長距離走、マラソンが速くなる7割を占める自分に合った練習計画を立てることの重要性。大阪マラソン日本人トップが徹底解説!
更新日:7月26日
皆さん、こんにちは!
本日は改めて、練習計画を立てることの重要性をお伝えさせて頂きたいと思います。そもそも、何故皆さん私のオンラインスクールを受講して劇的に速くなるのかということですが、それは自分に合った練習計画が立てられるようになるからです。
これが出来れば7割方完成です。それが難しいのですが、それが出来れば7割方は完成です。最近高校生も指導し始めましたが、結局なんで洛南生のように速くならないのかと言えば、結局は練習計画の立て方が分かっていないからです。
もちろん、入学時の走力にも大きな差があります。
では、何故中学時代にそれだけの差があったのかと言うと、結局は練習計画の立て方の分かっている指導者につけたかつけなかったか、それだけの差です。
確かに、その中で弊社副社長の深澤哲也(らんラボチャンネル支配人)が指導している子みたいに800m1分台をマークして、全国大会に出られるかどうかは、若干その子の成長の速度とかとも関係があります。成長の速度は人それぞれで良いので、長い目で見守っていく必要はありますが、男子の3000m9分半くらいは真面目にやってくれれば簡単に持っていけます。
一生懸命やってくれれば、簡単に9分15秒は切らせてあげられます。これは控えめに言っている数字で、その中で更に良いものをもっているというか、飲み込みの速い子がいれば8分台は出してあげられます。
まっ、中高生を指導する場合は、その「真面目にやってくれれば」の部分も難しいんですけどね。如何に真面目にやってもらうか、如何に気持ちを陸上競技に向かせるか。
深澤が指導している中学生の子は初めから走るのが好きで、走るのが速くなりたいという気持ちがあったのは大きかったです。多分3000mも8分台で走れます。全国大会まで800mで入賞を狙わせて、その後は都道府県対抗男子駅伝で滋賀県代表になって区間8番以内に入れればと思っています。
今回はそんな練習計画の立て方のコツを少しお話させて頂きます。
実は練習計画の立て方が7割というのは別に私独自の見解ではありません。私のコーチも表現は私と違いますが、「長距離走の最終的なゴールの一つは自分に合った練習計画を立てられるようになることだ」とおっしゃっています。
先日も私がキンビアアスレチックスに入った時の先輩のラーニー・ルットさんのお宅にお邪魔してご飯をごちそうになったのですが、その時も現在の私のコーチであり、ラーニーさんがずっと指導してもらっていたディーターが世界最高のコーチだとおっしゃっていました。

元々1500mのランナーだったラーニーさんを10キロで27分台、マラソンで2時間6分台まで育て上げたのはディーター・ホーゲンです。そして、契約の関係で現在はアシックスのトレーニングキャンプに移られていますが、やっぱり当時の自己ベストは超えられていません。
というか、その当時在籍していたアラン・キプロノ、レイモンド・チョゲ、スレイマン・キプケスイの全選手が他のマネジメントに移ってから自己ベストを越えられていません。そして、その全選手がディーター・ホーゲンの下に来てから生涯ベストを記録しています。
日本にいらっしゃる方はケニア人なんて全員才能があるから簡単に速くなるだろうと思われている方が多いのですが、そういう方にいつもお尋ねするのは「日本人は全員野球が上手いですか」ということです。
メジャーリーガ―になるような日本人は大抵野球が上手いです。大抵野球が上手いというのは冗談で、全員野球が上手いに決まっています。それを見たアメリカ人が日本人なんて才能があるから、簡単に野球が上手くなると思っていたとしたら馬鹿げていないでしょうか?
