こんにちは!
先日からメルマガ読者様限定で「高地トレーニングから考える低地トレーニング」というテーマの動画を二本お届けさせて頂いているのですが、文章でも書いて欲しいというお声を頂いたので、ブログでも簡単にまとめさせて頂きます。
今私はケニアのイテンという標高2300mの地に滞在して練習しています。日本で言えば、富士山の五合目くらいの高さになります。
高地トレーニングのガイドラインは様々にありますが、一つ理解しておくべきは標高が高くなるにつれて指数関数的に影響が大きくなるということです。
物凄く分かりやすい例を出すと、0mから600m高くなっても影響はほぼありませんが、1800mから2400mまでの600mはかなり影響が大きくなります。2400mから3000mまで上がるとそこで生まれ育った人でもかなりタイムが落ちるそうです。
日本国内では高地トレーニングという目的で、高地滞在することはあまりありません。単純に夏場は暑いから高いところにあがるというチームがほとんどです。だいたい100m上がるごとに0.6度から0.7度くらい気温が下がると言われます。
ただ、日本国内で合宿が出来るところというのはだいたい標高1000mから1500mくらいです。これらの高さは準高地と呼ばれる高さで、この高さでレースをすれば若干はタイムが落ちると思いますが、練習に関して言えばほとんど修正を加える必要はありません。
一方で、標高2300mの高さになると順応するまでは練習を変更しないと絶対に上手くいきません。これも標高1800mくらいの高さにある程度滞在してから、2300mに滞在するとか、一度2300mの地で6週間トレーニングして、2週間低地に戻って、もう一度2300mに滞在するとかであれば、そこまで修正は必要ありませんが、私が以前に標高2300mまで上がったのはもう6年も前になるので、今回は初めて高地に滞在するのと同じくらいの慎重さが求められます。
ここで、おさえておきたいのは高地に順応するとか練習に修正を加えるということの意味です。勘違いして頂きたくないのは、高地に順応したとしても低地と同じタイムで走れる訳ではないということです。つまり、3か月滞在するとしても結局最初から最後まで低地と全く同じ練習は出来ません。
逆の言い方をすると、ある程度高地に順応するまでは、単純計算で低地と同じ練習を組むことは出来ないし、またそうすべきでもないということです。
例えば、高地のタータントラックで5000mが15分35秒だったとしましょう。これは1キロ3分7秒ペースです。私の直近の低地でのタータントラックでの5000mが14分46秒なので1キロ2分57秒ペースです。ということは、単純計算で1キロ10秒遅くなっているので、全ての練習を1キロ当たり10秒遅くすれば同じ練習が組めるはずです。
これが単純計算で同じ練習を組むということです。
しかしながら、このやり方では上手くいきません。何故と問われても困りますが、上手くいかないものは上手くいかないのです。
私が初めて標高2300mまで上がったのは2014年、二十歳の時です。この時は、高地トレーニングの知識は本でかじっただけで、実体験としてはありませんでした。また、その時一緒に行ったのがロンドンオリンピック男子マラソン代表の藤原新さんであったことも今から思えば感覚を難しくさせていました。
藤原さんはその前にも標高2000mを超えるケニアのニャフルルという土地で滞在していたり、直前まで標高1800mくらいのスイスのサンモリッツで練習されていました。一方で、私は人生で初めての高地トレーニングです。
同じように出来ないのは当然なのですが、そのあたりがやっぱり感覚的に分かりづらかったのです。現地でのケニア人が比較対象にならないのは言うに及ばずです。
藤原さんもそんなに細かいことを気にするタイプの方ではなく、「大丈夫だよ。気にしすぎだよ」という感じの人なので、私もそんなもんかなと思っていたのですが、今から思えば完全にミスでした。
到着して2日くらいは移動の疲れもあり、軽めの練習を組みましたが、3日目にはいきなり4000m+3000m+2000m+1000mという練習を組みました。ちなみにですが、もう一本目の3000mで10分15秒くらいかかってギブアップしました。そのあと、一人で200mの流しを15本くらいやって終わりました。
