突然ですが、あなたは水不足にあえいだことはありますでしょうか?
水がなくなるという危機を感じたことはありますでしょうか?
多くの方は真夏の部活動で水を飲みたくても飲めないという状況を味わったことがあると思います。あの時の喉の渇きというのは筆舌に尽くしがたく、何を差し置いても水を飲みたくなります。
マラソン界で有名なのは、東京オリンピックに向けて行われた君原、寺沢、円谷の男子マラソン組が真夏に決行した40キロ走です。8月の午前10時スタートという無茶なスケジュールで決行されたこの40キロ走、目的は過酷な状況でも走り抜く精神力を養うためだそうです。
給水も無しで行われた40キロ走、君原と寺沢の両選手は途中でたまらず淀んだいけすに飛び込んだそうです。大の大人の理性を失わせるほどの危機、それこそが水不足です。
ちなみに、私もその話を聞いて自分でもやってみました。ただし、給水だけは用意しました。40キロ走の途中に二か所だけ設置しました。8月の京都の午前10時にスタートした40キロ走、見事に寺沢、君原両選手と同じく鴨川に飛び込む羽目になりました。そして、一気に鴨川の水を飲み干しました。大学生の頃の話です。
1993年の完全に文明化された後の日本で生まれ育った私が鴨川の水を浄水フィルターを使わずに飲むことのリスクは重々承知していましたが、それをはるかに超える危機を体が感じるのです。
ちなみに鴨川の水程度では何ともなかった私のお腹もケニアに初渡航した際はあまりの腹痛に見事に涅槃像になりました。ウイルスの種類が違うのでしょう。
様々な冒険家や兵士の方が書かれた本を読んでいても水は最もサバイバル上で欠かせない飲み物だそうです。有名な硫黄島の闘いでも、ペリリュー島の闘いでも、渇きが敵味方を問わずに苦しめたそうです。その苦しみは米軍のスナイパーが水を飲みに来る日本兵を狙い撃ちにするのを分かっていても、そのリスクをおかしてでも飲みに行きたくなるほどのものだそうです。
またそのころから正露丸はあったそうで、多少濁った水でも正露丸を4,5錠入れてよく振ってから飲めば大丈夫だそうです。こういった基本的なサバイバル術も覚えていると、海外渡航の際には役立ちます。
さて、今回は別にサバイバル術について書きたいわけではなく、そもそも私はそんなに危険な地に足を踏み入れたことはありません。私が今回書きたいのは、これまで様々な栄養に関する記事を書いてきましたが、水というのは食べ物とは比べ物にならないくらい人体にとって必要なものだということです。
体内で水が果たす役割の一部を挙げてみましょう。
・DNAの維持管理
・ミトコンドリアの反応の促進
・血液におけるホメオスタシス機能の維持
・リンパ液の産生
・消化管で使用される液体や消化で分泌される消化液の一部を構成
・体温調節
・中枢神経系の脳脊髄液の産生
・関節や椎間板の潤滑液の産生
・老廃物の除去
この中で重要ではない機能は何一つとしてありません。これよりも重要な栄養素は他にないと言っても過言ではないでしょう。
またアスリートにとって重要なことは水がトレーニングによって生じた炎症反応の結果生じた免疫細胞の死骸を除去してくれ、また細胞に潤いが与えられると故障のリスクが軽減されるということです。
プロバスケットボール選手やメジャーリーガーなどのトレーニングコーチを務めるマーク・バーステーゲン氏は選手の体内水分量を増やすことで練習量を2割増し程度に出来る可能性があると常々主張し、選手に利尿作用のあるアルコールやカフェインを摂取しないように勧めます。
そして、私たちの体のホルモンや神経伝達物質は水を使った経路を用いてありとあらゆる臓器、筋肉、器官とコミュニケーションをとっています。人間の体のフィードバック機能はどんな最新機器も勝てないくらい精密に正確に速く動いていますが、それらのフィードバック機能をつかさどっているのも水があってこそなのです。
そして、特に水を必要としているのが脳です。最近では陸上界でも勉強が出来て速い子が多くなりました。これは私の主観ではなく、多くの方がおっしゃっている実感です。
しかし、我々の頃はどちらかと言えば、勉強ができる組とスポーツが出来る組に分かれており、スポーツばかりしている子は脳みそまで筋肉になっているという意味の脳筋という言葉も生まれたりしていました。
ただし、もちろんこれはそういう茶化すための言葉であり、実際にはスポーツ選手が運動をするときには、勉強をしている時と同じくらい脳は活発に動いており、ありとあらゆるフィードバック機能を使って状況を把握し、それに対処しようとしています。
また、スポーツの際にはホルモン調節もかなり厳密になされています。スポーツで味わうあの高揚感もホルモンの作用です。一番有名なものはアドレナリンです。ただ、アドレナリンというのはアドレナリンそのものが作用を及ぼしているというよりは、アドレナリンが様々なホルモンの分泌を促しています。
