市民ランナーの為の体を暑さに慣らす最善の方法
- 池上秀志
- 6 日前
- 読了時間: 12分
皆さん、こんにちは!
最近ちょっと暑すぎません?(笑)
真夏の暑さは1993年生まれの私にとっては今も昔も同じなのですが、真夏の長さが前後に長引いて昔は7月上旬から8月中旬くらいまでの7週間ほどを耐えきればなんとかなったものが、現在では6月下旬から9月中旬くらいまでの丸々3か月を耐えきらないといけない気候になってきました。
地球温暖化の原因がなんであるかは、別の人の解説に譲るとして、原因がなんであれ、暑い期間が長くなれば、それだけ重要になってくるのが我々の体の暑熱順化です。暑熱順化とは何かを一言で説明せよと言われると熱刺激に対する体の適応反応です。つまり、暑さに体が強くなるということです。
では、暑さに体が強くなるということはどういうことかということですが、これは春の気温25度と秋の気温25度に違いを比べて頂けると分かりやすいと思います。春の気温25度は非常に暑く感じられ、体も動きにくく、のどの渇きも強く感じるのに対し、秋の気温25度は涼しく感じられ、真冬ほどではないかもしれませんが、大分良い記録が狙えます。
実はこれは体感だけではなくて、しっかりと数字に出ており、熱中症になる人が一番大いのは春先の馬鹿陽気の日なのです。春先にいきなり気温が25度を超えるマラソン大会が一番熱中症になる人が多いというのが統計が示す事実です。
これはもちろん、そもそも真夏に開催されるレースが少ないとか、開催されたとしても誰も記録を狙って走らないという要因も挙げられますが、それに加えて暑さに体が慣れていないということも大きな要因として挙げられます。
では、人間の体はどこまで暑さになれることが出来るのでしょうか?
かなり慣れることは間違いなく、一度暑さになれてしまえば気温30度でも体感的には涼しく感じられたりもします。
ただし、それでも絶対に真夏のレースで真冬と同じくらい良い記録を出すことは出来ません。体が暑さになれると言っても限度はあります。限度はありますが、かなり慣れるようになることは間違いないです。
そして、重要なことはどうせ暑い季節が長く続くのであれば、早い段階で慣れておいた方が良いということです。
という訳で、今回は早い段階で体が暑さに慣れること、つまり体が熱刺激に対して適応しやすい方法というものを紹介させて頂きます。
その方法とは・・・頻繁に暑いところで走り、夜は涼しい部屋でしっかりと休むことです。
熱刺激への適応というものを難しく考えてはいけません。人間がある刺激に対して適応するには常に同じ条件があり、1体力的に余裕があること、2なるべく高頻度で反復することの二つです。
1番目の体力的余裕があることというのは、その刺激そのものがどれだけ強いのかということに加えて、どれだけ体をその刺激から回復させられるかということの2つの要素に分けられます。
長距離走、マラソンに関して言えば、暑いところで低強度な練習に頻繁に取り組み、夜は涼しいところで休んでしっかりと回復するということが要諦になります。そもそも論ですが、何故長距離走、マラソンと暑さの相性は悪いのでしょうか?
野球のように夏に盛んだけれど、冬場は逆に体が動きにくく、試合もあまりないスポーツがある一方で、長距離走、マラソンは近年ではあまりにも暑いと決して記録は狙えず、場合によっては試合そのものが中止になることがあるくらいに相性が悪いです。それは何故でしょうか?