ちなみに、コロンビアから来た人は「日本人は全員数学とコンピュータの天才だ」と思っていたそうです。
そんな訳ないのと同じで、ケニア人も別に日本人とそう大きくは変わりません。実際に、ケニア人で速くなるのは大抵、1欧米の指導者やコーチがついている、2欧米の指導者やコーチがついている選手と一緒に練習している、3経験豊富なベテランランナーが練習計画を立て、それと一緒に練習している、の3パターンのどれかです。
確かに、年中ハードな練習をしているので、体は強い選手が多いです。要は、基礎中の基礎である基礎体力があります。そして、基礎体力の作り方に関しては、近所の先輩ランナーが教えてくれるというか、皆で一緒にやっているうちに勝手についてくるという感じです。
日本人ほど勤勉ではないのも私はプラスに働いていると思います。やっぱり長距離走っていうのは継続してある程度の負荷をかけ続けるということが大切なのですが、練習相手に事欠かないので、頑張るのも簡単、そして元々の国民性が日本人ほど真面目ではないので、疲れたら休んだり、自分のペースで走ったり、自然と理想の強弱のつけ方に近くなっています。
ただ、そうやって徐々に体を作り上げていって、最終的に強くなってる選手は、頭脳の部分が別にいるケースが大半、つまりコーチによって適切な練習計画が立てられています。
そういう意味で言えば、私は日本の長距離システムは良くも悪くもエスカレーター式だと思っています。
例えば、洛南高校に入ってくる子なんて毎年だいたい同じレベルです。箱根駅伝常連校に入ってくる子なんてだいたい同じくらいの実力です。それもたくさん入ってきます。
そうすると、集団で練習するメリットを得ながらも、自然とある程度個々に応じた練習内容になっています。
つまり、「強豪校に入ったらつぶされる」という偏見がある一方で、実は個々に応じた練習計画を立てる能力は強豪校の指導者の方が高いです。そうじゃないと、強豪校の座を維持することは出来ないでしょう。
「個々に応じた」と書くと何か特別なことをしているように思えますが、要はだいたい同じくらいの力の子が入ってくるから、同じような練習を立てとけば、だいたいは「その子の実力に応じた練習内容」になっていくはずです。
ただ、たまにその学校の平均的なレベルよりはるかに下の子が入ってくると、そこで這い上がるのは難しいかもしれません。だから、実際問題5000m14分台じゃないと入部を認めないとか、入部は認めるけど寮には入れないとか、あるいは入部は出来るけど、2年目の終わりまでに5000m14分台で走らないと退部になるとか色々ありますよね。
エスカレーター方式で継続的に良い選手を育てることが出来る一方で、一度エスカレーターから落ちた選手の救済措置的なものは日本には少ないような気がします。
弱小校は弱小校で同じくらいの走力の子が入ってくるので、本来は集団のメリットを活かしつつ個々に応じた練習内容を立てやすいのですが、それが出来る指導者がいないから弱小校は弱小校のままなんです。結局、長距離走、マラソンにおいて大切な7割の部分が出来る人がいないんですね。
皆さん、自分自身のお仕事に置き換えて考えてみて下さい。職場のリーダーがその職場で重要な7割の部分を遂行する能力がなければ、その部署はガタガタになりませんか?
会社の社長が事業で一番大切な商品開発と商品販売に関して理解していなければ、その会社は遅かれ早かれ倒産します。
それと同じことです。
では、逆に弱小高校にその7割が出来る人が入れば、変わるのかということですが、変わります。但し、時間はかかります。それは才能がないからではありません。
正確に言うと、才能がある訳でもないしない訳でもありません。人間の中で一番多い人は平均的な人間です。平均という言葉の定義上、平均的な人間が一番多いです。
才能とは長距離走、マラソンに適した遺伝子を持って生まれることであると定義するならば、洛南生も東山高校の子もケニア人も一番多いのは平均的な人間です。たまに化け物みたいな選手が現れて、その子が東山高校に入学する確率と洛南高校に入学する確率を比べると圧倒的に洛南高校に入学する確率が高いです。
ですが、やはり一番多いのは平均的な人間です。そして、同じ平均的な人間を比べた時に、3000m9分ちょうどで入学した子を卒業までに5000m14分半にするのと、3000m10分半で入学した子を卒業するまでに5000m14分半にするのとでは当然前者の方が簡単です。
それは才能の違いではなく、単純にあるレベルからあるレベルへと移行するのに必要な時間というものがあるからです。高校生活は全員等しく3年くらいしかありませんし、最後の高校駅伝までと考えると実質二年半です。
私は必要な時間というものを考慮にいれれば、東山高校の選手もちゃんと速くなると信じています。ただ、高校生活実質2年半しかないので、高校入学時の差はそのままハンディとして残ります。そこはきれいごと言うつもりはありません。
でも、大学以降もまた記録を伸ばしてくれれば嬉しいですし、寧ろ当面は東山高校の選手の方が洛南高校の選手より簡単に速くなるでしょう。
