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故障を抱えたある市民ランナーの方のトレーニング改善事例

更新日:2021年7月2日

 こんにちは、ウェルビーイング池上です。長距離走・マラソントレーニングはすでに100年くらいの歴史の中で試行錯誤が繰り返されており、私のような二流ランナーのレベルも一気に上がりました。マラソンで2時間13分程度の記録でも半世紀前は世界のトップクラスでしたが、現在ではその程度の選手は履いて捨てるようにいます。その大きな理由は単純にその程度のレベルのトレーニングに関する知識が広く知れ渡れるようになったからです。


 私自身はアマチュア、プロ問わず、トレーニングの原理原則を学び、それを実践することが重要だと考えていますし、ランニング用にプロ用知識やアマチュア知識がある訳ではありません。レベルを問わずランニングはランニングです。私がプロ生活を通して学んだことをアマチュア選手に応用し、過去一年だけで数百人のアマチュアランナーの方を指導し、多くのサブ3ランナー、2時間35分切りランナー、5000m16分台、15分台と5000mからマラソン迄多くのエリート市民ランナーを輩出してきました。今では日本一のサブ3メーカーと言っていただくこともあります。


 その一方で、トレーニングの難しさの一つが応用にあることも事実です。100年の歴史の中である程度の答えが出ているのであれば、それを使わない手はありません。ですが、やはりに人間の顔が一人一人違うように、トレーニングも細部は一人一人異なるべきです。今回はあるウェルビーイングオンラインスクールの受講生様より頂いたご質問とその修正の事例をお見せしたいと思います。何かの参考になりますと幸いです。


以下実際に受講生様から頂いた実際のメールです。


「これまでの状況:

1.年齢59歳、スポーツ歴55年

  うちサッカー50年、テニス10年、ランニング10年


  身長:175㎝、体重:61-62㎏、体脂肪率:10-12%


  走力:学生時代10㎞40分(サッカー準備運動として練習前に毎日)

     10年前10㎞50分、 5㎞24分 (ランニング始めたころ)

     現在、10㎞55分、1㎞4分20秒(今の実力)


  けが:両膝前十字靭帯(ALC)断裂 (現在)

     左膝:20年前ALC断裂→再建→10年前再断裂→再建せず

     右膝:8年前ALC断裂→再建せず、現在に至る


2.目標案: 「マラソン:サブ3.5」??


  しかし、キロ5分で2-3km走ると左膝にダメージあり

  走り終えると左膝が痛く、右脹脛肉離れ併発、回復に2-3日必要

  毎日の練習はキロ5.5-6分程度、距離は10-20㎞程度が限界

  → 逆にこのスピードで走るとダメージなく月間150-200㎞可能


  果たして、マラソンの時間を目標に据えるのが適切か困惑中

  基礎体力や筋力は人並み以上にあると思うが

  膝ALCに爆弾を抱えながら走る状態が健全とは思えず

  → 医者に相談すると、再度再建手術以外に解はないと(笑)

  → 60歳前にALC再建は避けたい。日常生活支障なし


  練習は、平日5-10㎞、週末10-15㎞、月間150-200㎞

  平均キロ6分程度で、膝ダメージなくすため、すり足状走り

  ピッチ170前後


3.相談

  このまま練習を続け、ALC断裂のままサブ3.5目指すべきか?

  タイム追求というより、両膝ALC断裂のまま適切な目標は何か思案中

  1-2㎞だけならキロ4分を目指せる感触だが・・・

  老後に生活に支障を来す負荷をかけるリスクは避けたい。


  このようにケガを抱える市民ランナーへの適切な目標設定や

  膝への負担を最低限度にした走法、練習メニューなどあれば

  ご紹介頂ければ幸いです。


  私の特殊な例で、他のランナーの参考にはならないと思い恐縮です。

  お時間に余裕あるときに、少しアドバイス頂ければ幸いです。


  引き続き、よろしくお願いします。


PS 池上さんのプロフェッショナルな知識や経験に圧倒され、

   さらに、それを一般ランナーに伝えようとする熱意に敬意を

   表します。私も触発され、Daniel's Running Formula, 3rd Ed.

