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執筆者の写真池上秀志

ジャンクマイレージがあなたの練習を無駄にする。そもそもジャンクマイレージとは?

突然ですが、あなたはジャンクマイレージという言葉をご存知ですか?

 ジャンクマイレージとは、ペースが遅すぎてトレーニング効果がないにもかかわらず、接地の衝撃を増やし、時間を無駄にしてしまうトレーニングのことです。今回はそんなあなたの練習を無駄にしかねないジャンクマイレージの話です。

 そもそもの言葉を分解するとジャンク(Junk)とマイレージ(Mileage)の二つの言葉に分かれており、ジャンクとはくず、ごみ、安物、ガラクタのような意味があり、日本語で言うションベンカーブはJunk Ballと表現することも可能です。

 そうすると、日本語のションベンスパートもJunk Spurtで言いたいことは伝わるでしょう。

 他にはジャンクフードのジャンクであり、ジャンキーな食べ物という時のジャンキーはJunkの形容詞であるJunkyのことです。

 マイレージの方は単純にMileの総計のことです。

 日本ではキロメートルという単位を使いますが、アメリカではマイルを使うので、そのマイルの総計のことをマイレージと表現します。飛行機のポイントなんかでマイルが貯まると言い、そのたまったポイントの総計のことをマイレージと言ったりしますが、それも飛行機が飛ぶにつれて飛行距離(マイル数)が増えていくからでしょう。

 実は、このジャンクマイレージに関して、私もちょっと最近反省するところがあるのです。というのも、ジャンクマイレージの存在を強調しすぎたなと思うのです。ジャンクマイレージ自体は間違いなく存在しますし、トレーニングでは低強度な練習や中強度な練習の質を徐々に上げていくことも大切です。

 多くの人が犯している間違いの一つは、トレーニングを黒か白か0か1か、丁か半かの二択で捉えることです。つまり、高強度な練習か回復かという完全な二択で捉えてしまうことです。特に、男性はそうです。

 男というのはどこか破滅的な、狂信的な生き物です。

 のるかそるか、やるかやられるか、撤退か死か、そういう思考をどこかに持った生き物であり、少なくとも「男女平等」や「男らしさ」「女らしさ」という考え方をなくしていこうという現代社会の風潮においても、やはり一度決めたら徹底してやり切ることこそ「男らしさ」であるという風潮は消えません。

 それに加えて、「一つの物事を徹底的にやり切る能力」は日本人の気質であると、海外にいくと思います。

 もちろん、先進国の人々というのはモノづくりに対する意識が高く、町で売られている製品の品質の高さは、ほとんど日本の製品と変わりません。

 それでも、やっぱり日本の製品は頭一つ抜けています。包丁一つとっても、日本の包丁は切れ味が良いし、日本の包丁研ぎでケニアのなまくら刀を研いだら一瞬で切れるようになります。

 そういった、性格や思考がやっぱりトレーニングに出てしまっています。白か黒かで考える人が非常に多いのですが、先述の通り、トレーニングにおいては低強度走や中強度走の質をあげることも大切なのです。

 また、その人の出場する種目や目標とするタイムと現状などを総合的に判断し、ゆとりを持たせてインターバルの本数を増やすことも重要です。

 先ほど、中強度走の質をあげるという書き方もしましたが、そもそもが中強度走というトレーニングそのものが低強度走の質をあげるという考え方の延長線上にある練習で、実際にコスパもめちゃくちゃ高いです。市民ランナーの方にとってコスパ最強の練習は中強度の持久走です。

 ですが、見落とせないのは低強度走の重要性もです。低強度走は低強度であるがゆえに、練習量を稼ぎやすいです。

 そして、積み重ねることによる練習効果は非常に高いものがあります。

 今京都にある東山高校の陸上競技部の中長距離を指導させていだたいております。東山高校は古豪で、私の中学時代の恩師(と言っても当時はもう教頭先生で本格的な指導は受けられませんでしたが)も東山高校の出身で、京都府インターハイは5000mと1500m障害の二冠を達成されています。

