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私が月間1000㎞走っていた当時を振り返ってみて思うこと

こんにちは!


 先日の無料ブログでは愚直に練習量を増やすことでマラソン2時間38分から2時間14分へと大きな飛躍を遂げたジェイクさんのお話をさせて頂いたのですが、本日は私自身も月間1000㎞の練習をこなしてみてどうであったのかというお話をさせて頂きたいと思います。


そもそも練習量を増やす目的は何か?

 私が初めて月間1000㎞の練習量に達したのは大学1年目、18歳の時です。ですが、今から思えば、当時の私は練習量を増やすことの本質的な意味合いというものを理解していなかったなーと思います。


 当時の私の考え方としましては、結果が出ないのであれば、何かをやらなければならない、では何をやったら良いんだろうということを考えたのですが、当時は色々な書籍や雑誌でかつてのマラソン界の英雄たちのインタビュー記事では「今の選手は練習しない」ということが盛んに言われておりました。


 素直になるほどなーと納得しました。だって私も月間1000㎞も走っていませんでしたから。でも、宗さんご兄弟も瀬古さんも中山さんも(いずれもオリンピアンで様々な大試合で勝利)全盛期には月間1200㎞や月間1300㎞の練習をこなしておられたそうですし、中山さんに至っては「今の実業団選手の生活をしていたら月間1500㎞は走れた」とまで雑誌のインタビューで語っておられました。


 「ものは試し」という言葉がありますが、事実として自分は弱い、向こうは強い訳ですから、そういった強い選手の数珠のお言葉というものを素直に受け入れて、学業と両立しながら月間1000㎞の練習量というのを続けたりしてみました。


 もう一つの理由としましては、これは単純に高校時代の経験として、夏合宿で走りこむと秋から走力が向上したからです。私だけではなく、他の選手も夏合宿で走り込んだ人たちは秋からのレースで結果を出していました。


 我々だけではありません。昔の選手たちもそうだったそうです。我々の世代は高校生が40㎞走に取り組んだ最後の世代だったのではないかと思います。ただ、練習内容に40㎞走というのはありませんでした。有志が勝手に練習量を増やして40㎞走にしていたのです。


 朝練習も普通に15㎞とか走っていたので、一日に60㎞くらい走っていたはずです。


 その昔は全体の練習に42㎞走などがあったそうです。あるいは勝手に45㎞走に取り組んでいた高校生がいたそうです。そういう話を聞いて「よしっ、自分もやろう」と思ってやってみたら、それなりの結果に繋がった訳です。


 ちなみに、当時の洛南高校の夏合宿ではスピード練習はほとんどありませんでした。8月はスピード練習が1回くらいしかなかったように記憶しています。あとは京都ユースという学年別の大会があるので、1年生と2年生は直前に軽く刺激を入れるのと、強いて言えばそのレースがスピード練習という位置づけになってはいたでしょう。

前列左から2番目が筆者
前列左から2番目が筆者

 ちなみに、そんな根性練習、根性指導しかしておらず、厚底シューズもまだない時代の高校生達と今の高校生達、どのくらいの差があると思いますか?


 数字の出し方は色々あるでしょう。しかしながら、トップ同士を比較する、留学生無しで比較するという二つの条件の下で比較すると実は42.195㎞で4分ほどの差しかありません。


 4分を大きいと考えるか、小さいと考えるかは人それぞれでしょう。もちろん、大きいのは大きいです。ただ、厚底シューズで仮に1㎞あたり3秒速くなるとすると、一気に2分差まで詰め寄ります。


 あるいは別の観点から考えてみましょう。厚底シューズも考慮に入れずに、純粋に4分差という事実だけから考えてみましょう。今から40年前にマラソン3時間3分だった人が現代に厚底シューズと科学的トレーニングを取り入れれば、サブ3出来るかもねという話なのです。3時間5分の人は無理です。


