大阪マラソン日本人トップが教えるトレーニングのワンポイントアドバイス

最終更新: 1月14日

謹賀新年


 昨年は本当にたくさんの方に支えられて生き延びることができました。集中講義の受講生様、ブログ読者の皆様方には本当に感謝しています。ありがとうございました!今年も有益な情報発信ができるように精進して参りますので、何卒宜しくお願いいたします。


 さて、今年一発目のテーマは「大阪マラソン日本人トップが教えるトレーニングのワンポイントアドバイス」です。トレーニングのワンポイントアドバイスです。やっていない人が多いけど、ぜひやってほしいトレーニングが一つあるんです。


 それは「流し」と呼ばれる練習です。流しは他にも呼び方がいろいろあって、快調走、ウィンドスプリント、フロート、ストライドなどと呼ばれます。陸上競技の用語の中でも同じものを指すのに最も呼び方にバリエーションがある練習です。この記事の中では流しと書かせて頂きますが、普段他の呼び方で呼んでいる方は「ああ、あれのことか」と思ってください。ちなみに「すでに流しはやってるよ、当たり前だろ」と思う方も一応最後まで読んでください。意外と見落としている点が多いのが流しです。


 流しはどういう練習かというと、100mから2000mくらいの距離を気持ちよくペースを上げて走るのが流しです。色々な呼び方がある中で、流しと呼ばれるのはなぜかというと流して走るからです。短距離の選手が予選で、予選通過がほぼ確実な時にゴール前で力を抜くことを「流す」と言います。流しは全力で走るのではなく、流して走るから流しです。ウィンドスプリントにもそういうニュアンスがあると思います。スプリントではないけれど、風のように気持ちよく走る一種のスプリントだからウィンドスプリントなのでしょう。フロートは水上や空中を漂うという意味の言葉です。流されるようにスーと走るからフロートです。ストライドは歩幅を広げて走るという意味を込めてストライドです。そして、快調走は文字どおり、快調に走るから快調走です。


何れにしても全力で走るのが流しではありません。力を抜いてリラックスして走るんだけど、ある程度速いペースで走るのが流しです。というわけで、流しはスピードをつけるための練習ではありません。実はここがよく勘違いされることなんです。短い距離を速いペースで走るからスピードをつけるための練習だと思われがちなのですが、これは本質的ではありません。本当にスピードをつけたいのであれば、100mは長すぎます。本当にスピードをつけたいのであれば、60mくらいの距離をスプリントした方が良いです。


 では、流しは何のためにやるのでしょうか?大きく分けると二つあります。一つ目は技術練習です。長距離を速く走るための唯一の方法はリラックスして速く走ることです。単に速く走るだけでも、単にリラックスして走るだけでもダメです。リラックスして速くです。どのくらい速く走れば良いかというと目標とするレースペースです。目標とするレースペースでリラックスして走れるということがものすごく大切で、走技術というのはレース当日に変わってしまう、ほとんど唯一の要素です。そこには心理状態も関係してきます。


 一言でリラックスして速く走るといっても1秒で勝ち負けが決まったり、自己ベストが出るか出ないかが決まる競技ですから、やっぱり走り方が微妙に違えば結果の違いに大きく反映されるわけです。いかに良い時の走りの再現性を高くするかはとても大切です。


 ところで、長距離走というのは実はレースの動きをすることはほとんどありません。これが野球選手であれば、1日に何回もバットを振って、ボールを投げます。厳密に言えば、一回一回の動きは違いますが、ほとんど同じ動きをしています。反復練習という観点から言えば、同じ動きを何回も繰り返していると言えるでしょう。短距離や幅跳び、投擲の選手も同じです。動きづくりなどもたくさんしますが、基本は自分が競技でやる動きの反復だと思います。


 ところが、長距離選手はレースペース、もしくはレースペースで走るのは10%から5%程度です。それ以外の練習は無駄な練習かというとそうではなくて、それはそれでとても大切な練習です。むしろ、この土台の部分がしっかりとしている人ほど、レースペース以上の練習が活きてきます。これはまた別のテーマになるので、詳細は割愛します。


