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執筆者の写真池上秀志

レースの結果が思わしくなかったときに先ずやるべき3つのこと

 突然ですが、あなたはレースの結果が悪かった時、どうされているでしょうか?


 人生の大抵のことは努力でなんとかなると信じている私ですが、レースの結果が悪かった際に先ずやるべきことは更なる猛練習ではありません。私自身もレースの結果が悪かったことは何度もあります。


 というより、私の場合は基礎能力は低いけれど、緻密に3-6か月間練習を上手く組み合わせ、最後の調整含めて良い練習が出来れば普段の力からは考えられないような結果が出たこともあったというタイプなので、悪い時と良い時の差は激しいです。


 5000m15分32秒の次の週に10キロで30分39秒をマークしたり、10000mのシーズンベストが30分53秒なのにフルマラソンを2時間13分で走ったり、5000m16分半の一カ月半後に直近で5000m14分35秒をマークした選手と3000m障害の近畿インターハイチャンピオンを抑えての京都府高校駅伝区間賞を獲得したり、そんなこともたくさんあったので、結果が悪かったところからの立て直し経験はそれなりにあるつもりです。


 もちろん、結果が常に良いに越したことはないです。私だって失敗したくて失敗している訳ではないです。ただ、そこで立ち止まるのか、それとも前に進むのか、前に進むと決断したのであれば、猛練習を始めるよりもやるべきことがあるので、今回はそれを解説させて頂きたいと思います。


レースの結果が悪かった時にやるべきことその1:気持ちを立て直す

 レースの結果が悪かった時、そこまで努力をしていればしているほど、思い入れが強ければ強いほど、犠牲にしてきたものが多ければ多いほど、落ち込みます。時にはこの世の終わりのように感じられることも当然ありますし、消えてしまいたいと思うこともあります。


 実際に消えてしまうことを選ぶのであれば、それも一つの選択肢だと思いますが、前に進むことを選ぶことを決めたのであれば、先ずは気持ちを立て直すことが必要です。


 それは何故か?


 何故かと言うと人間は自分の潜在意識の定めるところに従うという習性があるからです。自分はもうだめだと信じている人は、次もダメになるように行動します。


 一方で、これは一時的な失敗であり、成功の為の一つの通過点であり、次はもっとうまくやれると信じている人はそのように考え、そのように行動します。


 誤解の無いように書いておくと、私は信じればなんでも出来るとは思っていないです。


 信じていればなにもしなくても成功が向こうから勝手にやってくるとも思っていないです。


 私が書いているのは、「どうせやっても無駄だ」と思っている人は、有益なアドバイスにも耳を貸さなくなるし、有益な何かを求めて勉強することもないし、そもそも走ろうとも思わないし、走ったとしても苦しい練習に取り組もうとはしないということです。


 当然、その結果として次も結果は出ないです。次も結果は出ないから、遅かれ早かれ走ることを止めることになるか、永遠にジョガーに留まることを選ぶようになります。


 では、潜在意識は何によって決まるかということですが、それは日々の自分の思考によって決まります。基本的には情動記憶×反復回数で決まると言われています。


 何度も何度も「これは一時的な失敗であり、次は必ず上手くいく」と思っている人は潜在意識がそのようになっていきますし、逆に「どうせ俺は何をやっても無駄なんだ」と何度も思っている人は潜在意識がそのようになっていきます。


 パワハラやいじめなどで自殺する人もいますが、そういった人の潜在意識は自殺する前にすでに「自分は死んだ方が良い」という風に設定されているはずです。


 そして、そういった潜在意識が形成されるまでには何十回、何百回、何千回の「死にたい」と思ったことが積み重なっているはずです。


 更に情動記憶の強さで言えば、PTSDになるような症状を発症する場合、情動記憶の強さも非常に強い出来事が関わっていることが多いです。


 戦争で言えば、隣で戦友の頭が吹っ飛んだとか、死体の山を踏み越えていかなければいかなかったとか、戦友を見殺しにしなければいけなかったとか、逆に自分が敵を殺さなければならない状況に陥り、実際に殺したとかそういったものです。