 当時は私の母校の洛南高校がまだ強くなかった頃で、東山高校か福知山商業(現福知山成美)かという時代でした。

 で、その東山高校の陸上競技部ですが、今はすっかりと弱体化しており、短距離には素晴らしい先生がいるのですが、長距離には指導者がいませんでした。

 逆に、短距離に素晴らしい先生がいるせいもあるのですが、動きづくりやウェイトトレーニングの時間が長い割に、走る練習が少なすぎるのです。

 陸上競技というのは400mと800mの間に明確な線引きがされるスポーツで400mと800mでトレーニング内容は大きく変わります。

 もちろん、800mや1500mなどの種目においてスピードは物凄く大切です。物凄く大切なのですが、そもそも最低限の持久力がないとスピードが出せません。

 最大筋力を高めたり、走技術を高めたところで、より多くのエネルギーを供給し続けるエネルギーシステム=持久力がないと意味がないのです。

 だから、今東山高校には私より短距離が速い子はいっぱいいますが(多分全員)、私よりも800m、1500mが速い子は一人もいません。

 今弊社でサポートしている中学生の子も800mを1分台で走り、全国大会では、最高で1分55秒までは狙えると思います(確実に、1分57,58秒では走って欲しい)。

 でも、その子も3000m8分台は出せる力があるんですね。

 で、もっと極端な例を出すと、私の洛南高校の同期に800mの練習を全くせずに、一本目の800mで1分56秒で走った400mの選手がいました。でも、その子はほとんど練習しなくても3000m9分24秒で走るという天才中の天才で、専門的に練習している400mは47秒台です。

 400m47秒台で、3000m9分24秒で走る選手に800mで勝てる選手なんかそうそういません。

 今東山高校の選手は全員3000m10分切れないので、その状況ではとてもじゃないけど、800mでも1500mでも戦えません。そんな訳で、とりあえず低強度走と中強度走の量を増やしています。オープンキャンパスがあったり、故障したりで、途中抜けてしまっている子もいますし、全員が全員私の方を100%見てくれている訳ではないですが、やっぱり一番真面目にやってくれてる子は、初めは800m2分16秒だったのが、特別な調整しなくても、今週末の試合では2分08秒くらいで走る力はあるんじゃないかなと思います。

 あんまりがっかりさせたくないので、本人には初めの400mを65,66で入って、600mまでリラックスして流れに乗って、最後の200mだけ30秒で一気に稼げば良いと指示してあります。400mを65通過で、次の200mを33,34まで落として、最後の200mを30秒であがれば、2分08,09秒です。


 話はそれましたが、ちゃんと私の理論通りに力をつけてきてくれているので、やっぱり低強度走って重要やなと思って、先日「低強度走の重要性」という動画をユーチューブに公開させて頂きました。そうすると、あるウェルビーイングオンラインスクールの受講生様より下記のようなご質問を頂きました。

「低強度走の動画観ました!

疲労抜きjogよりは速いペースという感覚なのでしょうか!?

 もしくは呼び方が違うだけで低強度走の中に疲労抜きjogが含まれているのでしょうか?」

 疲労抜きジョグと低強度走の違いについてですが、これはジャンクマイレージなのかそうじゃないのかという基準と同じです。要は、低強度と言っても、あまりにもペースが遅いと練習効果はなくなってしまいます。


 ただ、血液循環を良くし、気分をスッキリさせ、疲労の回復の効果はあります。英語ではShake Outと言ったりもします。

 そもそもジョグというのはのろのろと進むという言葉であり、ランニングとは区別されます。

 ですから、本来の意味では強豪校が行う1キロ3分40秒ペースのジョグというのは、ノースリーブのTシャツと同じくらいおかしい言葉なのです。日本語で言えば、便秘によく効く頭痛薬くらいおかしいです。

 そして、日本でも一部の学校では60分ジョグと60分走を区別しています。私も同様で、低強度走と疲労抜きのジョグは区別しています。低強度走は低強度であり、ハードな練習から回復が可能な練習だけれどもトレーニング効果がある練習です。

 ですが、最近私はジャンクマイレージは市民ランナーの方にとっては下記の二点の理由から、ほとんど存在しないと考えるようになりました。

・エリートランナーと比べるとそもそもの練習量が少ないので、少しでも付け加えることでプラスのトレーニング効果が得られる

・エリートランナーほど呼吸循環器系や生化学的なエネルギーシステムが発達していないので、如何なる練習でも多少のトレーニング効果はある

 実際に、私もそれと同じ現象がここケニアのイテンで起きています。ここイテンは標高2300mというのも大きいのですが、それよりも大きいのはどこにコースをとっても1キロあたり10mちょっとの累積標高になり(例えば、20キロで240mくらい)、更には町が一番高いので、後半は登り坂になることです。

 平気で1キロで20m、30mと登る坂があるのですが、標高2300m+登り坂のダブルパンチをくらうと1キロ5分近いペースでも平気で心拍数は140を越えます。

 これは低地の平坦なコースなら1キロ3分45秒くらいの際の心拍数です。これは一番斜度がきついところですが、そうじゃなくても1キロ4分半くらいのペースで平気で、心拍数は140を越えます。

