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脚が痛いときに知っておくと便利な5つのちょっとしたこと

 長距離走をやっていると頻繁に起こるのが痛みです。切り傷や刺し傷、捻挫、転んで打撲などは一般的に怪我ということが多いのに対し、長距離走によって起こるランニング障害は一般に故障と呼ぶことが多いです。別に厳密な定義はないのですが、外傷と内傷の違いを表していると考えることも出来ます。



 さらに細かく見ていくと、短距離選手や跳躍選手の場合はトップスピードに乗った時にハムストリングスがバチンと切れたとか踏切の瞬間のアキレス腱が切れたのようにあの時、あの瞬間に痛めたというのが分かることも多い半面、長距離選手の故障の場合はなんとなく徐々に痛くなってきて、気づいたら走れなくなっていたというケースが多いです。


 この場合は、様々な事情によって生じる酸化ストレスや低度で慢性的な炎症反応の積み重ねで起こることが大半です(詳しくは過去のブログ記事「抗酸化と抗炎症とフリーラディカル」を参照)。


 こういった痛みを抱えて整形外科にいくと、レントゲンを撮って骨に異常がなければ「炎症ですね。しばらく安静にしといてください」と言われて湿布や非ステロイド系の抗炎症剤やその他トラマールなどの神経系に働きかける痛み止めを渡させるのが関の山です。


 MRIがあれば、もう少し具体的に炎症の箇所を特定することが出来ますが、この場合でも結局処方箋は同じで「この箇所で炎症反応が起きていますね。しばらく安静にしておいてください」と言われて、湿布や非ステロイド系の抗炎症剤やその他痛み止めを処方されて終わりです。



 それはそれで役に立つことですし、私も時と場合に応じてアセチルサリチル酸やロキソプロフェン、イブプロフェンなどを使用します。ただ、こういった薬は長期服用すると酸化ストレスを生じさせしめるので、かえって状態を悪化させかねないことと慢性的な痛みにはあまり効力を発揮しないことです。


 プラスマイナス考えた上で、必要に応じて使用すれば良いのは当然のことであるのと、こういった慢性的な痛みの治療は慢性的なコリ固まりをほぐすことであることはおさえた上で、今回はそれ以外に出来る5つのちょっとしたことを紹介させて頂きます。


 いずれにしても、体に良いことなので是非ちょっと心がけてみてください。


1パイナップルを食べること


 パイナップルは肉料理にも添えて出されることが多い果物ですが、それにはきちんと根拠があって、パイナップルにはブロメラインと呼ばれるたんぱく質分解酵素が含まれているからです。このたんぱく質分解酵素が肉の消化吸収を助けてくれる訳ですが、それ以外にもバクテリアやウイルスを分解してくれたり、炎症反応を抑えたりしてくれます。


 今でこそパイナップルは我々庶民も普通に食すことが出来る食べ物ですが、元々は中南米に生息しており、王様が風邪を引いた時などに食べられていた高級品でした。まあしかし、こういう話を聞くたびに昔の人はなんでもよく知っているなと思います。当時はパイナップルにブロメラインが含まれているなどという情報はなかったはずなのですが。


 それだけではなく、浮腫を解消してくれます。浮腫というのは腫れのように明らかにパンパンに腫れていて触ったら痛むというような状態ではないけれど、膨らんでぼよんとしているという状態です。むくみに近い感じで、膝に水がたまるというのもこの浮腫です。ちなみに、私も4年間ずっと足底筋膜炎を抱えていましたが、その時もずっと足底にこの浮腫があり、明らかにそこが膨らんでいました。


 パイナップルを食べたら、その瞬間に浮腫が綺麗に消えるということはありませんが、パイナップルに含まれるブロメラインにはこの浮腫を分解する作用があります。ある研究では、ブロメラインの抽出液はジクロフェナクという非ステロイド系の抗炎症剤に匹敵するという見解もあるほどです。


