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執筆者の写真池上秀志

クロスカントリースキーの効用

 実はだいぶ前にウェルビーイングオンラインスクールの受講生様道下秀樹様より、「クロスカントリースキーや雪の上で走ることの注意点などをブログ記事に書いてほしい」とご依頼いただいていたのですが、ここ最近ありがたいことに、問い合わせ、質問、ズームコンサル、新商品のリクエストなどが殺到しておりまして、すっかり遅くなってしまいました。


 そろそろ「雪ーが解けて、川ーになって、流れてゆきます―」(お若い方分かりますか?)という季節になってしまい、すでに手遅れ感がなくはないのですが、さすがに書かんと書くタイミングを失ってしまうということで、書かせて頂きます。


遅くなってしまったこと、先ずはお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした。


 早速クロスカントリースキーについて書かせて頂くのですが、実はヨーロッパではクロスカントリースキーは結構ポピュラーなスポーツで、私の元トレーニングパートナーでオーストリア世界選手権マラソン代表のヴァレンティン・プファイルも元々はクロスカントリースキーの選手でした。


 私のコーチディーター・ホーゲンが指導する他の選手たちは今年の冬はわざわざノルウェーまでいって、一冬クロスカントリースキーに励んでいました。ベルリンは緯度で言えば、樺太よりもまだ北なので、冬はかなり寒くなるはずです。その割には、意外と気温が低くはないのですが、やっぱり緯度が高いと冬場の日照時間は短く、一度雪が積もるとなかなか解けず、冬場はあまりトレーニングには適していません。


 ヨーロッパの選手は冬場はケニアに行ってトレーニングに励む選手もたくさんいます。日本からするとアフリカは地球の反対側という感じですが、ヨーロッパからは直行便もたくさん出ていますし、時差もあまりありませんし、何よりも歴史的にはアフリカから奴隷として無理やり連れてこられたドイツ人、イギリス人、フランス人といった人々がいますし、また植民地もたくさん持っていて、というより一時期アフリカとアジアのほとんどの国が欧米諸国の植民地であったので、アフリカでもヨーロッパ言語が多く話されており、ヨーロッパの人たちにとってはアフリカは結構身近な存在です。


 むしろ、ヨーロッパの人からすると日本は極東と呼ばれ、英語を話せる人もほとんどいないし、文化もまるで違うし、車は道の反対側走ってるし、皆箸でご飯食べてるし、夏は半端なく蒸し暑いし、上下関係もあるし、日本の方が遠い存在のようです。


 それはさておき、今年はケニアやエチオピアといった暖かい地域に行くのではなく、寧ろもっとしっかりと雪が積もってる地域にいってクロスカントリースキーに励むという逆転の発想をとった訳です。


 誤解のないように書いておくと、ランニングの為のベストなトレーニングはランニングです。雪の降らない地域に住む選手がわざわざクロスカントリースキーを導入するメリットはほとんどありません。それでも、あえてクロスカントリースキーを取り入れるメリットを上げると


・上半身が強化される


・接地の衝撃がないので、体をフレッシュな状態に出来る


・ハムストリングスや大殿筋で地面を押す感覚と筋肉が鍛えられる


・精神的にもしばらくランニングから離れることでまた走りたいという気持ちが強くなる


などなどがあります。


 私自身はクロスカントリースキーはやったことがないのですが、ジムにおいてあるエリプティカルトレーナーはやったことがあります。また、インラインスケートも導入したことがあり、クロスカントリースキーに近しいクロストレーニングは取り入れていました。


 ランニングにとってベストなトレーニングはランニングであるとは書いたのですが、長期的な観点から考えると、別のスポーツを取り入れることにはメリットもあります。それは、ランニングでは鍛えられない運動神経と筋肉が鍛えられるからです。


 確かに、最終的にはランナーは自分が目標とするレースペースで走った時に、最も楽に走れる神経パターンを構築することと、自分が目標とするレースペースで目標とする距離を走り切れるだけの筋力が求められます。しかし、そこに到達するには、他のスポーツもそつなくこなせる人の方が高いレベルに到達できる可能性が高いのです。


 特に運動神経の方は顕著であるように感じます。長距離選手は私を含めてどんくさいのが多いのですが、やっぱり運動神経抜群で球技も武道も得意という人の方が走らせてもセンスが光ります。


 また私自身も故障している時に、エアロバイクを漕ぐことで脚をスムーズに回転させる感覚が掴めたこともありました。脚をスムーズに回転させるコツは接地の時にいかに足を後ろに流せるかなのですが、エアロバイクはそもそも接地の衝撃がないので、足を後ろにスムーズに流す感覚が掴めたのです。