 平時においてもここには書きたくないような犯罪の結果として、一発でPTSDを発症する人もいます。この場合、反復は必要なくたった一回の出来事で潜在意識が書き換わってしまいます。


 レースでの結果が思わしくなかった場合、努力してきた人ほど、そこにかけてきたものが大きい人ほど、落ち込みの度合いも大きくなるものなので、どうしても潜在意識が負の方向に傾きがちになるのですが、自分の思考を「これは一時的な失敗であり、次は必ず上手くいく」と何度も思ったり、つぶやくことで正の方向に傾けていく必要があります。


レースの結果が思わしくなかったときにやるべきことその2:過去の練習内容を洗い出す

 その1では精神面について触れましたが、心が変わればそれだけで結果が良くなるほど甘いものでもないです。一番の原因は練習内容にあったはずなので、その練習内容を洗い出すことが重要です。


 一言で、レースの結果が思わしくなかったと言ってもいくつかパターンがあると思いますが、ここでは「レース結果が予想を下回った状態」のことを指したいと思います。


 例えばですが、練習してきたこと、自分が今までやってきたことを全て出しきり、あるいは自分の練習以上のものをレース当日に出しきり、それでもインターハイに行けなかったというような場合、本人的には辛い結果なのかもしれませんが、やってきたことが全て出せたという意味においては正しい練習をすることが出来たのです。それはそれで一つの成功だと私は思います。


 市民ランナーの方で言えば、サブ3を目指してトレーニングをしてきた。そして、迎えたレース当日自己ベストも更新したけれど、サブ3は達成できなかったというような場合、悔しいかもしれませんが、それが練習に見合っているのであれば、やはり私は一つの成功だと思います。


 この場合は、正しい努力をしたということですから、そのまま引き続き努力すれば良いと私は思います。


 問題となるのは練習のレベルを考えた時に、思うような結果が残せなかった場合です。このケースで問題となるのは次の3つのパターンです。


・オーバートレーニング気味でレースに出てしまった


・質か量のどちらに偏り過ぎていた


・実戦的な練習(特異的な練習)が不足していた


 順にみていきたいと思いますが、一番多いパターンはオーバートレーニング気味でレースに出てしまったという状態です。要は、練習を頑張ったもののそれに体がきちんと適応することなくレースに出てしまったという状態です。


 この場合が一番もったいなく本人的にも悔いが残ると思います。


 オーバートレーニングの問題が厄介なのは、はっきりとあの練習でオーバートレーニングになったとか、あの時完全休養をとらなかったからオーバートレーニングになったというようなものではなく、徐々に体が不適応を引き起こし始めることであり、なおかつ適切にトレーニングをしていたところで、1週間で目に見えて体が適応するようなことは少ないからです。


 つまり、適切に練習していたとしても、不適切に練習していたとしても1週間や2週間単位でみればほとんど違いは見られないものなのです。ただし、その小さな正しい練習と小さな不適切な練習が積み重なって月単位になった時に、大きな違いとなって自分に返ってきます。


 そして、その誤りに気付いたとしても月単位で犯してきた小さな過ちを修正するには時間がかかります。


 オーバートレーニング気味で結果が出せなかった場合、レースまでの過去3か月間くらいの練習内容を見返すと、どこかから体がだるくなり始めたり、動きが悪くなり始めたところがあるはずです。


 数字上は、有意にタイムが悪くなっている訳でもないけれど、いつもと同じペースで走るのがキツイとか、練習は問題なくこなせているけれど、日常生活でもだるさや疲れを感じることが多くなったとかそういうところがあるはずです。


 ちなみにですが、そういうことを後で見返せるようにしておくためにも練習日誌をつけておくことをオススメします。最近はパソコンやスマホと同期して管理することもできますが、自分の言葉できちんと書き留めておくことはまた有益な情報となります。