そして、そういった脳の働きを阻害する二大要因が炎症と脱水症状です。そして、これは私が過去の記事でも繰り返し書いていることですが、食べたものがスポーツにおけるパフォーマンスに影響を与えるのは当然のことですが、我々の知的作業にも影響を与えます。
つまり、仕事におけるパフォーマンスや学習能力にも影響を与えるのです。炎症反応を促進する食品(あなたが思っている以上に日常に溢れています)や脱水状態はスポーツは当然ながら、仕事のパフォーマンスにも悪影響を与えます。
これは世界中を転々としながら、ジャーナリストとして活動されていた丸山ゴンザレスという方がYouTubeで語られていたことですが、ある時飛行機の中で飛行機内のトイレに爆弾を仕掛けたという紙が置かれており、いったん飛び立った飛行機がそのまま空港に戻り、長時間そこで拘束されるという事態が起こったそうです。
その時は乗客全員がテロリストとしての容疑をかけられていた状態だったので、乗客にはなんの説明も与えられなかったそうです。丸山さんはその時、何も飲むもの、食べ物を持っておらず、その状態で何時間も待たされると喉が渇き、急速に思考が薄れていったそうです。
その時に、たまたま日本人らしき人がいたので、話しかけてみるとその人が水とドライフルーツを分けてくれたそうです。そして、ドライフルーツを食べ、水を飲むと急速に頭が働き始め、近くにいた添乗員さんに話しかけ、状況の把握に努めることが出来たそうです。
丸山さんは銃声が鳴り響くような環境での取材をされている方なので、一つの判断ミスが命につながりかねません。脱水症状だと判断が鈍ることを身をもって実感した丸山さんはそれ以来水と甘いものは必ず持ち歩いているそうです。
ちなみに、私も似たような体験をしたことが二回あります。
これはケニア滞在中の話です。私が滞在していたイテンという町は非常に起伏の激しい町でどこにいっても起伏があります。ですので、距離走の際には20キロほど車で移動して平坦なコースで距離走を行います。
そして、私は給水も持たずに35キロ走をスタートしたのですが、調子の良かった私は道も分からないのに、集団を飛び出してそのまま走っていきました。なんとなく、出発した方向に帰れば良いので、帰れるだろうとタカをくくっていたのです。
ところが、走っている時というのは集中しているので周りの景色なんて覚えていないんですね。無事に35キロ走を終えたのは良いけれど、今自分がどこにいるのか分からないという状況になってしまいました。
その時点で、給水無しで35キロを1キロ3分40秒でカバーしていました。だいたいどのくらいの脱水状態か想像して頂けると思います。そして、今自分がどこにいるか分からず、とりあえず分かっていることは滞在先まで最低でも20キロはあったということです。
ケニアは乾燥しているので京都ほどは暑くありませんが、標高2000mを超える地での太陽の光の強さは半端ではありません。彼らが何故黒人なのかが非常によく分かります。私はとても不安になりました。
その時、先ず何が起こったのかというとやはり思考力の低下です。というよりは、普段通りに思考を使っていると危険なのです。この先いつ水が手に入るか分かりませんし、体力的な限界も近づいています。余計なことを考えている余裕がないといった感じです。自分の全エネルギーを節約しなければいけないことが生物としての本能的に分かりました。
限られた思考力の中で私が考えたのは、1とにかく動かずに仲間の救出を待つ、2とにかく動いて人を探し、大通りまでの道を教えてもらい、大通りに出たらそのまま町を目指して歩いたりジョギングするという2つです。
結局、私は2番目の選択肢を取りました。仲間が私を発見する保証はどこにもありませんし、私がどこにいるのか分からない以上は、動いても動かなくても発見される確率はほぼ等しいと考えたからです。
その時は運よく通りかかった乗り合いタクシーの運転手が声をかけてくれ、町の方まで無料で乗せていってくれました。何故声をかけてくれたのかと聞くと「死にそうに見える外国人がいたから」とのことでした。
町に戻って水をむさぼるように飲むと思考が回復し、色々なことを考えることが出来るようになりました。そして、懲りずに同じような経験をもう一回しました。
次は優しいケニア人がお金を分け与えてくれて、いったんエルドレットという町まで行った後、イテンまで乗り合いタクシーで帰ることが出来ました。
適切に思考するには必ず水分が必要なのです。
実際のところ我々の体内におけるすべての代謝には水が関与していると言っても過言ではなく、水を摂取すると代謝が活発になります。
『ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・エンドクリノロジー&メタボリズム』に掲載された内容によると、17オンス(約500ミリリットル)の水を一気に飲み干すと10分ほどで代謝の上昇が観測され、30-40分後に代謝が最高になり、この時に25キロカロリーほど燃焼されるそうです。
