池上秀志

2021年4月15日9 分

走ってるときは感じてます

最終更新: 2021年7月2日

こんにちは、昨日は長距離走・マラソントレーニングをしていく中で重要な4つの観点をお届けしたのですが、もうご覧いただけましたか?まだご覧になっていない方は下記のURLよりご覧ください。

https://www.ikegamihideyuki.com/post/4pointstotrainpractically

さて、今回のテーマは「走っているときは感じています」というテーマです。今回のテーマは実践的観点からは、とても重要な話です。あなたはよく「走ってるとき、何を考えていますか?」と聞かれませんか?誰しもちょくちょく聞かれることだと思います。私はいつもこう答えています。「走ってるときは、考えているんじゃなくて、感じています」と

長距離走・マラソントレーニングのゴールの一つは、自分にぴったりの練習計画を立てることです。才能のある人なら、単純に「心拍数爆上げ」のトレーニングをすれば適応していくのかもしれませんが、普通の人は(9割以上の人)はレベルが上がれば上がるほど、適切に練習を組み合わせて積み上げていかないと、レベルアップを続けることは出来ません。

では、トレーニング理論をしっかりと学んで、その知識に基づいて練習計画を立てれば万事うまくいくのかというと、実はそうでもないというのが、前回のテーマでした。そして、今回はその続きになるのですが、あなたは設定ペースというのを作っていますか?

ちょっとトレーニングについて学んだことがあったり、みんなで練習するようなケースにおいては、設定ペースをきちっと設けることが普通です。この設定ペースというのは頭で考えて作るものですが、頭で考えて作ったペースが最適とは限りません。

例えば、こういうことです。あなたは痛みを数値化することは出来るでしょうか?昔は痛みを数値化する様々な方法を考案した人がいて、例えば鼻毛を抜いた時の痛みを1鼻毛として、これを基準単位にして、痛みを数値化しようとした人がいました。発想としては、面白いのですが、例えばくぎを打っていて誤って自分の手を打ってしまったときは、何鼻毛なのでしょうか?

足底筋膜炎の痛みは何鼻毛ですか?男性の皆さん、生理痛は10鼻毛だと言われて、ぴんっとくるでしょうか?女性の皆さん、生理痛の痛さって何鼻毛なんですか?と聞かれて明確に答えられますか?

こういった感覚を数値化するってナンセンスだと私は思います。しかも、数値化したところで、結局世界で一番痛いのは私です。となりのおばさんが今5鼻毛の頭痛を抱えていると言われても、こっちは痛くもかゆくもないのですから、自分の痛み以外は分かりません。共感が大切とか、共感力とか言われますが、実際には「共感しているふりをすること」が大切なのであり、「あたかも共感しているふりをする力」が重要なのです。

このように考えたときに、体にかかるトレーニングの強度というのは、この痛みの度合いに近いものがあります。1km3:30で走ったということは、これは物理空間において物体が移動する速度ですから、客観的に表すことが出来ます。でも、その時にどのくらいの負荷がかかったのかということは、本人にしか分かりません。だからこそ、感覚であり、感性が重要なのです。

これを哲学の用語では感官(die innere Sinne)というのですが、人間には五感という外的な物事を知覚する外的感官と痛みや苦しみ、喜びなどの内的な事象を知覚する内的感官があります。五感で感じられるものは、全く同じように知覚しているかどうかは別にして、一応同じものを知覚することが出来ます。例えば、同じ景色を見て「綺麗だね」と言ったり、一緒においしいものを食べに行って「美味しいね」と語り合う、これは人間のコミュニケーションの第一歩でもあり、本当は同じように知覚しているかどうかわからないのだけど、恐らく同じように知覚しているだろうという前提から始まる共通認識により、互いの間に近似性や親和性が生まれます。一言でいえば、私たちは同じ人間なんだという親しみであり、安心感です。人間は自分と同じような人に親しみを感じ、一緒にいると居心地よく感じる生き物です。

そのもう一歩先として、痛み、苦しみ、喜び、幸せなどの内的感官を共有できるようになると、更に人間関係が親密になります。女性は男性以上に内的感官を重視すると言われており、従って男性は女性のこの内的感官を分かってあげられるようになると、モテるようになります。でもちょっと待ってください。

ここは腹を割って話し合いましょう。確かに女性の気持ちをあたかもわかって上げられるような振る舞いが出来る人はモテるのですが、本当に分かるでしょうか?本当に相手の痛みが分かりますか?相手の喜びが分かりますか?これは分からないと言わざるを得ないでしょう(←モテないやつの発言)。