 ただし、即効性に関しては劣るようです。


2ブドウを食べる


 ブドウの生産地と言えば、山梨県と長野県が有名ですが、戦前からずっとブドウの名産地であり続けられたのにはある理由があります。戦中、戦後通して日本の農業は米やイモなどお腹が膨れるものの生産に面舵いっぱい切っていました。要は、日本人のお腹を満たすことが最重要課題で、ぜいたく品は作らなくて良いということです。


 1969年に制定される農業基本法によってその土地土地の気候に合わせたものを作っていきましょうという方針に変換されるので、逆に言えば国の公式見解としてはこの時までは、土地の気候も風土も無視してとにかく米を作ることを奨励していた訳です。


 にもかかわらず、戦中も山梨県と長野県はブドウの産地であり続けました。ぜいたくは敵だと言っていた時代にです。それには理由があり、ワインの醸造で得られる酒石酸がイヤフォンやマイクの圧電素子として利用できたため、軍需品だと言い張ったからだそうです。そして、実際に軍需品として利用されたそうです。


 大東亜戦争を地図で見るとまた面白いのですが、かなり広範囲にわたって軍を展開し、残念ながらあまり統率は取れていなかったようですが、陸海空の連携が求められた闘いで、通信技術の発達や暗号技術の発達、逆に暗号解読の発達が一気に進んだ時代でもあります。ブドウの酒石酸がマイクやイヤフォンの部品に使われたのであれば、それは多大な需要があったことでしょう。


 そんなブドウですが、こと痛みを敵とすればやはり立派な軍需品となります。赤ブドウに含まれるレスベラトロールは炎症反応を抑える働きがあります。皆様もロキソニンなどの箱の説明書きに「発痛物質であるプログラスタランディンの生成を抑えます」と書いてあるのを見たことがないでしょうか。このプログラスタランディンが生成されるときに、キシロオキシナーゼという酵素を必要とするのですが、レスベラトロールにはこのキシロオキシナーゼの働きを阻害する働きがあります。


 実際に、ある実験では被験者に1プラセボ薬、2レスベラトロールが入っていないブドウの抽出液、3レスベラトロールの3つのカプセルを半年間服用させ続けた結果、レスベラトロールを摂取していた群のみ、hs-CRP、TNF-alpha、インターロイキン6などの炎症指標の低下が確認されました。


3お茶を飲む


 1993年生まれの私にとってお茶を飲むというのは水を飲むのと同義語であるくらい普通の飲料ですが(よく考えると実家にいた時に水を飲んだ記憶がありません)、少なくとも江戸時代の時点ではまだまだ庶民全員にいきわたっていた飲み物ではありません。また、武家階級の人たちなどで人にものを教わる際には茶絶ち酒絶ちを7日間して、心を綺麗にし、その覚悟を示したのちにものを教わったそうです。


 私も重要なレースに臨む1か月前からゴルゴ13絶ちを行いますが、確かに自分自身に対する決意表明が気持ちを強くさせてくれます。


 そんな私の話はどうでも良いのですが、お茶の起源はとなるとこれまたはっきりしません。コーヒーの起源も伝説(伝承)的なものしか残っていませんが、お茶に関しても現在に伝わる話としては約2700年前に中国の皇帝が外で湯を沸かしながら寝てしまったところ、風に吹かれて葉がその湯に入り、起きた時には黄金の色に輝いており、飲んでみると何とも美味であったので、その葉を家来に集めさせたとのことでした。


 今となってはその真相は誰にも分かりませんが、一つだけ言えることはお茶の葉には紫外線や大気汚染から身を守るための抗酸化物質が豊富に含まれているということです。お茶の葉は乾燥、揉捻、発酵などの過程を得るのですが、その過程によって緑茶になったり、紅茶になったり、ウーロン茶になったりします。


