疲労感と疲労の違い
- 池上秀志

- 2025年12月1日
- 読了時間: 19分
更新日:2025年12月10日
「疲労感と疲労はちがうんやぞ」
この季節になるといつも洛南高校陸上競技部の恩師の中島道雄先生がそのようにおっしゃっていたのを思い出します。
当時の洛南高校陸上競技部では、7月から8月に合宿で体を追い込み、9月はその疲労で部員全員走れなくなります。しかし、これは一時的なものであり、9月に少し練習を軽くすると10月くらいから状態があがってきます。
そして、11月第一日曜日の京都府高校駅伝は8割くらいの力で勝つように言われます。そこから、さらに疲労が抜けて11月と12月の記録会で部員のほとんど全員が自己ベストを更新するのですが、疲労感に関して言えば、正直10月くらいにはもう疲労が抜けているように感じます。
しかし、中島先生はこれで疲労が抜けたと思うなよと、疲労感と疲労は違うからなとおっしゃる訳です。
では、疲労感と疲労は一体何故違うのでしょうか?
というか、そもそも何が違うのでしょうか?
例えばですが、尿意を催してトイレにいったのに何も出ないとか、お腹が減ったからご飯を作ったけど、何も食べられないとか、そんなことはどのくらいあり得るでしょうか?
ほとんどあり得ないと言って良いのではないでしょうか?
眠くて眠くて仕方がないから布団に入ったけど、全然眠れないとか、美味しそうな匂いがするから食べてみたら、めちゃくちゃまずかったとか、そんなことは果たしてあり得るのでしょうか?
だいたい、人間の本能というのは上手いこと出来ており、生理的な現象と心理的が現象というものが一致するように出来ています。
にもかかわらず、疲労だけ疲労感と実際の疲労が食い違うということは何故起こるのでしょうか?
今回はそれについて解説させて頂きたいと思います。
そもそも生理的疲労とは何か?
先ずは生理的疲労と疲労感というものが何であるのかを見ていきたいと思いますが、そのうちの生理的疲労から見ていきたいと思います。生理的疲労とは何であるかといいますと、人間は心身の様々なストレスを受けると体内で酸化ストレスという物質が生成されます。
酸化ストレスは熱した植物油や化学調味料、化学添加物、アルコール、煙草、水銀、農薬、薬などの体に悪いものを体内に入れたり、長距離走、マラソンのトレーニングをしたり、短距離走のトレーニングをしたり、筋トレをしたり、睡眠不足になったり、様々な肉体的な負荷や上司からのプレッシャー、結果を出さなければならないというプレッシャー、顧客からの理不尽なクレーム、夫婦喧嘩、子供がぐれた、言うことを聞かない部下などなどの様々な心理的ストレスによって生じます。
ちなみにですが、厳密に書くと、ストレスではなく、ストレッサーです。ストレッサーによって引き起こされる一連の生理学的反応のことをストレス反応というので、我々が日常言語でストレスと呼んでいるものはストレッサーのことなのです。ストレッサーという言葉はハンス・セリエという博士が約100年前くらいに作った言葉です。
私はストレッサーよりも刺激と考えた方が分かりやすいのではないかと思っています。普通日常言語においては、それが心理的にも肉体的にも負担に感ずるもののことをストレスとか負荷と表現します。
ですが、これは物理的な表現としては正しくないと言いますか、どうしても出てくるのが「じゃあどこからがストレスになるんだ」という問題です。まあ、ストレス反応が引き起こされる分量に達すれば、ストレスだというのであれば、それも一つの分かりやすい考え方でしょう。
ただ、ストレス反応を引き起こす前からなんらかの刺激は体にかかっているということは理解していただきたいのです。
例えば、もしかしたらあなたの体は1㎞5分ペースを切らないとストレス反応を引き起こさないのかもしれませんが、だからといって1㎞6分ペースのジョギングは全く刺激がない訳ではありません。
1㎞6分ペースという刺激にさらに1㎞あたり1分の走行速度の増加という刺激が上乗せされることでストレス反応を引き起こすのであって、1㎞6分ペースは生理学的にはなんの意味を持たないということではないでしょう。
速度で考えた方が分かりやすいでしょうか。
すでに時速10㎞という速度があって、さらにそれに速度を2㎞上乗せすることでストレス反応を引き起こすとき、なんとなく時速10㎞のランニングはストレス0で時速12㎞になった瞬間にストレスが生ずるような気がします。それはそれでストレス反応が引き起こされるのは時速12㎞からであるという意味合いにおいては正しいですが、それは時速10㎞という刺激があって、さらに時速2㎞分の刺激を積み重ねたからなんです。
