が自動的に決まってくるので、その時々で良い時悪い時があるというケースにも対応しやすくなります。


 すべて思い通りにいかないという中で、その都度小さな目標を設定していたら、その都度進む方向が変わってしまいます。目的地と羅針盤のない遠洋航海のような心もとない旅となってしまいます。そして、私にとってヴィジョンに向かって進むためには次の目標はほぼ自動的に決まりました。それは競技に専念できる環境づくりです。


 ちなみにこの段階では具体的に何をして良いのかよくわかっていませんでした。ぼんやりと、昔そうだったように、アルバイトをしながらまたスポンサーがつくような結果を出したいと考えていました。実際にしばらくは色々とアルバイトをしたり、ちょっと何人かの社長さんとスポンサー契約の話をさせていただいたり、していた時期がありました。


 その後、色々あって、自分で会社を作ってしまえと思って今のウェルビーイング株式会社を設立しました。まだ、競技に専念できる環境を作れるところまでは行けていませんが、私にとってはこれも陸上競技のうちです。自分のヴィジョンに進むにあたっての、必要なことだからです。これをきちっとやり遂げてしまわないといけません。


 さて、ここまでの話でお分かりいただけると思いますが、現状の外側に目標を設定したとしたら、本来はおのずと今何をやるべきかが決まってくるのです。大目標に向かうにあたっての小目標です。この小目標は航海に例えると、肉眼で確認できる島であったり、岩礁であったりします。ヴィジョンは北極星であり、コンパスの役割を果たします。おおざっぱに進むべき方向性を決めてしまいます。


 でも実際に航海に出ると、地図には載っていない島があったり、海賊が出たり、流氷が出たり、思ったよりも海面が低く岩場に乗り上げそうになったり、色々な出来事が起こります。そして、その都度細かな軌道修正が必要になります。私たちも同じで小目標を立てることで軌道修正が果たしやすくなります。これもヴィジョンと同じでそれを達成するかどうかは本質的にはどうでも良いことです。


 重要なことは目標を達成できたとかできなかったとかで一喜一憂することではなく、達成できたら、自分の目論見が正しかったというフィードバックが得られますし、達成できなかったら、自分の目論見が間違っていたのだから、どこが間違っていて、どこを変えれば良いのかということを考えるきっかけになり、指標になるということです。


 そして、この小目標は論理的かつ現実的でなければいけません。例えば、練習計画の立案がそうです。私自身は大学入学時点ですでに、マラソンで2時間10分を切るのが目標でした。大体の人にこれを言ったら、笑われましたがそれはそれで構いません。何故なら、私にはそこに至るまでの論理的な練習計画の立案がある程度出来ていたからです。ちなみに今ほどではありません。今の方が知識も経験もあるので、当時よりも上手く練習計画の立案が出来ます。


 でも当時もマラソンで2時間10分を切りたいから、今年の冬にマラソンをやるとは決して言いませんでした。マラソンで2時間10分を切るためには5000mのタイムを上げることが必須条件だと分かっていたからです。だからそれに向かって段階的にタイムを上げていくように私なりに段階を細かく区切ってクリアしてきました。


 という訳で、適切な目標設定の仕方が現状の外側に自分が本当にやりたい目標を設定することだとしたら、自分の目標を設定したら、それを達成するためにステップを区切って考える必要があるということです。ちなみにですが、歴史上の革命家は全てこれをやっています。本人が意識していたのか、無意識のうちにかは分かりません。でも、全員これをやっています。彼らの理想が正しかったのか、そしてその達成の仕方が正しかったのかと言われると理解できる部分もあれば、理解できない部分もあります。全肯定している訳ではないというのは理解していただきたいのですが、その上でいくつか例を挙げさせていただきたいと思います。


まずはアドルフ・ヒトラーがそうでしょう。彼は明確に理想を掲げ、そしてそれに向かって地道に人々にその理想を説いていった人です。普通の人間にはなかなかできないでしょう。


 30歳で無職、毒ガス弾を受けて失明寸前になり、これといったコネもなく、学歴もなく、お金もない、この男がわずか15年ほどで総統になるのですが、あなたなら同じ状況で、自分の理想を掲げてそれを一人一人に説いていくことが出来ますか?ここでは理想と「今日は何人の人と話をするのか」という一日ごとの小目標の両方が等しく重要です。どちらが欠けていてもダメです。


 同様に同じ時代を力強く生き抜いたのが小林多喜二さんです。彼もまた共産主義という理想を掲げ、そして地道にペンをとって文学作品として表現した人です。現代の私たちから見れば、共産主義の考え方は間違っています。経済学においては、「誰が何をどれだけ作って、いくらで売るか」は各人の自由であるべきで、これは労働市場にも等しく働くので「誰をいくらで雇ってどれだけ働いてもらうか」は資本家の自由であり、同様に「どんな仕事をいくらで引き受けるか」は労働者の自由です。