確かにこれを一日に4回ほど繰り返せば、水を飲むだけで100キロカロリーほど燃焼されることになりますが、私にとってはそれはあまり重要なことではありません。ここで重要なことは水を飲むと代謝が促進されるという事実です。
このように水は代謝に必要不可欠なものなのですが、水分摂取を考える上で知っておいていただきたい基礎知識が二つあります。
1. 浸透圧
1つ目は、浸透圧です。浸透圧というのは何かというと簡単に言えば、濃い液体から薄い液体の方へと流れる力のことです。例えば、ポカリスエットと水を入れると入れた瞬間は純粋な水とポカリスエットがあるはずですが、ものの数秒のうちに水で薄まったポカリスエットが完成されます。それはポカリスエットの方が濃度が濃く、水の方が濃度が薄いので浸透圧の関係で、ポカリスエットが瞬時に水の方に流れるからです。
そして、この時にセロファンのような薄い膜を張っていても必ず、ポカリスエットが水の方に流れ込み水で薄まったポカリスエットが完成します。
因みにですが、自然界では気圧の高いところから低いところへと空気は移動し、浸透圧の高い方から低い方へと溶質は流れ込み、水中では密度の高いところから低いところへと土砂が流れる密度流というものがあります。
私の大学時代の恩師によると男女の関係も同じだそうで、男が女に圧をかけ続けると女は必ず落ちる、しつこい男が嫌われるのはそのしつこさをやめた時だけだそうです。そして、その時一度にかける圧は強すぎてもいけないし、圧をかけるのをやめてもいけないそうです。
そして、更に条件を圧が強すぎない安価なもので、常に持ち歩くことが可能で(いつ会うか分からないので)、衛生面に問題がなくて、何度でも渡すことが可能というところまで絞ると落花生に行きつくそうです。飴ちゃんやチョコレートはポケットの中でぐちゃぐちゃになるからダメだそうです。
そんな訳で、好きな女の子に会うたびに「落花生食べる?」と聞くのが、最も有効な方法らしいです。大学教授推薦の技なので、是非試してみてください(笑)
話を浸透圧に戻すと、人間の体の中で浸透圧を考える必要があるのは、水分を細胞に蓄える必要があるからです。摂取する水分の濃度が濃すぎるとどうなるかというと、摂取した水分よりも細胞内液の方が濃度が薄いので、細胞内液が細胞外へと流出します。つまり、脱水症状が起こるのです。
航海の際に水不足が深刻になるのは、このためです。海水は塩分濃度が人間の体液よりもはるかに濃いので、海水を飲むと細胞内液が細胞外へと流出し、脱水状態になってしまうのです。
ちなみに、万が一離島などで遭難した時に、海水を真水に変えて飲む方法は先ずガラスの瓶を二本用意し・・・・さすがに今回脱線が多すぎるので控えさせて頂きます(笑)
では、逆に真水のように体液よりも濃度が薄い場合はどうでしょうか?
この場合は、細胞内液の方が濃度が濃くなります。その為水が細胞内液へと流れ込みます。これはこれで基本的に良いことなのですが、多量の水を飲むと細胞内にばかり水が流れ込み、細胞外液の量が減ってしまいます。
また、細胞内液に流れ込む水の量が多すぎると体は尿として排出するので、体内に蓄えられません。ウォーターローリングの際にはスポーツドリンクを飲むように教えられましたが、これはそういうことなのでしょう。
海水を飲むのと比べるとこちらは全く問題がないのですが、ある程度細胞外液と細胞内液のバランスはとられていた方が良いので、若干水にミネラルなどが加えられている方が良いのです。
ここまででお分かりいただけるかと思いますが、これこそがスポーツドリンクが開発された経緯なのでしょう。ポカリスエットやアクエリアスなどの市販のスポーツドリンクでは、濃すぎるから薄めて飲むべきだという話も聞きます。薄める必要があるかどうかはよく分かりませんが、私の経験上距離走の際はある程度薄めたものの方が吸収されやすい感じがするのは事実です。
原液のポカリスエットやアクエリアスだと喉の渇きが癒されません。やっぱり濃すぎるのかもしれません。
日常生活において、スポーツドリンクを飲むのが好きではない人は、水にライム果汁やレモン汁を加えると、若干の濃度が加えられます。絞り汁を加えても良いですし、瓶に水と薄く切ったレモンや柑橘系の果物を入れて冷蔵庫で冷やしておけば、オシャレな感じがして、ちょっと贅沢気分も味わえます。
2水道水
次に知っていただきたいのは水道水です。一般的に水道水の水が汚くて飲めないというのは過去の話だとされています。実際に、市販のミネラル飲料と大阪や東京の水道水を目隠しをした状態で飲んでみると、結構な割合で水道水の方が美味しいと言う人がいます。規制に関してはスーパーやコンビニで売られているミネラルウォーターよりも水道水の方が厳しいそうです。
ミネラルウォーターの方が水道水の方が体に良いとされているのは、過去の話だという話があるのは事実です。
では、本当に水道水の水は安全なのでしょうか?
