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最大酸素摂取量から考える上半身のリラックスの重要性

更新日:2021年10月16日

 こんにちは、ウェルビーイング池上です。今回は最大酸素摂取量から考える上半身のリラックスの重要性に関する話です。タイトルだけ見ると「えっ上半身のリラックスと最大酸素摂取量とどう関係あるの?」と思われる方がほとんどだと思いますが、ご安心ください。こちらのブログを読み終わるころにはご納得いただけます。


最大酸素摂取量って何?

 このテーマに入る前に最大酸素摂取量って何?という話から始めたいと思います。「最大酸素摂取量なんて説明しなくても分かるよ。どれだけ多くの酸素を吸えるか。どれだけ多くの空気を取り込めるかのことでしょ」と思われる方がほとんどだと思うのですが、実はそれは厳密に言うと間違いです。


 厳密にいうと、最大酸素摂取量はあなたがどれだけ多くの酸素を取り込めるかとは関係がありません。最大酸素摂取量というのは、一分間に酸素を使ってどれだけのエネルギーをミトコンドリア内で生成出来るかを表す数字なのです。ですから、最大酸素消費量とあらわされることもあるのですが、意味としてはこちらの方がしっくりくるでしょう。


 このあたりが学問上の定義とに日常言語の食い違いというやつですが、専門用語というのは、一度定義が決まれば後からその意味を勝手に変えたり、違う言葉に変えてはいけないのです。そんなことをしたら意味が分からなくなります。専門分野においては、日常生活では扱わないような概念をたくさん扱いますから、専門用語を使うのは当たり前のことですし、日常言語では扱わない概念なので、新しい言葉を作らざるを得ません。


 しかし、新しい言葉を作ると言っても、テクマクマヤコのような日本語かどうかも分からない言葉を使ってしまうと、覚えるのが大変なので、最大酸素摂取量というようになんとなく意味を類推できるような言葉をあてはめます。もしくは、ただ単に外国から入ってきた言葉を翻訳しただけのケースも多々あります。最大酸素摂取量もおそらくThe maximal oxygen intakeを直訳しただけなのだと思います。しかし、それが意味するところは先述したとおり、一分間に(あるいは単位時間内に)酸素を使ってミトコンドリア内で生み出すことのできるエネルギー量を表す指標です。


 もう少し、厳密に説明を加えるならば、70ml/kg/mのような数字で表されるのは、体重一キロ当たり、一分間にどれだけの酸素を消費することが出来るかです。酸素を使ってより多くのエネルギーを生み出すことが出来るということは、より多くの酸素を消費できるということです。ですから、1分間にどれだけ多くの酸素を消費できるかを調べることで、その人が酸素を使ってどれだけ多くのエネルギーをミトコンドリア内で生成出来るかわかるのです。


最大酸素摂取量とランニングエコノミー

 ここまで少し難しい話をしたかもしれませんが、ここまでの内容で理解していただきたいことは一つだけ、「最大酸素摂取量とは酸素を使ってミトコンドリア内でどれだけ多くのエネルギーを生成出来るかを表す指標である」ということだけです。酸素を多く消費できるということは、それだけ多くのエネルギーを消費できるということです。


 この本気を出した時に消費できる酸素の消費量は多ければ多い方が良いのですが、ある与えられたペースにおける酸素消費量は少なければ少ない方が良いのです。例えば、一キロ3分ペースで走った時の酸素消費量は少なければ少ない方が良いのです。何故なら、すなわち一キロ3分ペースを維持するのに必要なエネルギー量が少ないということだからです。そして、ある与えられたペースにおいてどれだけの酸素を消費するかで表される指標をランニングエコノミーと言います。


 日常言語では同じ一キロ3分ペースで走った時に使う力が小さくなることを走りが効率よくなると表現しますが、運動生理学の用語はこれとは異なります。運動生理学の用語では一キロ3分ペースで走るときに必要なエネルギー量が減ることを走りが経済的になったと表現します。これも専門用語なので、そのように決まっているのです。「何故経済的になったというんですか」という問いには意味がありません。その問いは山は何故山というのですか」という問いに等しいです(それでも何らかの意味は見いだせますが)。


 ランニングエコノミーは本ブログのテーマからは外れるので、ランニングエコノミーについてもっと詳しく知りたい方は「GMO地帯のゴッドハンド」のブログ記事をご覧ください。


どの種目の選手が最も最大酸素摂取量が高い?

 ところで、あなたはどの種目の選手が最も高い最大酸素摂取量をマークするかご存じでしょうか?5000mの選手?マラソン選手?実は今まで最も高い最大酸素摂取量をマークしたのはクロスカントリースキーの選手です。これには理由があるのです。トラックランナーもマラソンランナーもクロスカントリースキーヤーも極限まで最大酸素摂取量を高めることに変わりはありません。


 しかし、クロスカントリースキーの選手がトップをとるのには理由があります。それは計測の仕方です。ランナーはランニングにおける最大酸素摂取量を測定するのに対し、クロスカントリースキーヤーはクロスカントリースキーの時に最大酸素摂取量を計測します。この時、クロスカントリースキーヤーはストックで地面を押しています。ランナーも腕振りをしますが、腕の力で地面を押すわけではないので、クロスカントリースキーヤーほどは腕の力を必要としません。


 要するに、クロスカントリースキーの方がランニング以上に全身の筋肉群を総動員するのです。ここで最大酸素摂取量の定義を思い出してください。最大酸素摂取量は1分間当たり、体重1キロ当たりの酸素消費量で表します。ということは、全身の筋肉をくまなく使えば、それだけ消費されるエネルギー量は増えるので、同時に酸素消費量も増えます。これが世界最高記録をクロスカントリースキーの選手がマークする理由です。


 ここからもう一度ランニングエコノミーの話に戻りましょう。全力を出した時に酸素を使ってミトコンドリア内で生成出来るエネルギーの量は多ければ多い方が良いのです。ですが、ある与えられたペースにおいては消費する酸素の量は少なければ少ない方が良いのです。


 ここから更にクロスカントリースキーの話に戻りましょう。クロスカントリースキーとランニングは非常に動きが似ているスポーツです。しかしながら、ストックを使って地面を押すという動作の違いにより、クロスカントリースキーの選手は酸素消費量が大きくなってしまいます。


 ここからが本題なのですが、私たちランナーは腕で地面を押すわけではありません。しかしながら、多少腕の力を使っているのも事実です。この時、上半身の力をリラックスさせることで酸素消費量が抑えられるのです。勿論、脚の筋肉もリラックスさせることが大切です。しかしながら、実際に足は着地の衝撃に耐え、地面を多少なりとも押さないといけないので、あるペースにおける最小限の力というのはおのずと決まってきます。


 一方で、差が出やすいのが、腕振りです。本来ランニング時の腕振りは骨盤の回旋や脚の前後の動きとのバランスをとるためだけに行うものです。ほとんど力を入れる必要はありません。ところが、実は知らない間に余分な力を入れているケースが多々あるのです。武道の達人に言わせると、私たちは傘をさしてても、ハミガキをしていても、箸を使っていてもいたるところに無駄な力が入っているそうです。そして、一度無駄な力の抜けた感覚を体感しない限り、無駄な力に入っていることには気づかないそうです。


 ランニングにおける上半身のリラックスも私は同じだと思います。是非、上半身のリラックスを意識してみてください。


 長距離走、マラソンについてもっと学びたい方はこちらをクリックして、「ランニングって結局素質の問題?」という無料ブログを必ずご覧ください。


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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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