 そして、そういったポイントを見つけたら、更にその1-3週間前のトレーニングを見返してください。そこに少し練習の負荷が高くなりすぎた要因があるはずです。


 更に詳しく言えば、仕事や私生活についても同じ箇所を思い返す必要があります。よく走るのは筋肉の酷使で、仕事は頭を使うから関係ないというような人も言いますが、人間はそんな簡単には分けられるものではありません。


 仕事の負荷がいつも以上に高くなったり、睡眠時間がいつも以上に短くなったり、子供の夜泣きで寝られなくなったり、花粉症で夜眠れなくなったり、そういったこともオーバートレーニングの一つの要因となります。


 オーバートレーニングになるかならないかは必ず、トレーニングの負荷と休養の質の二つの観点から考えるべきです。


 また、オーバートレーニングになるかならないかに関して言えば、高強度な練習の負荷が高すぎたのか、それとも中強度以下の練習の負荷が高すぎたのか、大きく分けるとこの二つの観点から考えるべきです。


 高強度な練習の負荷もある程度のところでコントロールする必要はありますし、同様に回復を主目的にしている練習の質が高すぎたり、中強度の持久走の頻度が高すぎることもオーバートレーニングの原因になります。


 二つ目の質と量の話に関して言えば、これはレース前半からレースペースが苦しくてそれがそのまま後半の苦しさに繋がったのか、あるいはある程度前半余裕をもってレースを進めることが出来ていたのに、後半苦しくなったのかというところを見る必要があります。


 前者であれば質が足りていなかったのでしょうし、後者であれば量あるいは持久系の練習が不足していたのでしょう。


 基礎練習(一般的練習)と実戦的練習(特異的練習)の比率に関して言えば、きちんと段階を踏んでレース形式の練習にもっていけていたのかどうか、あるいは逆にレースが近づいてきた段階で、レースをイメージできるような練習の量が必要量に達していたのかどうかという話になってきます。


レースの結果が思うようにいかなかった時にやるべきことその3:次のレースに向けての計画を立てる

 次にピークを持ってくるレースに向けて3-6か月の練習計画の青写真を描くのが次のステップです。これはレース結果が良くても悪くても同じだとは思いますが、特にレースの結果が悪かった時には、早めに次のレースに向けての青写真を描くことが大切だと思います。


 そうすることによって、気持ちを切り替えることにもつながりますし、どこが悪かったのかをある程度見当を立てて、次の戦略を立てることで潜在意識にも一つの通過点において失敗しただけであって、ここが終わりではないことを理解させることが出来ます。


 ここで重要なのは、全ての細かい練習計画を立てることではありません。もちろん、そうして頂いても良いのですが、より重要なのは次に向かっての青写真を描くこと、つまりだいたいで良いから4か月前から3か月前はこういう練習をする、3か月前から2か月前はこういう練習をする、2か月前から1か月前はこういう練習をする、最後の4週間はこういう練習をするというような大体の練習内容を決めていくことです。


 思うようなレース結果が出なかったとしても、全てが無駄であったということは普通はないです。もちろん、結果が全てという捉え方をするのであれば、全て無駄だったと言えるのかもしれません。


 しかしながら、やってきたことは何らかの形で体に残っているものであり、タイムが速くても遅くてもトレーニングしている以上は何もしている人とは違う訳です。


 ですから、結果が悪かったとしても良かった点もあるはずなんですね。その良かった点と悪かった点を踏まえて次のレースに向けての練習計画を立てていくことが重要です。


 ここまでの過程を振り返ってみてお気づきになられたと思いますが、最高の結果を出すためのアプローチは人それぞれであるべきであり、また同じ人間であったとしてもその時々の体の反応を見ながら練習を進めていかないといけないのです。


 ですから、たまに「サブ3の為のトレーニングメニュー」のようなものが販売されているのを見ますが、この練習内容さえやれば誰でもサブ3が達成できるというような練習内容は存在しません。


 また、トレーニングだけではなく心理面やリカバリー面からもアプローチしていく必要があります。


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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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