   原書で読み始めました」


以下私の実際の回答です。


「まず初めに私は医療関係者ではないことを先にお伝えさせてください。


 その上でですが、今までこのような機能不全が手術で改善されたという話を聞いたことは一度もありません。


 私のコーチディーター・ホーゲンは1970年代に10台ですでに5000mを14分10秒で走り、東ドイツのホープでしたが、ひざの手術をしてそのまま復帰することなくコーチになりました。


 私の洛南高校時代の同期に吉田律輝という選手がいました。私が今まで出会った中で、7トップ3に入る素質の持ち主でしたが、ひざを痛め手術をして、そのまま選手として大成することはありませんでした。


 先日私の高校時代の2つ上の先輩丸尾知司さんが50キロ競歩でオリンピック代表の座を射止めました。丸尾さんは中学時代は3000m8分台の自己ベストを持ち、高校入学後もほとんどエアロバイクだけの練習だけで1,500mを4分7秒で走るほどの素質を見せておられました。ですが、膝を痛め手術をして、そのまま二度とランナーとして復帰することはありませんでした。丸尾さんは誰もが認める意志の強さと、優れた人間性をお持ちの方ですが、どれだけリハビリをしてもランナーとして復帰することは出来ませんでした。


 私自身長くひざを痛めたり、足底筋膜炎を4年間患っていたこともあり、色々調べましたが、手術で改善されたという話はほとんどありませんでした。少なくともプラセボ手術(手術室に運び込み、麻酔をかけ、何もせずに患者に「手術で問題は取り除いた。もう大丈夫」と伝える)と効果は変わりません。


 実際に靱帯が断裂し、再建していないのであれば、これからも100%靱帯がある状態と同じというのはないのかもしれません。ですが、私の経験上問題の大半は、筋肉のどこかに機能不全があることです。これは鍛えて何とかなるものではなく、機能不全の原因となっている慢性的なコリや炎症を解消し、そして底に溜まってしまっている免疫細胞の死骸を除去しないといけません。そうすれば、改善されることは多々あります。


 先ほどのメールにてひざを痛めた際に、アプローチする場所をお送りさせて頂きました。いくつかの筋肉群をお送りさせて頂きましたが、そのうちのどれが原因となっているかは分かりません。一番怪しいところはフォームローラーでマッサージしたり、テニスボール、ラクロスボールなどで圧を加えたときに、患部に痛みを感じる箇所です。このような慢性的な痛みの治療において重要なのは、筋肉をほぐす頻度です。一度にたくさんやるよりも毎日一日に3-6回、5分前後、痛気持ち良い程度で良いので、ほぐしてあげることが重要です。


 正直、圧がかかったり、こねたりして痛気持ち良い負荷をかけることが出来れば、何でも良いのですが、アマゾンやスポーツショップ、ホームセンターなどでテニスボール、フォームローラーなどは安価で手に入るので、一応購入されることをお勧めします。


 また、それと同時に行っていただきたいのがScraping technicと呼ばれるもので、これは免疫細胞の死骸を除去するために行います。長く凝り固まった筋肉があり、局所的な酸欠による慢性的な炎症が生じるとそこに免疫細胞が集まり、本来の仕事をするのですが、血液が充分に流れていないので、その死骸が除去されなくなっています。そこに体液がたまった状態となり、部分的にしこりやむくみが出来てしまいます。これを人工的に流してあげないと、治癒能力が低下するので、潤滑油(ハンドクリーム、オリーブオイル、マッサージオイル、ベビーオイルなど何でも良いです)を塗ってこすり上げます。写真の中では、プラスチックのまな板を使っていますが、私のおすすめは木製のしゃもじです。こちらは一日一回が限度です。皮膚を傷めないように気をつけてください。


 一応私のおすすめのフォームローラーのURLを貼らせて頂きます。過去にはホームセンターで買ったものを使ったりもしていましたので、品質にはこだわらなくて大丈夫です。ただあまりにも安いのを買うと耐久性がなく、体重をかけ続けると壊れることがあります。

