皆さん、こんにちは!
本日は福岡国際マラソンで吉田選手が2時間5分16秒という大記録で優勝した日ですが、その陰でひっそりと大阪ロードレースに出場して参りました。
なんとなく、練習の感じからは1㎞3分10秒ペースだろうなと思っていました。上尾ハーフマラソンの後の週末に行なった10㎞のテンポ走はハーフマラソンのレースの感覚で走って、1㎞3分14秒平均でした。まあまあ、レースになったら1㎞あたり5秒くらいは速くなるだろうから1㎞3分10秒くらいかなと思っていました。
三日前刺激は片道5㎞のコースで実施しましたが、その日は風が強くて常に追い風でした。追い風での5㎞で15分28秒≒1㎞3分5秒ペースでしたが、追い風がなければやっぱり1㎞3分10秒くらいだろうなという感じであり、それがハーフマラソンのレースペースかなという感じでした。
現状、これでしか走れない以上は仕方がないということで、当日も時計を見ずに自分のペースで刻みました。コースは大学入学して初めに優勝した関西インカレのハーフマラソンと全く同じコースでした。
関西インカレの時はおそらくチーム作戦だったんだと思いますが、立命館大学の選手が飛び出して、初めの1000mを2分55秒で飛び出していきました。おそらく各校3人出場で1人が前半飛ばして、他大学の選手をつぶしておいてその選手はそこでお役御免、あとの2人がきっちり上位に入ればというような作戦だったのだと思います。
私はその手にはのらんぞとばかりに集団後方からいきましたが、とは言え完全に先頭集団を無視するわけにはいかず、前半からやや速めのペースになったのでそれなりにきつい状態で競技場を出ていった記憶があります。
今回はどうかというと、スタートして初めに1人のランナーが先頭に出たのは良いものの、ペースが遅かったので600m地点から前に出て、その後は終始独走だったので、自分のペースで走ることが出来ました。時計は一切見ずに先導車(自転車)の方の背中だけを一点に見据えてなるべく無になって走りました。
コースは長居公園の周回を7周して、不足分を初めにトラックで調整するという単純なコースであり、4周までは少し慎重に、ラスト3周は積極的に行こうと思いました。今日もそれなりに風があり、向い風はやや遅く、向い風はやや速くなるのを感じながらも時計は一切見ずに、自分のペースで淡々と刻みました。
ただ、10㎞地点で時計を見たい誘惑に駆られました。なんとなく、31分40秒±10秒だろうなと思いました。速い方なのか、遅い方なのか、気になりました。時計をみると31分48秒、遅い方の予測の記録であり、ペースを上げないと上尾ハーフマラソンの記録を超えることが出来ません。
前半は余裕を持って走っていたので、ペースをやや上げることは問題がないのですが、そこまで無になって走れていたのが、記録を意識したことで少し崩れてしまい、良いリズムを失ってしまいました。これは自分でも反省しています。良いリズムを失ってしまいました。
ただ、それでもペースはややあがり、15㎞通過は47分30秒、上尾ハーフマラソンの通過よりも17秒速く通過しました。残り6.1㎞を19分ちょうどであがれば66分半、1㎞3分6秒くらいのペースまで上げないといけないので、ちょっとキツイなと思いました。
4周目までは慎重にいこうと思っていたと先述しましたが、トラックの距離と長居公園4周を足すと約12km、ところが10㎞地点で時計を見てしまい、そこから少し無理に上げたので2㎞分、ちょっと前倒しできつくなっていました。きついけど、とりあえず行こうと思い、追い風では積極的にペースを上げて、なるべく向い風では耐えながら走りました。
計算上は追い風を1㎞3分ペース、向い風を1㎞3分10秒までで我慢すれば良い計算になります。計算上はそうなのですが、なかなかペースが上がらずに苦しい展開となりました。実はこのあたりから腹痛がきつくなり始めました。トイレ系ではなく、差し込み系のきりきりする痛みです。
ラスト1周(約残り3㎞)となったところで、この痛みがかなりきつくなり、呼吸困難になり、ちょっとヤバいなと思ったので、一度ジョギングペースまで落として深呼吸をしました。なるべく力を抜いて、深呼吸をすると幸いにも痛みが消えたので、その後は失った分を1秒でも取り戻そうと追い風区間は1㎞3分ちょうどのペースまで上げましたが、最後の1㎞の向い風区間は再び1㎞3分6秒ペース、結局この差し込み分なのか、20㎞から21㎞からのペースダウンの6秒分なのか、15㎞地点で思い描いていた66分半から6秒遅れる66分36秒でゴールすることになりました。
関西インカレを制した時の66分27秒から9秒遅れる記録、不思議なことにゴールの手前で12年前の光景がフラッシュバックしました。12年前のそこには洛南高校の3つ上の先輩で高校時代は国体優勝、後に1500mでは日本選手権3位にも入られた今崎俊樹さん(当時立命館大学)がゴール付近にいらっしゃったのですが、今日の私の目にもはっきりとその時の今崎さんの姿が見えました。人間の記憶とは面白いものです。