 言葉にするのは難しいのですが、足が一番下にいってから、足を引き上げるのでは遅くて、足が一番下に行く前にハムストリングスを収縮させて上に引き上げてくると、下で止まらずにスムーズに回転するのです。エアロバイクも負荷をかければ、一番きついのは踏み込んでいく時です。しかし、だからといって踏み込みだけを意識すると下でいったんペダルが止まってしまうのです。だから、ペダルが一番下に降りる前にハムストリングスを意識しながら、上に引き上げるのです。


 ランニングで言えば、接地してから足を後ろに蹴りだすとか地面を押すとか考えているようでは、もう遅いです。接地の前にハムストを収縮させて、スっと脚を後ろに送り込むとスムーズな脚の回転が得られ、力を使わずに速く長く走り続けることが出来るのです。


 クロスカントリースキーに関して言えば、棒を持って地面を押すわけですから、ランニング以上に上半身と下半身を連動させる感覚はつかみやすいでしょうし、それから、ランニング以上に地面を押さないといけないので、ハムストリングスやお尻の筋肉が鍛えられるはずです。ふくらはぎのような小さな筋肉でぴょこぴょこと跳ねるのではなく、お尻や大殿筋などの大きな筋肉群を使って地面をしっかりと押すという感覚が掴みやすくなるでしょう。


 ちなみにクロスカントリースキーはランニング以外のスポーツで最もランニングに近いスポーツだと言われています。ですが、接地の衝撃がないので、故障している時も取り組めることも多いですし、先述のようにしばらく接地の衝撃から体を開放することで体をリフレッシュさせることもできます。それでいながらも、ランニングに最も近い競技であり、心肺にもかなりの負荷をかけることが出来るので、ランニングにつながる体力の強化にもなります。


 では、実際のトレーニングはどのようなものをすれば良いのかということですが、基本的にはランニングと同じトレーニングを組みます。ただし、距離ではなく時間を用います。これはすべての種目において言えることです。エアロバイクでもエリプティカルトレーナーでも同じことです。


 例えば、15キロを中強度で走る練習があるとします。普段15キロを中強度で走って、67分くらいで走るのであれば、70分から65分中強度でクロスカントリースキーに取り組みます。1000m10本2分休息をやって、いつもだいたい4分くらいでやるのであれば、だいたい同じ強度で4分間高強度を2分間の休息で行います。


 確かに、ランニングと厳密に同じという訳にはいかず、多少の修正は必要でしょう。しかし、基本的には同じで大丈夫です。


 ただ、やっぱりそれでも頭に入れて頂きたいことは、違うスポーツであることに変わりはないということです。いくら普段走っていて体力があるといっても、しばらくクロスカントリースキーに取り組んでいないのに、いきなりクロスカントリースキーでランでやるようなトレーニングをしたら、故障の原因になります。


 ランからクロスカントリースキーへと移行するなら、初めは故障明けのようなイメージで徐々にクロスカントリースキーに慣れていく必要があります。また、インラインスケートのように技術の習得に時間を要するスポーツもあるでしょうし、私は水泳が苦手なので、心肺にはほとんど負荷がかかりません。技術力が心肺機能を大きく下回っており、心肺に負荷がかかるところまでいかないのです。


 クロスカントリースキーをやったことがないので、技術の習得にどの程度の時間がかかるのか分かりませんが(見た目にはインラインスケートより簡単そうですし、雪の上なら転んでも痛くなさそうです)、突き詰めて競技としてやるなら、スキー板のエッジの角度が1度、2度変わるだけでタイムのロスに繋がるので、競技者は1度2度のエッジの角度を追求していくと、元クロスカントリースキーの選手から聞きました。


 また、クロスカントリースキーからランへと再び戻すときも、故障明けのようなイメージで戻していった方が良いです。確かにクロスカントリースキーはランニングに最も近いスポーツで、心肺機能にもかなりの負荷をかけることが出来ます。しかし、やはりランニングではないのです。


 そして、一番の違いは接地の衝撃があるかないかです。しばらく、走っていないと接地の衝撃に耐えるための筋、腱、靱帯などが弱くなっており、故障のリスクが高くなっています。だから、少しずつ少しずつ戻していく必要があります。クロスカントリースキーをやっていて、体力は落ちていないから普通に練習が出来るとは決して思わないことです。