長距離走・マラソントレーニングにおいては、特に微妙な匙加減の積み重ねで結果が変わってきますから、その日の練習でどういう意図をもって、どのくらいの強度でトレーニングをするのかということは、とても大切なことです。そして、その感覚は本人にしか分かりません。だから、走っているときは自分の感覚に集中して、最終的にはその日の感覚に従ってペースを決めていく必要があります。

勿論、予めなんとなくペース設定をしておくことも一つのやり方です。ただし、これは何となくでしかないということは、覚えておいていただきたい部分です。3分ちょうどでやろうと思ったのなら、2分50秒や3分10秒ではないのでしょう。でも3分3秒なのか、2分57秒なのかということは、その日の感覚に従って決めていかないと時計を頼りに走ると、その日の自分にとっては強度が高すぎるということにもなりかねません。

また、一番の問題は低強度や中強度、中強度から高強度のトレーニングだと思います。高強度のトレーニングはそもそもが高強度なので、それほど考えることも多くありません。ただ、低強度から中強度、もしくは中強度、中強度から高強度のトレーニングは色々と考えるべきことがあります。

こういったトレーニングの目的は様々ですが、長距離走・マラソンが速くなる一つのコツとして、ローリスクハイリターンのトレーニングを積み重ねることです。ほんの一例を挙げると例えば、10kmをきつくもなく、楽でもないペースで走るような練習です。その人の走力にもよりますが、何本かマラソンをやったことがある方からすると、こう言った練習はそこまできつくないと思います。

でも練習効果はしっかりとあります。これは全国高校駅伝で上位を目指すような高校生にも当てはまることです。こういった練習の積み重ねで基礎がしっかりと構築されるので、しっかりと速くなっていきます。一方で、楽ではないとは言え、そこまできつくもなく、心理的にも負担が少ないので、故障やオーバートレーニング、燃え尽き症候群にもなりにくいです。

さて、このあたりからが本題になるのですが、こう言った練習はきつければ良いってもんじゃありません。中強度や低強度から中強度に設定してあるのには、ちゃんとそれなりの理由があるのです。それは次の日にハードな練習が入っていたり、あるいは体を回復させながらもちょっと有酸素刺激を加えたりといった理由です。こういったパターンでは、強度が高すぎて、次の日のハードな練習に支障が出てもいけませんし、ハードな練習からの回復が妨げられてもいけません。でも、こう言った練習で少しずつ有酸素刺激を積み重ねていくことで、伸びていくのです。

ですから、こう言ったケースでは特に自分の感覚を大切にしながら走る必要があります。ですから、走っているときはしっかりと感じることが大切なのです。

最後に、2つだけ例を挙げておきます。

1つ目は、人づてに聞いた話で、新谷仁美さんの話です。去年12月の日本選手権で圧倒的な強さを見せつけた新谷さんでしたが、新谷さんには2年ほど競技から離れていた時期がありました。そこから、復帰する過程においては当初は1000m一本3分30秒切ったら「やったー!」みたいな感じだったので、周りもそこまで真剣に受け止めていなかったそうです。ところが、着実に状態を上げてくるので、周りも次第に真剣にサポートするようになったとのことです。

その過程において、新谷さんはジョギングを含めてすべての練習で今日はこういう感覚で走れないといけない、というのがあったらその感覚で走れるように100%集中していたそうです。この練習はこの感覚でやると決めたら、それが出来ないとレースでも結果が出せないので、ジョグからレースのような集中力で臨んでいたとのことです。

もう一つは「平井健太郎という男がいる」というブログで紹介したインカレ10000m2位に入った京大生の平井健太郎が言っていたことですが、結局のところジョグの時の感覚で今5000m全力で走ったらどのくらいで走れるのかわかっていないと、レースで合わせられる選手にはならないとのことでした。それを聞いて私はなるほどなと思いました。

今回は走っているときの感覚の話でした。トレーニングを実際に実践するということになると、この感覚的なものが物凄く大切になってきます。よく言われるのは、練習計画というのは、料理のレシピで、実際にトレーニングをするというのは、実際に料理をすることだと。レシピが間違っていれば、もちろん最終的に出来上がるものは違います。でも、レシピ通りに作り、そしてそこには味見をして、その時の感覚に従って、微調整しないとベストな料理は出来ません。ちなみに私はせっかちかつ大雑把なので、いつも味見はしません。出たとこ勝負です。そして、このやり方がいつも上手くいくわけではないことをよく知っています。料理における味見、これが長距離走・マラソントレーニングにおける感覚の部分です。

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