ところが、AP通信の発表したレポートでは、カルフォニア南部からニュージャージー北部までの様々な水道環境を調べた結果、抗うつ剤、鎮痛剤、ホルモン補充治療薬など56種類の医薬化学物質が検出されたそうです。
その原因を書くと水道水を飲めなくなる人が出てきそうなので、その原因をここで書くのは控えさせて頂きます。
同じことが日本でも起こっていない保証はありません。とは言え、同じことが日本で起こっているということが書きたいわけでもなく、極めて中立的にその可能性を指摘させて頂きたいと思います。
その根拠ですが、実は私はYGテックという会社のリセㇻという浄水ポットを使っています。その浄水ポットを使って何とかの湧き水とか安曇野の水とかその類の水と水道水の両方をリセㇻで浄化すると明らかに時間が違うのです。
例えば、YGテックという会社から販売されている日向四億年の水だと一瞬で下まで水が落ちるのですが、水道水だと結構な時間がかかります。その速度は目で見て分かるくらいなので、興味のある方は是非一度試してみてください。
水道水に関しては、田舎の水の方が綺麗なのかもしれませんが、少なくとも京都市内や大阪の水道だと明らかに速度が変わります。このことからも私は浄水フィルターの使用をおススメさせて頂きます。そんなに高価なものでもありませんし、毎日使うなら良い投資だと思います。
朝練習前に水を
そして、最後におすすめさせて頂きたいのが、朝練習前に水を500ミリリットルほど一気に飲み干すことです。市民ランナーの方の中には朝ラン派の方が少なくありません。季節にもよりますが、私も朝ラン大好きです。
先ず朝起きると、特にこの季節は就寝中の汗で結構な水分を失っています。単純に睡眠時間8時間とすると8時間給水無しですから。そして、朝起きてすぐに500ミリリットルほどの水(ミネラルウォーター、レモン汁を入れた水、ライム果汁を入れた水、スポーツドリンクを薄めたものなどなど)を飲み、そして朝練習でまた汗を流し、練習後にまた水をしっかり飲むと体の中の水がしっかりと入れ替わり、一日を気持ちよくスタートすることが出来ます。
また朝起きてすぐに500ミリリットルほどの水を飲み干すと代謝スイッチがオンになり、体が動きやすくなります。朝起きた直後に水を飲みにくいという方もいることを知っています。一人一人違うので当然なのですが、一度試していただきたいことは水にレモン汁を入れたり、オレンジジュースを加えたりして若干の味をつけることです。
体が真水よりも味のついた飲み物を欲しているのは浸透圧のところで説明した通りです。ただし、コーヒーでも紅茶でもありません。あくまでも、水に少し味を加えるのです。是非一度試してみてください。
特に前日の夜にお酒を飲んでいる人は是非試してみてください。朝に水を500ミリリットルほど飲んで、朝ランで汗を流し、そして終わってからまた水を飲むと驚くほどアルコールの影響が軽減されます。
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「ウェルビーイングの為の栄養学」は約1時間の動画3本、合計約3時間の動画講義の中で以下の内容を解説しています。
・長距離ランナーに必要な栄養学とは?
・リカバリーを最適化するとはどういうこと?
・ホメオスタシス機能の仕組み
・いつまでも若くいるための仕組みは?
・細胞はどのようにして生まれ変わっている?異常細胞はこのようにして生まれる
・これで体が大きく変わる!ミトコンドリアが人体に及ぼす影響
・日本一分かりやすい!目から鱗の酸化ストレス解説
・摂るべき脂質と避けるべき脂質とは?
・摂るべきタンパク質と避けるべきタンパク質
・摂るべき炭水化物と避けるべき炭水化物
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