それは何故かと言うと、遺伝子的な限界との差が大きいからです。私は才能なんて存在しないとは思っていません。男女の競技能力の差を見ても明らかであるように、遺伝子による個々の限界というのは存在します。
これは誰にでもあります。エリュ―ド・キプチョゲ選手だって所詮は公式記録ではマラソンで2時間は切っていません。敢えて、所詮はという言い方をしましたが、ラクダは40分ちょっとでフルマラソン走れるそうなので、やっぱりキプチョゲ選手も所詮は人間ということであり、遺伝子的な限界がやはり存在しています。
そういう意味では、現実的に目指せるレベルは年齢と性別で大枠が決まります。適切な練習を実施してもマラソンで3時間切れない20代、30代、40代の人というのはおそらく存在しません。ただ、70歳でマラソン3時間切るのはかなり難しいです。遺伝子的な限界に近づくからです。
同様に、20代、30代でもマラソンで2時間5分切るのはかなり難しいです。それだけ遺伝子的な限界に近づいていくからです。ですが、マラソンで4時間を切るのはかなり簡単です。われわれ人間はトコトコ長く、それなりに速く(犬や猫より速く)走り続ける遺伝子を持っているからです。
これが適切な練習計画と所謂(いわゆる)素質、才能、遺伝子との関係性です。
非常に多くの人がマラソンで3時間を切れないことを自分の素質のせいにしますが、実は素質のせいで結果が出ないという状況を作り出すことの方が難しいです。
つまり、自分の遺伝子的な限界に到達するのは非常に難しいです。何故ならば、完璧に自分に合った練習計画と完璧な食事と睡眠を軸とした休養戦略と自分の能力を最大限に引き出す完璧な潜在意識管理術が必要となるからです。
昔の人はこれが出来ていなかったので、1900年から2000年の100年にわたって驚くほど記録は伸び続けました。具体例を挙げて説明しましょう。
1936年のベルリンオリンピックでは日本人唯一となる男子マラソンの金メダル獲得者である孫基楨選手がオリンピック新記録の2時間29分で優勝しました。そして、その前年の1935年には神宮外苑の大会で2時間26分の世界新記録を樹立しています。
世界最高記録保持者としてオリンピックの金メダルを獲得するという速さと強さを兼ね備えた選手はエリュ―ド・キプチョゲ選手と孫選手の二人だけです。このように書けばいかに凄いことかお分かり頂けるでしょう。
ちなみに、日本の孫選手がと書くと一定数お怒りになられる方がいらっしゃるのは重々承知しております。何故なら、これは韓国が日本の植民地であった際の話で、孫選手は朝鮮半島で生まれ育っているからです。
あなたは歴史の授業で日韓併合と習いましたか?
私は日韓併合と習いました。
ところが、教育実習に行くとあれは日本と朝鮮が合意のもと対等な立場で合併したのではなく、あくまでも日本が韓国を植民地支配したのであるから、植民地統治の開始と教えなさいと言われてしまいました。
ここではそういった私個人の政治的な主張とは関係なく、当時の公式の孫選手の国籍である日本を使わせて頂きます。単純にそれが公式記録に記されているからです。
話はここからです。この時、同じくベルリンオリンピックに1500mで出場していた中村清という男がいました。経済小説家の黒木亮さんの自伝小説『冬の喝采』をお読みになられた方はよくご存知だと思います。
中村先生はこの時、1500mでは日本記録保持者、名実ともに日本史上最強ランナーとして参加しました。
ところが、予選落ち、そして孫選手は合宿も一緒にして同じ釜の飯も食った仲ですが、片方は優勝、片方は予選落ち、更に日本の南昇竜選手がその名の通り、竜立ち上る如く大活躍で3位、この時中村先生は日本人にはマラソンしかないと思ったそうです。
そして、実は選手としてよりも指導者としての方がはるかに有名なのですが、後に中村孝生さん、瀬古俊彦さん、新宅雅成さんらのサブテンランナーを育て上げられました。
つまり、選手として参加した1936年、世界記録が2時間26分だった時代から、お亡くなりに亡くなられる1985年くらいまで(86年、87年かもしれないです)、ずっと世界のマラソンの記録の向上を見ておられたのです。
中村先生と言えば、よく言われるのがその精神性です。
日本人から見ても「おーまーえらはこの草を食ったら世界一になれると言われれば食えるか?わしは食える」と言って、おもむろに草を抜いてむしゃむしゃ食いだしたとか、日中戦争にも従軍されていたのですが、下駄でツカツカ夜空をみながら歩いている教え子を見つけては「エイヤー」というかけ声とともに、真横の木を軍刀で一刀両断にし「貴様はそんな歩き方をしているからなかなかキックが強くならんのだ。いつも俺がつま先を使って歩けと教えているだろう。次見つけたらお前はこの木のようになるからな」と言ったり、言うことを聞かない選手がいると「おーまーえらはこのわしをなめてるんだ。なめてるからいうことを聞かんのだ。わしは中国大陸で人を何人も殺しているんだぞ。おーまーえらのようなひよっこをひねりつぶすくらいなんともないんだ」と説教したとかいう指導法は異常に映りますが、海外からみると、そもそも日本のように整列、気をつけ、脱帽、令といった様はもの珍しいので、そこばかりが注目されていました。