 心拍数だけで言えば、中強度に該当しています。

 では、低強度じゃないのかということなんですが、やっぱり楽は楽なんですね。おそらくそれは、走行速度そのものが遅いからです。やはり、心拍数が同じでも走行速度そのものが遅いと楽です。その理由は下記の二つであると思います。

・最大筋力に対する余裕度が高い

 仮に、心拍数的にそれなりにきつかったとしても、やはり最大速度(100mのレースペース)の60%なのか、40%なのかで余裕度は変わります。

 ただ、この場合、登り坂では最大速度そのものが落ちるので、起きている現象をよく説明できていません。私は一つ目もありつつも次の二つ目の方が大きいと思います。

・走行速度そのものが遅いと神経筋にかかる負担が少なくなる

 人間は走っている時、脳から指令を送る(フィードフォア)だけではなく、筋肉からの報告(フィードバック)も受けて、その報告に従って、また適切な指令を送るということを繰り返しています。

 この時に、走る速度が遅いとこの脳(中枢神経)と筋肉とのやり取りの速度が遅くて済むので情報処理機能(認知機能)にかかる負担が少なくて済むのではないでしょうか?

 これは低地で練習する際にも同様の現象が確認され、やっぱり登り坂を使うと一人でも、あまりストレスなく負荷をかけることが可能になります。なので、基礎構築期の段階では私は登坂走や起伏のあるコースでのファルトレクをおススメさせて頂いていおります。

 厳密な理由はともかく、心肺や呼吸循環器系にはしっかりと刺激をかけながらも、低強度走が出来ることは事実です。

 そして、市民ランナーの多くの方にとっても全く同じ現象が起きていることに私は気づきました。心拍数が140を超えているのに、本人に聞くと「そんなにきつくない」とか「どちらかと言えば楽」と答え、実際に体がちゃんと回復しているという現象がよく起こるのです。

 それでも、心拍数が140越えは140越えなので、まだ走歴が浅く、外に出て走るだけで心拍数が140を超えてしまうという人には週に2日ほど完全休養を挟むことをオススメしています。

 それでも、しっかりとトレーニング効果を得ながらも、主観的に低強度であるというのはよくあることなのです。理由はやはり先述の通り、最大速度(100mのレースペース)に対する余裕度が大きいことと、走行速度そのものが遅いため神経筋にかかる負担が少ないためでしょう。

 ですから、心拍数を一つの目安にしながらも、心拍数を全てとして判断するべきではないと私が主張するのもここに根拠があります。

 というよりは、私はこの市民ランナーの方に起きている現象に先に気づいていて、自分が高地に上がってみて、改めて自分の体でその現象を体験しているというのが正しいです。

 6年前にイギリス人の低酸素室を販売している方と話をしていて「低酸素室の一番のメリットはジャンクマイレージを消すことが出来ることだ」とおっしゃっていたのはこういうことかと本当に思いました。

 そういう意味で言えば、大半の市民ランナーの方は低酸素室を使わなくてもジャンクマイレージは無いに等しいので、増やせる範囲で低強度走の量も段階的に増やしていくと良いと思います。何よりも、低強度走気持ち良いですしね。

 ただ、限度はあることにも言及しておきたいと思います。例えば、5キロで20分を切る走力のある人が1キロ7分ペースで走るとさすがにジャンクマイレージになると思います。これは5000m14分台の選手が1キロ6分ペースで走る場合も同様です。

 また、サブ3を目指すランナーが1キロ7分ペースで3時間走るようなLSDもほとんど効果はありません。気持ち良いからやるなら賛成ですが、トレーニング効果を求めるならやめた方が良いでしょう。

 ただ、この時に起伏などの様々な要素を考慮に入れる必要はあるので、厳密な線引きは出来ません。

 5000m14分台の選手にとって1キロ7分ペースが遅すぎるのは当然として、じゃあ、1キロ4分40秒ならどうなのか、4分30秒ならどうなのかとなってくると、そんな単純にここからは効果があって、ここからは効果がゼロのように明確な線引きは出来ません。

 これが、設定タイムを用いずに、低強度、中強度、高強度の3つを使い分ける最も大きな理由です。

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 ここでいう、投資とはお金のことだけではありません。愛するものに注ぎ込む情熱、時間、労力などの全てです。私が言っているのは仕事も家族も全て犠牲にして、生活の全てを賭けてということではありません。

 その程度は自分で決めるとして、小さな成功を得るには小さな投資が必要になる、大きな成功を得るには大きな投資が必要になるという単純な原理を理解していますかということです。

 ただ、投資をすればそれが全て結果に繋がる訳ではないのも事実で、大きな投資をしても成果がゼロであることも、寧ろ以前より遅くなってしまうことも多々あります。

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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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