ランとクロストレーニングを組み合わせる

 あなたはクロストレーニングは好きでしょうか?というよりも、ランニング以外に好きなスポーツがあるでしょうか?そんなあなたに朗報です。


 プロのランナーでもランニングと他のスポーツを組み合わせる選手はちょくちょくいます。リオデジャネイロオリンピックにドイツマラソン代表として出場したハーナ―ツインズは自転車が好きでよくロードバイクに乗りますし、昔アメリカで5000mや10000mで活躍したスティーブ・プラセンシアという選手はインラインスケートを取り入れていました。


 また昔コーチホーゲンが指導していた選手はアイスホッケーを週に1回から2回取り入れていました。クロストレーニングのメリットは接地の衝撃を減らしながら、血流を良くして疲労の回復を促進するとともに、走力の維持にも役立ち、またその種目でしか得られないトレーニング効果を得ることが出来ることです。


 私のエアロバイクの話もそうですし、アイスホッケーをしていた選手は足首周りの安定感が増し、故障が減ったそうです。また他のスポーツをすることによって、精神的にもリフレッシュできるというメリットもあります。


 私はどうしているのかということですが、私はやりません。「ブレない走りと綺麗な体を手に入れよう!ランナーの為の体幹補強DVD」だけは使いますが、それ以外はやりません。そもそも私は体を動かすよりも本を読んだり、映画を見る方が好きで、スポーツはランニングと野球以外は好きではないのです。


 野球をするとすれば、一人で素振りをしたり、年に数回バッティングセンターに行く程度でしょうか。それも、ランニングに悪影響を及ぼさないように左右両方で振ります。打てても打てなくても、右でも左でも打ちます。


 それ以外はやっぱり走るのが好きなので、走る以外のスポーツはやらないです。ですが、走る以外にも好きなスポーツのある方は、走る以外のスポーツと組み合わせるとそれも良いと思います。バスケットボールならジャンプするので、より接地の衝撃に耐えられる体になったり、バネがつけば楽にストライドを伸ばせるようになるかもしれません。アクティブリカバリーになるかどうかは微妙ですが、サッカーのように急にペースアップしたり、ペースを落としたり、トップスピードから左右に切り替えしたりすれば、それがランニングにつながることもあるでしょう。


 いずれにしても、スポーツは楽しくやることが一番だと思います。皆さんも好きなスポーツがもしあれば、上手くランニングと組み合わせながら楽しんでください!


コラム~雪の上のランニングの注意点~

 実は私は雪の上で走ったことがほとんどなく、雪の上でのランニングに関してはあまり言えることはありません。しかし、一応リクエストを頂きましたので、参考程度に私の経験と雪の上を走っている人から聞いた話を書かせて頂きます。


 先ず私の数少ない経験から書きますと、そもそもそんなに雪が積もる地域で生まれ育っていないので、雪にはものすごく不慣れです。「滑ってこけるのではないか」などと思いながら走っていると股関節やお尻のあたりに変な張り感を感じやすいので、私は基本的には雪の上では走りません。しっかりと積もると確かに滑らないのですが、膝くらいまですっぽりはまって走るどころではありませんでした。


 北海道出身などの経験者によるとスパイクを履いて走ると雪の上でも滑らずに走れるそうです。しかし、やっぱりアスファルトを走るのとは違い、走りが小さくなってしまい、春が来たときには元の走り方が分からなくなってしまったと言っていました。


 考えてみると、多分雪の上で走ろうと色々工夫して、長靴をはいたり、スパイクを履いたりしているうちに靴に板をつけて滑れば良いじゃないかという発想になったんでしょうね。ということはやっぱりクロスカントリースキーが良いのかもしれません。


まだウェルビーイングオンラインスクールに入校されていない方へ

 ウェルビーイングオンラインスクールはパーソナルコーチを受けたいけれど、高すぎて受けられないという方の為に、低価格で私のコーチングをお届けできるように作成された総再生時間約30時間分のオンラインスクールです。

 実は私のズームコンサルは1時間1万円でお受けさせて頂いているのですが、頂くお悩みや知りたいポイントというのは、大きくは変わりません。そこで、今まで頂いたご相談を基にトレーニング、リカバリー戦略、マインドセットの3つに絞り、体系的かつ網羅的に解説しているのが、ウェルビーイングオンラインスクールです。

 お忙しい中でもコツコツと学んでいただけるように、動画一本あたりは20分から60分にまとめ、たった1年間でマラソン3時間16分から2時間33分、5000m18分台から15分台、16分39秒から15分42秒などなど、多くの方が成果を出されています。

 本日お願いしたいのは、下の15分間の動画をご覧いただき、入校資格を満たしているかどうかご確認いただくことだけなのですが、いかがですか?


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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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