慢性的な痛みについてそのメカニズムや理論的な箇所についてもっと知りたいという場合には「慢性的な故障の治し方」をご参照ください。

テーピングに関しましても写真をお送りさせて頂きました。こちらはホワイトテープのように固めてしまうものは避けてください。あくもでもサポート的なものでキネシオテープなど充分に伸縮する者をご利用ください。


なおお送りさせて頂いた写真は全て『The Chronic Injury Survival Guide』William E. Prowse著が出典です。


さて、今後の目標についてですが、全ての故障は異なるので、一概にこうだとは言い切れません。私見としましては、マラソンくらいの距離であれば、そこまで怖がる必要もないと思います。このくらいの距離であれば、長く走る方が負担がかかるのか、それとも速いペースで走る方が負担がかかるのかはケースバイケースです。したがって、問いは一キロ4分を切って短く走る方が負担が少ないのか、それとも一キロ4分50秒で走り続ける方が負担が少ないのか、というところになると思います。老後へのリスクが低い中での挑戦が最も面白いのかなと個人的には思います。これは外側からは分からないので、トレーニング状況や実際にそのペースで走ってみたときにダメージはどちらの方がどうなのかということだと思います。


練習に関しては、出来るだけアップダウンを避けてください。登りはそうでもないですが、下りは膝へのダメージが大きくなります。また、人間の体は物体のように速度×時間に正比例してリスクが高くなるのではありません。走行距離×速度に正比例してダメージが大きくなるというお医者さんもいますが、それは嘘です。実際には、このラインを超えるとリスクが大幅に増えるというラインがあります。これもその人や故障の種類、程度によって様々なので私の方から、ここまでで練習してくださいとはお伝え出来ません。ただ、これはご自身の経験の中でこの程度の練習なら大丈夫という経験がおありだと思います。


ですから、ここまでならリスクが指数関数的に跳ね上がらないという範囲の中で、バリエーションをつけながらも(強度や時間に変化を加える)、一番大切なのは継続的に走る頻度を維持することです(望ましくは週6-7日)。農家の方はたまにお盆とかで3日休むとかえって疲れるとおっしゃるのですが、人間の体はそのように出来ており、実は故障のリスクが最も高くなるのは、しばらく休んで急に負荷を上げることなんです。また走力向上の観点からも、継続的に走り続けることがベストです。


ですから、改めてまとめますと、故障の状態に応じてここまでなら大丈夫という範囲の中で変化をつけるということです。例えば、5:30/kで10キロ、次の日は6:00/kで20キロ、そして次の日は5:30/kで8キロ、その後に100m5本だけ、痛みの状態も確認しながら、どのくらい速く走れるのか試してみるといった具合です。長距離走というのはどこか一つに痛みを抱えているとハンディになるのは間違いないのですが、走り続けることでその周囲の結合組織(筋肉、腱、靱帯)が強くなると患部への負荷が減って痛みが減ったり、痛みの度合いが同じでも長く速く走れるようになっていくこともあります。ですから、この限界点を少しずつ上にずらしながらも、リスクは取らない、そして軟部組織への治療をしっかりとして回復を試みるということの繰り返しになるかなと思います。


ちなみにですが、ウェルビーイングオンラインスクールのリカバリー戦略編で紹介している食事を実践すると全身の炎症レベルが下がるので、患部への痛みも緩和される傾向にあります。またヨガも有効な手段です。このあたりを総合的にアプローチしていって、様子を見ながらやっていくしかないのかなと思います。一つ言えることは、良くも悪くもどこまで改善されるかは分からないということです。お医者さんが原因不明とか治らないと言ったケースが先述の軟部組織への治療で改善、完治されたケースがいくらでもあります。また、走る=ダメージをかけることというのも間違いです。問題はどこまでやって良いかを見極めることであり、完全に走らなかったら改善されるかというと全然そんなことはなく、寧ろ患部以外の筋肉、靱帯、腱も走ることに耐えられなくなっていくので、かえって走れなくなったり、痛みが強くなったりします」(引用終了)


以下、再び受講生様からのメッセージです。


「頂きました情報や各種Youtube配信、PDF資料などを研究し、

二週間練習を試してみた結果をまとめました。

初心者ランナー事例として今後の参考にして頂ければ幸いです。

(池上さまのターゲット客層ではなく恐縮です。)