それは我々が運動し続ける際に生み出すエネルギーの約4分の3くらいは熱エネルギーに変換されるからです。走り続けるということは低強度走でも安静時の約4倍前後のエネルギーを生み出し続けるということですが、つまりは安静時の4倍前後の熱エネルギーが生み出され続けているのです。
しかも、長距離走、マラソンというスポーツはそれを休みなしで続けます。野球のように止まっている時間が無いので、熱が逃げにくく、体温が上昇し続けがちなのです。
もちろん、人間の体には体温調節機能が備わっており、あるいは体温が上昇し続けてこのままではヤバいと中枢神経が判断すると、無理やりペースを落とさせて生み出せる熱エネルギー及び運動エネルギーの量を減らすので、通常は死には至りません。ですが、長距離走、マラソンと暑さの相性が悪いのにはそのような理由があるのです。
そして、ペースが速くなればなるほど生み出す運動エネルギーの分量は多くなります。そして、繰り返しになりますが、運動エネルギーの約3倍は熱エネルギーになります。生み出される運動エネルギーの量は走行速度に比例しますから、ペースが速くなればなるほど単位時間あたりに生み出される運動エネルギーの量は多くなります。つまり、走行速度に比例して単位時間あたりに生み出される熱エネルギーの量も増えます。
そして、それに運動時間を掛け合わせたものがその練習一回で生み出される熱エネルギーの総量ということになります。
つまり、トレーニング刺激のみならず、熱刺激という観点からも走行速度×運動時間の総和によって負荷の大きさが決まるのです。
初心者の方が少しずつ少しずつトレーニングの走行速度×運動時間を増やしていかなければならないように、急に暑くなったこの時期には少しずつ少しずつ走行速度×運動時間を増やしていかなければなりません。
そして、初心者の方の走力向上においては、初期の段階では低強度低量高頻度が最も有効で、次の段階として低強度中量高頻度に進んだ方が良いように、この時期の暑熱順化に最も適した練習内容は低強度中量高頻度です。
とは言え、レースが近い方もいらっしゃるでしょう。そういう場合にはいきなり練習内容を大きく変更する必要はありません。ただ、予定よりもペースを落として実施すれば良いのです。
あるいは、一回に20㎞を超える練習(25㎞以上の練習)については、一回に走る練習量も減らして、二回に分けて二部練習にすることも検討されると良いでしょう。
体が暑さになれる過程においては、暑いからと行って外に出て運動しないのが一番ダメです。最近は熱中症になっただけで、部活の顧問の監督責任が問われるようになりましたが、本当にナンセンスです。体を暑さに慣らそうと思ったら、軽く熱中症になってそのあとしっかりと涼しい部屋で休ませることは決して悪いことではないです。
寧ろ、徐々に暑さに体を慣らしていかないと、本当に体が弱いまま急に外に出て運動をすると、障害が残るような重度の熱中症や死に至るような熱中症になりかねません。熱中症にならない範囲で暑い中で走り、たまに加減を見誤って軽い熱中症程度の練習を継続するのが最も良いのです。
軽い熱中症になることで自分の体の限界も分かってきますし、指導者の方もそれで経験を積んで、ここまでは大丈夫だけれど、これ以上はヤバイみたいなことを覚えていく訳ですが、現在は軽い熱中症になっただけで「指導者の監督責任を問う」とか「そもそも炎天下の中での部活動は適切なのか」というような過剰な煽りをしてくる人たち(特にマスコミ)がいるので、かえってそのあたりの見極めが適切に出来る人が減ってきているような気がします。
ただ、誤解のないように書いておきますと、軽い熱中症になることを目指すべきといっている訳ではなくて、とにかく熱中症を恐れずに、外に出て軽めのトレーニングをすることで体は徐々に暑さに慣れてくる、そして、その過程において見極めを誤ると軽い熱中症になることもあるが、それはそれでその後涼しい部屋で休みさえすれば、プラスになるということです。
暑さに慣れるにはとにかく頻度が大切です。軽い練習でも良いので、練習頻度を増やしてなるべく暑いところで走るようにしてください。なるべく暑いところで走るといっても、わざわざ午後2時頃を狙って走る必要はありません。いやでも、熱刺激は体にかかりますから、比較的涼しい時間帯を狙って走るようにはして下さい。
また、体を暑さに慣らすためにクーラーをつけないという考え方もかなり広く普及してはいますが、私の経験上はこれもあまりよくありません。昼間暑いところで走ったら、そのあとは涼しいところで体を休ませてあげないと刺激に対して体が適応しないのです。
普段運動しない人は、日常生活の中でクーラーを使わずに熱刺激を体にかけるというのでも良いと思いますが、ランナーさんの場合は練習自体が非常に強い熱刺激になりますから、一度熱刺激をかけたら涼しいところで休んだ方が良いです。
私がここで言っている涼しいところというのは何もクーラーをガンガンにかけて南極みたいにした部屋のことではありません。体が心地よいと感じる温度のことです。そういう意味では、体が慣れてきたり、北海道にお住まいの方などで、体がこのくらいなら心地よいと感じるのであれば、別にクーラーは不要です。
また、先日の無料ブログ記事で「市民ランナーの方が走ることの意義とは?」というテーマで書かせて頂いた内容に関連して申し上げますと、冬場のトレーニングよりも夏場のトレーニングの方が人間の発育には良いはずです(とは言え、長距離走、マラソントレーニングに関して言えば、望ましくはない)。
発育と書くと子供という印象があるかもしれませんが、大人になっても生きていく上での土台となるのは生命力です。生命力とはすなわち、生物としての原始的な能力です。
これが弱くなると、感じにくくなるとか、瞳孔の調整が上手くいかずに死んだ魚の目になるとか、体温調節が正常に出来ないとか、中枢神経が正常に働かないとか、やる気や気力がわいてこないとか、向上心や闘争心が湧いてこないとか色々な問題が出てくる訳です。
理屈ではなく、感じるままに考えてみてください。走った後のご飯と走っていない時のご飯とどちらが美味しいでしょうか?