何故、これを分かっていただきたいのかと言いますと、例えば、インターバルトレーニングによって過度なストレス反応が生じた場合においても、それはあくまでも最後の引き金の部分であり、本当はもっと見直すことがあるかもしれないからです。
ラクダの背の藁一本という話があります。ラクダの背中に荷物をどんどん積んでいき、最後にもう藁一本積んだら、ラクダの背骨が限界に達して折れてしまったという話です。
人はこの藁一本を見て、この藁一本だけを悪者にしがちなのですが、実際にはそれまでの積み重ねがあったのです。これを見落としてはいけません。
生理的疲労もこのように考えてください。それ単体ではストレス反応を引き起こさないようなものも、あるいはあなた自身が負担に感じないものであったとしても刺激の積み重ねがあれば、その総量でストレス反応が生ずることはあるということです。
それはそうと、話を戻しますと、それが肉体的なものであれば、精神的なもの、神経的なものであれ、負荷は全て酸化ストレスという形で体内で生じます。そして、この酸化ストレスが炎症反応を引き起こします。そして、この炎症反応が強すぎると、真核生物翻訳開始因子という物質のリン酸化が生じます。
真核生物翻訳開始因子という物質のリン酸化が生ずると、伝令リボ核酸というものがその情報をDNAに伝え、DNAの複製、すなわち体の修復が行われなくなります。
ただし、これは必要なことでもあるのです。なぜならば、体に強い負荷がかかっている時に、細胞を修復しようとしても、変な細胞が出来かねないからです。体は余裕があるときじゃないと良い細胞は作れないのです。
例えば、これは一日の中の周期でも生じます。日中に活動したり、ましてやインターバルをしているような時はなかなか細胞が修復されません。
一方で、夜眠っている時は細胞が修復されます。この修復が遅れると、どんどん生理的な疲労が蓄積していくということになります。あまりにも、強い負荷をかけ続けたり、弱い負荷を少しずつかけ続けると、どうしても生理的な疲労が蓄積していくのです。
しかし、厳密に書けば、疲労が蓄積するというよりは、修復の遅れが蓄積するという感覚の方が正しいでしょう。何か、疲労物質が累積していくのではなく、修復作業の遅れが蓄積するのです。
では、体に負荷をかけること、刺激をかけることは全て悪いことなのかと言いますと、そういうことではないです。寧ろ、きちんと修復する範囲内であれば、刺激をかけることで、細胞が生まれ変わるときにどんどん体も心も強くなるし、頭も良くなるのです。
先天的に身体能力に優れた遺伝子を持つ人は情報処理能力(認知能力)に優れた遺伝子を持つ人がいるのは事実ですが、大半は後天的に刺激をかけることで適応反応が生じて向上していくのです。
それから、こうやって刺激をかけることは消して悪いことではありません。刺激をかけているまさにその時は、細胞の修復、すなわち生まれ変わりはスムーズにいきませんが、そのあとは適度な刺激をかけることで細胞の修復や生まれ変わりがスムーズにいくのです。
運動している方の方が概して若々しいのは、運動という適度な刺激で古くなった細胞や傷ついた細胞が早く死に、生まれ変わってくれるからです。これが新陳代謝が良いというやつです。
また、長距離走、マラソンなどの持久系運動をやると、活性酸素がたくさん出るから体に悪いとか、酸化ストレスがたくさん出るから体に悪いと言われることがありますが、これは別に長距離マラソンの専売特許ではありません。何をやっても身体的な負荷、心理的な負荷がかかれば酸化ストレスは生じます。活性酸素は酸化ストレスの一種です。
ですから、ご心配なさらないでください。きちんと、体が修復される範囲内で刺激をかければ、むしろ刺激をかけている人の方が強く美しいものです。
疲労感とは何か?
では疲労感とは何かということですが、上記の生理的疲労が下半身を中心に全身の骨格筋細胞で生じたとしましょう。そうすると、それが脳に伝わります。そうすると、脳内でも炎症反応が生じます。
これを疲労感として感ずる訳です。これが疲労感の正体です。基本的には、全身の炎症反応の度合いが強ければ強いほど、疲労感を感じ、休養の願望が増大し、普通はその休養の願望に応じて休養するのでそれで問題はないのです。
ところが、生理的な疲労の割には疲労感を感じないことがあるのです。それが以下の場合です。
・気が張っている時
・好きなことをやっている時
・好きな人と何かをやっている時
・夢や目標に向かって努力し、毎日が充実している時
・カフェインを摂取した時
・アンフェタミンなどの覚醒剤を使用した時
皆さんも大切なプロジェクトや商談、イベント、社内プレゼン、大切な大会前などに頑張っていて、それが終わった瞬間にどっと疲れが出たことはないでしょうか?