ゴールしてすぐに(とはいっても数分後)血中乳酸濃度を計測すると8.2ミリモルでした。前から思っていましたが、よく論文や本に書いてある4ミリモルという数字にはかなりの偏りがあると思います。「そういう人もいる」という域を出ないのではないかと私はずっと思っていました。
今五千メートルを走ってどのくらいなのかというのは正確には分かりませんが、私の感覚的には無理やり根性で14分台にねじ込めるくらいの感覚しかありません。物凄く現実的な話をすると3000mを8分57秒、8分58秒くらいで通過して、3000mから4000mで一回12分ちょうどから12分2秒までペースダウンするけど、絶対に15分台はかかりたくないと気力を奮い立たして、気合いで最後は無理やり14分台にねじ込んで14分58秒くらいというくらいの体の感覚です。
そうなると、だいたい今日のペースと比べると1000mあたり10秒くらい遅いペースです。本当に良い練習が出来ている時は5000mのレースペースに1㎞あたり+8秒くらいでハーフマラソンは走り切れます。個人的には5000mのレースペースから1㎞あたり10秒程度しか落とさずにハーフマラソンを走り切る場合、4ミリモルでは走り切れないと思います。
心拍数で言えば、本日の平均心拍数が160であり、これは私の最大心拍数の約89%に該当します。もう少しトレーニングを積んでいくと、この強度での血中乳酸濃度は下がってくるとは思いますが、結局ハーフマラソンはもう少し高い心拍数で押し切れるようになるはずなので、ハーフマラソンの血中乳酸濃度は変わらないのではないでしょうか。
多くの方がジャック・ダニエルズ博士の「レースで1時間全力で走り切れるペース」を基準にLT走というものをやっていますが、実は生理学的にはあまり根拠がないというか、意味はないのではないかと思います。
私の場合は1㎞3分30秒を超えるあたりから、割と速度と比例して血中乳酸濃度が上昇します。明らかに指数関数的に上昇する閾値と呼べるようなものがあるのかどうか、ちょっと微妙な感じはしますが、確かに主観的にはハーフマラソンは「快適なきつさ(Comfortable Hard」、5000mレースの強度は「きつい(Hard)」と記述できそうな感じもします。
結局何が言いたいかと言うと、運動生理学的に正しいと言われると引き下がってしまう人も多いのですが、運動生理学という学問そのものの誤差や個体差が大きい以上はトレーニングもやはり幅を持たせて考えるべきであり、ある一つの数字を絶対的な物差しにして、自分は科学的なトレーニングをしていると考えると落とし穴にはまりかねないことにはなるでしょう。
ただ、一番大切なことはトップランナーにとっては1時間全力で走れる強度とはおよそハーフマラソンのレースペースなので、ハーフマラソンのレースペースに対する余裕度が段階的に上がっていくことです。
このように考えると、ハーフマラソンが90分の人は単純に、ハーフマラソンのレースペースでの持久走、あるいは主観的ハーフマラソンのレース強度(練習だと私の経験上若干遅くなる)での10-12㎞走がレベルを問わずに一つの有効なトレーニングになるのではないでしょうか。
「ジャック・ダニエルズ博士の理論に従うと自分のLTペースはハーフマラソンのレースペースよりも速いはずだから、そのペースでの20-40分走が効果的な練習である」というような考え方にはあまり意味がないような気がします。
ちなみに今回の結果についてですが、私的には事前の感覚と心拍数、全てを総合的に判断して、だいたい思った通りの記録だったので満足しています。決して良い記録ではないので満足という表現が正しいかどうかは分かりませんが、単純に最大心拍数の約90%、心拍数160くらいで走れるペースを上げていけば、その通りにハーフマラソンの記録が上がっていくので、それで非常にレースと練習の記録が綺麗な関係性を作っています。
そして、だいたい私の体が一つのトレーニング刺激に対して適応するまでに4週間から6週間かかるのですが、上尾ハーフマラソンの時点でまだ肉離れから走り始めて10日目、そのあと今日でまだ2週間、心拍数が最大心拍数の約90%になるような練習をやり出したのが、上尾ハーフマラソンからなので、まだ3回しかこのタイプのトレーニングをやっていません。
また、そのうちの1回(先週の土曜日)の10㎞走は主観的には充分にきつかったですが、平均心拍数は157と160に達していないので、色々綺麗な数字になっているかなと思います。
そんな訳で、現状こんなもんかなと正直思っています。来週は亀岡ハーフマラソンに出場するので、また今日より少しでも、つまり今回のレース刺激に体が適応した分だけ記録が上がれば良いなと思っています。
