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執筆者の写真池上秀志

間違った減量法ーカロリーと脂肪が少なければ少ないほど良いの間違い

更新日:2021年10月16日


1.初めに

 減量したい、もしくは軽い体重を維持したいというのは多くの長距離ランナーに共通した願いです。私自身は体重管理に苦労したことがなく、常にプラスマイナス2㎏を維持し、58,5㎏から1㎏以上変動することはほとんどありません。これは故障したり、マラソン後の休養期間でも同じです。ただ、人によってはかなり苦戦するのも事実で故障するとプラス10㎏なんて人も珍しくありません。これは単に太ったというだけでなく、普段からかなり痩せた体系を維持しているせいでもあるでしょう。

2.減量できないのは意志が弱いからは間違い

 単純に摂取カロリーを減らせば痩せられると考えている人が多く、逆に太っている人は自分の意志が弱い人だと考えている人がとても多いと思います。これはそうだともいえますし、そうではないともいえますが、あまりにも多くの人が太っているのはその人の意志が弱いからだと考え過ぎていることを考慮に入れれば、この考えは間違っていると言った方が賢明でしょう。


 第一に、摂取カロリーを極端に減らすと体は飢餓に備えて、体にエネルギーをため込もうとします。そのため、長距離選手に必要な、練習でダメージを負った組織の修復のための代謝プロセスを落とし、なるべく脂肪を蓄えようとします。その結果、本人の我慢とは裏腹に体重は初めの短期間は減少するものの、その後は、体重が落ちないだけでなく、体の代謝が変わってしまうので、その体重を維持するには常に空腹状態を維持しなければならなくなります。摂取カロリーを消費カロリーよりも少なくするとしても、最低でも消費カロリーの80%は摂取する必要があります。そうでなければ、体の新陳代謝が落ちるだけでなく、ホルモンバランスも変わり、意志の力が低下し、集中できなくなります。そして、最も大切なトレーニングを長期にわたって安定してこなすことが出来なくなるでしょう。


 第二にありがちな間違いは、脂肪を減らせば減らすほど良いと考えている人が多いことです。中強度から高強度なトレーニングがプログラムに詰まっているトップランナーに必要な栄養素は、第一に良質な炭水化物です。何が良質かは過去記事の『グリセミックインデックス』を参照してください。しかしそれでも、最低限の脂質は必要です。最も大きな理由は抗炎症のカギを握るのは脂肪だからです。但し、脂肪であればどれでも同じという訳ではなく、オメガ3脂肪酸に属するDHA、EPA、αリノレイン酸やオリーブオイルに含まれるオメガ9脂肪酸に属するオレイン酸を摂取するのが好ましいです。


 そして、脂肪が減量にもたらす効果は実は空腹感の軽減です。持久系アスリートを多くクライアントに抱える管理栄養士のナンシー・クラークスはほとんど脂肪を摂取しなかった選手のダイエットに総摂取カロリーの25%程度の脂質を加えるようにアドバイスし、減量を成功させました。また、私は実験的に練習が楽な期間に総摂取カロリーの70%を脂質に変えたことがありますが、体重は若干軽くなりました。総摂取カロリーも通常時の4000キロカロリーくらいだったはずです。体重が若干軽くなった分は、筋グリコーゲンの貯蔵量が減ったためで、本質的に痩せたとは言い難いのですが(グリコーゲン分子は水分子3つと結合した形で体内に存在する)、それだけ極端に脂質を摂取しても体重は増加しなかったことは特筆に値します。またこの時摂取していた油は全て良質な油だったことは言うまでもありません。詳しくは過去記事の『健康的な油とそうでない油』を参照してください。もう一度言いますが、油の摂取は食欲を抑えてくれます。

3.月経と食事制限

 さて、ここからは私には理解できない範囲ですが、先述のナンシー・クラークスさんによると、同じようにハードな練習をして、同じように体脂肪率の低い女性持久系アスリートの間で、ある人は月経異常が見られ、ある人はそうではないのは食事の総摂取カロリーの違いだそうです。総摂取カロリーが極端に少ないと体からの警告シグナルとして、月経は止まるそうです。女性からすれば月経が止まると楽かもしれませんが、次の三点については理解しておく必要があるでしょう。


・月経異常がみられる選手は疲労骨折のリスクが3倍になる。


・若年での骨粗鬆症罹患率が高まる。骨粗鬆症とまでいかなくても早く骨が弱くなる。


・出産を望んでも上手くいかなくなる


 私がここで述べたいことは、月経が止まるほどの極端な食事制限は目に見えるような問題が表れなくても、ハードな練習を長期にわたって継続することは困難になるということです。アメリカ精神協会の指標では、連続して3回月経が訪れないと神経性食欲不振とみなされます。先ず大前提として、心身に問題が生じるような食事は、たとえ一時的な減量に成功しても、長期にわたる好成績を残すことは難しくなるということを覚えておいてください。

4.私の体重管理法

 私の体重管理法は至って単純で、出来る人には簡単で、出来ない人には難しいものです。それは自分で基準となる体重を決めておいて、それを強く思い込むということです。体はどれだけを筋グリコーゲンとして貯蔵し、どれだけを脂肪に変換して貯蔵するかなどの全ての代謝を無意識のうちに行っています。また何をどれだけ食べるかというのも無意識のうちに調整しています。我々の食欲や食べ物の好みもこの無意識の調整によって行われています。ですから、食欲自体を変えることが出来るのです。


 通常、人々は食欲に抵抗して、食べないように我慢したり、カロリーの少ないものを食べたりしていますが、私のやり方では食べたいだけ食べても体重はほとんど一定です。何故なら、私の食欲が適切に食べる量を調整してくれるからです。何故、このような微妙な調整が可能になるのかは私にもわかりませんが、事実そうなってしまうとしか言いようがありません。これは逆も然りで、自分が太っていると信じている人は、痩せたいと思っても、いったん痩せると自分の意志に反するように元の太っている状態に戻ろうと体は努力します。ですから、この場合、太っているという自分の自己イメージから離れれば離れるほど食欲が増すでしょう。


 私の場合は、基準となる体重が58,5㎏なので体重計に乗ると強く58,5㎏をイメージします。ここ最近は58.9㎏あたりを示すことが多いのですが、体重計が58,9㎏を指した時には心の中で「しまった自分の体重は58,5㎏なのに」とつぶやきます。たったこれだけで、おおよそ体重は一定に保たれます。因みに、面白いことに私は起床直後に体重計に乗ると決めているのですが、服装は寝る時のままです。最近は夜は気温がマイナス8度から9度くらいに達し、寝室には暖房がないのでかなり厚着をして寝ます。当然、秋と比べると着ているものの重さで数百グラムくらい簡単に変わるのですが、それでもだいたい58,5㎏あたりを維持します。服の重さは代謝と関係ないはずなのですが、私の無意識はそこまで計算に入れて調整してくれているようです。


 この体重調整方法が成功するかどうかは、自分で設定した体重がホメオスタシス機能が働く基準値となるほど強く思い込めるかどうかにかかっています。要するに、強い確信を持てるかどうかです。強い確信の作り方はまたおいおいブログの中で解説していきたいと思います。とりあえず、ここで言う確信がどういうものなのか知りたい方は過去記事の『マラソンと洗脳』を参照してください。

 長距離走、マラソンについてもっと学びたい方はこちらをクリックして、「ランニングって結局素質の問題?」という無料ブログを必ずご覧ください。

参考文献

Dave Asprey著 『The Bullet Proof Diet』

Nancy Clarks著『Ultimatives Ernährungsbuch』

Deepak Chopra著『The perfect Health』


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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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