それが目標に向かっている間は気が張っているという状態です。
また、カフェインの大量摂取が体に悪いと言われるゆえんもここにあります。カフェインの大量摂取で生理的疲労を感じにくくして、仕事をやりまくっても、生理的疲労がない訳ではないので、心不全などで突然死んでしまうこともたまにあるのです。そこまでいかなくても、生理的疲労を感じないのはそれはそれで問題でもあるということです。
また、医学的にも起業家型過労死というのがあるそうですが、夢に向かって頑張っている時、あるいは強い責任感のもとで頑張っている時、あるいは好きなことをやっている時は疲労を感じにくいので、疲労を感じないままに毎日仕事をしていたらそれで死んでしまったということがあるのです。私も突然死ぬならこのパターンでしょう。
それから覚醒剤については、段々と経験者の話を聞く機会もなくなりつつありますが、桜井章一さんという二十年間台打ち麻雀で負けなしの方がいらっしゃったようです。台打ち麻雀というのはやくざの代わりに賭けマージャンに出る仕事なのですが、やっぱり対戦相手は覚醒剤を使ってくることもあったそうです。
2日でも3日でも普通の人間ならへばるところでへばらず異常な集中力を発揮してくるそうです。それで、薬の効果がキレたら今度は2日、3日まとめて眠るそうです。私の知り合いの知り合いにも覚醒剤の使用者の方がいて、やはり同じような感じだそうです。
私的には2日、3日寝ずに何かをやって、結局そのあと2日、3日寝るのであれば、同じじゃないかと思うのですが、違うんですかね。
まあまあ、いずれにしても、合計の採算が取れていれば、つまり修復に遅れが生じていなければそれで良いのですが、そうじゃない人の場合は大変なことになるということです。
そして、冒頭の話に戻りますが、時には体の修復には数週間や数か月かかることもあります。
ところが、目の前に京都府高校駅伝や全国高校駅伝、各種大会などがあると気が張り詰めているので、疲労を感じにくいのです。疲労を感じにくいと調子にのって余分な練習をしたり、体の手入れや体調管理がおろそかになる人も出てくるけれど、それでは結果は出せないから、この時期になると「疲労感と疲労は違うんやぞ」ということを恩師の中島道雄先生はおっしゃっていたのではないかと今になって思います。
おそらく、普通に生きているだけでは疲労感と疲労の違いはカフェインの大量摂取や覚せい剤の使用などがなければ、問題にならないでしょう。
しかし、本当に最高のパフォーマンスが求められる場合には、やっぱりしっかりと休まないと高いパフォーマンスは発揮できません。疲労感がなくても、生理的疲労がない状態を維持しておく、あるいは大切な日には生理的疲労を0に近い状態でもっていけるようにしておかなければなりません。
5000mを走って2秒差で自己ベストを逃すとか、42.195㎞を走って、1分、2分サブ3まで足りなかったというようなことがある長距離走、マラソンにおいてはなおさらです。
という訳で、今回の内容は以上です。
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そういったことを理解すると、自分の体というものに対する理解が深まり、トレーニングにせよ、人生にせよ、物事をより正確に単純化してとらえることが可能になり、迷わずに最適解にたどり着きやすくなります。
さて、ここで少し話題を変えさせて頂きましょう。あなたはこちらの講義を受講しようと財布からクレジットカードを出す、スマホやパソコンの画面を開いて入力し始める、しかし、ふと立ち止まって考えてみる、「私はこの人のことをどれだけ知っているのだろう?よく考えたら全然知らない人かもしれない」あなたはそう思うかもしれません。
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そんな方の為に本日は改めて皆様に私の紹介をさせてください。
私の名前は池上秀志(いけがみひでゆき)、1993年12月27日に京都府亀岡市に生まれ、亀岡小学校、亀岡中学校、洛南高校、京都教育大学教育学部社会領域専攻、プロランナー、ウェルビーイング株式会社代表取締役という経歴を歩ませて頂いております。
中学、高校では全国駅伝で通算23人抜き、うち1回は区間賞、大学入学以降は京都インカレ、関西インカレ、京都選手権、近畿選手権、上尾ハーフマラソン一般の部、グアムハーフマラソン、ケアンズマラソン、亀岡ハーフマラソン、ハイテクハーフマラソン、谷川真理ハーフマラソンなど国内外の様々なレースで優勝してきました。
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