 ですが、技術面で言えば、レースペースの動きを体に覚えさせる機会が非常に少ないのです。そして、レースペースでやるような練習が技術練習になっているかというと少々微妙です。もちろん、技術練習にもなっているのですが、新しい技術を身につけたり、より高いレベルでのリラックスを体得するにはちょっと難しいんです。あなたもインターバルをやっている時のご自身の感覚を思い出してください。なかなか体の動きに注意を払うのは難しくないでしょうか?体の動きに注意を払っているとは思うのですが、新しい技術を試したり、リラックスして走ろうと思うのはなかなか難しく、何とかその練習をこなすだけでいっぱいいっぱいになると思います。


 流しの目的は、楽な練習の中で速い動きを入れることで、リラックスして速く走る動きを体に覚えさせる、少なくとも忘れないようにするのが目的です。週に二回ハードな練習をするとして後の5日は、それよりも遅いペースでの練習になります。これでは技術の習得という観点からは少し、不充分なのかもしれません。そこで、100mを何本かで良いので持久走の後に付け加えるとそれだけで、感覚的には掴めるものがあるんです。少なくとも体が忘れないようにする、という目的は果たせます。寧ろ、練習の目的を考えると同じ感覚で走っているのに、ペースが遅い時と速い時がありますから、それで自分の走り方がはまっているのか、はまっていないのか掴めると思います。


 もう少し具体的に説明すると、ペースが遅いランニングとレースでの最も大きな違いはストライド長です。ストライド頻度(ピッチ)に関しては、私の場合は3:45/kを切ってくると、レースペースとほぼ同じです。これより遅いペースのランニングでもできるだけストライド頻度を上げるようにしています。こうすることで、脚が疲れず走り込んでも疲れにくくなります。また、レースでも疲れにくい走りができるようになっていきます。


 ところが、ストライド長というのはレースペースと同じにならないとレースペースと同じ動きにならないんです。3:20/kというのはハードな練習以外の日の練習としては結構ハードなペースです。ところが、このペースでもレースペースと比べると一歩ごとに20cmくらいの違いがあります。20cmというのはかなり大きな差です。とはいえ、20cmくらいであれば、外見上の走り方はそう大きくは変わりません。ただ、本当にゆっくりとだけはしっていると、ストライドを伸ばすことが出来なくなり、腰もどんどん落ちた走りになります。良くも悪くもある動きを反復すると体はその動きを覚えてしまいます。持久走で綺麗に走れないと、強くはなれないというのは事実です。でも、いくら頑張っても限界はあるので、流しでストライドを軽く伸ばして、なおかつ腰を前にのせていく走りを確認するのも大切なことです。


 私がケニアのブラザー・コルムのトレーニンググループを訪れた時(ブラザー・コルムを知らないという方は「ケニアをケニアにした男」のブログ記事を参照してください)、私が目にしたのは「対角線」という芝生を対角線上に横切って、もう片方の対角線までジョギングして、また対角線上に流しをする練習に取り組む選手達でした。つなぎの日の練習は、軽くウォーミングアップをして、動き作りをした後に、この対角線というトレーニングでリラックスして速く走れるフォームを作っていたのです。ブラザー・コルムの選手たちはブラザー・コルムから何を学んだのかと聞かれると多くが「走り方」と答えます。ただ、やっぱり何か魔法のようなものがあるのではなくて、地道な反復練習で身につけていることがわかります。


流しをやった方が良いもう一つの理由


 流しをやった方が良いもう一つの理由ですが、それは維持です。トレーニングには維持の原則というものがあり、「あるレベルに初めて到達するよりも過去に到達したレベルにもう一度到達する方が心理的にも、肉体的にも容易である」という原則があります。この原理原則から導き出されることは「現在の走力を維持することはさらに容易である」ということです。


 一方で、持久力は瞬発力と比べると非常に落ちやすい能力です。昔短距離をやっていた先生が運動会で走るとまだ速いですが、長距離の先生に長距離を走らせると、基本的にそこらのおっちゃんになります。これは持久力の特性上仕方のないことなんです。生理学の実験では二日間トレーニングをしないと持久系酵素が減り始めるという研究結果が出ています。この研究では二日間全く何もしないという条件ですが、毎日走っていたとしても厳しいトレーニングをしていた人がジョギングしかしなかったら、いつかは遅くなっていきます。