もう本当に頭が痺れてきてただ単にペースが遅いという感覚ではないんです。ちなみに、当時私のハーフマラソンの自己ベストはすでに63分09秒でした。
そのあとも、出来るだけ現地のケニア人と同じ練習を組めるようにということで、現地のケニア人選手の練習についていかせてもらっていました。滞在期間が7週間しかないこともあり、なるべく良い練習がしたいという気持ちがあったのも事実です。
ただ、結果的にどんどん走れなくなっていきました。高地に順応するどころかどんどん走れなくなっていったのです。途中で食あたりになってお腹を壊したというのもあったのですが、38度くらいまで熱が上がったこともあってかなり苦しみましたが、治りは早く、後遺症も残りませんでした。
しかし、練習すればするほど走れなくなっていきました。完全に体が不適応を起こしたのです。
今回はコーチともよく相談して、初めの2週間は低強度走と流しを中心に軽い練習を組むことにしました。また、一回の練習量を増やすよりも二部練習を中心に練習の頻度を確保することに重点を置くことにしました。
コーチ曰はく絶対にペースを意図的に上げてはいけない、最初から最後まで楽だと感じるペースで走るようにとのことです。そして、結局はそちらの方が高地に順応するのは早くなる、逆にペースを上げると高地への順応が遅れてしまうとのことでした。
今日で高地での練習は6日目になりますが、実際に初めて高地に上がった時よりも順応は早いです。初めの方は長時間の移動(空路、陸路合わせて48時間)や時差ボケもあり、体の感覚も無茶苦茶になっていて分かりづらい部分もありましたが、間違いなく走るときつく、いつもよりも眠気に襲われたり、筋肉痛になったりしていました。
ただ、今でもきついのはきついですが、だいぶ順応してきて、明らかに練習後の眠気などが減っています。低強度走くらいであれば、低地に近い感覚になってきました。
では、一体何故このようなことになるのでしょうか?
それは人間の体というのは新しい刺激をかける時が一番リスキーだからです。何のリスクかというとオーバートレーニングや故障のリスクです。逆に、トレーニング刺激に対して適応するのは難しくなります。
では、メリットがないのかというとそうではなくて、人間の走力が適応するのは基本的には新しい刺激を体にかけた時です。リスクも大きい代わりにリターンが大きいのも事実です。ですから、新しい刺激を取り入れていく必要はあるのです。
低地での競技会のパフォーマンスを改善するために、高地トレーニングという新しい刺激が必要かというとそうでもないですが、例えばジョギングしかしていなかった人が100m5本でも良いからスピード練習を取り入れていくと走力が向上していきます。
しかし、リスクも同時に大きいので慎重であるべきですし、実は慎重に取り組んでいった方が走力の向上は速いのです。これが今回の話の一番大切なところです。
練習はやったらやっただけ効果があるのではありません。効果があるのは適応した分だけです。そして、新しい刺激を取り入れる際には、実は細かいステップを踏めば踏むほど効果は高くなるのです。
例えばですが、目標とするレースまで残り12週間とします。最後の2週間は調整に使うとしてそれまで週に1回距離走を行うとします。そして、現在は20キロを1キロ4分45秒ペースでしか出来ていないとしましょう。
このケースにおいて、サブ3をしたいから30キロ走を1キロ4分15秒ペースでやろうとします。一回やるとダメージがかなり体に残ります。そもそも、出来るかどうかも分からないので、30キロタイムトライアルという感じでしょう。体だけではなく、心にもダメージが残ります。
つまり、あんなに苦しいことはもうやりたくないなと思うのが普通の人間の心情です。
それで、結局2週間に1回か3週間に1回しかやらない、もしくは出来ないとしましょう。しかし、レースまで12週間あれば、4本くらいは入れられるでしょう。これは仮定の話なので、1キロ4分15秒で30キロ走やると書いていますが、そもそもおそらくいきなり出来ないので、30キロタイムトライアルになると思います。