ちなみにですが、65分台、64分台、63分台が出ていた時の自分と比べると何が足りないのかというとやっぱりスピードです。
3000mや5000mの力が落ちているので、それがそのままハーフマラソンの記録の低下に繋がっています。寧ろ、ハーフマラソンやフルマラソンの方は経験が上がるにつれて、色々な状況に対応出来てきている感じがします。
とは言え、亀岡ハーフマラソンが終われば次は大阪マラソンに向けて準備していくので、3000mや5000mのレースペースに重点を置くような練習は入れられません。そこで、以前の動画でもお話しさせて頂いた補助的スピードを導入して行きたいと思っています。
1㎞1本くらいであれば、疲労も残さないので、このくらいの距離で週に数回は1㎞2分50秒前後のスピードに体を慣らしておこうと思います。最終的には1㎞2分50秒ペースでどこまで走り続けられるかは、代謝系によって決まるのですが、その前段階の話としてその動きに体が慣れていないといくら持久力があっても厳しいので、神経筋をこのペースに少しずつで良いから慣らしていこうと思っています。
色々な方の練習を分析させて頂いていますが「若い間にやらないと新しいことは学習出来ない」というのは本当に嘘です。40代でも50代でも60代でも新しい刺激をかけると体は学習するし、逆にまだ30歳という少年期の私でもやらないことはどんどん衰えていきます。少しでも良いから色々な刺激を体にかけることと、ある刺激に対して体を適応させるには4-6週間を見ておくのが妥当であるということの二つを最近物凄く実感しています。
更に、もう少し詳しく説明すると、本当にまっさらな刺激に対して適応するのであれば、7歳くらいまでが一番良い時期です。日本で7歳までに生まれ育った人は全員日本語母語話者としての能力を身につけますし、この年代までを関西で過ごした私は関西弁が抜けません。
しかし、逆に7歳くらいまでを関西以外で生まれ育った人は後天的に関西弁のイントネーションを身につけるのが非常に困難です。関西弁の真似をする非関西出身の方はたくさんいらっしゃいますが、言葉は真似出来ても発音の方はなかなか真似できないようで、やっぱりなまっています。
7歳くらいまでは意味なんか分からなくてもどんどん頭に入るので、九九もあいうえおもこの時期に教えるのがベストで、実際に日本の学校教育では7歳までに引き算、足し算と九九、あいうえおと簡単な作文、漢字の学習に当てます。戦前の教育では論語の素読を小学校1年生でやり、インドでは19×19まで暗記させるそうですが、私はそこまでやっても良いと思います。英才教育でも押しつけでもなく、この年齢の子供なら記憶できるはずです。
ここから中学校を卒業する15歳くらいまでは大人と幼少期の中間です。少しずつ意味の分からないことを学習することが困難になる子供が出てくる一方で、同時にそれは論理的思考の発達でもあります。論理的思考が発達すると意味の分からないものは覚えられなくなってくるのです。
「せんせー、なんで勉強なんてしないといけないの?」と質問するようになるのは論理的思考の芽生えであり、私は好ましいことだと思っているのですが、ここで多くの学校の先生が「やらなあかんもんはやらなあかんのや」のように答え、多くの親が「屁理屈言わんと勉強しなさい」とか「良い学校に入って、良い会社に入らないと将来大変なんだからね」などとしか答えられないのは残念です。
更に大人になると、幼少期とは学習の仕方が完全にひっくり返ります。全く新しい意味の分からないものは全く覚えられなくなるのに対し、既存の知識や技術、経験と結びつけられそうなものはどんどん吸収できるようになります。
寧ろ、その処理速度は子供よりもはるかに速いです。何故ならば、慣れ親しんだ(何度も使う)知識や技術や経験は全て自動化してしまうからです。つまり、神経回路を固定することで情報処理を迅速に行うのです。
子供の方が本当に学習能力が高いのであれば、資本家は7歳くらいの子供に帝王教育を施して10歳くらいで社長にしてしまえば良いのです。しかし、実際には大人の方が適しているのは法律、歴史、現代文、古文、漢文、心理学、経済、政治など様々な既存の知識と組み合わせることで情報処理能力が速いからです。
ここで重要なのは二つの二律背反に対する最適解です。
先ず第一に、人間は大人になると全く新しいものを学習することは出来ず、既存の知識や技術、身体能力、経験と関連付けることでしか学習が出来ません。
そして第二に、人間は新しい刺激をかけ続けないとどんどん神経回路が固定されて、新しい能力を獲得出来ません。それだけではなく、使わない神経回路はどんどん他の神経回路に置き換わっていき、やがては失います。
この二つの一見相反する問題に最適解を与えるのであれば、微妙に異なる新しい刺激を体にかけ続けるのが理想なのです。その為の方法は二つあり、一つ目の方法は今私が提唱したように、体に大きな負担のない範囲内で微妙に新しい刺激をかけることです。