 我々は自分達が科学的な文明人であり、昔の人は頭の悪い根性だけで突き進んでいた効率の悪い人たちと思いがちですが、実は陸上競技自体は昔からほぼ変わっていません。


 そんな訳で、経験から導きだしてそれで上手くいったのであれば、それで良い訳ですし、私自身もそういった経験があったのでとにかく走りこむ時期に走り込んだのです。


 ただ、今から思えば、練習量を増やすことの本質的な意味というものは理解していなかったし、それはもったいないなーと思います。


練習量を増やすことの意味合い

 本質的な練習量を増やすことの意味合いは疲れにくく壊れにくい体を作ることにあります。ここで疲れにくく壊れにくい体を作るからこそ、そのあとスピード練習を取り入れた際に体がしっかりとスピード練習に適応しますし、また仕事と両立しながらでも高いレベルで練習の質×量を維持できる訳です。


 ここで重要なのは基礎体力、つまり基礎となる体力を高めることです。つまりは疲れずに、疲労が蓄積せずにこなせる練習の質×量を増やすことが大切なのです。もう少し別の言葉で説明すると、「休みたい。きつ過ぎる」という感覚無しに日常的にこなせる練習の質×量を段階的に増やすことが大切であり、そして実際に故障やオーバートレーニングによる走力の低下がないということが大切です。


 ただ、当時はちょっと考え方が異なりました。高校時代のやり方は夏合宿で只管(ひたすら)走り込み、心身ともに追い込み、一旦疲労を溜めこんで9月は走れなくなるんだけれど、疲労が抜けてくる10月くらいから徐々に走れるようになってきて、11月頭の京都府高校駅伝で8割くらいまで状態が上がり、11月の記録会、近畿高校駅伝、12月の記録会、全国高校駅伝で部員のほとんどが最高の結果を出すという流れになっていました。


 つまり、基礎体力の向上というよりは、一時的に心身ともに追い込むという要素が強かったのです。それでも結果が出たので、別にやり方そのものが間違っているとは思いませんし、何よりも高校生の場合はある程度夏休みに強い負荷をかけるのは合理的な考え方と言えるでしょう。


 それに加えて、高校生はただ単に競技力が向上するというだけではなく、精神の鍛練、あるいは合宿で他校の先生方から様々なお話を聞いたり、集団生活を送ることで最低限の社会性を身につけるということも人間的な発育においては非常に大切なことです。こういった観点から、市民ランナーの我々とはやや考え方を異にするべきでしょう。


 本来的な観点から言えば、ある時期にまとめてキツイ負荷をかけるというのではなく、自分が日常的にこなせる練習の質×量を増やしていくことの方が重要です。そのようにして、疲れにくい体を作っておけば、高強度な練習を大きな疲労なくこなし、なおかつその練習に対して体が適応する可能性が高まるのです。


 最終的には、長距離走、マラソンは確率論です。確率の高い方法論こそが正しい練習なのです。


 このことは、勤務形態によって多少の変化をつけても良いと思います。


 例えば、欧米人のように夏には1か月の休暇を取るのが普通みたいな人たちであれば、高校生と同じような考え方で、短期的に負荷を上げても良いでしょう。実際に、私がケニアで合宿を実施した際にはそのような欧米人に何人も出会いました。


 しかしながら、いわゆる普通の勤務形態の人や私のように年中無休で仕事をしている人間からすれば、日常的にこなせる練習の質×量が増えることが最も大切です。


 また、これもよくある誤解ですが、少ない練習量で結果を出すのが効率が良いと思っている人がいますが、これは基本的には間違いです。練習量が少ないと基礎体力が出来ません。基礎体力が出来ないと高負荷な練習が出来ません。出来ても、なかなか体が刺激に対して適応しません。


 それが証拠に、長距離走、マラソンの記録と練習量はかなり相関関係があります。基本的には速いということは正しいということなのです。遅い人がいくら自らの正しさを主張してもそれは机上の空論というものです。


 例えば、反重力加速度AGというものを作り、ある物体を自由上昇させた際のt秒後の速度vはV=tAGによって示せると主張するのは自由ですが、実際には物体は自由上昇などしませんから、何の意味もないのと同じです。


 また、もう一つ見落としている観点は人間が持っている資源は時間だけではなく、体力もあるということです。時間は1日24時間とすでに決まっていて変えられません。


 しかしながら、体力の方はトレーニングによって向上させることが出来ます。もちろん、ここでいう体力とは競技能力のことではなく、基礎体力のことです。つまり、資源は常に有限ではありますが、増やすことも可能なのです。