一方で、もう片方はこの12週間、最後の調整の2週間を抜いて10週間を次のように使います。
25キロを1キロ4分45秒ペース、30キロを1キロ4分45秒ペース、20キロを1キロ4分45秒ペース、30キロを1キロ4分45秒ペース、35キロを1キロ4分45秒ペース、
20キロを1キロを4分45秒ペース、35キロを1キロ4分45秒ペース、40キロを1キロ4分45秒ペース、30キロを1キロ4分半ペース、30キロを4分半から4分15秒ペース、このように練習を組むと結局30キロを1キロ4分15秒ペースでやる練習が一本もありません。
一本もないのですが、レースで結果が良くなるのは後者の方です。何故なら、賢く練習を組んでオーバートレーニングのリスクを最小に、練習効果を最大にしているからです。
そして、これも重要なことですが、後者の方が楽なんです。無理がないんです。楽だと言ってもそれなりに体に負担はかかっていると思います。
でも、今までやってきたことの積み重ねの上に少しプラスアルファをのせていくということを繰り返しているだけなので、こちらの方が楽なんですね。
一方で、世の中で効率が良いと言われている練習の大半は高強度短時間練習なのですが、短時間で終わるから負荷が低い訳でもなければ、高強度だから練習効果が高い訳でもないことは知っておくべきことです。
また、私自身の練習に話を戻すと単純計算で練習を組めないということにも着目して下さい。普通に考えれば、高地でのパフォーマンスが下がるというのは簡単に理解できます。
知らない方の為に簡単に説明をしておくと、人間の体は空気を吸ったら空気が肺の中に入り、肺の中の肺胞というところで、酸素とヘモグロビンが結びつきます。ヘモグロビンは血液の中にある赤血球の中にあるタンパク質から構成される物質で、酸素と結びついて体内に酸素を運搬してくれます。
そうして、酸素が血液によって筋肉に運ばれると最後はヘモグロビンから離れて骨格筋の中のミオグロビンという酵素に受け渡します。そして、ミオグロビンによって骨格筋内に運ばれた酸素が筋細胞の中のミトコンドリアという器官でエネルギーに変えられます。そこで生み出したエネルギーによって運動はもちろんのこと、体温維持や呼吸などの全ての生命維持活動を行っています。
そして、この時肺胞内で酸素とヘモグロビンが結びつく割合は気圧と関係があり、気圧が下がれば下がるほど、肺胞内で酸素とヘモグロビンが結びつく割合は減ります。つまり、骨格筋に運ばれる酸素の量が減ります。そうすると、酸素を使って生み出すエネルギーの量が減ります。だから、走ると苦しく、タイムは落ちるのです。
ただ、日常生活ではほとんど何も感じません。それでも初めは階段を登ったり、歌を歌ったりすると息苦しさを感じることはあります。
ちなみにですが、私が中学生の時は(ということはおそらくその前の世代も)、マスクを着けて走ると高地トレーニングと同じ効果が得られるから、マスクを着けて走ると良いみたいなことが言われていて、結構マスクを着けて走っている強豪チームは多かったです。
私もそのうちの一人でした。
しかし、疑問に思っていたのは、高地に上がると気圧が下がることによって肺胞内の酸素とヘモグロビンが結びつく割合が減るのに対し、マスクの場合は肺胞内の酸素とヘモグロビンが結びつく割合は変わらず、一度に吸える空気の量が減ることによって苦しくなります。
果たしてこの場合、同じ効果は得られるのでしょうか?
この質問に答えてくれる先生は誰もいませんでした。当時は先生は何でも知っていると思っていたのですが、この歳になってみるとそんなことを質問される先生の方が不憫でなりません。
私の経験上、この二つの現象は全く異なるものです。ですから、低地でマスクを着けてトレーニングをしたからと言って高地に順化することは出来ません。やはり、肺胞内の酸素とヘモグロビンの結びつく割合が減るという現象下において運動をするということそのものが体にとっては新しい刺激なので、適応するのにはいつも以上に慎重さが求められるのです。
こういったことが理由となり、例え全ての練習を1キロ10秒当たり落としたとしても同じ練習を組むことは出来ないのです。
今ここで出来ないと書きましたが、本当に出来ないのでしょうか?