暑い中走り終わった後のビールと走らずにクーラーのきいた部屋で一日過ごした最後に飲むビールとどちらが美味しいでしょうか?
感じなくなるというのはそういうことです。どうしても、安全な環境ばかりで過ごしていると生命力が弱くなり、何を食べても、何を飲んでも美味しくないし、寝ても気持ちよくないし、魅力的な異性にも心がときめかないし、出世もしたくないし、勉強もしたくないし、お金も稼ぎたくないし、という状態になってしまうのです。
これらの欲求は性格の問題とかも多少はありましょうけれど、根本的には誰にでもある原始的な欲求なのです。原始的な体の機能を司る脳幹部が鍛えられないとどうしてもこういった原始的な欲求が弱くなってしまうのです。
つまり、生きていても楽しくないし、面白くもないし、悔しくもないし、悲しくもないし、向上心もないし、闘争心もないし、とにかく何もする気が起きないという状態です。死んだ魚のような目をして、生きているんだかただただ漂流しているだけなのかよく分からないというような状態です。
これが私が生命力が弱くなると書く状態です。
ついでに書くと、自分の人生が面白くないと他人の足を引っ張るしかやることがないので、頑張る人を否定したり、お金持ちを否定したり、芸能人の不倫に躍起になったり、成功者を否定したり、叩けそうな人を探してアンチコメントをしたりという行動に出る訳です。
つまり、往々にして生命力が弱ると人間性まで低くなるのです。
そして、この生命力を鍛えるには肉体的な恐怖、不安、苦痛を乗り越えて行動し続けることが最も良い方法なのです。
ですから、人間としての発育及び維持のためには冬場のトレーニングよりも夏場のトレーニングの方が良いはずなのです。生命の危機を感じますからね。
現代人にとってもまだ苦痛が娯楽にはなっていませんが、恐怖自体は娯楽になっています。ジェットコースター、お化け屋敷、ホラー映画などがそうです。
現代社会では普通に生きていたらもう恐怖を感じるような状況がないので、それを人工的に作って、娯楽にしてしまっている訳です。
ただ、生命力を鍛えるにはこの恐怖を乗り超えて自らの意志で行動するというところが大切なので、ホラー映画やジェットコースターではダメなのです。
恐怖や不安や苦痛を乗り超えて前に進み続ける力こそが生命力の源泉なのです。
ただ、一度負荷をかけたら体も心も休ませてやらないと刺激に対して心身が適応しません。ですから、暑いところで走ったら、涼しいところで休む、それも負荷のかけ方もいきなり大きな負荷をかけるのではなく、苦痛も感じるけれど、同時に心地よい、気持ち良い、なんとなく利いてる気がするというくらいの負荷が良いのです。
その代わり、頻度を高めることで、体が暑さにすぐになれることが出来るようになります。初めの1,2週間さえ低強度高頻度で暑さに体を慣らせば、そのあとは基本的には微調整を加えながら、良い練習が出来るようになります。
繰り返しになりますが、暑さに体を慣らすのに最も良い方法は低強度高頻度練習、そして暑さのせいで体調を崩してしまう人は、全く暑い中で体を動かさない人かもしくは暑い中で真冬と同じような練習を組んだ人、あるいは暑い中で練習したのに涼しいところで体を休ませなかった人です。
負荷をかけ過ぎるのも良くないし、負荷をかけなさすぎるのも良くないし、負荷だけかけて回復させないのも良くないのです。
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