 手持ちの資金は常に有限だけれど、増やすことも可能であるというのと同じことです。手持ちの資金が少ない状態で遊ぶよりも、それなりに増やしてから遊んだ方が選択肢も多く、楽しいというのと同じで、基礎体力をある程度増やした方が楽しく、また選択肢も多くなります。


 選択肢が多いというのはつまり、こういうことです。基礎体力がないと出来ない練習があるが、基礎体力があると出来る練習があるということです。


 また、ジャック・ダニエルズ博士のランニングフォーミュラの中には「Iトレーニングは週間走行距離の〇パーセントもしくは10㎞のどちらか少ない方」というような記述がありますが、あれは簡単に言えば、本当は10㎞やって欲しいけど、基礎体力のない人は辞めておいた方が良いよという意味合いです。つまり、基礎体力がないと合計10kmのインターバルをやる資格すらないということです。


 私が言ってるんじゃないですよ(笑)ジャック・ダニエルズ博士が言っていることを私は翻訳しているだけです(笑)


 いずれにしても、基礎体力はあるに越したことはないということです。


市民ランナーの方はどのくらいの月間走行距離が必要?

 私はウルトラマラソンの経験はありませんが、フルマラソンに関して言えば、その人の潜在的な能力を最大限に発揮しようと思えば、男女ともに最低でも週に200㎞くらいの練習量は必要になるのではないかと思っています。


 じゃあ、多ければ多い方が良いのかということですが、結果を見る限りはそうでもないようです。


 しかしながら、週に300㎞までは増やすことに意味があるのではないかという気もしますし、実際に歴史的に見ても週に300㎞は珍しいことではありません。ちゃんと、それで結果も出ています。


 ただ、市民ランナーの世界で上位に入るにはそこまでの練習量は必要ありません。例えば、サブ3やサブエガを基準に考えるのであれば、せいぜい週に80㎞前後で充分でしょう。多くて困ることはないのですが、目安としては週に80㎞前後かなというところです。


 ただ、同時に理解して頂きたいのは、その練習のほぼ全てが低強度走でありながら、月間600㎞走って2時間35分くらいで走った人もいるということです。そもそも、基礎体力があるので、それほどきつく感じないであろう上に、さらに練習の大半が低強度ですから、おそらく主観的には割と楽にさらっと2時間35分で走ったものと思われます。


 練習量が多い=大変、きついという印象があるかもしれませんが、そもそもの基礎体力の方が増えるとそうでもないということです。基礎体力だけではなく、練習量の増加に応じて基礎精神力も向上することを見落としてはなりません。基礎体力が大きくなるとは分母が大きくなることので、同じ20㎞走という分子であったとしても、その値は小さくなり、余裕度が増すということです。


 精神面の場合は数値化が出来ませんが、精神面でも同じことが起こり、心理的にも余裕度が増します。


 ただ、あなたのおっしゃりたいことは分かります。そうはいっても、時間は1日24時間だと言いたいのでしょう?


 それはその通りですし、なんなら交番勤務や国際線の機長さんなどかなり不規則なスケジュールでお仕事をされている方もいらっしゃいます。


 ですから、とりあえず最低限の数字として週に50㎞、なんとなくの目安として80㎞、増やせるなら100㎞まで増やせたら、市民ランナー界(年齢別+性別の部門)で上位に入れる可能性はぐっと上がるということを頭に入れて頂けると良いのではないかなと思います。


 ちなみに、フルマラソンだけではなく、800m以上の種目においては、全て上記の数字が該当します。という訳で、今回の内容は以上です。参考になりますと幸いです。


ブレない走りと綺麗な体を手に入れたい方へ

 走行距離を増やすという観点から言えば、走る以外の練習は省き、走ることだけに体力も時間も使うのが最も効率が良いはずです。それにも関わらず、私が知る限り、強豪高校、強豪大学、実業団で体幹トレーニングをしていないチームは一つもありません。


 一体、それは何故でしょうか?


 その答えが知りたい方は今すぐこちらをクリックして、無料記事「長距離ランナーは何故体幹トレーニングをするのか?」をお読みください。読者数4000人を超える人気記事です。

 
 
 

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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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