実は一週間くらいであれば出来ると思います。まあ、実際に5000m15分35秒で走れるかどうかも分かりませんが、別にそれは単純計算で15分20秒で走れるのであれば、1キロ当たり7秒しかペースを落とさなければ同じ練習になるし、5キロが15分50秒ならば1キロ当たり13秒落とせば良いというそれだけのことです。
ちなみに、ここで生まれ育った選手は1キロ3秒くらいしか変わらず、外国人でも継続的にこの地で練習すればそのくらいまで適応するはずです。
そういった単純計算の練習でも1週間くらいは出来ると思います。でも、問題はその後です。完全にオーバートレーニング状態になり、体が不適応を起こし、どんどん走れなくなっていくでしょう。
実はこれと全く同じことが市民ランナーの方に起こります。どういうことか詳しく説明しましょう。
単純計算でトレーニングが組めるのであれば、日本記録保持者の鈴木健吾君の練習とサブ3.5を目指す方の練習は全ての練習を1キロ当たり2分遅くすれば出来るはずです。鈴木君の練習がどんな練習なのか私は知りませんが、手に入るなら1キロ当たり2分遅くすればだいたいうまくいくはずなのです。
でも、実際には上手くはいきません。何故なら、互いが有している基礎体力のレベルが全然違うからです。
私が高地に上がって同じ練習が組めないのは、そもそも高地で練習すること自体が新しい刺激であるというのと同じ理由から、今まで週に100キロも走ったことがない人は、週に200キロ走るということそのものが全く新しい刺激になるので、週に200キロの練習の質を上げていくことは出来ません。
一方で、鈴木君は何度も週200キロ前後の練習を繰り返しており、その200キロの中身を濃くしていくことに重点を置くことが出来るでしょう。
比較が極端かもしれませんが、初心者ランナーさんとサブ3ランナーさんを比較する際でも同様のことが起こります。
そもそも、走るということ自体がきつい人が、練習の質を上げることは出来ません。これも繰り返しになりますが、多分やろうと思えばやれるんですよ。でも、そうすべきではないんですね。急がば回れで少しずつ練習の量を増やした方が結局は近道なんです。
そうなってきたときに、考えて頂きたいことは今自分がどのフェーズ(段階)にいるのかということです。
だいたい人が走り始めるきっかけは、友人や上司や部下に誘われて、健康のため、減量のため、手軽に始められる趣味がランニングだったのどれかです。このうちの一番目に該当する人は、だいたい企業対抗駅伝とか草駅伝に出場する頭数集めに駆り出されたパターンですが、全く練習をせずに出場するケースがほとんどなので、出発点としては健康の為に走り始めた人や減量の為に走り始めた人とパターン的にはほぼ同じです。
ただ、初めから2キロから5キロという短い距離を走れるようになりたいと思っている点に関して言えば、少し競技者思考と言えるでしょう。
それ以外の場合は、ただ外に出て走ること自体が目的なのです。別に、速く走ろうという考えはありません。そして、モチベーション維持の為に大会にエントリーします。これもタイムを目標にするのとは雲泥の差があります。ただ、完走できれば良いし、なんなら完走できなくてもその体験そのものとレース前後の観光が楽しめれば良いのです。
しかし、そういった一群から抜け出して速く走れるようになりたいと考える人が必ず一定の割合で現れます。
そして、その大半は男性です。おそらく、生物的な本能にあるのでしょう。歴史をみれば男性は常に闘争を繰り返してきました。平和な時でさえも、出世競争や生存競争を繰り広げてきました。
メスの獲得においても、肉体的に優れているとか、頭が良いとか、稼ぐ力が強いとか、社会的に権力があるとか、過去の実績とかそういうものが重要になるので、当然と言えば当然でしょう。一昔前はその傾向が更に強く、私の祖母は母方の方も父方の方も「男は金=仕事やで」と言っていました。
反論もあると思いますが、私は絶対に割合で言えば男性にはそういった闘争本能や競争心、向上心が女性以上にあると思います。これはあくまでもそういった傾向があるというだけの話なので、女性の中にも当然速くなりたいと思う人が一定の割合で出てきます。その割合が男性よりも低いだけです。
で、こういった時に何をするかというと雑誌を買うか、ユーチューブをみるか、周りの先輩ランナーさんに聴くことなんです。本を買う人も多いですが、売り上げを伸ばしたければ雑誌の延長のようなものでなければいけません。弊社のようにトップ10%の層を主な対象としているような商品は単純に90%のビジネスチャンスを失うことになるので、ダメなんです。
で、だいたい次に何を始めるのかというと距離走の質を上げたり、インターバルを取り入れたりということになるのですが、実はその前に土台の部分を上げていった方が近道だったりします。