1.ケガ(両膝全十字靭帯断裂)について


  ・完全回復はない、靭帯断裂前の運動は忘れることにしました。


  ・膝にダメージの来ない範囲内の運動と練習に限定し、タイム目標の優先度を一旦下げ              る結論に至りました。


  ・練習強度を少し下げ、基礎体力&筋力(一般性)を優先、

   パフォーマンスが上がってきたら徐々に強度を上げる重要性

   に気づくことが出来ました。ありがとうございます。


2.今までの練習を見直しました。


  ・サブ3.5目標にキロ5分を目指していた

   → 目標をキロ6分にてフル完走できる筋力・体力獲得

     ただし、膝への負担をかけない走りを完成させる


  ・LSDも取り入れ、心肺機能向上を優先


  ・高強度スピード練習は、膝に無理ない程度(頻度)だけ

   例 10㎞ジョグのラスト1㎞だけ5:30など


  ・全力ダッシュ(100m, 200m,400mなど)は取り入れない


3.ケガしない決意と体メンテにより、体調万全に


  ・今まで:数カ月毎に膝痛、ハム・脹脛肉離れなどで1-2週間練習休み


  ・これから:ケガしない強度の練習に徹し、練習休みをとらないで

   週5-6日コンスタントに走り続ける


  ・フォームローラーとテニスボールによる筋肉ほぐし、筋膜はがし


  ・Scraping活用・・全く知りませんでした。ありがとうございます。


  ・ヨガとストレッチの積極活用


4.ランニングのフォームや走り方に意識を向ける

  ・膝が左右にぶれないよう、真っすぐ出して丁寧に着地


  ・上半身をリラックス、肩甲骨と骨盤の連動を意識する走り


  ・靴のかかと外側が減る走りからミッドフット着地にシフト


  ・アップ・ダウンを丹念に(今までは軽視)


  ・靴を新調(ペガサス37に)


5.目標:さらに池上さまの発信情報を参考に研究を続け、

  まずは膝のダメージやケガの心配ないランニングを完成


  ・3ヶ月後のフルマラソン完走


  ・6ヶ月後、サブ4


  ・1年後、サブ3.5


  ・2年後、サブ3


こんなトレーニング計画としました」(引用終了)


再び私からのメールです。



「頂いた今後のプランについて、基本的には本当にあの内容で良いと思います。その上でメモ書き程度の意味合いで、いくつか補足で書かせてください。


・全ての故障は特異的なので、正直膝への負担が減る走り方がどのようなものなのか分かりません。ですが、全ての走りに共通して言えることは、頭の位置や体幹のブレが大きくなると、故障個所への負担が大きくなるということです。それを防ぐために出来れば週に一、二回体幹補強(ウェルビーイングオンラインスクール第9回参照)を取り入れてみてください。


・接地に関しましては必ずしもこだわる必要はありません。これはミッドフットに変えることが悪いという意味でもなく、ニュートラルな意味であまりこだわる必要はないという意味です。ミッドフットに変えてしっくりくるなら、そちらの方が良いでしょうし、踵の外側が減るのもある程度は自然なことなのでそれで良いならそれで大丈夫です。私も踵の外側が減るタイプです。ですが、地面にぶつかるような接地の仕方をしていると負担が大きくなるので、下記のユーチューブ動画を参照してみてください。


走り方のワンポイントアドバイス

https://youtu.be/WNGNn15k1t0 ・靴を新調(ペガサス37に) →良いですね!踵の外側がすり減ると接地時の足の傾きが大きくなり、膝への負担が大きくなってしまいます。こまめにシューズをチェックしてみてください。よく「おすすめのシューズは何か?」と聞かれるのですが、半分冗談、半分本気で「新品のシューズです」と答えます。レースシューズならともかくトレーニング用のシューズは多少安くてもこまめに変える方が、高くて良いものを買ってボロボロになるまで履くよりも高い機能性やクッション性を発揮します。 何かの参考になりましたら、幸いです」(引用終了)


 ここまでであなたの参考になるような情報はありましたでしょうか?何かしらの参考になりましたら幸いです。


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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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