例えば、マラソントレーニングという本来持久系能力に重点を置かないといけない練習の中に1㎞1本やバウンディングやジャンプ系のトレーニングや体幹トレーニングというような少し新しい刺激をかけることで、新しい身体能力を手に入れることです。
しかし、このやり方では体に負担がかかるようなトレーニング、例えば1㎞10本や15㎞のテンポ走、40㎞走のようなトレーニングには対応できません。
では、どうすれば良いのかと言うとピーキングファネルを使えば良いのです。微妙に新しい、しかし既存の負荷にかなり似ている負荷を段階的に体にかけながら、最終的には目標とするレースに特異的に体を仕上げていくのです。
こうすれば、3か月から半年というスパンで観た時には満遍なく新しい刺激がかかりながらも、それらは全く新しい刺激ではなく、全て一個前のトレーニングに非常に似通ったトレーニング刺激であり、レースの日には自分が目標とするレースの距離とペースに特化した体が出来上がっているという算段です。
そんなやり方で本当に上手くいくのかという質問は愚門であり、実際に弊社副社長の深澤哲也がこのやり方で、先日の神戸マラソンで初めて2時間半切りを達成しました。彼のトレーニングと実際のピーキングファネルの形成の仕方について学びたい方は今すぐこちらをクリックして無料記事「マラソンサブ3からサブ2.5を達成する上での詳細かつ応用しやすい参考資料が欲しい方に緊急案内」をお読みください。
それでは素敵な日曜日の夜になりますように
ウェルビーイング株式会社代表取締役
池上秀志
追伸
今日は選手待機所についてからの「待ってる間にドラクエしよおもてたのにPSP忘れた」という他の選手の一言に始まり(もうレースの75分前やで)、まさかの表彰式が20分前倒しになるという大阪をぎゅっと凝縮したような一日でした(電車の乗り降りの際、最後の人が降りてから一番初めの人が乗車するまでの平均時間が全国で一番短いのは大阪だそうです。ちなみに、大阪はマイナスを記録します。つまり、最後の人が降りる前に乗車します。でも、私もそうですね。関西の言葉でいうところのせっかちです)。
追追伸
人間の神経回路を一面的に捉えるのは間違いで、多層的に捉える必要があるようです。
例えば、流行が頻繁に変わる一方で、日本の文化や国民性を変えるのはより多くの時間とエネルギーが必要となります。私は日本の国民性や文化は数百年間変わっていないのではないかと思っていますが、それが大きく変わったきっかけがあるとすれば大東亜戦争です。
逆に言えば、文化や国民性という深層の部分を変えるのにはそのくらい大きな力を必要とする一方で、流行という浅層の部分は有名人の一言で結構簡単に変わったりします。
人間の神経回路もそれと同じで、若い間に身につけたことほど深層部分にいってしまうので、変えるのが難しいようです。言葉の訛りもそのうちの一つです(発音も運動神経による筋肉の運動であることをお忘れなく)。
若い間に身につけたものは一生ものなので、有利だと思われるかもしれませんが、必ずしもそうだとは限りません。
例えば、私の右手だけを大きく振る独特の腕振りはおそらくは野球少年だったころのグラブを左わきに抱えて右手を大きく振って走っていた頃の癖だと思います。この走り方を直すのは非常に困難です。これが神経回路の深層部にあるからです。
そうすると、実は走り方を直す(変える)のは私よりもラン歴2年目の50歳の方の方が簡単であるということもあり得るのです。
ただ、持久力もスピードも走り方も全てに言えることですが、トレーニングして浅層的に体が変わっても、それが更に深層部に入るまでには更に時間がかかります。だからこそ、マラソンで自分の最高の力を発揮するには15年±5年は必要であると言われているのです。
こういったことを考えていくと、仮に直接的な関係性がなかったとしても幼少期や若い頃の運動経験が大人になってからのマラソンのタイムに多少影響することは当たり前だと思います。それがプラスに働いている人はそれで構いません。
ですが、マイナスに働いている人、つまり、幼年期や若い頃の運動経験があまりなく、初めは苦戦している人もあまり気にしなくて良いと思います。
時間をかければ、きちんと先ずは浅層的に(短期記憶的に)体がそのトレーニング刺激を学習し、ついには深層的に(長期記憶的に)体がそのトレーニング刺激を学習します。ですから、まだ走歴が5年とかしかないのに「自分には才能がない」と思い込むよりもとにかく自分を信じて前に進み続けることが大切だと私は思います。
私もまだまだ若いので、自分の理論の正しさを証明するためにこれからもトレーニングを続けていきたいと思っています。
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