例えば、高強度走を取り入れる前に、中強度走の頻度を増やすとか、更にその前に低強度走から走り始めて後半ペースを上げていくような低強度から中強度の持久走を増やすとか、最後の1キロだけペースを上げるサージを導入するとか、インターバルもだいたいの本を読めば1キロ3-6本くらいの練習が書いてあることが多いですが、その前に100m3本の流しをして、100m5本の流しをして、100m10本の流しをして、200m5本の流しをして、週に1回くらい200m10本の流しをして、次に200m15本の流し(インターバル)をしてと段階的にやっていった方が早かったりします。
流しという言葉が分からない人もいるかもしれませんが、「流す」というのは手を抜くことです。陸上競技の試合を見ていると予選や準決勝の通過が確実とみると最後ちょっと手を抜いてゴールする選手がいますが、あれを「最後流した」と表現します。
練習では、主に短距離選手がウォーミングアップなどで数本全力で走らずに流すので流しと言います。全力ではなく流すということなのですが、全力を基準として流すので、長距離選手からすれば十分速いスピードです。それを100m5本とか10本とかやるのが流しです。
他にも言い方はいくつかあって快調走、ウィンドスプリント、ストライド、全て同じ意味です。
ただ、市民ランナーの方の場合は練習量の上限で言えば、だいたい月間300-400㎞です。逆の言い方をすれば、このあたりまでコンスタントに練習量を増やせば、あとは成功している人のトレーニングを分析して使えそうなものは単純計算で応用して使っていけるということでもあります。
一人だけの練習を参考にするとたまたまその人が上手くいっただけというパターンもあり得ますが、何人もの成功パターンから共通点を見つけ出していけばだいたいは上手くいきます。
これまでも同じようなことは何回も言ってきたんですけど、結局「市民ランナーでそこまで練習量を増やせない。時間も取れない。だから、短時間高強度練習で効率よくやるんだ」という反論が出てきます。
でも、短時間高強度練習は必ずしも効率が良い訳でもないし、練習量を増やすことは必ずしも体への負担が大きい訳ではありません。意外と負荷をかけずに走る頻度を増やすことの方が効率が良かったりします。
今までは私はもうすでにその段階を通り過ぎているので、情報の受け手の皆様の心に響きづらかった部分もあると思いますが、私も高地に上がったら同じ原則を適用してトレーニングしているし、実際にそちらの方が体が刺激に対してよく適応できており、練習がスムーズに行っているという話です。
また、一度高地トレーニングをするとしばらくその効果が維持されるということも重要な点です。今回は6年ぶりの高地滞在なので、かなり慎重にやらないといけませんが、一度3か月高地に滞在して、そのあと2か月日本で練習して、またそのあと高地でトレーニングする場合、順応するのに必要な時間は6年ぶりに高地で練習するよりもはるかに短くなります。
同様の理由から(同様の現象として)、一度土台をしっかりと作り上げれば、しばらくは維持されるので、レースが近づいて特異的な練習に集中するためにある程度練習量を減らしたり、中強度の持久走を低強度の持久走に置き換えてもしばらくは維持されます。調整期間においても同様で、ある程度は維持できるので、レース直前まで練習量を増やし続ける必要はありません。
ただ、故障などで1カ月や2か月走れなかった場合は、やはり慎重にゆっくりと土台を作り上げていった方が速いです。整形外科の先生や治療院の先生方は故障した時に「治ったらいくらでも走れるんやから、今は走るのを我慢して治すことに集中した方が良い」などと言いますが、それは嘘です。
やはり、1か月以上走れなかった場合には慎重に低強度走を中心に、土台作りから始めるべきです。1か月以内ならどうかということですが、必要な時間は少なくなりますが、やはり少しずつ戻していくべきです。
私の経験上、3日間走らないと土台の部分が低下しており、いつもよりもダメージが残りやすいです。ですから、3日間以上走らなかった場合は低強度走から戻していきます。
また、私が頻繁にレースに出場することをオススメしないのも同様の理由です。「出来る」というのと「適切なトレーニング」というのは別物です。その時は、全力でやれば「出来る」けれど、長期にわたって体がその刺激に適応するかというと全力でやる割にはあまりうま味がないような気はします。
そういう意味では、レースに出場して、練習同様負荷をコントロールしてやる分には好きなだけレースに出ても良いと思っています。という訳で長くなりましたが、今回の内容は以上です。
最後に長距離走、マラソンが速くなりたい方にお知らせです。
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