 ただ、これは完全市場状態が存在すればの話です。実際には完全市場状態は存在しません。特に小林多喜二さんの生きた時代は資本家や国家が今よりもはるかに力を持ち、そして世界中で横暴を働いていた時代です。共産主義思想とは「計画経済機構」を軸とした「資本家と労働者が平等な世界を作る」ひいては「国家と国民の間に平等性を取り戻す」という思想からスタートしていますから、この時代に生まれていたら私も共産主義者になっていた可能性は大いにあります。


 ただ、これも大変なことです。ここまでの説明でお分かりいただけるように当時の共産主義というのは反権力であり、反国家であり、そして権力者に飼いならされてしまった一般市民と労働者との闘いだったのです。小林多喜二さんは最後は警察に捕まってたった7時間後に拷問死します。取り調べも何もなく、いきなり苛烈な拷問を加えられたことが容易に察せられます。


 改めて問います。小林多喜二さんと同程度とは言いませんが、あなたは大きな理想を掲げたら、「今日筆を執って字を書く」という地道な行動を続けられるでしょうか?


 最後の例はキューバ革命の英雄チェ・ゲバラです。この人もまた凄いです。アメリカからボートに乗ってたった7人でキューバに乗り込んで政権を取ってしまう訳ですから、リアルゴルゴ13を一人挙げるならこの人でしょう。ただこの人がすごいのはキューバ革命を成功させたことだけではありません。キューバ革命が成功した後に、「アメリカの帝国主義を倒すためにキューバ革命したのに、革命が成功してみれば、ソ連の方が帝国主義だった。最悪だ」みたいなことを平気で発言してしまうことです。


 時代背景的にはちょうど冷戦時代で、やはり失礼ながら国力を考えると、ソ連の保護なくしてはアメリカの脅威にさらされざるを得ないのが実情でした。それでもアメリカとソ連を敵に回して「お前らどっちも帝国主義じゃないか、この野郎」みたいなことを言えて、しかもそれにちゃんと行動が伴っていたのがチェ・ゲバラです。


 結局最後、彼は南米のジャングルでゲリラ活動に戻って戦死するのですが、これはソ連の方から「チェ・ゲバラを政府の要職に着けておくなら、今後援助を打ち切る」との通告があったからだと言われています。いずれにしても、このケースでも大きな理想を掲げるのは良いのですが、その後行動がなければ意味がありません。地道なゲリラ戦を展開したのが、チェ・ゲバラであり、何も巨額の資金を使って裏から兵士を動かしていただけの人ではないのです。


 歴史上、理想の為に命を懸けて行動した人は枚挙にいとまがありませんが、ノルマの為に命を懸けて行動した人は一人もいません。手を伸ばしたら届くところに目標を設定するというのは、たいていの場合自分にノルマやタスク=やらねばならないことを設定していることにしかなりません。自分が本当にやりたいこと=理想を掲げてそこから逆算して、通過点としての小目標を設定するのではなく、初めから自分に出来そうなことを設定しているだけです。この二つは似て非なるものです。


 ずっと2時間6分台、5分台というのを理想として掲げて取り組んできて、そこから逆算していくと、最低でも次のマラソンでは2時間10分を切る必要があり、そのためにはトラックで自己ベストを更新することと競技に専念できる環境づくりが必要だというのと、今マラソンの自己ベストが2時間13分だから、手を伸ばせば届くところとして2時間10分切りを目指そうというのは似ているようで、全く次元の違う話なのです。恐らく、後者のような目標設定の仕方をしていたら、2時間13分にも到達していないでしょうし、今頃競技もやめています。何故ならそこには私の理想がないからです。出来そうだからやってみるというのは取引でしかありません。打算的な取引の気持ちで大きなことを成し遂げた人はおらず、大きなことを成し遂げた人は共通して、理想に向かって進んでいたら、気づいたらここまで来てしまったなという人たちです。


小目標の設定の仕方

 さて、ここまで順に理想を掲げることと理想に向かって小目標を設定することの重要性について述べてきたのですが、最後に小目標を設定するにあたっての簡単な7ステップを紹介させていただきます。


1. 小目標を設定する

2. 日付を指定する

3. 目標設定に必要な人たちとつながる、探す

4. 目標達成に必要なスキルや知識を学ぶ

5. 適切な計画を立てる

6. 行動する

7. 結果に応じて修正を図る