 ところが、軽めの持久走に流しを入れるだけでかなり長期間自分のコンディションを維持することができるんです。これは試合前や一時的にオーバートレーニングに陥ってしまった時には、とても有効な手段です。なぜなら、トレーニングの負荷は大きくないので、体を回復させながらも、今までトレーニングしてきたことを失わずに済むからです。練習と練習が線で繋がります。


 さらに一歩踏み込んで、流しで強くなることは可能でしょうか?これも答えはイエスです。特に私は市民ランナーの方にオススメしていることなのですが、走り始めたばかりの人はいきなりインターバルはきつくてやりたくないという人も多いです。また、マラソンを2時間40分を切って走るような人の中にもスピード練習はやらないという人が多いです。仕事をしていれば、走るのは早朝か夜です。近くに公園があったり、夜でもみんなで集まってインターバルをやるような都市部の人は良いですが、田舎の方は街灯もあまりなく、夜に集中してインターバルができるような環境のない人も多いです。


 そこで、私がいつもアドバイスしているのは、流しを入れることです。トレーニングの大原則として、普段力を入れていることをさらに力を入れてやっても得られるものは少ない代わりに、やっていないことをやると大きな違いを生むのです。私がタイムを狙って走る人には40km走を練習で何回かやることをお勧めしているのもそのためです。30kmまでの練習でもマラソンは走れます。走れるんだけど、インターバルばっかりやるよりも、たまに40km走を入れた方が良いんです。スピード練習も同じです。やりたくもない、きつい練習をガンガン入れたら、嫌気がさしてやめてしまいます。でも、きつくもない練習を取り入れることで変化が感じられるようになると、逆に楽しくて「もっとやりたいです」というようになってきます。それが流しです。市民ランナーの方を指導していて面白い時はそんな時です。


 話を元に戻すと、普段スピード練習をやっていない人は、流しを入れるだけで力がついていくんです。注意点としては、流しをした直後にストレッチをしないでください。軽くやっても良いかもしれませんが、あまりしっかりとやると筋繊維が傷つきます。流しですでに筋繊維が伸びて、さらに一応それなりのスピードなので、きつくなくても筋繊維は硬くなっています。それを無理に伸ばすと傷めてしまうので、絶対に避けてください。


 ちなみに余談ですが、藤原新さんはジョギングの後に1分間全力を5本入れることで、状態を上げていったという話をご本人から聞いたことがあります。そして、それをJR東日本の高田千春さんが取り入れてマラソンで自己ベストの2時間10分33秒をマークされました。私自身も200m5本を30秒という練習を取り入れて状態を上げていったことがありますし、洛南高校では300m1本か2本を全力でいくという練習を取り入れていた時期がありました。400mのレースでも最後の100mは失速していますが、300mまではトップスピードに乗って走りきることができます。厳密にいえば、100mでも最後の20mくらいは失速しているのですが、中長距離ではその程度の失速は失速していないのと同じです。ただ、1500mとかでもスパートをかけるのが早すぎると明らかに最後の直線で失速して順位を落とします。洛南高校では、中距離に必要なトップスピードで走れるギリギリの距離を全力で走ることで、生理学的なトレーニング効果を得ながら、足の返しが速くなるという技術的な恩恵も得ていました。


 これはもう流しではないと思いますが、こういう練習も有効です。


 また私個人的には自分の体調を測るのにも使っていました。たかが300m、されど300m

です。自分の状態がタイムに出るのですが、300mを一本全力で行ったところで、疲労が残ることはありません。状態が良くないと早めに修正しようという気持ちにはなれました。実際にどうやって修正するかというのはまた別の問題なのですが涙


 今回は取り入れてない人は、是非取り入れてほしい、取り入れている人は改めてその重要性を認識してほしい流しの話でした。現在メルマガ登録していただいた方に「長距離走・マラソンが速くなるためのたった3つのポイント」というPDF20ページ分の小冊子を無料プレゼントしています。メルマガ登録は下記のURLよりお願いいたします。

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