 ちなみに、たまに物凄く高い値段のお茶ってありますよね。例えば、台湾の高級ウーロン茶などが有名ですが、あれは何故それほど高いのかというと職人さんが36時間くらいぶっ続けで作業をして、最高の味が出るように仕事をしているからです。あれは人間の手作業じゃないとなかなか出来ない作業だそうで、弟子もなかなか仕事をさせてもらえず、近くで手伝いながら師匠の仕事を見て体で覚えていくそうです。


 抹茶となると更にその作業工程が長くなるので、やたらと高い抹茶があるのもそのためです。


 あとは収穫された茶葉のどの部分を使うのかということによっても変わります。ちょっと品質は劣るけれど、捨てるほどでもないものは安くで売る、茶葉の良い部分はちょっと高く売るというような感じで値段が決まります。


 あとは言うまでもなく、人件費や輸送費でやや価格が変わりますが、基本的には茶葉の品質とその加工過程に違いがあると思って頂けると良いと思います。


 では、具体的にはどのお茶が良いのかということですが、一番強い抗酸化作用を持つのは抹茶です。ちなみに、あまり知られていないのですが、抹茶の中でも玉露という銘柄のものはエスプレッソコーヒーに匹敵するくらいのカフェイン含有量です。


 一番初めにコーヒーが日本に入ってきたのがいつなのかは私も知りませんが、少なくとも普及ということで言えば、大正時代から徐々にということになります。それ以前はコーヒーはありませんでした。コーヒーが世界中でこれだけ愛される飲み物になっている理由の一つはカフェインによる依存性です(レッドブルもモンスターもコーラもそうです)。


 ということは、江戸時代の日本ではこのカフェインの依存性を利用した飲み物は抹茶の専売特許だったわけです。如何に高く売れたかは推して知ることが出来るでしょう。


 それ以外の抹茶に関してはコーヒーの半分から4分の1くらいのカフェイン含有量でお腹にも優しいです。ただ、最も抗酸化作用が強いだけあって(それだけ品質が良い)、抹茶は高いです。


 私の実家は茶道具と華道具を販売していますが、一番安いもので40グラム1000円、一番高いものだと40グラムで4000円です。100グラム計算だと2500円から1万円です(詳しくはこちらからご覧いただけます)。ブランド牛に匹敵する高級品であることがお分かり頂けるかと思います。


 その代わりではありませんが、外国人には人気で今ドイツで二番目にマラソンが速くて、私の元チームメイトのヨハネス・モッチュマンとその彼女さんが京都に来た時に、茶碗と茶筅と抹茶とお茶道具一式プレゼントしたら喜んで帰っていきました。




4生姜を食べる


 風邪を引いた時に生姜湯を飲んだことがある方も多いのではないでしょうか。私もそのうちの一人ですが、体がぽかぽかと温まり、鼻水やのどの痛みがマシになりますよね。生姜も生姜特有のポロフェノール(ギンガーローレン)を多量に持っており、強い抗酸化作用、抗炎症作用、殺菌作用を持ちます。


 実験でも生姜のポリフェノールがTNF-alphaやNF-KappaBなどの炎症指標を有意に下げることが確認されており、昔は捻挫などの治療に生姜の湿布が使われていました。生姜の湿布と言っても私たちが今日ドラッグストアで買えるようなものではなく、しょうがを煎じた汁を布に浸してそれを巻いておくのです。


 風邪を引いた時にはそれをクビにまいたりもしていたそうです。


 ちなみにですが、昭和30年代に大活躍して、現在もプロ野球記録として残るシーズン42勝を挙げた稲尾和久という名投手がいるのですが、その稲尾さんが肩を痛めた時、治療は湿布だったそうです。昭和30年代というとそこまで昔には感じませんが、まだそんな治療しかなかったんだなと思った記憶があります。


 その湿布に何が使われていたかは分かりませんが、察するにやはりショウガや後述するウコンなどの生薬が使われていたのではないかと思います。


 ちなみに生姜は英語でジンジャーですが、英語でGinger upは元気づけるとか活気づけるという意味があります。それだけ、昔から生姜は元気づける作用があることが知られていたのでしょう。